ダーク・ファンタジー小説

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半死半生の冒険記
日時: 2020/04/11 10:06
名前: 星騎士 (ID: X1kgwzZ6)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12739

初めまして。
最近まで読み専だったんですが、
ちょっと書いてみたいなと思い、書くことにしました

目次は、ある程度コメントが増えたら作ろうかと思ってます
文章力はあんまり自信がありませんが、読んでくれたら嬉しいです。

たま〜に、コメントの最初の部分に作者の呟きがあることがあります
コメントや感想は全然書き込んでくれても構わないです!是非!
見返した時に誤字脱字などがあった時はすぐに修正しますので、気にせずにお読みください……

※残酷な表現を使う場合がありますので、苦手な方はご注意ください

1コメに登場人物を書いてありますので、「コイツ誰だっけ……」ってなったら読んでください

目次
人物紹介 >>1 イッキ見用>>0-

プロローグ >>2-4 屋敷編>>5-7 ローナとの出会い >>8-10
悪魔との契約 >>11-12 冒険者の街 >>13-15 冒険者ギルドとクエスト >>16-18
アロマラット >>19-21 魔術師シーナ >>22-23 盗まれた魔法剣 >>24-26
パーティ結成(二人 >>27 閑話 >>28-29 バルク山 >>30-31

Re: 半死半生の冒険記 ( No.23 )
日時: 2020/04/03 10:15
名前: 星騎士 (ID: X1kgwzZ6)

作者コント
シーナ「その腕って…」
アラン「君は知り過ぎた。消えてもらう。」
とはなりませんのでご安心ください。
後、閲覧数が200越えてました!ありがとうございます!

────────────────────
第16話「魔術師シーナ」


やばい、どうしよう。状況が状況だったから油断してた!うっかり悪魔の力を見せてしまった。
悪魔召喚って魔術師にとっての禁忌じゃなかったっけ……!?

とりあえず腕に集中していた魔力を戻し、腕を元通りの肌色にする。
急に腕が変わったことで、魔術師は再び驚いたように小さく声を上げた
僕は至って冷静で落ち着いた振る舞いで、何事もなかったかのように話しかける

「ん?僕の腕がどうかしたの?」
「えぇ……!?いや、さっきまで……」
「な、何が?それより、怪我はない?一応回復魔法は使えるけど。後、ワイルドピックの素材は貰ってもいいかな」
こうなったら押し切ろう。

「勢いで誤魔化そうとしてない?」

バレた。

「……よくわかんないな」
「でもさっき思いっきり見たんですけど」
「………気のせいじゃないカナ」

………





僕は今、姿を現した黒羊姿のくろ丸と一緒に土下座している。
いや、あいつは土下座を全力で嫌がったので土下座をしているのは僕だけだな。
だからくろ丸は土下座している僕の背中の上で寝転がっている。後でしばこう

「何でもするからこの事は黙っておいてくださいッ!!!」
「………」

これで断られたらもうどうすることもできない。
顔色を伺うようにゆっくりと顔を上げると、ローブのフードを取った魔術師がいた。

肩あたりまで伸ばした透き通るような水色の髪に、端整な顔立ち、紫のロープと対照的な白い肌と、
随分と可愛い女の子だった。
「わ、分かったから顔上げてって。」

魔術師は少し髪を指でイジりながら、横目で話してきた。
僕は背中に乗っていたくろ丸をはたき落としてゆっくりと立ち上がった

「………助けて貰っておいて、その人の秘密をバラすことなんてしないわよ。……よく分かんないけど、その腕ってバラされたら困るんでしょ?」
「うん。ありがとう」

良かった……、なんとか回避できたようだ。

「いや、お礼は私が言う方なんだけど……、まぁいいや、私はシーナ。まだまだ初心者だけど、Lv3の魔術師をやっているわ。あなたの名前と、……その羊さんは?」

どうやら、シーナはくろ丸のことが気になっていたらしい。
コイツにさん付けしなくていいっすよ。たぶんそういう意味じゃないけど。



「僕はアラ……アレンッ、Lv1の、一応短剣使いです」

いい加減、偽名も慣れないといつかバレるな……。
「で、こいつは……、えっと、……うーん。……ペット?」

結構力を入れてくろ丸が足を叩いてきた

『おい!いくらなんでもこの僕ちんをペット扱いとはいい度胸だな!初めての経験だ!』
しょ、しょうがないじゃん……!あのまま「契約した悪魔です」って言っちゃ駄目じゃん!

「なんか羊さん怒ってるみたいだけど……」
「お、お腹が空いているんだよきっと」

力を更に込めてきた。一発一発は痛くないけど、同じ箇所をずっとぺちぺちされてるので以外と痛い。
シーナは何故かジトっとした目で見てきたが、その視線を無視して先ほど倒したワイルドピックに近づいた。
皮を短剣できって、血抜きを始める

「素材は半々でいい?」
「い、いや、流石に取らないわよ。助けて貰っただけだし」

よし!金欠なので有難く頂こう。ワイルドピックの肉は料理としてもよく使われるので、ワロマラットより素材換金で貰えるお金は多いはずだ!
でも、流石に全部取るのは気が引けるな。

「本当にいらないの?」
「いらない!ていうか、別に倒せないわけじゃないのよ?今日はたまたま後ろから不意を疲れただけで」

後ろからって、ワイルドピックの突進ってかなりの威力なんだけど……

「大丈夫?」
「咄嗟に防御結界を張ったからかなり軽減したし、別にもうなんともないわよ」

なら良かった。
ただ、頭の中で一つの疑問が浮かんだ

「でも、シーナって魔術師なのに何でソロなの?」

魔術師なら僕と違ってどこも重宝されるので、適当に声をかければ入れてもらえる気はするが、何故ソロなのだろう。
魔術師はパーティに入って後方から攻撃魔法や支援をするのが普通だ。剣士と違って近接戦は苦手なので、ソロだと危険度も増す。
すると、シーナは困ったように苦笑いしながら話始めた

「あー………、ほら、私ってアレじゃん?美人さんじゃん?」
「だね」
「いや、そこはツッコみなさいよ……。魔法職の私は確かにどこでも入れたんだけど、……パーティからちやほやされるっていうか……」

なんだなんだぁ?5回立て続けに拒否された僕への当て付けかぁ?
贅沢な悩みだなー。と思ういつつ、言葉を飲み込んで黙って聞く

「魔術師としても大切にされたんだけど、皆私と接し方が違うっていうか……」

………?

「……過去に男性が2人女性が1人のパーティに入ったことがあって」


………あぁ、大体読めた

「そーゆーことね」

断ち切るように話を割った僕に対し、シーナはまた苦笑いをした
「早めに理解してくれて助かったわ。そーゆーこと」


あらかた作業が終わり、ワイルドピックの素材を整理しながら、
僕はシーナに向き合って言った。




「じゃあさ、僕とパーティ組まない?」

Re: 半死半生の冒険記 ( No.24 )
日時: 2020/04/03 18:03
名前: 星騎士 (ID: X1kgwzZ6)

第17話「失われた魔法剣」


「……話聞いてた?」
「聞いてた」

突然のパーティ勧誘に、目をぱちくりさせた。
勿論聞いてるし、大体理解した。

「つまりシーナが嫌なのは、自分の容姿のせいでパーティ内の人間関係が崩れるのが嫌なんだよね」

……これ、改めて言うと凄い内容だな。
シーナは戸惑ったように小さく頷く

「そう…だけど。……そもそも、あんたもソロでしょ?」
「うん、一人ぼっちです。でもパーティの結成に必要な人数は2人以上10人以下だよね」

つまり、2人だけでもパーティは結成できる。
実際に、2人だけのパーティで活動している有名な冒険者もいる。
後は、人気のない職業同士で組む場合も多く、別に珍しいわけじゃない。

「それに後一人、パーティに入ってくれそうな奴を知ってるんだ。」
「?」

今日知り合ったばっかなんだけど……。でも今日だけでアイツがどういう奴なのか分かったし、
信用するには時間が少ないけど、その時はその時だ。

「……で、どう?魔法職があるだけで戦いも大分楽になるし、是非来てほしいんだけど……」

シーナはしばらく腕を組んで悩んでいたが、急に吹き出したように笑い
僕が腕で持っていたくろ丸を抱き上げ、もふもふし始めた
『ん?何だ?』

「そーだねー………」


「考えとく。」




断られるより断然上出来だ。あの場で答えを出してもらうより、じっくり考えて入ってもらったほうがいい。
ギルド内の、素材換金窓口で、持ち帰ったアロマラット五匹の尻尾と他の素材を渡す。ワイルドピックもついでに渡す
ワイルドピックの素材を持ち帰るのに1時間かかったのは内緒だ……。
疲れた腕を適当にほぐしていると、入り口から先に帰っていたバーンが慌てたように駆けつけてきた
どうしたんだろう、かなり必死みたいだけど

「バーン、むっちゃ急いでるみたいだけどどうかしたの?」

「アレン!き、聞いてくれ!」

窓口のおじさんに素材分の金を受け取り、腰にかけてある皮袋にしまう
視線は変わらずバーンに向けたまま、話を聞く




「俺の魔法剣がなくなったんだ!」



………知ってたぁ

──────────────────────

冒険者ライセンスの更新した後、お腹が空いてたので屋台で休憩してた時、食べるのに夢中で奪われたのに気づかなかったらしい。
場所は屋台が立ち並ぶ屋台通りの、魚焼きの店でのことらしい。
確かに、あそこは休憩場所のすぐそばに路地裏があったので、恐らくそこで盗まれたんだろう。
魔法剣なんて貴重なものを持っておいて、どうしてそんな無防備なのだろうか……

「つか、何で奪われたの気づかなかったの?背中にかけているなら、流石に気づくと思うけど……」
「ずっとかけていたし、肩も痛かったから外してたんだ……!探すの手伝ってくれ!」

あ、そうだ。

「魔法剣見つかったらさ、僕のパーティに入ってくれない?」

ついでに勧誘しとこう。我ながら性格悪いなと思いつつ、これもパーティ結成のためだと割り切る
バーンは一瞬呆気に取られていたが、すぐに顔を取り戻した

「ああ!勿論だ!」

交渉決定だ。


さて……、
くろ丸ッ!魔力探知だッ!魔法剣には魔力が宿っているから、火属性の魔力を探すんだッ!


『……最初から僕ちんを頼る気マンマンじゃないか。しょうがない、パパっと終わらせて約束のオークの串焼きを早く僕ちんに奢るのだ!』
いえっさー!




魔法剣は、以外とすぐに見つかった。
長い路地裏の中央あたりの扉。薄汚れており、中からは下品な笑い声が聞こえてくる。
窓から見えるだけでも、20人以上は人がいる。しかも、どれもトレードマークのような、剣が二つ交わった背景の真ん中に大きく宝石が書いてある、特徴的な三角巾を着ている

明らかに彼らの物じゃない、豪華な装飾品や、高そうな武器や防具が色んな所に飾ってある。

「お、おいアレン。ここって……」


「……まるで盗賊のアジトだなぁ」
『逃避するな。見ての通り盗賊のアジトだ。』

よし、帰ろう。人数差は10倍以上だ。こんな奴ら相手に殴りこみなんて僕には到底できない。
……バーンには悪いけど、あの魔法剣は諦めてもうしかない。命と天秤にかけるなら断然命の方が重い

『こんな奴ら、僕ちん一人で……』

いや……!いくらなんでも無理だって!帰ろう!
オークの串焼き5本にしてやるから……!

僕は何も見なかったことにして、静かに裏路地を立ち去ろうとしたその時

「おいてめぇら、そこで何をしている」

裏路地の出口には、中に居た奴らと全く同じ服装の、ガラの悪そうな男が3人いた。

「ふぅぅぅーーーーー………」




詰んだ

Re: 半死半生の冒険記 ( No.25 )
日時: 2020/04/04 13:13
名前: 星騎士 (ID: X1kgwzZ6)

作者コメント「目次また更新しなきゃ……」
気づいてる人はいるかも知れませんが、目次を追加しました。
今のとこ毎日投稿!でも6日から学校だから更新ペース落ちるかもしんないです……!
後、目次と一緒に作者プロフィールも作ってみたので、是非!(隙あらば宣伝)

2000文字ぐらいで収めたかったんですが、色々と詰め込んで2500以上になってしまいました……
まぁでも、某小説サイトだと1話の平均文字数は4000〜5000って聞きますし!?大丈夫大丈夫!

(長くなって)すいません……。


第18話「盗賊団と聖騎士」



やばい、どうしよう。何も思いつかない
チラリと隣に視線を向けるが、バーンも固まったように口を空けたまま動かない

「……あ、う」


「おい、さっさと答えろ。何してんのか聞いてんだよ!」

黙り込んでいた僕たちに、恐らく盗賊の仲間であろう男はさらに怒鳴りつける
僕はいつでも戦闘に入れるよう、短剣に手をそえて抜刀の体勢に入る。

『やる気か?僕ちんはいつでもいけるぞ。』
いや、むしろ出ないほうが助かるかな……

『何だと!?』
違う違う。

確かに、くろ丸なら目の前の3人ぐらい倒せるだろう。……でも、そうなったら確実に仲間を呼ばれる。
さっき部屋の中を見ただけでも20人以上はいた。悪魔の力をこんな大勢の人がいるところでは使えない。
最悪、大通りまで抜ければ誰か異変に気づくだろうし、ここは頑張って逃げ切るしかない。

僕は、敵に気づかれないように隣だけに聞こえるような小声でバーンに話しかける

「……バーン、僕が抜刀したら全力で大通りまで突っ走れ。そんで、騎士団でも警備兵でも何でもいいから声をかけてきてくれ。」
「ふ、ふざけんな。……俺様に仲間を一人置いて逃げろっていうのかよ!」

焦ったように小声で声を荒げるバーンに対し、僕は冷静な声で諭す

「……逆に武器がないのにどうやって戦うんだよ。足止めぐらいなら5分……、いやごめん、やっぱ3分ぐらいならいけるからさ」
「……け、けどよ」

「なぁにコソコソ話してんだ!こっちの質問に答えないってことは………そういうことでいいよな?あぁ!?」

盗賊の一人が声を荒げ、腰にかけているカットラスのような短剣に触れる。
ったく、こういう奴らって決まって短気だよな………

「……10秒数える。バーンは先に逃げろ。そして助けを呼んできてくれ」
「……お、おい!」


「……10、9、8、7、」

腰から短剣を引き抜く、いつもの戦闘態勢に構える
それを見た盗賊3人は、笑みを浮かべて同じように抜刀する

「話が早くて助かるぜ」

「……6、5、……ごめんゼロ!走れ!」

盗賊がこちらに向かって短剣を構えて走ってくるので急いでカウントダウンを止める。
バーンは一瞬驚いた表情を見せたが、すぐに顔を引き締め、全力で盗賊と反対方向の出口に走っていった

走り出したバーンを見て、盗賊の一人……Bでいいや。左に居た盗賊Bが投げナイフのようなものをバーンの背中に向けて投げる
「逃がすかよ!」
「させるかよ!」

その投げナイフを持っていた短剣で弾く。丁度真上に弾いたのでついでにキャッチ

「これ要らないなら貰うよ、っと」

右に自分の持っていた短剣、左に受け取った投げナイフを構える
決めポーズみたにしているが、今のは我ながらカッコよくないだろうか。

………くろ丸と契約してから、反応速度と敏捷さも上がった気がするな
盗賊は怯むことなく、むしろイラついたようにギロりとこちらに視線を向ける

「カッコいいことしてくれるなぁオイッ!」

『ちゃんと前見ろ。』
「あ、っぶな!」

すぐそこに盗賊3人の走ってくる姿があった。
ギリギリまで迫っていた盗賊Aの縦に振り下ろされた短剣を咄嗟に弾く。

弾いた後、そのまま無防備な腹に向かって蹴りを入れる。
後ろに下がって距離を取ろうとするが、右にいた盗賊Cが同じ短剣で追撃をしてきたので、しゃがむように回避する。
反撃が怖かったのでそのまま転がるように背後に回り、距離を取る

転んでもタダでは起きてやんないぞ!

「そこ!」

背後に回った後、盗賊Bの足に下段蹴りを入れて転ばせる。
盗賊Bは倒れる時に頭打ったようで、頭を抑えてもだえている


アレ……?以外といける?


そのまま後ろにステップし、体勢を整えようとする、

順調に思えたその時、

「このクソガキッ!」
「うわぁっ!」

倒れていた盗賊Bは僕に向かって手を伸ばし、皮鎧のズボンを掴む。
受身を取れず、そのまま崩れるように横に倒れる

……あ、やっば

それをチャンスと見た右後ろにいた盗賊Cが容赦なく蹴りを入れる

「おらよッ!!」

「がふっ!?」

わき腹に激痛が走り、押し上げられた胃から嘔吐感が込み上げてくる
不味いッ!

ズンッ!

立ち上がろうと手に力を込めるが、その上から足が勢いよく踏みつけられる

「……う、ぁッ!」

踏みつけられた手が変な音立てる。激痛から力が入らない。
何とか目線を盗賊のほうに向ける。
盗賊Aと、倒れていた盗賊Bがゆっくりと起き上がり、近づいてくる
その後ろのアジトから、次々と仲間らしき人達が出てきている


……本気で、やばいかも。



真ん中の盗賊Aは体についた土埃を払うと、うつ伏せになって倒れる僕の背中に足を乗せる

「身なりからして冒険者。……Lv3か4ってとこか?ただのガキかと思えば以外と手こずらせやがってッ……」

盗賊Aは、手に持っているカットラスを倒れている僕の首元に添える。
鋭利な刃物を近づけられ、頭が危険信号を出している。

そのままカットラスを振り上げ、狙いを定めるように手を泳がしている
「まぁー、勉強になったろ?ベルクード盗賊団に逆らうとどうなるかってな!」



くろ丸の、怒ったような声が響く

『もう我慢できんッ!!出させてもら「──そこまでだ」』


そこに被せるように、よく響く声がした

『んぅ!?』


くろ丸は、出鼻をくじかれたよな、戸惑った声でうろたえた
痛みを堪えて顔を動かす。路地裏の暗さに慣れていた目が、急な光によって眩む

誰だ?

足を乗せていた盗賊も、警戒したように下がってじっと見ている
「誰だてめぇ!」

段々と光に慣れ、姿が見えてくる。
バーンが呼んでくれたのだろうか、随分と早い。
……後でお礼言わないとな……。


「こんな路地裏で少年に恫喝とは関心しないな」

凛とした、路地裏全体に響くような声がする
まず目に入ったのは黄金に輝く光を放つような髪と、綺麗な碧眼に整った顔立ち。
次に、すらりとした長身に存在感を放つ、真ん中に盾と剣の紋章青が入った騎士服のようなもの。

あれは……帝国騎士の紋章だったはずだ。子爵だった時に帝都にも何度か行ったから見かけている
でも、僕が見た帝国騎士より、大分服装が豪華なような……


「てめぇが誰だって聞いてんだよ!」

盗賊Aは痺れを切らしたように怒鳴る。
だが、後ろにいる盗賊のうちの、何人かは察したように顔を青くして黙り込んでいる


颯爽と現れた男は、顎に指を当ててゆっくりと言い放った



「そうだな……、聖騎士っていったら伝わるかな?」

Re: 半死半生の冒険記 ( No.26 )
日時: 2020/04/05 11:07
名前: 星騎士 (ID: X1kgwzZ6)

作者「ぼくにねぇみんぐせんすをもとめないでね」
明日から学校だぁ……


第19話「聖騎士レオニクス」




帝国には聖騎士隊という帝国騎士団を統べる最上位に位置する騎士隊がある。
『聖騎士』は、帝国騎士団の中で優れた騎士が実績や信頼を得て皇帝から授かる称号だ。
ある者は竜を殺し、ある者は数多の戦争で活躍し、ある者は武勇や名声により授かった
帝国の男性なら誰もが一度は憧れる騎士の中の騎士。

それが、聖騎士






「なっ……!?」
『何だこやつ!?』

盗賊Aは驚愕の表情を見せ、怖気ついたように一歩下がる
後ろの盗賊達から色んな声が聞こえてくる。
盗賊Aはすぐに振り向き、後ろの盗賊達に怒鳴りつけるように指示を出す

だが、その声も震えが滲んでいる

「……い、急いで伝達係に伝えてこい!緊急Bだッ!」

緊急Bとは、何かの作戦の名前だろうか。

盗賊団は、我先にと逃げる者や、テンパってワタワタと動き回っている者がいて、
統制もロクに取れていないようだ。何人かは何故か屋根に上って逃げようとしている。
ただ、聖騎士はそれ止める様子はなく、ただジッとアジト見つめている


すると、聖騎士の後ろから聞きなれた声がした

「──大丈夫からアレンっ!はぁ……はぁ……、後…おっさん……速すぎ……」

「バーン!大丈夫じゃないけど助かった!」

息を切らしたようにバーンは壁に手をつけながら、呼吸を整えている
そこで、バーンの魔法剣が盗まれていることを思い出す

「……あっ、バーン!魔法剣がまだアジトの中だ!」

「分かった!」

踏まれた右手を引き戻し、左手で立ち上がろうとする。
蹴られたわき腹から痛みが走り、再び倒れる
それを見たバーンが慌てたように寄ってくる

「だ、大丈夫かアレン!?」

「……おっと、すまない!まずは君の救助が先だったね……」


聖騎士は何かを呟くと、左手を僕に向かってかざした

「……?」

聖騎士の左手から緑色の光が放たれ、僕の体を包むように纏う
さっきまで感じていた痛みが緩くなっていき、体が暖かくなっていく

「……回復、魔法?」
「初級だけどね……。気休め程度だから、無理はしないほうがいい。」

初級にしては効果あり過ぎじゃないだろか……?
初級っていったらアレだぞ。かすり傷負った時に使うような魔法だぞ。

「後、バーン君だっけ。魔法剣は僕が取りに行って来るから君は待ってて」
「え、あ……」

聖騎士はそういうと、ゆっくりと部屋の中に入って行った

「……中にまだ人いるんじゃ」



バギンッ ドゴッ ガッシャアァンッ!
「……こ、こっちに」ガンッ ドンッ!
「ひっ」バキッ!「……く、くんなああぁぁ……」パリンッ!



『まぁまぁだな』

「………」

何か、大地震があった時の家みたいな音するんだけど……
中で何が起こっているのかを想像しながら、痛みも大分マシになったのでゆっくりと起き上がる

「……も、もう何もしない!本当だ!……」

ガッ……ドンッ

乱れた服を手で直していると、扉と一緒に盗賊の一人らしき男が吹っ飛んできた。
見事に気絶していているが、死んではなさそうだ。

はは……やっば。

バーンと目を合わせて苦笑いしていると、中から入っていった時と同じ足取りでゆっくりと聖騎士が出てきた
手には赤く、黄色の紋様が入った鞘に、宝石のついた柄がある剣

バーンの魔法剣だ。

「バーン君の探し物はこれかな?」
「おぉ!それだそれ!おっさんありがとな!」

「……おっさんって呼ばれるような歳でもないけどなぁ」

バーンは魔法剣を受け取ると、確かめるように素振りを始めた
聖騎士はバーンが素振り始めたのを見て、僕のほうに向き合った

何か、言わなくては。

「本当にありがとうございました!……えっと」

……名前なんだろう。
聖騎士なんて誰もが知ってるから名前さえ聞けば思い出すと思うのだが……

「レオニクス」
「え」

「レヴァイア・デューク・レオニクス。それが僕の名前」

「はあぁぁぁぁ!?」

素振りをしていたバーンが仰天したように反応する。

「あー、あれね。うんうん。」
……あらやだ。伝説の聖騎士隊の隊長さんじゃないですかぁ!
バーンさっき思いっきりおっさんとか言ってたけど死刑確定なんじゃないかな。

「と、とりあえず土下座……」

駄目だ。もう子爵じゃないけど、子爵だったとしても天と地の差があるようなお方だ。
……そう言えば僕、先に名乗らせちゃったんだけど……侮辱罪で死刑だろうか。
やだなぁ……。死にたくないなぁ……。

「んんー!?何で土下座!?いいっていいって!」

地面に手をついて頭を下げてきた僕に対し、レオニクスさんは慌てて体を起こしてくる
あぁ、イケメンって性格と比例しないと思ってたけど違うんだ……。

「さ、先に名乗らせてしまってすいません……。僕はアレンです」

「そんなことか……。別にいいよ!僕はそういうの気にしないから!」


あぁ、もう信者になるわ。
とりあえず素振りを再開したバーンの頭を引っぱたいてお辞儀させる

「バーンもお礼、言わないと」

「ん?……あぁ!おっさnべふっ!?……レオニクスさん、ありがとな!」

こ、こいつ……。途中で一回叩いたのに堂々とタメ口……。
レオニクスさんは、何故か小さく吹き出して笑った

「うんうん、元気だね。」
「はい……、馬鹿がすいません……。本当にありがとうございました」
「馬鹿って誰だ!」
「お前だよ」

「じゃあ、僕は戻るからまたどっかで会おう。それと、もう路地裏とか、危険な所に行っちゃ駄目だよ?じゃあね」
「はい!気をつけます」


路地裏を抜けて大通りに出る。レオニクスさんはまだ調べることがあるそうで、もうしばらく残るそうだ。、
やっぱり大勢の人がいるので所々から声がするな……。
後ろからバーンが背中を叩いて肩を組んできたので、とりあえず受け止めて一緒に歩く。
まだお昼過ぎだが、今日はもう疲れたし、適当にブラブラ歩くのもアリかな……


『どうでもいいが早く僕ちんにオークの串焼きを奢るのだ!はーやーく!』

居たんだ。

『!?』

Re: 半死半生の冒険記 ( No.27 )
日時: 2020/04/07 10:09
名前: 星騎士 (ID: X1kgwzZ6)

作者コメント「昨日更新サボってすいませんでしたあああぁぁぁ」
リアルでちょっと色々ありまして……。週末は2回投稿するつもりなんでゆるちて……
レオニクスこと、レオさんは後で人物紹介に増やしておきます。


第20話「パーティ結成」



この街に来てから3日目。
まだ3日しか経ってないとも言えるが、いかんせん内容が濃すぎて1週間に感じる今日この頃。
アロマラットのクエストを達成した後、ロクに受付人と話しもせずにバーンの魔法剣を探しに行ったので怒られてしまった。

相変わらず行列のできている隣の受付に苦笑いし、別にいないわけでもないけどやっぱり人が少ないジェラルドさんの列に並ぶ。
冒険者ライセンスを更新し、右上にある数字が変わっていることに気づいた

「Lv……2。」

なんか、パっと変わったから実感ないな……
けど、これで赤クエストボード、言っちゃえばもっと危険なクエストに挑むことができる。
冒険者ライセンスをボーッと見つめている横で、バーンもLvが上がったとはしゃいでいる。

「本当は昨日のうちに伝えたかったんだけどな……。まぁ、おめでとさん」

受付人のジェラルドさんが困ったように苦笑いしながら小さく拍手してくれた。
「これでLv2だ。今までは緑のボード、雑用や一般人でもできるような討伐クエストしか受けれなかったが、Lv2以降は赤の赤ボード、言えば本格的な討伐や採取、指名依頼なども受けれるようになった。簡単に言ったが、わからないことがあったら聞きに来い。」
「はい!頑張ります!」

隣ではしゃいでいたバーンが、興奮したように声を上げながら肩を組んでくる

「アラン!早速赤いクエストボードから何か行こうぜ!」

僕も今すぐに行きたい所だが、まだ大事なことが終わってない。
「の前に、ジェラルドさん、パーティの結成をしたいんですけど……」
「ああ、パーティね。おーけー、ちょっと待ってろ。」




「この石版は?」

ジェラルドさんが奥に行って持って来たものは、ライセンスを更新する時に使う石版に似たような物だった。

「ここにパーティに入る人の指紋を読み込んで、パーティ名を中央の四角いところに書くんだ。」

相変わらず仕組みがよく分からないけど、ここはそういう物だと飲み込む。

「パーティ名、か……。」

ぶっちゃけ何でもいい。

……そもそも、パーティ名というのはある程度実績や信頼を得て周りに認知される。
パーティ結成の際にどのパーティもパーティ名は決めるのだが、Bランク以上になってから覚えられることが多く、
そのため、あまり成長の見込みがないCランクのパーティ名など誰にも認知されない。(だからパーティ名だけ派手なCランクパーティなど良くある)
重要ってわけではないが、適当につけたらそれはそれで呼ばれる時に困る……

どうでもいいわけではないが、それっぽい、カッコいいパーティ名にしたいな……
バーンがたくさん閃いたらしいので、とりあえず聞くとする

双炎ツインフレイム!」
「却下。カッコいいけど、別にこの先も二人だけってわけじゃないだろうし……流石に」

炎獄ヘルフレイム!」
「僕の要素皆無なんだけど。」

「炎剣と短剣!」
「だっさ」

駄目だコイツ。
そういう僕も何一つ考えていないのだけど。なんかこう、イタいパーティ名は後々後悔しそうだしなぁ。

うーん、どうしたものか。
こういうのって、以外と簡単なものでもいい気はするけどな……

龍……火炎……花…剣……白……うーん、何か違う。

イタすぎず、単純すぎず……
と考えていると、ジェラルドさんが珍しく呆けたような声を出した

「あ」

振り返ると、何やらバーンが石版に向かって書き込んでいる。
突如、機械的な声が石版から聞こえた

『Cランクパーティ名「超炎魔焔絶剣」を新たに登録します。──登録完了しました。』


────はぁ!?


「よぉしっ」


ガッツポーズを決めたバーンの頭に思いっきりチョップし、両頬をつねる
ジェラルドさんは何故かお腹を押さえて肩を震わせている。何故だろう。

「よし、じゃない」
「は、はひふんだほ!」

「何すんだよ、じゃないよ!僕のセリフだよ!」

まず超炎魔焔絶剣って何……。意味わかんないし語呂が悪すぎる……。

「はっほいいはん!」
「かっこよくない!5年後とかに絶対後悔するタイプの名前だよこれ!」

さっきからずっと笑っているジェラルドさんに、睨むように質問する

「ジェ、ジェラルドさん。これって変更できないんですか……?」
「……すまーん!」

「あ、ちょ!?奥に逃げんなー!」


………その後、何度も石版をイジったが、変更はできなかった。

こうして2人組のCランクパーティ「超炎魔焔絶剣」は新たに誕生した


────────────────
作者コメント「超炎魔焔絶剣ッッッ!それはッ!特に意味はないッッッ!」


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