ダーク・ファンタジー小説
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- Cord___CyAN
- 日時: 2023/01/27 20:09
- 名前: ぷれ (ID: 5R9KQYNH)
どもども、ぷれです。
ここのところ、色々書きすぎて疲れたのですが、また新作書きます。
今回は、エージェント系です
~あらすじ~
2年前、大規模テロ事件が発生した東京都新江戸川区。ターミナルタウンとして、発展を遂げた街には未だ犯罪が絶えない。
そこで日本政府が立ち上げた、犯罪未然防止組織CyAN(シアン)を導入。
記憶喪失の少年と、新入りの少女がこの街の安全を守るために戦う。
人物紹介>>1
Prologue>>2
Episode 1.「New Buddy」>>3-5
Episode 2.「The pandora」>>6-10
Episode 3.「Day off」>>11-13
Episode 4.「Taste of Blood」>>14-20
Episode 5.「Hyacinth」>>21-22
Episode 6.「LOST」>>23-24
Episode 7.「Reaper」>>25-27
Episode 8.「Unknown」>>28-30
Episode 9.「Poison」>>31-33
Episode 10.「Alone」>>34
Episode 11.「Finale」>>35
Epilogue>>36
Episode 0.「Started」>>37
- Re: Cord___CyAN ( No.33 )
- 日時: 2023/01/26 10:43
- 名前: ぷれ (ID: mwHMOji8)
「津葉木さん遅いです早くご飯ください」
藍奈が手元のフォークを叶魅に向けて思いっきり投げると、少し叶魅からずれた壁に刺さった。
「ヒエッ...アホかお前!?普通空腹状態でもフォークは投げないよ!?殺意むき出しじゃねえか!!」
「うるさいぞー津葉木ー。いいから俺らに飯を提供しろー。美味くなかったら減給だからなー」
「うん貴島さん減給はやめましょうかーご飯あげませんよー」
まだ12時だというのに、食欲とはここまで人を活発にさせるのか。不思議なものである。
「はぁー美味かったー」
「津葉木、ここって私のパソコンとか残ってた?」
「残ってるも何も、黒井さんが居なくなってから店一回も開けてないよ」
夕葉は、押し入れの中のパソコンの置いてあるスペースに入った。
サーバーPCなので、サイズと消費電力が規格外という問題のせいで、押し入れの仕切りがなくなっている。
「よし、始めますか。んで?探してほしい人ってのは?」
「黒井影虎34歳。大規模テロ組織神風の組長だ」
渚が割り込み、影虎について話し始めた。
「あー...店長か」
「その様子だと、すでに調べ済みってわけか」
「まあ。それなりに____」
刹那、店の裏から轟音が鳴り響いた。
『やあやあ諸君!』
「これは強襲とかそういうのじゃない。凱旋だよ」
「よー黒井さんよー」
同時刻、圭は影虎と対峙していた。
店の裏を爆発させ、凱旋部隊を築くという訳の分からない外のことをしてきたのだ。
「おー圭久しぶりじゃないかー。今日は雨が降って最悪の天気だが、俺にとっては最高の1日だよ」
- Re: Cord___CyAN ( No.34 )
- 日時: 2023/01/26 18:09
- 名前: 緋彗 (ID: 5R9KQYNH)
Episode 10.「Alone」
「あの野郎...!」
「...聖華季の謹慎を解除、ここに向かわせろ」
渚は苦渋の決断をした。
今のメンバーでは絶対に勝てないから。ならば、優秀な人材を連れてくるまで。
「黒井!」
「あぁ?叶魅かぁ...わりぃな、今圭と話してるんでな」
叶魅の怒りのボルテージは急上昇する。
影虎だけは、こいつだけは生かしておけない。
「ったく、店長、あなた酷いもんですね」
「夕葉ぁ、立派になったなぁ」
降りしきる雨の中、ドン!!という腹の底に響く轟音が鳴った。
「危ないじゃないか圭...しっかりルールで決められてただろ?人には殺傷弾を撃つなって」
「へっ、てめえだって代表ぶっ殺したじゃねえか」
いつもより男勝りな口調で話す。
「ありゃ社会のゴミを抹殺しただけだ。...んじゃ、圭は殺す。俺の計画を邪魔するゴミだからな」
「あ?あたしに指一本でも触れられると思う___かはっ!?」
一瞬で視界から消え、圭に後ろに現れたと思ったら圭は腹部に大きな切り傷と、左腕を失っていた。
「荒木さん!」
奏太は銃を乱射するが、弾道は全て回避され鳩尾に拳がめり込んだ。
「奏太、見違えたなぁ...」
アサルトライフルを取り出し、叶魅に銃口が向く。
「叶魅、お前が一番厄介なんだよ」
「どこ見てんの店長」
背後に回った夕葉がナイフで背中を刺す。
血が雨とともに流れだし、影虎はのけぞる。
「痛いじゃないか夕葉、こんなもの使ったら」
「店長も動きがトロくて助かった。お陰で銃が使えるし」
銃をホルスターから取り出し、トリガーに指をかけた瞬間、夕葉の右視界が奪われ激痛が襲ってきた。
影虎の手にはナイフに刺さった球体。目玉だ。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
血を吹き出しながら叫ぶ夕葉。
「あ、あぁ...」
「貴様ぁぁぁぁぁぁ!!!」
恭弥と藍奈が突っ込む。
二人の身体能力を考えれば、対等に渡り合えるはず。
「バカだなぁ!!俺が何もないと思ったか!」
左手のマシンピストルを乱射する。
それをまともに食らってしまった恭弥は、後ろに転び再び立つことはなかった。
「やっぱりお前らはバカだなぁ、こういうこともあるって研修期間で習わなかったか?」
「それは、こういう場合もすか?」
聞き慣れた声に、金髪のショート。
聖華季だ。
「不意討ちとは感心しないな」
「あんたが言えることじゃないっす」
頭に突きつけた銃口から炎が吹き出す。
だが、影虎が怯む様子はなかった。
「なっ...」
「頭ぶち抜かれたって、俺は死にはしねえ」
即死するはずなのに、なぜ。
「全く、悲しいよ。お前らが今ここで死んでしまうんだからさ」
その瞬間、影虎の後ろに武装した部隊が出てきて、一斉に発砲した。
鳴り響く銃声。
「て、めぇ...」
圭は力を振り絞り、部隊の一人を撃った。
命中し、死体となった。
「荒木さん!もういいから!」
「あたしは、まだっ...死ねない」
片腕しかない状態で、それでも必死にもがく。
人々の平和と、あの日誓った復讐のために。
「ちょうどいいところに、落ちてんじゃねえか」
死体からアサルトライフルを剥ぎ取り、端に照準を合わせる。
「これで、終わりだぁぁぁぁぁ!!!!!」
辺りに銃声が鳴り響き、次々と肉塊へと変わっていく。
火薬の臭いと、血生臭さで頭がおかしくなりそうだった。
「はぁ、はぁ...あがっ」
ばたりと倒れ、意識が遠退いていく。
「荒木さん!荒木さん!」
「ははっ、無理しすぎたな...叶魅、これ持ってけ」
そう言い、圭は愛銃であるデザートイーグルを渡す。
「きっと、お前を守ってくれる。絶対、離す、な...」
「荒木さん?荒木さん!!」
もう、呼び掛けには応答しない。
荒木圭は、死んだのだ。
「そろそろいいか?」
無慈悲にも、呆れた顔をしたクズが立っていた。
「僕は、お前を殺す。みんなのために、僕は」
「そうか。なら、殺す前に言っておこうか。お前はな、大規模テロ事件の犯人楠本蒼唯なんだよ」
雨は止まない。
10話終了です
- Re: Cord___CyAN ( No.35 )
- 日時: 2023/01/26 19:24
- 名前: 緋彗 (ID: 5R9KQYNH)
Episode 11.「Finale」
「なっ!?」
「僕が、楠本?何言ってるんだ、黒井。僕は、楠本蒼唯なんかじゃ」
叶魅は既に錯乱状態へと陥っていた。
これは黒井の罠だ。黒井はきっと僕を落として殺すんだ。
「お前はな、俺が楠本蒼唯としての記憶を消し、全く別の人間として人格を構成した。いわば自我を持った人形にしか過ぎないんだよぉ!!!ははははははは!!!」
狂った様子で笑う影虎は、人間離れしていた。
「犯罪者の汚物はここで死ななきゃなぁ!!まずは藍奈からだぁ!!」
「僕は違う僕は違う僕は違う僕は違う僕は違う僕は違う僕は違う僕は違う僕はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
2丁の銃で、ひたすらに撃つ。
影虎は避けることもせず、ただ笑いながら銃弾を浴びていた。
「津葉木さん!ダメぇ!!」
ポケットから取り出した緑色のそれは、手榴弾だった。
自爆だ。
「蒼唯ぃ!!死ぬときゃ一緒だぁ!!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
地響きが起き、爆炎に包まれ視界が何も見えなくなってしまった。
「っ...!叶魅くん!」
渚が叫ぶが、それに返事はない。
煙が消えると、そこには体の大部分を失った影虎らしきものと腹部に風穴が空いた叶魅が居た。
「津葉木さん!何死のうとしてるんですか!!あなたはその程度じゃ死なないでしょ!?私のバディなら死ぬな!楠本蒼唯ぃ!!家族の敵なら、こんなところでくたばるな!!」
「藍奈」
「楠本ぉぉぉ!!」
「藍奈!!」
乾いた音が雨上がりの空に響いた。
「...救護班を呼んだ、だが生存する確率は低いと思え」
「...っ、あぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
もう二度と、彼の笑顔を見れなくなるのだろうか。敵討ちが、できなくなるのだろうか。
「叶魅、いや、蒼唯。よく頑張ったっす」
「柏木藍奈代表」
「はい」
春の陽気に包まれ、桜は咲き乱れていた。
あれから2年後、藍奈はCyANの代表として就任し、渚は司令官。聖華季は、副代表。奏太は研修生教育代表。夕葉は捜査部最高責任者となった。
「国家の安全を守ったことをここに賞します」
これで良かったんだ。全部終わった。
あの日の大事件から2年という長い年月をかけて、日本はテロが0となった。
青い空を見ること、CyANの願いは叶ったのだと。
- Re: Cord___CyAN ( No.36 )
- 日時: 2023/01/26 19:53
- 名前: 緋彗 (ID: 5R9KQYNH)
Epilogue
「...荒木さん、お久しぶりです。叶魅、じゃなかった。蒼唯です」
墓標の前に立って話す青年。
「貴島さんに社長にもこれからあいさつしに行くんです」
2年前、死んだことになっていた男。楠本蒼唯は、再び復活した。
「...蒼、唯さん?」
「藍奈?」
2年ぶりの再会。
「代表になったんだって?すごいじゃないか」
「いえ、それより蒼唯さんはなぜ?」
「いやーそれがさー、CyANの捜査官として復帰が決まってさー」
「え!?き、きいてないです!!」
ここまで読んでいただきありがとうございました
- Re: Cord___CyAN ( No.37 )
- 日時: 2023/01/27 18:19
- 名前: 緋彗 (ID: 5R9KQYNH)
Episode 0.「Started」
「え、えと津葉木叶魅です...」
「つーことで、研修期間は圭に任せようと思う」
見慣れないビルの建ち並ぶ街。車の排ガスの臭いがして、思わず噎せそうになる。
ここは犯罪未然防止組織CyANの本拠地である。
「叶魅は記憶が無いから、俺が名前をつけた」
「記憶喪失ってやつか」
「まあ、お前の教育次第では使えるようにはなるんじゃねえか?」
「肩落とすな!照準がぶれて対象を殺せねえだろ」
「は、はい!」
射撃訓練でも怒られ、
「姿勢落とせ!そんなタッパじゃ、一瞬で殺られるぞ」
「は、はい!」
模擬戦でも怒られ、何をしても怒られる日々が続いていた。
そんな中、同期の橘聖華季は違った。
「ふぅ...こんなもんかな」
「えと、橘さんだよね?」
「そうだけど」
「あの、その...」
何か物言いたげだが、聖華季は首を傾げた。
「ぼ、僕と模擬戦してください!!」
「わわ!そんな大声で言わなくても、普通に頼めばやるって」
それでも、
「っは!?」
「これで私の51勝目だね」
一度も勝てることができず、
「はぁ、はぁ...もう一本!」
叶魅は必死に訓練した。何度も倒れて、何度も立ち上がって。
そして実戦の日。
「叶魅、逃がすな!!」
「ふっ!」
犯人を必死に追う。
「動くな!!」
「っ!?九条さん!」
「叶魅くん、遅れて悪かった」
九条渚。彼の教育係である。
しかし、犯人が武装していない訳がなかった。
「へっ、何が犯罪未然防止組織だ。俺の邪魔をしやがって」
「ちっ!叶魅くん伏せ___」
「っ!!」
咄嗟に体が動き、犯人の顎に飛び膝蹴りをした。
「ごふぇ!?」
「ふん!はぁ!!」
何度も足で踏み潰した。何度も、何度も。
ぐしゃりという音が鳴り響き、たちまち犯人は動かなくなった。
「あぁ...」
「はぁ、はぁ、はぁ...」
それは人間なんかではない。化け物そのものだった。
「今日のMVPは叶魅だ」
「...ぇ?」
「おめでとう叶魅。試験は合格だ。あたしとバディだよ」
内心、彼は全く嬉しくなかった。鬼のような教育をされたら誰だって嫌になる。
津葉木叶魅。犯罪未然防止組織CyANの正式特別潜入捜査官。