二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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ポケットモンスターBW *道標の灯火*
日時: 2020/09/15 16:16
名前: 霧火# (ID: HEG2uMET)

初めまして、霧火と申します。

昔からポケモンが好きで、今回小説を書こうと思いました。
舞台はポケットモンスターブラック・ホワイトの世界です…と言っても舞台はゲーム通り
イッシュ地方ですが、時間軸はゲームの【数年前】でオリジナル・捏造の要素が強いです。
そして、別地方のポケモンも登場します。Nとゲーチスは出ないかもしれません(予定)。


!注意事項!
   ↓
1.本作のメインキャラは【最強】ではありません。負ける事も多く悩んだりもします。
2.書く人間がお馬鹿なので、天才キャラは作れません。なんちゃって天才キャラは居ます。
3.バトル描写や台詞が長いので、とんとん拍子にバトルは進みません。バトルの流れは
 ゲーム<アニメ寄りで、地形を利用したり攻撃を「躱せ」で避けたりします。
4.文才がない上にアイデアが浮かぶのも書くペースも遅いため、亀先輩に土下座するくらい
 超鈍足更新です。
 3〜4ヵ月に1話更新出来たら良い方で、その時の状態により6ヵ月〜1年掛かる事があります。
 申し訳ありません。


新しいタイトルが発表されてポケモン世界が広がる中、BWの小説は需要無いかもしれませんが
1人でも多くの人に「面白い」「続きが気になる」と思ってもらえるよう精進致しますので、
読んでいただけたら有り難いです。

**コメントをくれたお客様**

白黒さん パーセンターさん プツ男さん シエルさん
もろっちさん 火矢 八重さん かのさん さーちゃんさん

有り難うございます。小説を書く励みになります++


登場人物(※ネタバレが多いのでご注意下さい)
>>77

出会い・旅立ち編
>>1 >>4 >>6 >>7 >>8 >>12 >>15
サンヨウシティ
>>20 >>21 >>22 >>23
vsプラズマ団
>>26 >>29 >>30 >>31
シッポウシティ
>>34 >>35 >>39 >>40 >>43 >>46 >>47 >>48 >>49 >>50 >>51 >>52 >>55 >>56
ヒウンシティ
>>65 >>66 >>67 >>68 >>69 >>70 >>71 >>72 >>75 >>76 >>78 >>79
ライモンシティ
>>80 >>82 >>83 >>88 >>89 >>90 >>91 >>94 >>95 >>98 >>99 >>100 >>101 >>102 >>103 >>106 >>116 >>121 >>122 >>123 >>126 >>127 >>128 >>130 >>131 >>134 >>137 >>138 >>141 >>142 >>143 >>144 >>145 >>148
>>149 >>150 >>151
修行編
>>152 >>153 >>155 >>156 >>157 >>160 >>163 >>166 >>167 >>168 >>169 >>170 >>171 >>173 >>174 >>175 >>176 >>177 >>178 >>180 >>182 >>183
>>185 >>187


番外編(敵side)
>>188

Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37



Re: ポケットモンスターBW 道標の灯火 ( No.45 )
日時: 2011/11/27 14:12
名前: 霧火 (ID: RnG1mZDB)

白黒さん

ガルーラの子供が攻撃する発想はガルーラは親と子供、2匹合わせて1つのポケモンと
自分の中で決まっていて、「それなら子供が強くてもいいんじゃないか?」という
考えが生まれ急遽こういった攻撃方法になりました。
3年で親離れするので、袋の中に居るからって弱いとは限りませんからね。

リオとアロエのバトルは、次回から本格的に始まりますが、
バトルは意外と早く決着がつきそうです。多分、今までのバトルで1番早いかもしれません。
その理由は次回、明らかに!(ぇ

Re: 21章 リオvsアロエ ( No.46 )
日時: 2020/07/26 17:11
名前: 霧火 (ID: HEG2uMET)

「それでは、バトル開始!」
「まずはこっちから行くよ。ハーデリア!《突進》!」

ハーデリアは後ろ足で勢い良く地面を蹴ると、猛スピードで駆け出し突っ込んで来た。

「迎撃よシビシラス!《チャージビーム》!」

シビシラスは体内に電気を蓄電し、突っ込んで来るハーデリアに向かって束状の電気を発射する。
突っ込んで来たハーデリアは正面からまともに攻撃を喰らって吹っ飛ばされるが、すぐに体勢を立て直す。

「全体重を乗せた捨て身の《突進》を止めてハーデリアを吹っ飛ばすなんて、そのシビシラス、
 見かけによらず中々のパワーじゃないか」
「ありがとうございます!……きゃっ」

褒められた事が嬉しかったのか、シビシラスは踵を返してリオに擦り寄る。

(今、バトル中なんだけどなぁ……)

そう思いつつも、自分に擦り寄って来るシビシラスを無下に出来ず、リオは苦笑しながら頭を撫でる。
それに満足したのか、シビシラスは張り切ってバトルフィールドに戻って行った。

「すみませんアロエさん、バトル中なのに」
「良いって事さ!表情が変わり難いシビシラスが、そこまで表情をコロコロ変えるなんてね。
 とても良い物を見せて貰ったよ」

頭を下げるリオにアロエは楽しそうに笑う。
しかしすぐに笑みを止め、リオとシビシラスを鋭い目で見つめる。

「でもバトルはバトルだ、遠慮なく行かせて貰うよ!ハーデリア!《噛み付く》!」
「シビシラス!《電磁波》!」

牙を剥いて飛び掛かって来たハーデリアに対し、シビシラスは上に飛んで攻撃を回避すると、
先程の《チャージビーム》とは比べ物にならない程の微弱な電気を飛ばし、ハーデリアを麻痺状態にする。

「《電磁波》とは厄介だね。ハーデリア、もう1度《噛み付く》だ!」

ハーデリアは再び牙を剥きシビシラスに襲い掛かる──しかし突如体が痺れ、動きが止まった。

「今よ!後ろに回り込んで、ハーデリアの背中に《スパーク》!」

シビシラスは後ろへと回り込むと、全身に電気を纏って背中に体当たりした。
無防備なハーデリアは、背中を襲った痛みに顔を歪める…


──事は無かった。


(そんな……効いてない!?)

「《突進》だよ!」

瞬時に危険を察知し上へ飛んで攻撃を躱そうとしたシビシラスだったが、ハーデリアの方が速く
《突進》がクリーンヒットし、吹っ飛ばされた。

「どうして?攻撃は確かに当たったのに……」
「《電磁波》でハーデリアを麻痺させて、動きが鈍った所を攻撃する。わざわざ後ろに回り込んで背中に
 攻撃したのは、正面からだと《噛み付く》で反撃されて捕まる恐れがあったからだね。確かに良い判断だ。
 ……けど、攻撃した場所が悪かったね」

シビシラスはハーデリアを睨み付ける。
咄嗟に尻尾をバネの様にしてダメージを軽減したが、シビシラスの体は傷だらけだった。

「ハーデリアの背中のマントはとても頑丈でね、ちょっとやそっとの攻撃じゃビクともしないんだ。
 それにあたしのハーデリアの特性は相手の攻撃力を下げる《威嚇》──攻撃力が下がった
 シビシラスの《スパーク》は殆ど効いてないって訳さ」
「それなら特殊技で攻めるまでです!《チャージビーム》!」

シビシラスは蓄電した電気を束状へと変えて発射する。
最初の時に比べてその電撃は大きくて鋭く、槍で貫くようにハーデリアを襲った。

何とか耐え抜いたハーデリアだったが、強い電撃を浴びて一部の毛が焦げていた。

「この威力……最初の攻撃で特攻が上がったんだね。本当にアンタは運が良いよ、リオ!」
「もう1度《チャージビーム》!」

シビシラスが覚える技は4つしか無く、そのうち特殊技は《チャージビーム》の1つだけ。
なので、リオはこの技を指示するしか術が無い。

「一か八かだ。ハーデリア、最大パワーで《突進》だよ!!」

ハーデリアは迫り来る電撃に突っ込むと、力任せに突破してシビシラスに体当たりする。

「よし、これで──……!」

アロエの声が消え失せる。
渾身の力を振り絞ったハーデリアの《突進》を受けても尚、シビシラスが戦闘不能に
なっていなかったからだ。

「シビシラスに攻撃が当たる直後に麻痺の症状が出たみたいです……お蔭で、何とか攻撃に
 耐えられました」

そこで言葉を止め、リオは深呼吸する。


「《体当たり》!!」

シビシラスはハーデリアの体を押し続け、そのまま壁に叩き付けた。
《突進》による自分へのダメージもあり、ハーデリアはそのまま崩れ落ちた。

「良くやったねハーデリア、ゆっくり休みな」
「ありがとうシビシラス。良く頑張ってくれたわ」

アロエは戦闘不能になったハーデリアをボールに戻す。
リオも《体当たり》をした後に力尽きたシビシラスをボールに戻し、次のボールを手に取る。

「最後は貴女よ。お願い、ヒトモシ!」

リオは最後に己のエースポケモンであるヒトモシを繰り出した。

「やるじゃないかリオ。けれど次はあたしのエースポケモン。簡単には勝てないよ!
 ……出て来な、ミルホッグ!」

アロエが繰り出したのは細長い胴体と尻尾、腕を組んだ姿が特徴的のミネズミの進化系──
警戒ポケモンのミルホッグだ。

「ミルホッグ……強敵ね。さっきのハーデリアみたいに、ミルホッグも十中八九ゴーストタイプの
 対策をしていると思うけど、私達も昔と違って強くなったから勝ち目は充分──ヒトモシ?」

言いかけて、リオはヒトモシの異変に気付いた。
ミルホッグの姿を目にした瞬間、目を瞑って小刻みに震え始めたのだ。

(ヒトモシのこの反応、4年前にも……)

それは、初めてリオがヒトモシと出会った日。
ミルホッグの群れに囲まれた時も、ヒトモシは今と同じ様に自分の後ろで震えていた。
その時リオは、ヒトモシが自分より大きい相手が沢山居るから恐がっているのだと思っていた。

しかし、今ヒトモシの前に居るミルホッグは1匹だけ。
それでも震え続けているヒトモシに、リオは1つの考えに至る。

(ヒトモシは、ミルホッグ自体が恐いの……?)

自分と出会う前にミルホッグに酷い目に遭わされた。
それなら、ヒトモシのこの尋常では無い怯え方も理解出来る。
ヒトモシに出会ってから今日まで、特訓でミルホッグを相手にバトルをした事が無かったから
気付けなかった——いや、それは言い訳だ。

(昔と違って強くなったなんて、私が勝手に思い込んでいただけ。ミルホッグが恐い事だって、
もっと早く知る事が出来た。全部、私がヒトモシを知ろうと今日まで頑張らなかった結果が
今、目の前で苦しんでいるヒトモシなんだわ…………)

「……どうする?バトルを続行するかい?」

アロエの言葉にリオは俯く。
自分が指示を出せば、ヒトモシは震えながらも戦ってくれるだろう。

(……でも、)

恐怖でヒトモシの目から涙が溢れる。
友達になったあの日から見なかった、ヒトモシの涙。
トレーナーである自分が未熟だったから、苦しませてしまった。

リオは意を決して顔を上げる。

「いいえ。このバトル、棄権します」

(無理矢理戦わせるなんて、友達がやる事じゃないわよね)


「私の、負けです」


リオの小さな声はアロエに、そしてヒトモシに響いた。

Re: 22章 揺れる想い ( No.47 )
日時: 2020/07/26 23:17
名前: 霧火 (ID: HEG2uMET)

私の、負けです──

その言葉を聞いたヒトモシは瞑っていた目を開き、リオを振り返る。


『モ、モシ……』
「ごめんね……ありがとう、ヒトモシ。ゆっくり休んで」

リオは狼狽えるヒトモシを抱き上げて背中をぽんぽんと優しく叩き、モンスターボールに戻す。
それを静かに見つめていたアロエは、ゆっくりと口を開いた。

「刀は簡単に抜けるけど、抜いた刀を鞘に戻す事はとても勇気のいる事だ」
「アロエさん……」
「アンタは目先の勝利よりも自分のポケモンの事を考えて負けを選んだ。あたしは、そういう奴は
 嫌いじゃないよ。また挑戦しにおいで」

最後に柔らかく笑ったアロエに、リオの胸の奥が熱くなる。
目の前に居る大柄な女性の言葉は、リオの心を優しく包み込んだ。

「……っ、ありがとうございました!」

強くて優しいジムリーダーに、リオは感謝の意を込めて頭を下げた。


「あ!どうでした?バトルの結果は!!わたくし、気になって気になって!」
「ひっ!?」

各々分担を持って本と本棚の掃除に勤しむ人々に会釈をしながら、ジムから博物館の方へ戻った
リオを真っ先に出迎えたのは、鼻息が荒く、興奮からか眼鏡を曇らせたキダチだった。
暗い場所から明るい場所に出た故に景色が見え難く、リオが視界をクリアにしようと普段よりも
瞬きを多くしていた所に顔をぐっと近付けて来たのだから、タイミングが悪い。
視界がクリアになって安心した目に最初に映ったのがドアップで、鼻息荒く眼鏡を曇らせた
キダチなのだから、リオからすれば完全にホラーだ。

「鼻息荒いっすよキダチさん。博物館なんすから落ち着いて、静かにして下さい。
 仮にも副館長でしょう。あと無駄に近ぇ」

小さく悲鳴を上げたリオを見てキダチの襟首を冷めた目で引っ張ったのはアキラで、リオはホッと
息を吐いてからアキラにお礼を言う。

すると自分を見たアキラの目が、大きく見開かれた。

「リオ、お前……」
「それで!?どちらが勝ったんですかっ!?」

何かを言い掛けたアキラだったが、キダチの声に阻まれる。
その事に口元を引き攣らせる幼馴染に苦笑しながら、リオはバトルの結果を簡潔に話す。

「アロエさん、凄く強くて……最後は私が判断をミスしちゃって負けちゃいました」

リオが言い終わると、キダチは得意気に鼻を鳴らして眼鏡を持ち上げた。

「そうでしょう!わたくしの奥さんは綺麗で優しいだけでなく、バトルも本当に強いんですよ!」

(……この人は本当に!)

アキラはジロリとキダチを睨むが、興奮しているキダチには効果が無いようだ。

「皆は頑張ってくれたのに、悪い事しちゃった……アキラはこの後ジム戦でしょ?ポケモンセンターで
 皆を回復したら、私もすぐ応援しに行くから!」

落ち込んだ様子から一変、笑顔でガッツポーズをするリオを見て、アキラは溜め息を吐く。

「……いや、応援は良い」
「アキラ?」

不思議そうに自分を見上げるリオの頭の上に手を置く。

「それよりお前も疲れたろ?色々とさ……だから気分転換っつーか、少し休んでこいよ」
「!…そう、ね。うん、ありがと。ジム戦、頑張ってね!」
「ああ」

拳を前に突き出したリオに、アキラは静かに拳をぶつける。
それに顔を綻ばせ、リオは拳を下ろす。

「じゃあ、ちょっと休憩して来るわね!」

リオはアキラとキダチに手を振り、博物館を後にした。

「負けても笑顔を絶やさないなんて、リオちゃんは強い子ですね〜」
「強いっつーか、頑固なんですよ」


アキラは目を閉じ、大きな溜め息を吐いた。


 ┼   ┼   ┼   ┼   ┼   ┼   ┼   ┼   ┼   ┼


ここは【ヤグルマの森】。
光が僅かにしか差し込まないこの森は、心を落ち着かせたり、気分転換をするのに適した場所だ。

リオはタマゴを抱えてコケが生えた岩に横たわり、木の隙間から見える空を見つめていた。

「静かで何だか落ち着くわね。このまま寝ちゃいそう」

眠りの世界へ旅立ちそうになったリオを引き戻したのは、服の裾を掴んだヒトモシだった。

「……ん?どうしたの、ヒトモシ」
『モシモ……』
「さっきのジム戦の事?良いのよ、あれは私の判断ミスと未熟さが招いた結果なんだから。
 貴女は何も悪くないわ」

ふんわりと微笑んで頬を撫でるリオと何度も頷くシビシラスに、ヒトモシは口を紡ぐ。

「──ヒトモシは、ミルホッグが恐いのよね?」

リオの問い掛けにヒトモシは無言で頷く。

「そっか。私もね、小さい頃とても恐い物があったの。お母さんとお姉ちゃんとお爺ちゃん、
 そして……アキラが居てくれたお蔭で克服とまではいかないけど、今では何とか前向きに
 考えられる様になったわ」

リオの告白にヒトモシは驚く。
己の中でこの少女は恐れる物など何も無い、強い人間だったから。

「でも前向きになるのには時間が掛かったわ。小さい頃の私は意気地なしの上にマイナス思考で、
 周りに励まされても悪い方に考えちゃってね。このままじゃ駄目だって頭で理解してても、
 恐い物は恐いから……」

そこまで言って、リオはヒトモシに笑い掛ける。

「今回は休んでシビシラスのバトルを見てて。克服なんて出来なくても良いの。誰にだって
 恐い物はあるし、貴女は貴女だから。少しずつ、ゆっくり進んで行こう。私達と一緒に」

その言葉にヒトモシの心は救われる──しかしそれと同時に、罪悪感が募った。


本当に、そうやって甘えたままで良いのかと。


“あれ?リオじゃないか。”


「『!?』」

突然聞こえて来た透き通った声に、リオとヒトモシの肩が跳ね上がった。
シビシラスは悠然と漂っていて、リオの髪を引っ張っては離すを繰り返している。
声の主を捜して首を動かすと、茂みから顔馴染みの者が姿を現した。

馬の様な体躯に水色の尾、赤い鬣に1本の剣の様な角を持つポケモン──ケルディオだ。

「ケルディオ!もしかして今の声って……」


“そう、僕の声だよ。ポケモンがこうして喋るなんて、気味悪いかい?”


「そんな事無いわ。寧ろ、こんなに早く貴方に逢えた上に話せて嬉しいくらい!」

邪気の無い笑顔で言われ、ケルディオは火照った頬を隠そうと外方を向く。
今までは会ったらすぐに消えてしまっていたので、綺麗な毛をくれたお礼だけでも言えたら
良いなと思っていた。
まさか談笑出来るとは思わなかったので、リオにとって嬉しい誤算だ。

「言うのが遅くなっちゃったけど、綺麗な水色と赤色の毛をありがとう。とても素敵だし貴方と
 出会えた事が嬉しかったから、こうしてお守りとして持ってるの。勝手にごめんね?」


“喜んで貰えた様で嬉しいよ。それはリオにあげた物だから、どう使っても僕は責めないよ。”


「ありがとう。ところで、どうして私の名前を知ってるの?」


“ふふ、リオは有名だからね。”


ケルディオの言葉に疑問を感じたが、不意に袖を引っ張られ視線を下に落とす。
予想通り袖を引っ張っていたのはヒトモシだった。

『モシ!モシモ、モシモシシ』
「ケルディオと2人っきりで話をしたいの?」

ケルディオを指差して口の前で手を動かすヒトモシに勘で答えると、嬉しそうに頷いた。

「分かった。じゃあ、私とシビシラスは席を外すわね」

リオはシビシラスを促し、その場から離れた。



“僕に話したい事って何だい?”


リオ達が離れたのを確認して、ケルディオは穏やかに尋ねる。
その声音に安心したヒトモシは、ジム戦での出来事を余す事なく話した。


“……君は、何故彼が苦手なんだい?リオに出会う前、一体何があったの?”


ヒトモシは一瞬躊躇ったが、意を決してケルディオに自分の過去を語る。
そして話を聞き、全てを知ったケルディオは静かに息を吐いた。


“……やっぱり、君は僕とよく似ている。”


『モシシ?』


“うん、とてもね。そしてリオは師匠達と……嗚呼、僕にも似ているね。優しくて強いのに、
 何処か脆くて危なっかしい。”


確かにリオは優しくて強いけど、それ以上に危なっかしい。
現に自分に色んな物を見せようと奮闘して、体に傷を作る事が多かった。


“……だからかな。リオは大嫌いで、心を許しちゃいけない人間なのに!それなのに、リオだけは
 嫌いになれないんだ。僕の知る欲深く醜い人間とは違う、あまりにも綺麗な目で真っ直ぐ、
 僕を見つめるから……。”


ケルディオの瞳が揺れる。
まるで波の様に静かに、大きく。

Re: 23章 絶体絶命 ( No.48 )
日時: 2020/07/28 16:15
名前: 霧火 (ID: HEG2uMET)

ヒトモシとケルディオが話している、丁度その頃──


「シビシラス、スパーク!」

電気を纏い、シビシラスはジクザグに動きながら相手との距離を縮める。
不規則なシビシラスの動きに翻弄され《スパーク》を喰らったマメパトは、ぽとり、と地面に落ちる。

「うん!今の攻め方良かったよ、シビシラス!」

リオは胸に飛び込んで来たシビシラスを褒める。
基本的にじっとしているのが苦手なリオは、ジム戦に向けてシビシラスを鍛えていた。

そして鍛える以外にもう1つ、目的があった。

「うーん……」

シビシラスを撫でながら、リオは空のモンスターボール片手に唸る。
こうして森のポケモン達と戦っているのはシビシラスを鍛える目的もあるが、新たな仲間を
探す目的もあった。
今回のジム戦はヒトモシには見学して貰うつもりだが、シビシラスだけに負担を掛けるのは
出来る限り避けたい。

だからこうして野生のポケモン達と戦い、鍛えながら新たな仲間を探しているのだが、仲間探しは
難航していた。

「マメパトにモンメン、チュリネにクルミル。皆個性があって良いんだけど……」

リオは今まで戦ったポケモン達の能力と行動パターンを思い出す。
どのポケモンを仲間に選んだとしても、時間を掛けて鍛えればアロエのミルホッグ達とも互角に
渡り合ってくれるだろう。

しかし、新たな仲間を迎え入れてまずすべき事は特訓ではなく、周りの物……建造物と車等の
今まで居た自然豊かな環境とは真逆の、鉄とコンクリートに覆われた硬い環境に慣れて貰い、
お互いに信頼関係を築いてポケモン達とも打ち解けられる様にトレーナーが尽力する事だ。

慣れない環境下で緊張するポケモンを戦わせるのは残酷な事だし、それに加えてトレーナーとの
信頼関係が無ければ本来の力を充分に発揮出来ない。
他のポケモンと打ち解けられず肩身の狭い思いをさせてしまうと、ストレスを溜めさせてしまう。

元居た環境からポケモンを連れ出すのはトレーナーの身勝手だとリオは思っている。
実家が自然豊かな場所にあり、そこでのびのびと過ごすポケモン達をずっと見て来た故に、
強くそう思う。
だからこそ、仲間になってくれたポケモンには不自由無く楽しく過ごして欲しいし、その為には
いくらでも時間とお金を使う覚悟がリオにはあったのだが——


「この森の子は人に対して妙に攻撃的で、ゲットも許してくれないのよね」

こちらが特訓相手を探さなくても向こうが攻撃を仕掛けてくるので、特訓は捗っている。
しかし能力が他の子よりも高く、色も違うチュリネに遭遇して弱らせた所でモンスターボールを
投げようとしたら死角から攻撃が飛んで来て、それを避けてたらチュリネに逃げられたり、腰に
セットされた空のモンスターボール1個を、クルミルが糸を噴射して遠くに放り投げたりと、
ゲットに関しては全く進展が無かった。

(移動すれば状況が変わるかもしれないし、もっと奥に進もうかしら……)

そう思った矢先、


くぅ〜〜


力の抜ける情けない音が静寂を破った。

「そ、そういえば、まだお昼食べてなかったんだっけ」

お腹を抑えて顔を赤らめるリオ。

「周りに人が居なくて本当に良かった……!腹が減っては戦は出来ぬって言うし、休憩しよっか」

シビシラスが頷いたのを確認したリオはリュックから取り出した虫除けスプレーを体に吹き掛け、
レジャーシートを広げた後にポケモンフーズの封を開ける。
各自の皿にポケモンフーズを入れ、その上に細かく刻んだ木の実を乗せ終えた頃、草を掻き分けて
ヒトモシが出て来た。
その後ろから、辺りを警戒しながらケルディオも歩いて来た。

『モシ〜』
「あ、2人共おかえり!お腹空いたでしょ?お昼食べましょ♪」

笑顔で自分の隣を叩くリオに、ケルディオは首を横に振る。


“折角のお誘いだけど、僕は遠慮しておくよ。人間が増える前に移動したいからね。”


「そっか……あ、怪我してるわよ、そこ」

リオが指差したのはケルディオの後ろ足。
白い肌には目立つ、赤い傷跡がうっすらと残っていた。


“本当だ。多分森の中を移動してる時に出来たんだ。大丈夫だよ、只の擦り傷だから……。”


「駄目よっ!掠り傷だからって油断してちゃ悪化するわ」

リオはリュックから傷薬(消毒・殺菌効果あり)を取り出すと、ケルディオの足に吹き付ける。
そして移動するのに邪魔にならない程度に包帯を綺麗に巻き付けていく。


“……。”


目にも止まらぬ早業に、呆然とするケルディオ。

「ん!消毒はしたし、後は自然に治るのを待つだけね」


“……有り難う。じゃあ、そろそろ僕は行くね。ジム戦、頑張ってね。”


ケルディオは微笑むと、背を向けて森から去って行った。
完全に姿が見えなくなるまで見送っていたリオだったが、ふと疑問が浮かんだ。

(あれ?私、ジム戦の事ケルディオに話したっけ?)

目を瞑って記憶の糸を辿るが、お腹の虫が鳴ったので考えを中断する。

「……まぁ良いか。さてと、じゃあお昼食べよっか。いただきます」

リオとヒトモシが手を合わせて、シビシラスが手を合わせる代わりにお辞儀をする。
リオが自作のおにぎりを、ヒトモシとシビシラスがポケモンフーズを口にしようとした、その時。


ヒトモシとシビシラスが地面に伏した。

「ヒトモシ!?シビシラ、……っ!」

伸ばしかけた手を、咄嗟に鼻と口に持って行く。

視線の先には苗木のような姿をしたポケモン──根っこポケモンのチュリネが居た。
そして頭頂部の葉から出ている黄緑色の粉。

(あれは……チュリネの《眠り粉》だわ。だからヒトモシ達は眠っちゃったのね)

粉を吸い込まない様に細心の注意を払いながら、冷静に状況を分析する。

(虫除けスプレーを使ったからって安心しないで、シッポウシティでお昼を食べていれば……!
いや、後悔も反省もヒトモシとシビシラスに謝るのも後で沢山すれば良い。2人共、今は戦える
状態じゃない。これ以上相手を刺激しない様に、まずはこの場から逃げなくちゃ)

リオは荷物を静かに片付けてリュックに仕舞うと、ヒトモシ達をボールに戻してゆっくりと後退る。
前を見つめたまま後退を続け、時々柵と木に腕をぶつけながらも出口に向かって動く。

出口まで、あと10メートル。

(あと少しで、出口……!)

後ろから感じる光にリオが一瞬気を抜いた──刹那。


「!!」

粘着性のある糸が足に絡まり、後ろに進めなくなった。
糸を出しているのは葉っぱの服を着た、裁縫ポケモンのクルミルで、その小さな体からは想像もつかない程、
糸を引っ張る力が強い。

現に今、リオの体はズルズルと前に引っ張られている。

(自分で糸を切って逃げるしかない!)

背中のリュックから鋏を取り出そうと手を伸ばすが、その手も後ろの木に登っていたクルミルの糸に
捕らえられ、身動きが取れなくなる。

前と後ろには野生のポケモン、ヒトモシとシビシラスはボールの中で眠ったまま。
そして自分は手も足も動かせぬ状態……


(あれ?これって結構ピンチ、かも……?)


リオは絶体絶命の状況に、たらり、と冷や汗を垂らした。



久々のあとがきです。
リオがケルディオの手当てをする際、何であんなに手際が良かったのかというと、
自分が小さい頃よく怪我をして、何度も手当てを繰り返すうちに自然と身に付いたからです。
ポケモンの手当ても、野生のポケモンを相手によくしてましたので。

長くなりましたが、次回、絶体絶命のリオを救うのは……!?
それでは次回もお楽しみに!

Re: 24章 虫の王子様と新たな仲間 ( No.49 )
日時: 2020/07/28 21:32
名前: 霧火 (ID: HEG2uMET)

(どうすれば……)

リオはどうすればこの状況を打破出来るか考えていた。
助けを呼ぼうにも、ここは町から離れた森の中、きっと大声を出しても届かない。

考えている間にも自分を取り囲むポケモンの数は増えていく。
そして、奥から他のポケモンを掻き分けて1匹のポケモンが出て来た。
茜色がかった頭に緑色の体、小さなムカデのような姿。
ムカデポケモンのフシデだ。

フシデはポケモン達とリオを見渡すと、のそり、のそりと這ってリオに近付く。
靴の上にフシデが乗り、触覚が当たってリオの緊張が高まった──その時。


「《葉っぱカッター》!」

どこからとも無く無数の葉っぱが飛んで来て、リオの動きを封じていた糸を切り落とす。
解放されてホッとしたのも束の間、体勢が崩れて倒れそうになったリオの体を後ろから
包む様に支えたのは、パーマがかった髪に緑を基調とした服装、そして蝶のベルトが特徴的な
顔立ちの整った男性だった。

「あ、貴方は?」
「ん?ボクかい?ボクの名はアーティ。虫ポケモンに純情ハートを奪われた男さ!」
「は、はぁ……そうなんですか」

正直「純情ハート」が何なのか理解出来なかったが、今自分を支えている彼が拘束を解いて
絶体絶命だった状況を変えてくれた事に変わりは無い。

「アーティさん。助けていただき、ありがとうございます」

立ち上がりアーティと向き合ってお礼を言うリオに目尻を下げ、アーティが手を伸ばした。
リオの汗で頬に張り付いた金色の髪にアーティの長い指が触れ、そのままリオの耳に掛けられる。

「なに、礼には及ばないよ。ボクはただ、囚われのお姫様を救い出しただけだからね」
『……』
「お、お姫様って」

自分には似合わない甘い言葉に恥ずかしさ半分、困惑半分でアーティを見上げる。
アーティの足元で無言で頷くのは、葉っぱを着込み、ジト目が魅力的な葉籠りポケモンのクルマユ。
先程の《葉っぱカッター》は、このクルマユが繰り出した技らしい。

「ここ最近、変な連中がこの辺りをウロウロしてるみたいなんだ。虫ポケモンはデリケートだからね。
 自分達の住処を散策されて、皆気が立ってるんだ」
「変な連中……」

「変な連中」と聞いて、以前戦ったサパスとマアトが頭に浮かんだが、すぐに頭を振る。
アーティとクルマユの登場に怯んでいたポケモン達が、再びリオ達を囲み始めたからだ。

「さて。ここはキミを連れてこの場を突破したい所だけど」
「だけど?」
「正直、この数のポケモンを相手にするのはちょいと骨が折れるんだよねえ。キミ、ポケモンは
 持ってるかい?」
「それが……チュリネの《眠り粉》で私のポケモン達は皆寝ちゃったんです」
「成る程。やっぱり空気中に漂っていたのは《眠り粉》だったんだね」

【ヤグルマの森】は風が吹き難いのか、ヒトモシ達を眠らせる時に使った《眠り粉》は
今も尚、辺りに漂っている。
その所為でリオとアーティ、そしてクルマユは口と鼻を抑えるしかない。

特にクルマユは包まっている葉っぱの片方で口を抑えているので、バトルに支障が出るだろう。

(空気中に漂っているこの粉をなんとか出来れば……!)


──カタリ。


その時、リオのリュックが小刻みに揺れ始めた。
逸早く動いているのがタマゴだと気付いたリオは、肩から外したリュックを地面にそっと置き、
片手でリュックのファスナーを開けてケースからタマゴを取り出す。

カタ、カタ。
カタカタカタカタ……

タマゴは一定のリズムで動いていたが、その動きは段々早まり、やがてタマゴが音を立てて割れ始めた。

パキッ、パキパキパキ……

「生まれるっ……!」

タマゴが完全に割れると同時に、眩い光が森を照らす。
そして光が消え、姿が徐々に現れる。

『ラーミィッ』

薄い灰色の体に大きな耳とフサフサした尻尾、そして可愛らしい目。
リオの腕の中に居たのは、チンチラポケモンのチラーミィだった。

「チラーミィ……」

家の周りで野生のポケモンがタマゴを抱え、子が孵る瞬間を何度か遠目で見た事はあった。
しかし、こうして間近で——腕の中でポケモンが誕生するのを見れたのは初めてだ。
感動していたリオだったが、すぐに今の状況を思い出してチラーミィを抱き上げる。


「生まれたばかりのあなたを、いきなりこんな危険な目に遭わせてごめんなさい……でもお願い、
 どうか私達に力を貸して!」
『ラーミィ!』

リオの言葉に頷くと、チラーミィは腕から下りると、瞳に闘志を込めてポケモン達を睨み付ける。

「ありがとうチラーミィ!」
「リオちゃん。ボクとクルマユはあのフシデと戦うよ。多分あのフシデはこの森のボスだ。
 彼を倒せばこの場を切り抜けられるかもしれない」
「分かりました。お願いします!」

リオとチラーミィはアーティに背を向け、目の前に立ち塞がるポケモン達を見据える。
チラーミィの初陣にしては、あまりにも難度が高いが……

(私が目となってチラーミィを支える!)

「行くわよチラーミィ!クルミルに《くすぐる》!」

チラーミィは素早くクルミルの後ろに回り込むと、尻尾でクルミルの背中と頬をくすぐり、
攻撃と防御を下げる。

『ミルルー!』

くすぐり地獄から解放されたクルミルは、口から粘着性の糸を吐き出す。

「《糸を吐く》ね。チラーミィ、右に避けて《アンコール》!」

右にジャンプして攻撃を躱すと、チラーミィは盛大に拍手をする。
クルミルは呆気に取られるがすぐに攻撃に移る──しかし、口から出たのは又しても《糸を吐く》。
自分の意志と関係無く出る糸に、クルミルは困惑する。

「《アンコール》は相手が最後に使った技を3ターンの間、ずっと出させる技よ。だから貴方は暫く
 攻撃に移れないわ……《往復ビンタ》!」

チラーミィは両手と尻尾を使い、クルミルの頬をビンタする。
《くすぐる》で防御を下げられて、攻撃手段も封じられたクルミルはビンタが終わると同時に
目を回して倒れた。

『クルル!』

間髪入れずに、木に登っていた別のクルミルが鋭い葉っぱを無数に飛ばす。

「右上から攻撃が来るわ!チラーミィ、大きく後退!」

チラーミィはリオの指示通りに後ろへ跳ねて《葉っぱカッター》を躱すと、今度は上に
ジャンプして尻尾に渦状の水を纏わせる。

『ラー……ミィッ!!』

そして尻尾を上げて水を四方八方に放出し、木に登っていたクルミルと前に居たチュリネと
モンメンを弾き跳ばした。

(これは、アクアテール!)

タマゴから生まれて来るポケモンは、親の技を受け継いで生まれる事がある。
チラーミィが使った《アクアテール》は、きっと親から受け継いだ物なのだろう。

「よし、これなら!チラーミィ、尻尾にもっと大きな渦状の水を纏わせて!」

チラーミィは尻尾を左右に振り、渦状の水を纏わせる。
その渦は段々と大きくなり、フラフープ程の大きさにまで達する。

(《眠り粉》は確かに強力。でも、植物の種やシャボン玉みたいに粉も空気の流れに乗って飛ぶ物……
それなら空気中に漂っている粉はチラーミィの尻尾に引き寄せられるはず。《アクアテール》は
水と一緒に、空気も渦状に纏わせるから!)

リオの理論を証明する様に、空気中を漂っていた粉は突然発生した空気の流れによって、
全て引き寄せられた──チラーミィの尻尾の周りに。

「アーティさん!」
「よぉし、これで思う存分戦える!クルマユ!《虫のさざめき》!」

クルマユが葉を擦り合わせ、音波を起こす。
それに対してフシデは耳を塞ぎたくなる程の高音の音波を発する。


2つの音波はぶつかり合い、木々を、水面を揺らした──


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