ダーク・ファンタジー小説

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暗闇を黒く塗り潰せ【短編集】
日時: 2017/01/30 14:07
名前: & ◆p1kEDHfk2I (ID: Zodo8Gk0)

&という者です。
短編集書きたいな…なんて思ったらスレ建ててました←

題名からして物凄い暗そうですが、暗いです((何の捻りも無い
ハッピーエンドもバッドエンドもループエンドもオチなしも何でもアリです。多分。

そんなものに付き合っていただけるなら、暇潰しにでもご覧ください。

ちょっとした宣伝です。
SS大会で作品を投稿させていただきました。「すきー!」を押してくださった方、ありがとうございました!作品名は「あおいろ」で、3部構成なので全3スレです。ちょっとリメイクとかしてから、このスレにも載せようと思っています。

それでは。

目次
縛 >>1-5
柱の陰に >>6-10
cigarette >>11-16
おもちゃばこをあけてみて >>17-22
華やかな世に結末を。>>23-28

オチが無さ過ぎて困るこの頃です((

Re: 暗闇を黒く塗り潰せ【短編集】 ( No.4 )
日時: 2016/02/15 19:47
名前: & (ID: bUOIFFcu)

縛-4

「んー、風が気持ちいいねぇ」

あの日から3年。
相変わらず周りの人達からじろじろ見られながら、桜の公園にやってきていた。
皮肉なことに、ここは俺が未來に告白した場所だった。

「ね、そうでしょ?」
「...うん、まあ」

確かに、普通の人ならば春先に吹く少しだけ冷たい風は気持ちいいのだろう。だが、おおよそ精神状態がまともではない俺にとっては、風が吹くたびにビクビクして、情けないことこの上なかった。未來の言葉を肯定はしたものの、本当は風なんか吹いてほしくない。

桜が舞う。

まだここの木は五分咲きだが、風が吹けば咲いている桜は散るわけで、咲いているぶんだけの桜がひらひら落ちてくる。未來は...今更俺が言うのもなんだが、スタイルもいいし顔も可愛いし、桜が舞い落ちる光景をバックにして、なんかモデルみたいである。

「...ねえ」

そんな桜をバックにして、未來がこちらを向いて微笑んできた。
無情にも、その顔を綺麗だと思ってしまう。

「私、君のこと大好きだよ」

いつものように言う彼女。
「大好き」とは、あの日から実に毎日言われてきていた。

「大好き」、なら。
どうして俺を縛る。
君に縛り付けられたまま動けない俺を見て、君は何を思う。
縛り付けて離さずに3年過ごしてきて、君は何を得たんだ?

「そう、本当に大好き」

でも、君の言う「大好き」は、うわ言には聞こえなくて。
いつでも本心で、心から、一回一回情熱を込めて言ってくれる。

それが既にかなりの喜びと化してしまっている俺だ。
檻に入れられている時点でかなりおかしいのだが、閉塞された空間と自由の利かない身体のせいで、感覚すらおかしくなってしまったらしい。

そんな俺は。

多分ずっと。

君に縛られ続けるんだろう。

「絶対、ぜーったい離さないからね」

満面の笑みでこちらを見てくる君に。

「大好き」を言われ続けられながら。


彼女に縛られ続ける、彼氏のお話。

Re: 暗闇を黒く塗り潰せ【短編集】 ( No.5 )
日時: 2016/02/18 16:17
名前: & (ID: bUOIFFcu)

縛-another

桜が舞う。
風に乗って、ひらひら舞う。

桜は、綺麗だな。
私なんかと違って、とっても綺麗。

ここ、桜の公園は、残念ながら私が今の彼氏に告白された場所だ。
何が残念かって...。

「.........」

風が吹くたびにビクリと身体を震わせる、侑。

...何が残念かって、こんな素敵なところで告白してくれた彼氏を、今現在檻の中で縛り付けている、この私がだ。

今から、多分3年前の話。
私は、浮気をした...フリをした。
本当は侑にもう一度好きって言われたくて、そうじゃなくても侑が私のこと好きなのを確かめたくて、わざわざ上司に協力してもらったのだ。

その頃私たちは、いわゆる倦怠期というやつだったようで、お互いにお互いをあまり意識してなかったというか、直接的な行動に出なかったというか、まあとにかく付き合いたての頃のような情熱が足りなくなっていた。
だから、私はもう一度、最初の頃みたいに戻りたいと思って、浮気したフリをし、侑が私を引き戻そうとしてくれることを願ったのだった。

結果。

今、私は侑を縛っている。

侑を私に縛り付けている、と言った方が正しいかな。
そう、つまり、私の作戦は失敗したのだ。引き戻すどころか余計に離れていってしまった。まさかそんなに早く私を諦めたのか、いやでもはっきり別れは告げてないし、もしかしたら少し感づくのが遅くて動き出しに時間がかかっているのかも、なんてぐるぐる考えていた矢先、私は侑から決定打を食らう。

『あの...さ。こんなこと俺が言うのもおかしいかもしれないけど...その、俺のこと、フらなくて大丈夫なの?』

それを言われた瞬間、私の中で何かがプチンと切れた。

私を...こんなに早く諦めて、あまつさえ別れを催促するなんて、それはつまり、もう侑は私のことなんか———。

そう考えた瞬間、私は一気にまくし立てていた。

「何でよ」って。
「悔しくなかったの」って。
「盗られてもなんとも思わないの」って。
「どうしてそんなに簡単に諦めるの」って。
「私のことなんてどうでもよかったのね」って。

私はそんなに魅力のない女だったかと思うと、更に激情して、侑にありったけの言葉をぶつけていた。

けど、言われた。

『何で怒ってるんだよ』って。

何で?
諦められないからに決まってるでしょ!?

侑に諦められても、私は諦められなかった。
どうすればよかったんだろう、何が悪かったんだろう。
離れるのがダメだったんだろうか?
離れるのがダメなら...、

ずっと、一緒にいればいいのか?

そこまで考えた私は、ぽつりと「...もういい」と言って、檻や手錠なんかの買い出しに行ったのだった。

それから3年。

「私、君のこと大好きだよ」

私は侑に、毎日「大好き」と言い続けていた。
だって言わなきゃ。言わなきゃ、伝わんない。言わなきゃ、また、離れていってしまう。
それから、私は侑の名前を呼ばなくなっていた。
もう君は侑じゃない。私の知ってる、侑じゃないんだ。私が変えてしまったんだ。

それでも私は、未だに侑を縛り付けている。

きっと、これからもずっと縛り続ける。

「そう、本当に大好き」だからね。

彼氏を縛り続ける、彼女のお話。

Re: 暗闇を黒く塗り潰せ【短編集】 ( No.6 )
日時: 2016/03/24 19:23
名前: & (ID: bUOIFFcu)

柱の陰に-1

荒んだ街の路地裏の、更に奥に入ったところの一角。
そこを拠点にする少女がひとり。
そしてそこを荒らす『誰か』がひとり———。

「あんたさあ...ほんと、何でこう毎回いるわけ?」

今日も少女は悪態をつき、その『誰か』を追い出そうとしていた。

『いひひ、そんな怖いカオしないでさ?ちょっとここに居着いてるだけじゃないか。言っただろう、自分は家が無いんだ』

男とも女ともつかない声でその『誰か』は言った。
フードを目深にかぶり、ぴったりした黒いマスクをつけ、肌の露出はほとんど無い。顔もよく見えないくらいだった。
ここの路地裏地区で家が無いのなんて、何も珍しい話じゃない。なんなら少女にだって家など無い。それで毎回少女は言うのだった、

「私だって前からずっと家なんか無いって言ってんだよ。さっさと出てけ、この邪魔虫野郎」

これでもう3ヶ月経つぞ——と少女は重ねて言った。

その『誰か』は3ヶ月前にここにやってきた。少女が嫌がるのも構わずに図々しく居座り、食べ物や飲み物やお金を何故だか強引に共有している。軽く居候みたいな状態になっているその『誰か』を、少女は何度も追い出そうと奮闘していた。...もっとも、家じゃないので居候とは言えないのだが。

その『誰か』は邪魔虫と呼ばれ、ぶすっとした表情を浮かべた。

『邪魔虫野郎って言うのやめないかい?自分、その呼び方嫌いだよ』
「じゃあ名前を教えな」
『やだね』

『誰か』は少女に名前を教えない。
その理由も教えないし、なんなら出身地や身の上や年齢や性別、その全てを明かさなかった。

少女は苦虫を踏み潰したような顔になりつつ、悪態をついた。

「...この邪魔虫野郎が」
『あ、また言ったなーっ』
「何度でも言う」

そんなやり取りをしながら、少女は今日もため息をつくのだった。

Re: 暗闇を黒く塗り潰せ【短編集】 ( No.7 )
日時: 2016/02/28 19:52
名前: & (ID: bUOIFFcu)

柱の陰に-2

相変わらず居候をやめない『誰か』に、少女はため息をつきっぱなしだった。

「厄介な奴と出逢ってしまったもんだ…」
『厄介ってなんだよー』
「厄介だろ。あんたを厄介と呼ばずに何を厄介と呼ぶ」
『そんなに?酷くないかい?』
「そんなに。酷くないね」

えー…とぼやく『誰か』。

「いいから早く出て行け。ここは私の居場所だ」

少女は、今日こそこいつを追い出そうと決めていた。3ヶ月間ずっと追い出せずにいる状況を打破しようとし、今日こそはと意気込んでいたのだ。

しかし、結果はこの有様。

『出て行かないさー、だって家無いしね』

そう言いながら、汚いのも構わず路上にごろごろする『誰か』。

今日こそは追い出すと決めている少女は、チッと舌打ちし、それなら…と違う作戦に出る。

『家無い奴に出てけって、中々酷いものだね、君?』

「…居場所が無い、の間違いじゃないか?」

瞬間、『誰か』の顔つきがサッと変わった。

意地悪くにやけていた顔は無表情になり、ごろごろと忙しなく動いていた身体はぴたっと止まる。少女を睨めつけるような視線で見上げ、『誰か』を睨みつけ見下ろしている少女と目を合わせた。

少女は相手の雰囲気が変わったことに好機を見出し、さらに追い討ちをかける。

Re: 暗闇を黒く塗り潰せ【短編集】 ( No.8 )
日時: 2016/03/08 21:34
名前: & (ID: bUOIFFcu)

柱の陰に-3

「ああそうだろうな。こうして人様のテリトリーに邪魔してるくらいだし、居場所なんか無いんだろうな。だけど、だからといってここに置いておくほど私は優しくない」

少女はスッと目を細め、冷たく『誰か』のことを見下ろし、見下して、尚も言葉を続ける。

「私に親族はいないし、私に相棒はいない。いるのは仕事相手だけだ。…同じく、要るのは仕事相手だけだ。その仕事相手も、私のテリトリーの場所は知らせてないし、まして居座らせてなんかいない。要らないからな」

そして、考えうる限り惨酷に言葉を放った。

「ーーー出てけよ」

あんたは私にとって何でもないんだから。

言外にそう告げ、大通りの方を顎でしゃくった。あっちの方に行けば居場所なんか普通に見つかるだろう、と考えてのその方角だった。

続けざまに言葉を放たれたその『誰か』は面食らい…酷く哀しそうな顔をしながら、ぼそっと告げた。

『…君がそう言うのは、自分にどうにかできることじゃないけど…。居場所が無い、の意味を、君は知らないだろう』

居場所が無いとは、どういうことを言うのか。

居場所が無いとは、どういう人のことを言うのか。

それを君は知らない、まだ理解していない、とその『誰か』は言外に少女に告げているのだった。


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