二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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ポケットモンスターBW *道標の灯火*
日時: 2020/09/15 16:16
名前: 霧火# (ID: HEG2uMET)

初めまして、霧火と申します。

昔からポケモンが好きで、今回小説を書こうと思いました。
舞台はポケットモンスターブラック・ホワイトの世界です…と言っても舞台はゲーム通り
イッシュ地方ですが、時間軸はゲームの【数年前】でオリジナル・捏造の要素が強いです。
そして、別地方のポケモンも登場します。Nとゲーチスは出ないかもしれません(予定)。


!注意事項!
   ↓
1.本作のメインキャラは【最強】ではありません。負ける事も多く悩んだりもします。
2.書く人間がお馬鹿なので、天才キャラは作れません。なんちゃって天才キャラは居ます。
3.バトル描写や台詞が長いので、とんとん拍子にバトルは進みません。バトルの流れは
 ゲーム<アニメ寄りで、地形を利用したり攻撃を「躱せ」で避けたりします。
4.文才がない上にアイデアが浮かぶのも書くペースも遅いため、亀先輩に土下座するくらい
 超鈍足更新です。
 3〜4ヵ月に1話更新出来たら良い方で、その時の状態により6ヵ月〜1年掛かる事があります。
 申し訳ありません。


新しいタイトルが発表されてポケモン世界が広がる中、BWの小説は需要無いかもしれませんが
1人でも多くの人に「面白い」「続きが気になる」と思ってもらえるよう精進致しますので、
読んでいただけたら有り難いです。

**コメントをくれたお客様**

白黒さん パーセンターさん プツ男さん シエルさん
もろっちさん 火矢 八重さん かのさん さーちゃんさん

有り難うございます。小説を書く励みになります++


登場人物(※ネタバレが多いのでご注意下さい)
>>77

出会い・旅立ち編
>>1 >>4 >>6 >>7 >>8 >>12 >>15
サンヨウシティ
>>20 >>21 >>22 >>23
vsプラズマ団
>>26 >>29 >>30 >>31
シッポウシティ
>>34 >>35 >>39 >>40 >>43 >>46 >>47 >>48 >>49 >>50 >>51 >>52 >>55 >>56
ヒウンシティ
>>65 >>66 >>67 >>68 >>69 >>70 >>71 >>72 >>75 >>76 >>78 >>79
ライモンシティ
>>80 >>82 >>83 >>88 >>89 >>90 >>91 >>94 >>95 >>98 >>99 >>100 >>101 >>102 >>103 >>106 >>116 >>121 >>122 >>123 >>126 >>127 >>128 >>130 >>131 >>134 >>137 >>138 >>141 >>142 >>143 >>144 >>145 >>148
>>149 >>150 >>151
修行編
>>152 >>153 >>155 >>156 >>157 >>160 >>163 >>166 >>167 >>168 >>169 >>170 >>171 >>173 >>174 >>175 >>176 >>177 >>178 >>180 >>182 >>183
>>185 >>187


番外編(敵side)
>>188

Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37



Re: 78章 提案 ( No.151 )
日時: 2018/06/09 13:52
名前: 霧火 (ID: RjvLVXA1)

電気石の洞窟前の岩場。
砂利を踏み締めながら、金色の髪を靡かせた2人の人物は向かい合った。


「私が使うポケモンは1匹だけ。リオは手持ちのポケモン全て使って良いわよ〜」
「……」

柔らかく微笑んだリマにリオは何も喋らず、静かに眉を寄せる。
何故この2人がここに居て、向かい合っているのか。

事の発端は数十分前に遡る──



  ┼   ┼   ┼   ┼   ┼   ┼   ┼   ┼   ┼   ┼




ここに固まっていたら観光客や住民の通行の邪魔になるという事で、リオ達は5番道路に移動した。


「お父さんも歳だし、これ以上怒らせたら血管切れちゃうから私はそろそろ帰るわね〜」
「そう…また今度お茶しましょうね」
「うふふ。そうね〜近いうちに、また」

笑顔で恐い事をサラリと言ったリマにリオ達が硬直する中、アヤネは1人残念そうな顔をする。


「アキラとリオちゃんは?貴方達はどうするの?」
「「うーん…」」

こちらを振り返り問い掛けたアヤネに、リオとアキラは一瞬考え込む──が、答えは割と直ぐに出た。


「俺もそろそろ出発するよ。修行するにもこの辺のポケモンじゃ物足りなくなって来たし、
 もう充分息抜きしたからな」
「私も。この街はバトル施設が沢山あるけど、私達みたいな成り立てのトレーナーじゃ
 入れない所が殆どだから、次の街に行って修行しようと思います」


「2人も行っちゃうんですね。…寂しいけど仕方ない、か。次の街でもジム戦頑張って下さいね」

しゅん…と肩を落として唇を尖らせるアヤネは可愛らしく、とても子持ちとは思えない。


(…ある意味詐欺よね、アヤネさんもお母さんも)


リオが苦笑していると、隣で靴紐を結んでいたアキラが勢い良く立ち上がった。


「俺は先に行くぜ。リオには負けたくねぇからな…つーワケであばよ!」

眼鏡を押し上げて笑うと、アキラとイーブイは突然走り出した。
リオが声を掛ける暇も無く、あっという間にアキラ達は橋を駆け抜けて行った。


「もう…どうせお互い修行してからジムに挑戦するんだから、今急いでも特に意味は無いのに。
 ホント変な所でせっかちなんだから」
「…でもあの人は仕事でよくジムを留守にするから、急ぐに越した事は無いですね」

雲を眺めながらしみじみ呟いたアヤネにハッとして、リオはリュックを背負い直す。


「じゃあ…アヤネさん、お母さん。私もそろそろ行くね」
「ちょっと待って〜」

軽い挨拶を済まし、リオは小走りで橋へと向かう。
しかし橋の入り口に差し掛かった時にリマに呼び止められて、逸る気持ちを抑え振り返った。


「どうしたの?」
「そんなに急がなくても、ジムはもうお休みになってるから大丈夫よ〜」
「「えっ」」
「さっき家に帰る途中に確認したから間違いないわ〜」


(…何でそれをアキラが居る時に言わなかったんだろ)


閉まったジムの前でガックリ肩を落とした、或いは頭を抱えたアキラの姿が目に浮かぶ。
これでは余りにもアキラが不憫だ。


(うん、今度アキラに何か奢ってあげよう)


心の中でそう決意するリオに絶えず笑顔のリマは続ける。


「うふふ。リオはジム戦に向けてこれから修行するのよね?それなら私が修行相手になるわ〜♪
 修行場所は広いから電気石の洞窟前の岩場にしましょ〜」
「ちょ、ちょっと待って!」

どんどん話を進めるリマの口を両手で塞ぐ。


「私まだOK出してない!それに、お母さんと戦ってもヒトモシ達のレベルは上がらないわ!」
「確かに野生のポケモン達を相手に戦えばレベルは上がるわ。でも逆を言えばレベルが上がる〝だけ〟なの。
 野生のポケモンは攻撃がパターン化してる子が殆どだから戦略は広がらないわ」

瞳を閉じて静かに言うリマにリオは押し黙る。
リマとのバトルは得られる物が多い──それは分かっているが、何でもかんでも母親に頼るのは甘え。
それがリオの考えだった。

その為、嬉しい申し出だがリオは内心モヤモヤしていた。


「リオちゃん。私が言うのも何ですが、リマはこう見えて教えるの上手なんですよ。何せワ「アヤネ、
 しぃー」…あ、秘密でしたっけ」

胸を張ってリマの自慢話を始めたかと思えば、小声でリマと話し合うアヤネに別の意味でモヤモヤしてると、
いつもの調子でリマが笑いかけた。


「大丈夫よ〜修行と言ってもそんなに時間は掛けないし、リオが望むなら早く切り上げる。レベル上げは
 修行の後でも充分間に合うわ〜」


(お母さんと修行する…っていうのは決定事項なのね)


リオは大きく深呼吸する。
吐いた息と一緒にモヤモヤを追い出して、リマを見上げた。


「お母さん。修行相手、お願いします」

一礼したリオに満足そうに笑い、リマはボールを空へと投げる。


「決まりね〜それじゃあ…出て来て、エアームド〜♪」

白銀の翼を広げて出て来たのはお馴染み、エアームド。
リマは速度を落として地面に降り立ったエアームドに微笑む。


「電気石の洞窟前までお願いね〜」

エアームドはリマが言う事を予測してたのか、直ぐさま身を屈めた。
献身的な姿に思わずリオの手がエアームドへと伸びる。


「…何度もごめんね、エアームド。私も乗っても良い?」

嘴を撫でるとエアームドは頷き、スリスリと擦り寄って来た。
エアームドの鋼の体はひんやりとしていて、火照った頬をあっという間に冷やしてくれた。


「ありがとう。無理に急がなくて良いからね?エアームドのペースで大丈夫」

感謝の意味も込めて再び撫でると、屈んでいたエアームドが翼を広げて抱き着いてきた。


「きゃっ!?ちょっとエアームド、前見えないっ」

リオがもがいても何のその、ますます抱き着く力が強くなるエアームド。
暫くするとリオのボールからヒトモシ達まで出て来る騒ぎとなった。



(リオちゃん…相変わらずポケモンちゃんにモテモテですね)
(人間にもモテモテになれば良いんだけどね〜)


1人と数匹のやり取りにアヤネは頬を緩め、リマは苦笑して見つめる。


そんな訳で、リオは暫くの間リマと修行する事になったのだった…





金銀時代から愛して止まないエアームドの可愛さを堪能したくて、
久々にHGSSをプレイしたら連れ歩き機能の偉大さを再確認しました。

な に こ の か わ い い 生 き 物 。

擦り寄ってる時、どう見ても主人公の顔面に《ドリル嘴》喰らわせてる様にしか
見えませんでしたが、それでも可愛かったです。…BW・BW2で何故この機能取り入れなかったし。


…長くなりましたが「7月中にもう1話更新する」発言しといて更新せずにすみません(汗)
この台詞、本当に何度目でしょうか…ちょっと有言実行という言葉を辞書で引いて来ます。

こんな作者ですが、今後とも宜しくお願いします。

Re: 79章 修行開始 ( No.152 )
日時: 2014/04/19 10:40
名前: 霧火 (ID: SjhcWjI.)

そんなやり取りがあって、前回の冒頭に至る。
無意識に寄せていた眉間の皺を伸ばし、リオは開口した。


「お母さん…いくら何でもソレは無いんじゃない?」
「?無いって何が?」

自分の発言におかしな所などあっただろうか──そう言わんばかりに目を瞬かせたリマに、リオは脱力する。


「手持ちのポケモン全て使って良いって事よ。…ハンデも度が過ぎれば、その人に対する侮辱になると思うわ」
「…ごめんね、そんなつもりで言った訳じゃないんだけど……」
「うん、分かってる。ちょっと意地悪したくなっただけだから、そんな落ち込まないでよ」

眉をハの字にした母親を慰めてからリオは辺りを見渡した。


「それで、お母さんが使うポケモンは?」
「待っててね。今呼ぶわ〜」

気を取り直したリマは煤けた笛を取り出すと、静かな音色を奏でた。
暫くすると草木を掻き分け、1匹のポケモンが姿を現した。
リオはその姿を確認して思わず苦笑した。


「…この子が相手?」

自分の前に立ちはだかったポケモン──カビゴンを見てからリマに問い掛けた。


「本格的な修行に入る前に、まずはリオのポケモン達の力をざっと見ておきたいからね〜♪そう考えたらこの子が
 適任だったの〜」

確かにカビゴンは弱点も少ないし体力もあるので、リオのポケモンを纏めて相手に出来るだろう。
リマの言う事は一理ある…しかしこのカビゴンは寝てばかりで、激しい動きをしている所など見た事が無かった。


(戦いとは無縁だと思ってたカビゴンと戦う事になるなんてね)

心の中で苦笑するが、相手は母のポケモンなので気持ちを切り替える。
葉っぱが地面に落ちるのを合図にリオは持っていたボールを投げた。


「まずはこの子が相手になるわ」
「先鋒はシビシラスか〜…よろしくね〜♪」

モンスターボールの光が止み、現れたのはシビシラスだ。
シビシラスは静かにカビゴンを見上げる。


「まずはカビゴンの動きを止めるわよ。電磁波!」

シビシラスは身体を小刻みに震わせて微弱な電気をカビゴンへと放つ。
何もせず、ボーッとその場に佇んでいたカビゴンは《電磁波》を浴びて麻痺状態になり、その場に座り込む。


「続けて体当たり!」

そこへすかさずシビシラスが渾身の力でぶつかる。
動きが鈍っているカビゴンに攻撃が連続でヒットするが、カビゴンの身体は微動だにしない。


「タイプ一致技じゃないとダメージは雀の涙程度ね…今度はスパーク!」

シビシラスは身体を捻らせると、今度は電気を纏ってカビゴンに突進する。


今まで動かなかったカビゴンの身体が僅かに揺れた──



ガシッ



「『!』」
「捕まえた〜そのまま地面にペチン☆」

しかし攻撃が急所に当たったのも束の間、シビシラスはカビゴンの両手に捕らえられ、そのまま地面へと
叩き付けられてしまった。


「シビシラス!」

カビゴンが手を持ち上げると、地面に陥没した状態でシビシラスが目を回していた。


「…戻って、シビシラス。次は貴女よ!」

戦闘不能となったシビシラスを戻し、用意してあった2個目のボールを投げる。


「スイープビンタ!」

地に脚を付けたと同時に、2番手──チラーミィはカビゴンとの間合いを詰めて硬化させた尻尾をカビゴンの額へ素早く数回打ち付けると、バク転でカビゴンから離れて距離を取った。
シビシラスの時とは違うキレのある動きに、尻尾を掴もうと伸ばしたカビゴンの手は空ぶる。


「カビゴン、反撃よ〜のしかかり〜」
「躱して!」

跳ねながら両手を広げて倒れてきたカビゴンを、チラーミィは難なく躱す。
しかし流石は重量級のポケモンといった所か。
カビゴンが倒れただけで大きな地鳴りが発生し、チラーミィは体勢を崩して後ろに転んでしまった。


攻撃を決める絶好の機会にリマの目が光る。


「うふふ。もう1度のしかかり〜」

起き上がり再び倒れてきたカビゴン。
身体の幅がある分、離れていた距離が一気に縮まりカビゴンの身体はチラーミィの真上を取った。


「チラーミィ!アクア、……!」

技の名前を言いかけて止める。
普段のチラーミィならこちらが命令せずとも自ら判断し、動くハズだ。
だけど、ソレをしないのは──


(後ろに倒れたせいで尻尾が圧迫されて動かせないんだわ…!)

チラーミィの技は尻尾を使って出す物が大半で、尻尾を動かせない今《アクアテール》の水の勢いで
危機を脱する事は出来ない。


(このままじゃ押し潰される!)


迫り来る巨体に、リオとチラーミィは歯を食いしばる。
身動きが取れない今、チラーミィは完全に押し潰されるかに思えた。


『…!』

しかし、突然カビゴンが顔を歪めて地面に片手を付いた。
シビシラスの《電磁波》による麻痺が発生したのだ。


「チラーミィ、離れて!」

リオの声にチラーミィは慌てて後退りしてカビゴンの下から脱出した。
ホッとするリオとは対照的に、リマは唇を尖らせる。


「また失敗?痺れて攻撃出来ないのは嫌ね〜」
「スピードスター!」

チラーミィは飛び上がり、尻尾を振って星形の光を放つ。
大きな威力は無いが、確実にカビゴンの体力を削っている。
その証拠にカビゴンの身体のあちこちに、小さな傷が付き始めていた。


「……うん。仕方ないわね、少し早いけど眠るのよ〜」

カビゴンは大きく欠伸して目を閉じると大の字に倒れた。
一見すると試合放棄した様にも見えるが、スヤスヤと寝息をたてるカビゴンの傷は癒え、身体に流れていた微弱な電気も消えた。

そして寝惚けながら首から下げていたカゴの実を食べると、完全に目を覚ました。


「全回復♪カビゴン、「攻撃なんてさせない!チラーミィ、歌う!」…よ〜」

チラーミィは深呼吸して、目を閉じて歌い始めた。
心地良い綺麗な歌声に聞き惚れ、やがて睡魔に襲われたカビゴンは再びその場に倒れた。


「あらあら。チラーミィは《歌う》を覚えていたのね〜」
「お母さんが来る前にね。元々素質があったのか、直ぐに覚えてくれたわ」

軽く返したリオだったが、チラーミィの《歌う》は多くの犠牲を払って完成した。


実はポケモンを受け取ったリオ達が【バトルサブウェイ】前のベンチに座っていたのは、チラーミィが
ミュージカルの歌を口ずさんでいる人の真似をしたら偶然技が完成してしまって、リオとアキラ、ジョーイさんとタブンネ以外の人やポケモンが眠ってしまい、またポケモンを回復する羽目になったジョーイさんに
追い出されたからだったりする。


「お母さんがカビゴンにカゴの実を持たせてるのは知ってたし、その実を持たせてるって事は《眠る》を覚えてる
 可能性が大。それなら早めにカビゴンに《眠る》を使ってカゴの実を消費して貰おうと思ってシビシラスに
 《電磁波》を指示したのに、中々眠ってくれないんだもん……このまま歌えずに終わるかと思ったけど、」


カビゴンが寝ているのを確認し、リオは言葉を続ける。


「思った以上に麻痺に助けられたわ。結果、カビゴンも眠ってカゴの実を消費してくれたし、これで直ぐに起きる
 事は出来ない。…気持ち良く眠ってるトコ悪いけど、攻めさせて貰うわね。アクアテール!!」


リオは不敵な笑みを浮かべ、チラーミィは水を纏わせた尻尾をカビゴンの脳天へ振り下ろした。




暑さのピークが自分の中で越えたので、次の話こそ早くアップ出来そうです。
目標は3日以内!

Re: 80章 親子だからこそ、全力で ( No.153 )
日時: 2013/09/03 21:56
名前: 霧火 (ID: nYLbaC1V)

勢い良く振り下ろされた尻尾は水と共に弾き返された。
標的のカビゴン、その手によって。


「何で…!?カビゴンは確かに眠ったハズなのに…」

欠伸をしながら起き上がったカビゴンにリオは動揺を隠せない。


(木の実も無いのに、どうやって…?特性の中には眠りから直ぐに覚める物もあるけど、カビゴンがその特性なら
カゴの実を持つ必要は無いし)

百面相をするリオに、リマは口許を隠して笑う。
まるで悪戯が成功した子供の様に嬉し気に、得意気に。


「リオは私が起きたカビゴンに攻撃技を指示したと思っているみたいだけど、そうじゃないわ。
 カビゴンに指示したのは《リサイクル》」
「リサイクル…」

復唱するリオだが、初めて聞く技で、その技にどんな効果があるのか見当もつかない。
それが分かったのかリマは《リサイクル》について説明する。


「効果は至ってシンプル。この技は自分が使って無くなった持ち物を、もう1度使える技なの」
「そっか…だからカビゴンの目が直ぐに覚めたのね」

納得するリオだが、内心は


(でもその技って《眠る》とカゴの実と合わせたら反則に近くない?)


…と思うのだった。


「解説終わり〜♪のしかかりGO〜」
「回避よ!地面に向かってアクアテール!」

倒れてきたカビゴンにリオは早口で指示を出した。
そのお蔭か、チラーミィは間一髪でカビゴンの巨体から逃れられた。
水の勢いを利用してチラーミィは後ろの木まで移動し、身を隠す。


「うふふ。隠れても無駄よ〜?木を揺さぶってチラーミィを落とすのよ〜」

リマは何かが蠢く様な、葉っぱが擦れる様な音がした木を指差した。
カビゴンが木を左右に揺らすとポケモンが落ちてきた。


『…カブッ!』

しかし木から落ちてきたのは青い身体に、スパナの様な角を持ったポケモンだった。


「あらあら…カブルモだったわ〜」

予想が外れた事に落胆した面持ちのリマ。
慌てて逃げて行くカブルモには目もくれず、リマは別の木を指差す。


(いくらお母さんのカビゴンが強くても、音だけでチラーミィの居場所を見付ける事は出来ないハズ)

チラーミィの居場所を確認してリオは声を張り上げる。


「スピードスター、発射!!」

リオの攻撃を指示する声にカビゴンは反応し、辺りを見回す。
そんなカビゴンの横っ面に奥の方から出て来た星形の光が命中した。
攻撃を終えたチラーミィは居場所を突き止められる前に別の木に移動する。


「…よし」

ダメージは小さいが、攻撃を受けたカビゴンは一瞬怯む。
その間に別の木に移動して再び攻撃、そして移動する。
時間は掛かるがこの戦法ならカビゴンにダメージを与えられるし、チラーミィも直ぐに戦闘不能になる事は無い。


(問題はカビゴンに《眠る》と《リサイクル》のコンボ技があるって事よね…長期戦になると、回復技も無くて
体力が少ないチラーミィが圧倒的に不利だわ)


これが普通のバトルなら別のポケモンに交代させるが、これは本格的な修行に入る前の、各ポケモンの実力を
見る為のバトルだ。
わざと交代せずに戦わせる事により、そのポケモンの長所や弱点、限界を知り、それを今後の修行で伸ばしたり
克服する──それがこのバトルの本来の目的だ。



そのポケモンの能力を知る為の練習試合。

実力や経験の差があるから負けても大丈夫。



等々、人によって様々な捉え方があるだろう。
しかしリオは今のバトルを大切な一戦として全力で臨んでいた。


(だから──)


「お母さん」
「何かしら〜?」

ふわふわした笑顔を向ける母に対し、リオは鋭い目を向けた。
初めて見るリオの目付きにリマは驚く。


「本気で私と、私のポケモン達と戦ってほしいの」
「戦ってるわよ〜?」
「ううん。お母さんはまだ本気を出していない。カビゴンにもう1つの技を指示しないのが証拠よ」

リオの指摘にリマは苦笑する──どうやら図星の様だ。


「駆け出しのトレーナーが何言ってんだって思うかもしれないけど、手加減されて喜ぶ私達じゃないわ。コレが
 練習試合みたいな物だとしても全力で来てほしいの。それに……」


言葉を区切りリオはニヤリ、と笑った。


「お母さん、消耗戦とか長期戦って大っ嫌いでしょ?」


リオの言い方は迷いが無く、確信に近かった。
僅かな沈黙の後、リマが小さく吹き出した。


「うふふ。良く分かったわね〜」
「私もどちらかと言えばそういうの避けたいからね」
「リオにそこまで言わせちゃうなんて、母親失格だわ〜」


肩を竦めるリオに柔らかく笑って、リマは目を細めた。


「分かった。それじゃあ遠慮無く全力で行かせて貰うわ。その方がリオの為だし、お互い気持ち良く
 終われるでしょう?」


静かに笑うリマはいつもと雰囲気が違っていて、リオは息を呑む。


「ありがとう。でも私達だってアッサリ負けるつもりは無いわよ?」



しかしそれ以上に母が本気を出してくれる事に喜びを感じるのだった。

Re: 81章 人差し指の脅威 ( No.155 )
日時: 2013/10/06 06:23
名前: 霧火 (ID: B.wdZiuI)

「カビゴン、指を振る」

メトロノームの様に一定のリズムで人差し指を左右に振り始めたカビゴンに、リオは眉を寄せる。


(ランダムに技が出る《指を振る》か……厄介ね)

基本的にトレーナーが居るポケモンは例外を除き、トレーナーが指示を出す事で初めて攻撃する。
リオはそれを利用してトレーナーの口の動きと、その後のポケモンの『攻撃しよう』という僅かな動きを見て
向こうの攻撃のタイミングを見計らい、こちらも躱すなり攻撃なり指示を出して来た。

しかし《指を振る》は、使ったポケモンにもトレーナーにも何が出るか分からない。何が出るか分からないから、トレーナーは指示を出さないしポケモンも技が発動するまで動かない──つまり、今までの様に相手が攻撃する
タイミングを知るのが困難になったのだ。


間違い無くリオにとって痛手だった。


『カンビッ』

カビゴンの人差し指が青白く光る。
刹那──カビゴンの手から風の渦が発生し、周りの木々を飲み込んだ。

《竜巻》が発生したのだ。


「みーつけた」
「!」

口角を上げたリマの視線の先──風の渦の中に、チラーミィは居た。
チラーミィの身体は洗濯機に洗われている服の様に、グルグルと回転している。


(あの《竜巻》からは自力で脱出出来ない。それなら…)


「カビゴンに向かってスピードスターよ!」

《竜巻》を起こしているのはカビゴンだ。
自力であの風の渦から脱出する事が出来ないのなら、技を出しているカビゴンを攻撃すれば一瞬でも
《竜巻》は弱まるだろう。

チラーミィの素早さと身軽さなら、その隙に脱出が可能だとリオは思っていた。


「無駄よ。貴女の声はチラーミィに届かない」
「そんな事!」

自分の心を見透かした様に頭を振って否定したリマに、リオは反論しようと口を開く。
しかし言葉は続かず、リオの視線は《竜巻》の中のチラーミィへと向けられた。
全く動かず痛みに耐えるチラーミィにリマの言葉が真実だと悟った。


「…本当に、聞こえてないの……?」
「あの高さだし、風の音も煩いと思うからね。だけど、そろそろ嵐は去るわ」

リマの言う通り、風の渦は直ぐに消えて数秒後に空からチラーミィが降って来た。
運良く風で散って集まった葉の上に落ちたため、落下のダメージは無さそうだ。


「トドメよ。のしかかり」
「避けて!」

駆け足でチラーミィに迫るカビゴンを見てリオは叫ぶ。
しかし《竜巻》で目を回し、足元が覚束ないチラーミィはまともに動けない。



「おしまい♪」


リマが笑ったのを合図に、チラーミィの上にカビゴンが倒れ込んだ。


「チラーミィ!!」

身体を起こしたカビゴンが唯一地面に減り込んでいない、チラーミィの尻尾を掴んで持ち上げる。

チラーミィは目を回していて、これ以上戦闘は不可能だった。


「…ありがとう。戻って、チラーミィ」
「タマゴから孵って1年も経たない割に、健闘したと思うわ。さぁ、次のポケモンは?」


本気になったリマは、リオが想像していた以上に圧倒的だった。


(お母さんの称賛の言葉さえ皮肉に聞こえちゃうなんて…ちょっと参っちゃってるのかしら)



内心苦笑しながら、リオはそっと3個目のボールに手を掛けた。





更新が遅れてすみませんでした…自分が使用している充電器は意外に脆いみたいなので
もしかしたらまた同じ様に故障して更新が遅れるかもしれません。
でも届いたばかりで新品同様なので1年は保つと思います!(1年だけかとか言っちゃいけない)

文章がいつも以上に短めですが、ここで長くすると次の話が異様に短くなりそうなので…あえて今回
短くしました。
そんなワケで、次回もお楽しみに!

Re: 82章 人差し指の恐怖 ( No.156 )
日時: 2014/04/19 10:48
名前: 霧火 (ID: SjhcWjI.)

「お願い、バルチャイ!」

高々と投げられたボールから現れたバルチャイは上空から静かにカビゴンを見下ろした。
リマは太陽の光に目を細めながらバルチャイの姿を確認する。


「バルチャイね。身体が重くて飛べないカビゴンには強敵だわ」

口ではそう言っているが、リマの目と口許は笑っている。
これから始まるバトルを純粋に楽しみにしているのか、将又あまりにも手応えの無いポケモン達と、
必死なリオを嘲笑っているのか。


(絶対、一泡吹かせてやるんだから!)


どちらの意味の笑みか分からないが、リオの闘争心に火を付けるには充分だった。


「バルチャイ、風起こし!」

バルチャイが羽撃くと激しい風が岩場に吹き荒れた。
岩場に落ちていた葉や小さなゴミが飛び交う中、カビゴンは涼しい顔で風を受けている。
リマは顔にかかる髪を手で押さえて口を開く。


「残念、今は暑いからバルチャイの《風起こし》もカビゴンにとっては快適な扇風機になっちゃったわね」
「それはどうかしら」

即座に否定され、ムッとするリマ。


「お母さんなら分かるハズよ。岩場で強風が起こるとどうなるか」
「…カビゴン、涼むのは終わりよ。のしかかり!」

リマの静かで、鋭い声が響き渡る──が、カビゴンは攻撃の動作に移ろうとしない。
怪訝な顔をするリマだったが、飛んで来た物とカビゴンの手の動きを見て合点がいった。


「攻撃と同時に目潰しとは、随分とやってくれるわね」

飛んで来た小石を掴み、リマはリオを見つめる。
先程カビゴンが放った《竜巻》で木の枝や葉は落ち、地面は大きく削られた。
そして今、岩場には葉や枝の他に砂利や岩の破片が散らばっている。
そんな場所で相手がこちらに向かって《風起こし》をするとどうなるか──答えは簡単だった。


「《風起こし》は上に巻き上げる《竜巻》と違って横に吹き付ける技だからね。風で浮いた砂利や枝は
 自然とカビゴンに向かうってワケ」

リマの視線はリオからカビゴンへと移る。
カビゴンは目に砂が入ったのか、ずっと目を擦っている。


「どう?疑似《砂嵐》の威力は。持続性は無いし真似事だけど効果は抜群でしょ」
「…そうね。リオはフィールドを使った戦略も得意だって事、すっかり忘れてたわ」

どこか嬉しそうに呟いたリマに微笑して、リオはカビゴンを指差す。


「カビゴンが怯んでいる今こそ、流れを変えるチャンスよ!騙し討ち!」

バルチャイは落ちていた葉を数枚咥えるとカビゴンの目の前まで飛んで行く。
そして葉を脚の上に落としてカビゴンがそちらに気を取られた隙にバルチャイの攻撃がカビゴンの後頭部に
鮮やかに決まった。


ちなみにこの瞬間、バルチャイのキレのある動きとハリセンで叩いた様な音に、2人が芸人宛らのツッコミだと思ったのは内緒である。


「指を振る」

カビゴンは目を瞑りながら指を振り始める。
最初の時より指が早く光った、とリオが思った時には既にカビゴンは家の前に移動していた。
一瞬《テレポート》が出てあそこまで移動したのかと思ったが、川で目の砂を洗い流して戻って来たカビゴンの
脚の速さに、リオは自分の甘い考えを笑った。


「《高速移動》…最悪な技が出たわね!」
「私達にとっては最高の技が出たわね♪」


2回目に出た技は《高速移動》──自分の素早さをぐーんと上げる技だ。
攻撃技は出なかったが、カビゴンの唯一の弱点と言っても過言では無い脚の遅さが改善されてしまった。


これでもう、リオのポケモン達はカビゴンから先制を取れなくなった。


「ガンガン行くわよ。もう1度、指を振る!」


カビゴンの指が青白く光る。
すると今度は岩場にあった比較的大きな石がバルチャイ目掛けて飛んで来た。


(あんな大きな岩、喰らったら一溜まりも無い!)


「下に向かって風起こし!」

バルチャイは風の勢いで急上昇、向かって来た岩を回避する。
岩は円を描く様に地面に突き刺さった。
攻撃を躱せた事にリオは安堵の溜め息を。そしてリマは、


口許を僅かに上へ動かした。


「…指を振る」

速く動くカビゴンの指にリオとバルチャイは身構える。
1回目、2回目の時よりも長い指振りに、リオの心臓の音は大きくなるばかり。


そして指の動きが止まり、青白く光った──と同時に、カビゴンが消えた。


(《穴を掘る》で地面に潜った?それとも《小さくなる》や《溶ける》で姿を見えなくした?)


リオは視線はリマに向けたまま、足と耳に神経を集中させて周囲を探る。


(地中と足元をカビゴンが移動してる様子は無いし、水の音もしない。聞こえるのは…)



「…上よ!!」
「遅いわ。《空を飛ぶ》で上昇してからの…のしかかりよ!」


リオ達が空を見上げた時には、カビゴンが両手を広げて急降下して来ていた。


「風起こしで躱「させないわ。翼を掴んで、そのまま叩き付けなさい」…なっ!?」


カビゴンは羽撃こうとしたバルチャイの翼を両手で掴み、そのまま落下する。

地面との距離はあと10m弱。


(あの速度で、翼を広げた状態でカビゴンと落ちたら……!)


リオはボールの標準をバルチャイに合わせて叫ぶ。


「戻って、バルチャイ!」

ボールから放たれた赤い光がバルチャイに当たる。
バルチャイの身体は光に包まれ、吸い込まれる様にボールの中へと入った。

カビゴンはその様子を横目で見てから大きく吸い込んだ息を下へ放出し、勢いを殺して地面に降り立った。


「…バルチャイは試合放棄という事で良いのかしら?」
「ええ。勝ちたいからってバルチャイの将来まで犠牲には出来ないもの」
「そう……良かった」


(え?)


嬉しそうに呟かれた言葉にリオは目を瞬かせる。
リマが何に対して「良かった」と言ったのか、リオには分からなかった。



「これでリオの最後のポケモンはヒトモシね。…だけど残念。この勝負、もう決まったわ」



しかし最後のバトルに集中すべく、リオはその疑問を頭の片隅に追いやった。




お久しぶりです。ストライキ大好きなPCに小説の一部を消されて、予定していた更新が
かなり遅くなった霧火です。
こんな有言無実行な自分の小説を待っていてくれる優しい読者様は、
果たして何人残ってくれているのかってくらい、更新遅くなってすみません…

絶賛《指を振る》回が続いていますが、実はこのカビゴンの《指を振る》で出た技は決して
ご都合主義ではなく、ゲームでカビゴンに《指を振る》を覚えさせてそのカビゴンが実際にチラーミィ達を相手に出した技です。
ご都合主義より、そっちの方が面白いので!


(…その所為で只でさえ遅れてる更新が、戦略と話の展開を作るの考えて更に遅れたなんて口が裂けても言えない)

※因みに延々と補助技ばかり出た場合は流石に電源を切ってやり直し。


そんなワケで今度はヒトモシ相手に指を振ってきます。
では、次回もお楽しみに!


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