ダーク・ファンタジー小説
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- ニンゲン消去ボタン【一話完結】
- 日時: 2016/12/21 19:39
- 名前: 北風 (ID: rk41/cF2)
北風です。
シリアス・ダークで書かせていただくのは初めてとなります。
この小説はオムニバスストーリーとなっており、人間の存在を『無かったことに出来る』ボタンの話です。
未熟な所もありますが、楽しんで頂ければ幸いです。
コメントやアドバイスは大歓迎です。
- Re: ニンゲン消去ボタン【一話完結間近】 ( No.18 )
- 日時: 2017/01/01 15:40
- 名前: 北風 (ID: 82QqnAtN)
「嘘だ……うそ、だ………」
私はガタガタ震えながらうわごとのように呟いていた。
「真美ちゃん……真美ちゃん……」
いつもの場所で待ち続けてもう20分だ。
それなのに真美ちゃんは、来ない。
とっくに授業は始まっている時間だ。
「うああ……嫌だ、嫌だよぉ、真美ちゃん……」
私は半泣きでその場にしゃがみ込んだ。
「……今日はきっと真美ちゃん休みなんだ…」
そう言った。
そう信じた。
そういう事にしないと壊れてしまいそうだったから。
だけど生憎真美ちゃんは今まで学校を休んだことは3回しか無い。
今日に限って休みだなんて都合の良い話、ある分けなかった。
その現実がきつく胸を締め付ける。
「ううう……うううう〜〜っ」
涙がぼたぼた零れる。
「な……んで………戻っ、る…って……ゆった…言ったじゃん……」
嗚咽交じりにあの子を責めたてるような言葉を紡ぐ。
だけど分かってる。
私が一番悪いんだって。
「ごめんなさい……ごめんなさい……!」
胸が痛い。
はち切れそうだ。
「真美、ちゃん……」
「———沙希ちゃん?」
「ッ!!」
聞き慣れた声に振り向くと、驚いたような顔の真美ちゃんが立っていた。
制服姿で鞄を持った、いつもの真美ちゃんだ。
私は何か言おうとしたが、涙が溢れ出して声にならなかった。
「沙希ちゃん、どうしたの!?具合悪いの!?」
真美ちゃんが慌てて私に駆け寄る。
——ああ、真美ちゃんは優しいなあ。
私は泣きじゃくりながら真美ちゃんに抱きついた。
- Re: ニンゲン消去ボタン【一話完結間近】 ( No.19 )
- 日時: 2016/08/23 16:31
- 名前: 北風 (ID: cr2RWSVy)
私が落ち着くと、真美ちゃんはどうして座り込んで泣いていたのか訪ねてきた。
「え…っと…真美ちゃんがなかなか来なくて、心配だったからそれで…」
我ながら下手な言い訳だと呆れた。
真美ちゃんもきょとんとしている。
「あーー、それよりさ、真美ちゃんどうしてこんな遅くなったの?」
誤魔化したつもりだったが、随分とわざとらしい物言いになってしまった。
「……私が遅くなったのはただの寝坊だよ。……それより沙希ちゃん、さっきの理由絶対嘘でしょ。本当の理由教えて!」
やっぱりバレてた。
どうしよう……なんて誤魔化そう……。
私が黙っていると、真美ちゃんが私の肩にぽんと手を置いた。
「沙希ちゃん、本当の事を話して。私、どんな話でもちゃんと受け止めるから」
「真美、ちゃん……」
そうだ。
何を誤魔化そうとしてるんだ。
素直に話せば良いじゃないか。
いつもそうやって有耶無耶にしてきたから真美ちゃんともすれ違ってしまったんじゃないか。
私はひとつ深呼吸とすると、話し始めた。
「信じてもらえないかもだけどね——」
- Re: ニンゲン消去ボタン【一話完結間近】 ( No.20 )
- 日時: 2017/01/01 15:42
- 名前: 北風 (ID: 82QqnAtN)
それから私は語った。
私が真美ちゃんを嫌っていた事。
消えてしまえば良いとまで思っていた事。
不思議な女の子が不思議なボタンをくれた事。
それを使って真美ちゃんを消してしまった事。
それから学校で起きた事も、全部……。
「嘘みたいな事だけ、ど……ほ、本当なの……」
「…………」
「……ごめん……さ……許し……」
話し終わる頃には、安心感と罪悪感で心がいっぱいになり、上手く言葉を紡げなくなっていた。
私は真美ちゃんの服の袖を掴み、やっと一言吐き出した。
「嫌いに、ならないで……友達でいて……」
それだけ言うと、涙が一気に溢れだしてきた。
「ぅっ……ぅ……」
「…………」
真美ちゃんはしばらくの沈黙の後、私の手にそっと自分の手を重ねた。
「嫌いになんて、ならないよ。正直に言ってくれてありがとう」
「……!」
私はバッと顔をあげ、真美ちゃんを見つめた。
彼女は穏やかな表情で笑っている。
「ずっと、友達だよ」
「!……ぅう………あ……あぁ……っ……ああぁぁ……」
ほっとしたのに。
笑顔でお礼が言いたいのに。
謝りたいのに。
何故か涙は止まってくれなかった。
「咲希ちゃん」
歪んだ視界に、真美ちゃんの小指が差し出された。
「約束しよう。ずーっと友達でいようって」
「……うん」
多分私の顔は涙で凄いことになっているだろう。
でも、そんなの気にしない。
私は心からの笑顔を浮かべ、真美の指に自分の小指を絡めた。
こんな年になってまで指切りって。
ちょっと恥ずかしかったけど、それもやっぱり気にしない。
「私達、ずっと友達だよ」
「……うん」
真美ちゃんの言葉に頷く。
「高校に上がっても、大学生になっても、大人になっても」
「……うん」
嬉しい。
大罪を犯してしまった私を、真美ちゃんは許してくれた。
「私以外の友達は作っちゃダメだよ」
「うん」
友達だって言ってくれた。
「りーちゃん達とも話すのもダメね」
「うん」
そうだ……それが良い。
真美ちゃんと楽しく過ごせなかった時間を埋めるために、他の友達とは喋らないでいよう。
「私は咲希ちゃんだけの友達になるから、咲希ちゃんも私だけの友達になってね」
「うん」
そうだ、そうだよ。
真美ちゃん以外の友達なんて居なくて良いじゃん。
「…………約束だよ?絶対」
「うん!」
私は満面の笑みで頷いた。
《1話・完》
- Re: ニンゲン消去ボタン【一話完結】 ( No.21 )
- 日時: 2016/12/23 13:11
- 名前: プチシュークリーム (ID: IGUMQS4O)
- 参照: http://u0u1.net/A7oI
昔世にも奇妙な物語とかドラえもんで似たような話見たことある
なんか懐かしい感じになる
- Re: ニンゲン消去ボタン【一話完結】 ( No.22 )
- 日時: 2016/12/24 11:33
- 名前: 北風 (ID: cr2RWSVy)
感想ありがとうございます!
2話以降も呼んでいただければ幸いです。