ダーク・ファンタジー小説

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半死半生の冒険記
日時: 2020/04/11 10:06
名前: 星騎士 (ID: X1kgwzZ6)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12739

初めまして。
最近まで読み専だったんですが、
ちょっと書いてみたいなと思い、書くことにしました

目次は、ある程度コメントが増えたら作ろうかと思ってます
文章力はあんまり自信がありませんが、読んでくれたら嬉しいです。

たま〜に、コメントの最初の部分に作者の呟きがあることがあります
コメントや感想は全然書き込んでくれても構わないです!是非!
見返した時に誤字脱字などがあった時はすぐに修正しますので、気にせずにお読みください……

※残酷な表現を使う場合がありますので、苦手な方はご注意ください

1コメに登場人物を書いてありますので、「コイツ誰だっけ……」ってなったら読んでください

目次
人物紹介 >>1 イッキ見用>>0-

プロローグ >>2-4 屋敷編>>5-7 ローナとの出会い >>8-10
悪魔との契約 >>11-12 冒険者の街 >>13-15 冒険者ギルドとクエスト >>16-18
アロマラット >>19-21 魔術師シーナ >>22-23 盗まれた魔法剣 >>24-26
パーティ結成(二人 >>27 閑話 >>28-29 バルク山 >>30-31

Re: 半死半生の冒険記 ( No.13 )
日時: 2020/03/28 18:57
名前: 星騎士 (ID: X1kgwzZ6)

作者コメント「主人公の設定の肉付けだけに10コメ費やしたってマジ?」

────────────
第7話「旅立ち、そして到着」


本人曰く上級悪魔らしいくろ丸と契約を交わし、とりあえず着替える。
朝食を食べ終わってソファーでだらけているローナさんに向き合う。

「ローナさん、僕はこの森の奥の町に行こうと思う」

「お、巣立ちかい?この先の町って言ったら結構長い間歩かなきゃけないけど、冒険者の町だよね?」
「は、はい」

巣立ちって……。

……ローナさんには本当にお世話になった。
彼女が居なければ、僕は未練たらたらのまま死んでいただろう。

「感謝してもしきれないです……本当に……。」
「ははは、おーげさだね。」

大袈裟じゃないし、命を救ってもらって何もしないとなると、自分を責めるぐらいしかできなくなる。
……せめて、何かできないだろうか。

「いや、大袈裟でも何でもありません。僕にできることなら何でもしますよ!」



「……そうだね。じゃあ、常闇の魔女は美女で優しくて天使!って町に行ったら広めて信者増やしといて。」
そんなことでいいのなら
「分かりましたッ!!」

元気よく返事をすると、ローナさんはソファーから転がり落ちて慌てたように否定してきた

「あぁー!嘘嘘!何もしなくていいから!」
「へ?そうですか……?……いや!やっぱり何かさせてください!」

こればかりは譲れない。

「う、うーん……。本当にいいんだけどなぁ……。じゃあ、町に行った時に美味しい食べ物でも奢ってよ」
「分かりました!いくらでも!……ん?………えっと、行くんですか」

「うん。週に何回か必要なものを買いにいってるよ。」

え、じゃあこのさよなら会みたいなのは必要なのだろうか。
結構頻度高いし。

「あ、そ、そうなんですか……。」

「後、会った時にくろ丸ちゃんをモフモフさせること!」
「いいですよ。」

別にそれはいいかな……と返事した途端、頭の奥から声が響いた

『おい』

「うわっ!」

このちょっと高い子供の声みたいな声は昨日聞いた、くろ丸……?
突然驚いたような反応をした僕を見て、ローナさんが不思議そうに見てくる

「??どうしたの?」

「あ、いや。何か変な声がした気がして……」


『変な声とは何だ。この偉大なる僕ちんに失礼だぞ!』

気のせいじゃなかった……

「頭の中にくろ丸の声が響いているんです……」

「……あぁ、なるほどね。知能の高い魔物との契約にはよくある契約内容だよ。」
「?」
「心の中で会話ができるってこと。」

「……これってずっと続いたり?」

それは、ちょっとやかましいな。
だが、僕の答えとは裏腹にローナさんは賛成の意見だった。

「いや、むしろ便利なんだって。悪魔と契約してるのがバレたら大変なことになるし、声が漏れないっていうのは相当便利なんだよ?」
『ふふん!軟弱な人間に少し気を使ってやったのだ!有難く思え!』

確かに、そう考えると普通に助かるな。
実物でコミュニケーションが取れない分、ウザさがちょっと増したが……

『何だとぉ!』


一人の時も騒がしくなりそうだ


──────────────────

ローナさんの家の庭にて、もう出発しようとしていた。

「さぁ少年!今から行くのは血気盛んな野郎共がわんさかいる冒険者の町!覚悟はいいかー!」

「大丈夫です。」

慌しかったせいで全く触れていなかったが、今僕が着ている服は冒険者っぽい大事な部分はがっちりと守られた服なのだ。
大銀貨もナイフもあるから、街に着いてもしばらくは寝泊りできる。

「お、準備がいいね。何もなかったらある程度渡すつもりだったんだけど」
「大丈夫です。」

ちょっと甘やかしすぎではないだろうか……
この森には魔物はいないし、大きな草原まで半日ぐらいで着く。
冒険者の町はそこからそう遠くはないので、日が沈む頃には着いている予定だ。

今から行っても早歩きで行けば予定通り着けるはずだ。
余分なものは持ってきておらず、腰に大銀貨が5枚入った皮袋と、貴族の護身用のナイフがかけられている。
くろ丸と契約した時に侵食された腕が十分に武器として使えてしまうので、ナイフの出番が来ることはほぼ無いだろう……
この腕、本当に硬い。激痛を覚悟で目を瞑りながら岩を叩いてみたが、全く痛みを感じなかった。さらに鋭利だ。それでいて任意で元に戻せるので本当に強い。

自分の腕をぐーぱーしながら魔力を込める。腕は一瞬にして黒く染まり、純粋な武器へと変わった
それを見たローナさんが、興味深そうに触ってきた。

「お、使いこなしているねぇ」
「いや、まだまだ分からないことだらけです。でも町に行った時の頼りにすると思います」

今の僕なら、冒険者の町に行っても通用するのではないだろうか。腕を元に戻し、今度は強く握る

それを見たローナさんが満足そうに頷き、




「じゃ、転移するね」

「え」


──視界が、暗転した

Re: 半死半生の冒険記 ( No.14 )
日時: 2020/03/28 21:51
名前: 星騎士 (ID: X1kgwzZ6)

第8話「冒険者の街バルトライン」


目の前の木に隠れるように表示された魔法陣。周りは所々木があるのどかな草原
目を凝らさなくても見えるぐらいには近い町。

「??ここって……?」
「とうちゃーく!」

僕が状況が飲み込めない中、ローナさんは隣で元気に両手を挙げて背伸びしていた
さっきとは打って変わって周りが明るくなったが……、昔何度か見たことある風景だ

「まさか、これって………、転移魔法?」
「いえす!昔は飛んでたんだけど、いちいち来るの面倒くさいから結構前に魔法陣を木に貼り付けたの。」

おかしいな、転移魔法なんて童話でしか聞いたことがないんだが……
……………もう何も言うまい。
当然、予定より無茶苦茶早く、まだお昼にもなっていない。
けど常闇の魔女ってだけで説明がついてしまうの不思議。


「じゃ、私は先にいつもの店に行ってるから、後は自分の足で頑張りたまえ!」
「あ、はい。」

ローナさんが当たり前のように跳んで行ったのはもう触れないことにして、
この距離じゃ、町まで十分とかからないだろう。本当に速い………。

文字通り飛んで行ったローナさんを目で追いながら、僕は達観した顔で呟いた
「剣士やめて魔法使いなろうかな……」

……いや、いくらなんでもアレは無理だ。一生修行しても同じレベルにはなれないだろう。
ゆっくりと広大な草原を歩き始め、さっきから静かなくろ丸に話しかける

「ねぇくろ丸。綺麗な草原だね……」
『僕ちんは眠いから話かけるでない……』


ぐすん、一人だ。
……ってか、悪魔って睡眠必要なのか。




バルドラインは冒険者の町と言われるだけあって、冒険者に非常に人気が高い。
他の町にはないダンジョンも大きな資源となっており、観光としても人気で、その賑わいは王都にも負けず劣らずだ。
そんな常に旅人や観光客が詰め寄る町で、僕は一人、入り口で困っていた

「あー、次の人が待ってるから早く通行許可書と身分証明となるものを見せてくれ」
「……え、あ、っと……」

恐らく門番なのだろう鉄のかぶとを着た鎧姿の男性が、面倒くさそうに頭をかきながら言った
やばい。何それ聞いてない。後ろに並んでる人の視線が痛い……。



「すいません……持ってないです。」


──────────────

貴族の時は、子爵ってだけで二つ返事で入れたのでまず通行許可書という存在自体知らなかった
無い場合は別の部屋で手続きを行い、大銀貨2枚を払って発行するらしい。

「はいよ、これが通行許可書だ。くれぐれも失くすなよ?」


勿論手続きを余儀なくされた僕は大銀貨を2枚払った。これで3日分の飯代は飛んだ


「……………はい。」

ん?待て、身分証明には手続きは要らないのか?
次に同じようなことが起きればたまったもんじゃない

「あの、身分証明とかって、手続き要らないんですか?」

「あのな……、わざわざ金を払いたいのか?お前さん、見た目からして冒険者になりに来たんだろ?ギルドで冒険者として登録するならそれが身分証明になるし、最初の登録に金はかからない。それがこの町の条例だ。」
「あ、そうなんですか!?」

「……知らないかったのか?」

そ、そんな呆れたような顔をせんでも……。いや、今のは僕が馬鹿だったな……。



「ありがとうございました」

お礼を言ってから部屋を出る。
……さて、残りの大銀貨は3枚。大切に使わないと……。


こうして、色々とあったがやっと街に入ることができた

Re: 半死半生の冒険記 ( No.15 )
日時: 2020/03/29 10:22
名前: 星騎士 (ID: X1kgwzZ6)

第8話「くろ丸の姿」


冒険者の街、バルドラインは都市と見間違われるぐらいには発展している。
ダンジョンに入って一攫千金を狙うものや、ここで商人として大成を目指す者も大勢いる。

色々なお店が立ち並ぶ大通りで、想像以上の人通りに困惑している。
店の前で大きな声で宣伝している人や、真昼間から飲み暮れているおっさん達の声が常に響く。

「……どうしよっかな」

『おい、先に冒険者ギルドとやらに行けなきゃいけないんじゃないのか。』

うわっ!急に声だすなよ……。
あ、でもそうだったな。でも僕道知らないよ?

『僕ちんも知らない』

詰んだかも。


ずっと通りの真ん中で立ち止まっていたからなのか、後ろからおばさんに声をかけられた
「そこの坊や!美味しいオークの串焼きでもどうだい!」

「!?え、あ……」

恐らく目の前の屋台を経営してるおばさんだろう。
おばさんの声とは思えないもの凄く大きな声で宣伝してきたので耳が痛い。
耳を押さえながら首を振る

「だ、大丈夫です」
「そんな細い体で何言ってんだい!もう一本つけるから買いなって!」
『僕ちんも欲しいぞ』


…………お前どうやって食うの?

─────────────

結局4本買い、屋台についてあった長椅子を借りている
隣には黒い髪の美少年が元気に串焼きを頬張っている

「うまいぞ!」
「嬉しいこと言ってくれるねぇ!もう一本あげちゃうよ!」

くろ丸である。
待ってろと聞いた時は「悪魔が堂々と出ちゃ不味いだろ!」と焦ったが、
今は僕の隣からボンッと煙を出して現れた謎の美少年に困惑している

串焼きを黙々と食べながらもう一本お代わりしたくろ丸をチラチラと見る

角もないし、あのシンプル過ぎる羊の顔からは考えられない綺麗な美形である。
服は僕と似たような戦闘用の服に布の部分を増して悪魔っぽいダークな装飾品をつけたような服で、正直カッコいい。

最初出てきた時は誰だよってなったが、開口一番に「僕ちんにも寄越せ!」と串焼きを素早く奪ってきたのですぐ分かった

「よ、よし、そろそろギルドに行こうよ!おばさん、はい!」

くろ丸の腕を引っ張りながら残り3枚となった大銀貨を1枚渡す。
お釣りの銀貨を6枚受け取り、席を立つ。

「毎度あり!」

早歩きでその場を離れようとしたが、そこで、冒険者ギルドの場所を知らないこと思い出す
「あ、おばさん!冒険者ギルドってどこにあるか知ってますか?」

屋台に戻って再びオークの肉を焼いていたおばさんに聞く

「なんだい、あんたこの街に来るの初めてだったのかい。冒険者ギルドはこの大通りを真っ直ぐ行ったら噴水広場があるから、そこを右に曲がってずっと進むとあるよ!」

よし!ナイス僕!
屋台のおばさんに手を振りながら向こうにある噴水へと歩く。



大通りは人が多い。隣に美少年がいたらそりゃ、目を引くわけで……
噴水広場を曲がり、ギルドまでもう少しの道の途中で、おまけで貰った串焼きをまだ食べているくろ丸に質問をする

「……その姿って何?驚いたけど。」
「……むぐ、うん!これはな、仮初の姿の一つ、むぐ……、だ!」

「へ、へぇー……」

何だそれ。超羨ましい。
………いや、仮にも貴族の血が流れている僕も普通の人より顔は整っている、……はず。


「はぁー。もう何でもありだな……」

「ふ、どうだ?僕ちんの凄さにようやく気づいたか?何ならドラゴンにもなれるぞ?」
「やめろ」

ドヤ顔で街を恐怖に貶めようとするくろ丸の頭にチョップする

「いた!この僕ちんに何するのだ!」

「串焼きの分はしっかり働いてもらうからなー」
「あれは美味かったぞ!」

感想聞いてるんじゃないぞ……。
上級悪魔ならもうちょっとちゃんとして欲しい所だが、今は残念な姿しか見ていないので株はどんどん下がっている

「あれが冒険者ギルド、かな。」

くろ丸と話していたうちに見えてきた冒険者ギルドは、想像以上に大きかった。
2階建ての古そうな木造建築で、横幅だけでも家が丸ごと3つぐらい建てれそうな距離がある。

近くまで来ると、僕が大きなギルドの外観を見上げている隣で、くろ丸は目を擦りながら姿を消した

「では、僕ちんは寝るとしよう。」

こ、こいつ……っ
……食っちゃね生活の気分はどうですか。

『最高だな!』

そうかい。


大銀貨も残り2枚だし、急いで登録して何か仕事しないと明日にはお金が無くなりそうだ。

Re: 半死半生の冒険記 ( No.16 )
日時: 2020/03/29 22:25
名前: 星騎士 (ID: X1kgwzZ6)

作者コメント「やっと登場人物が増えるよ!今まで何してたんだろう!」
※1コメの人物設定にくろ丸を増やしました

   ──────────────────────

第9話「冒険者登録」


冒険者ギルドは一階で大体の窓口が揃っている。
無数の紙が張られたクエストボード、よく分からないランキング表みたいなのももある
仕事から帰ってきた冒険者が酒を飲むため、大きなテーブルもいくつかある。
クエストを受けるための窓口は2つあり、素材換金や魔石換金も別々に1つずつある。
受付人は男女一人ずつで行っているが、隣が美人な受付人なので依頼を受ける人がそこばかりに集まっている。

「うわ、凄い行列だな……」

明るいブラウンの髪に、ぱっちりとした青い目で、緑色の受付の制服を着ている。
肩は肌が出るようになっていて、そこから見える綺麗な白い肌が色っぽいが、恐らく20代ぐらいの女性だろう。
当然人気だ。あれ何人並んでんだろう……。ギルドは相当広いのでまだ余裕はあるが、ざっと見ただけでも20人ぐらい並んでるぞ……。

「絶対時間かかるよな……」

見なかったことにして隣の受付に並ぶ。受付人は男だったが、
隣の行列を見て同じことを考えた人達がここに並んでいる。並んでいるのは2人だけなのでさっきとは偉い違いだ。

「うわ、さらに並んでる人が増えた」

あの行列を知っておきながら新たに列に加わった人に軽く引きながら順番を待っていると、
前の方から何やら揉めたような声が聞こえてきた

「ここはお前みたいな小せぇガキ来るとこじゃねぇんだよ!」

「ガキじゃねぇし!冒険者ライセンスが銅色ってことはおっさんはレベル3か4程度だろ!でかい口叩く余裕あんのかよ!」

一人は、酒でも飲んだのか、顔を赤くした皮鎧のおっさん冒険者と、
もう一人は燃えるような赤い眼をした赤い髪の少年だ。凄いなアレ、服も真っ赤だ。
おっさん冒険者は口を大き開いて怒鳴っていたが、赤い少年はそれに怯むことなく返した

周りに居た冒険者は止めるような様子はなく、むしろ興味深そうに二人を眺めていた
え、止めないの……?

赤い少年に口答えされたのが気に障ったのか、おっさん冒険者はさらに顔を赤くして怒鳴りつけた
「何だと!?冒険者がどれだけ危険な仕事かも知らないクソガキに何が分かる!」

相当お怒りの様子のおっさん冒険者は拳を握っており、今にも殴りかかりそうだ。
野次馬が小声で「面白そうだぜ!」と煽るようになり、どんどんとヒートアップしていく。
近くの受付人は「早く終わんないかな……」と言った感じでどこかを見ている。


「そこまでだ。」

両者がいつ殴りかかってもおかしくない状況の中、前に居た男性の受付人が静かに割って入った
「ギルド内での喧嘩沙汰は罰則があるって知ってるのか?つか、おっさんはそれくらい知ってるよな?お酒飲んでるとか理由になんないからな。これ以上騒ぎを起こすのなら俺も上に報告する必要ありそうだな……」

ピタっと止まったように動きを止め、赤い少年もおっさんも、顔を青くして頷いた



……………



「………となります。はい次の人ー」

何事も無かったように受付が再開し、ギルド内の空気も元に戻った。
おっさんはバツが悪そう舌打ちして出て行った。

すぐに順番が回ってきて、僕の番となった。

「あの、さっきの凄かったですね。」

「何、いつものことだぞ。あんなんいちいち気にしてたらキリが無いし、坊主も早くここに慣れたいなら無視すればいいぞ」

受付の人は特に威張ることなく普通のことのように言った
まぁ、そうなんだろうけど……。

「で、何しに?」

「あ、冒険者登録したいんですけど」

冒険者になるだけでもそのライセンスが身分証明になるのでかなり有難い。しかも無料だったはずだ。

「ん?……ああ、登録な。ちょっと待っといてくれ」

受付人は一旦奥の方に向かうと、登録の手続きであろう書類を持ってきた
荒くれ者が多いギルドの中ではかなりの常識人だな……。

「名前と、書ける所まででいいから下の項目を書いてくれ。書き終わったら判子の枠の右に血を一適垂らしてくれ。」

う、血が必要なのか……。
下の項目は、使う武器や出身地などがあった。

差し出されたペンで早速書く。


名前は、どうしようか
仮にも子爵家から家出して来た身だ。流石にそのまんま名前を書くのは不味いな。

うーん……。



アレンでいいや。

───────────────

「ほい、これがライセンスだ。その冒険者ライセンスは初回登録は無料だが、なくした時は大銀貨3枚払って貰うからな。」


そんなに高いのか。ちょっと分厚い鉄の板にしか見えないが、受付人が言うには魔法陣が組み込まれているらしい。
その後、受付人からギルドについてあれこれ説明され、無事に登録が完了した。

差し出された銅のライセンスには、右上に自分の顔があり、
その左に名前や情報が簡単に乗っており、その下にはLv1と表示されている。

「ありがとうございます。それで、早速クエストを受けたいんですが……」

正直もう金がない。食っちゃねをしている悪魔のせいで食費がかさむのだ。
少し驚いた様子の受付人は、二つあるクエストボードのうち、緑色の方を指して答える

「お、そうか。なら緑のクエストボードから受けたいクエストの紙を持ってきてくれ。」

緑?さっきちらっと見たが、採取やお手伝いクエストが主なクエストだった気がする。
その隣にある赤色の討伐クエストじゃ駄目なのだろうか

「赤は駄目なんですか?」
「駄目だ。赤はレベルが3以上じゃないと受注できない。……あぁ、まずレベルについても説明しないとな。」

そう言えばさっきも耳にしたな、レベル。



「えーっとな、レベルというのは……」


ギルドが定めた、個人の強さや戦績を評価し、数字で表したものらしい。
レベルに応じて難易度の高いクエストを受けれるようになり、逆にレベルが低いと雑用みたいなクエストしか受注できない。

一般的にはLv1〜3までが初心者で、ライセンスは銅。中堅と呼ばれるLv4〜5は銀。Lv6〜7は金。
Lv8以上となると、国から紋章が貰えるらしい。

Lv3〜5の冒険者が全体の割合の中でも最も多く、6〜8は本当に一握りだそうだ。
Lv9〜10はもはや童話に出てくるレベルで、ギルドの長い歴史の中でも2人だけらしい。

Lv6〜7まで来ると立派な上級者と呼ばれ、かなり有名になる。
Lv8の冒険者は英雄扱いで、冒険者の街と呼ばれるバルトラインでも3人のみだ。

Lvは、クエストをこなしに時はライセンスに記録されるため、こなしたクエストが一定の成績になると上がるらしい。
その審査を行うのも当然ギルドで、同じLvの難易度のクエストをやっても上がらず、Lvを手っ取り早く上げるには自分のLvと同等のクエストを繰り返すか、もしくは以上の危険なクエストこなさなければいけない。

「……と、まぁ簡単に言えばこんなもんだ。」
「細かく説明してくださって有難うございます……」

すると、受付人は少し呆れたような視線を隣の行列に向けた

「いいってことよ。……隣があんだけ人気じゃ、暇な時が多いし。」
「た、大変ですね。」
「むしろ暇だ」
「は、はは……」

確かに、見向きもしないもんな……

「そういえば、お名前は何て言うんですか?」
「エルマだよ。」

ん?女性の名前?
あ、隣の受付嬢の名前か。

「違います。あなたの名前です」
「あぁ俺?ジェラルドだよ。」

ジェラルドさんか。よし!お世話になりそうだから覚えておこう。
普通にいい人だし、この人相手なら面倒事も少ないだろう

「後から名乗ってしまいすいません……。僕はアラ……アレンです。」
「おう、よろしく」


無事に登録が終わった……!しかも常識人ゲット!

真新しいライセンスを見ると、冒険者になった実感が湧いてくる
よし!まずは雑用クエストだ!

Re: 半死半生の冒険記 ( No.17 )
日時: 2020/03/30 09:02
名前: 星騎士 (ID: X1kgwzZ6)

作者コメント「勉強……しなきゃ……」
あと、簡単にお金について話すと、
銅貨が十円で、銀貨が百円、大銀貨が千円、金貨が一万円、大金貨が10万円、白銀貨が100万円って感じです。
ありきたりな単位ですいません………
現実では国ごとにお金の単位は変わる物ですが、異世界では世界共通の通貨としています

────────────────


第10話「お手伝いクエスト」



「はい、これが掃除用具ね。この廊下と、階段、あと窓全部拭いたらまた声かけてね」
「はい!」


渡されたのは使い古したボロ雑巾を5枚と、水の入ったバケツと頭にかけるナフキン

そう、お手伝い(ざつよう)クエストである。

クエストを受注して来たのが、もうずっと前からあるらしい老舗の宿屋。
部屋6つをまたぐ長い廊下は、これ全部拭くのか……と思うと見るだけでやる気が失せる
女将さんであろうおばちゃんは「じゃあ頑張ってね〜」と言うと、手を振りながら消えていった

「はぁ……」

階段も結構な高さあるぞ……窓も多いし、いつ終わるんだこれ………
これでいてクエスト報酬金が大銀貨1枚である。ゲロ不味クエストだ。
Lv1だとこれくらいのクエストしか受注できないので、我慢するしかない。
できるだけ早くレベルを上げようと近い、

ため息を吐きながら雑巾を絞って廊下を拭き始めた


……………


一体どれくらいの時間を拭き続けただろうか

「腰いったぁ………」

床を拭くので、屈む必要があるのだ。その体勢でずっと作業を続けているので腰への負荷が半端じゃない
でももう少しで廊下は終わる………ッ!階段はもう少し楽な姿勢でできるはずだ!窓はもっと楽な姿勢のはずだ!



違った。階段も体勢キツいわ。
さっきと同じようにしゃがんで拭くと危険なので、一段一段拭くのに最適なのが膝を折って拭く姿勢なのだが、
膝が痛い。

「はぁ、はぁ、これ……、重労働って言ってもおかしくはないぞ……」

定期的に膝を休めるために座っているが、疲れがどんどん溜まっていく。


窓は楽だったが、他の二つの作業の疲れが溜まっていたのであまり違いを感じなかった




「女将さん……おわ、り、ました………」

雑巾を洗って伸ばし、綺麗にたたんだ状態で渡す
おばさんは「礼儀正しいわねぇ〜」と嬉しそうに頷くと、

「よし、2階も終わった時に報酬渡すけど、特別に晩飯もつけてやる!」


「え」

死刑を言い渡された囚人のように、呆然とした


───────────────────



お手伝いクエストは、色々な種類がある。迷子の子猫探しや、荷物運び、今日みたいな掃除の依頼
疲労いっぱいの顔を水を貰って綺麗なタオルで洗い、ピッカピカになった廊下で倒れるように寝転がる

「二度と、しない」


頭の中に呑気な寝言が響く

『むにゃ……むにゃ……や、僕ちんはもうお腹いっぱいなのだ……やめ……ふへへ……』


ぷちん



いつまで寝てんだこの食っちゃね悪魔ぁ!!


『!?!!何だ何だ何なのだ!?』

強制的に呼び出し、寝ぼけた頬を強くひっぱる



──あれ、今どうやって呼び出した?


……まぁいいや、今それよりこのぐうたら悪魔の躾が先だ。
『や、やへろ!はひふるほだ!?』


─────────────

「お疲れさん!たんとお食べ!」
「ありがとうございます。」

夕暮れも過ぎ、辺りも暗くなってきたところで約束通り晩飯を頂いていた。
宿の飯ってだけあって、ボリュームもあっていつもより大分豪華に感じる。


これが、仕事をするってことなのか………!


今日の頑張った自分を思い返し、一口一口味わって食べる。
やばい、泣きそう

「美味しいです……!」
「ピッカピカにしてくれたからね!おかわりも自由だよ!」

『僕ちんも、欲しい……』

まだ寝言を言っている食っちゃね悪魔を無視しておかわりをした。
その日は、代金を払って宿に泊まらせてもらった。飯代は抜きだったので、安くすんだ。


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