二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- テイルズオブヴェスペリア 非日常の中の住人達
- 日時: 2011/01/09 13:13
- 名前: リクア (ID: iHbdDjKI)
初めまして。リクアです。
今回が初投稿です。なので、誤字とかはちょっと大目に見て下さい…
ですが、一生懸命頑張りたいと思うので、よろしくお願いしますっ!(ペコリ)
あとできるだけコメントお願いしますっ!
よろしくお願いします!!!!
***主な登場人物***
ユーリ・ローウェル アイリッジュ・グリーン リンク・グリーン イオ・グラン リオ・グラン リタ・モルディオ
***主な登場人物***
- Re: テイルズオブヴェスペリア 日常と非日常 ( No.16 )
- 日時: 2010/07/09 17:27
- 名前: リクア (ID: A6nvNWRl)
コメ有難うございます!
なんか色々ゲーム要素が入って来ましたが、これからもがんばりたいと思いますのでどうぞよろしくお願いします。
>横田 真澄様
- Re: テイルズオブヴェスペリア 日常と非日常 ( No.17 )
- 日時: 2010/07/19 16:40
- 名前: リクア (ID: FQvWtEF/)
第十二話
俺達はあれから何時間も走り、帝都に着いた。着いた場所は帝都の中最外周、下町だった。俺達は下町に入って呆然としていた。帝都に着いたはいいが、どこでリタの治療をしてもらうか考えていなかったのだ。ただ帝都に着くことだけを考えていたから、そのあとの事は考えていなかった。と、俺の目の前を通った男の子がぱっと表情を明るくして俺に飛びついて来た。
「ユーリ!!!お帰り!もう、一体どこに行ってたんだよ!6年間も!」
泣きながら男の子は言うが、俺はこの子を知らない。男の子は後ろを振り返り、ひとりの女性に向かって手招きをした。女性は最初は不思議そうにしていたが、俺を見るなり飛んできた。
「ユーリッ!ユーリなのねっ!?本当に!?ああ、ユーリ、6年間も居なくなるなんて酷いじゃない!みんな必死であなたの事を探していたのよ!ねえ、テッド、ハンクスおじいさんを呼んできてあげて。」
女性はさっきの男の子をテッドと呼び、テッドはコクンとうなずくとどこかへ走って行った。俺は驚いて目を丸くする事しかできない。やがて、テッドが一人の老人を連れてきた。
「おお!ユーリか!こンの馬鹿もんがああっ!6年間も何処をほっつき歩いておった!みんな、心配したんだぞ・・・!」
老人は俺を軽く殴り、それから泣いた。どうやらこの人たちは俺と面識があるようだが、俺はこの人たちを知らない。
「さ、あなたのお部屋はちゃんとあるから行きなさい。」
女性がぐいぐいと俺の背中を押して仲間達もある家の前まで連れてこられた。
「ユーリが必ず帰ってくるって思って、ちゃんとお部屋も月一で掃除してたんだよ!あれ?自分の部屋忘れちゃった?ははっ。仕方ないなぁ!そこのわきの階段を上って手前の部屋だよ!」
と、テッドが教えてくれた。俺達は案内された部屋に入った。
「ユーリさん、あの方々とお知り合いだったんです?」
部屋に入ってすぐ、アイリッシュが俺に聞いてきた。俺は首を横に振る。イオとリオも入ってくる。俺は部屋にあったベッドにリタをおろした。
「リタ、大丈夫かしら?」
イオがリタの顔を覗きこんで言った。俺は洗面器に水を汲んできて、水を吸ったタオルを絞ってリタの額に乗せた。
「さあな。分からねーけど、とりえず起きるのを待てばいいだろ。」
俺はそう言った。と、俺とイオの間にリンクがチョンと割って入って来た。いつもなら感情のない瞳には、心配そうな色が広がっていた。アイリッシュはまだ小さいリンクの身体を抱き上げる。
「リンクも心配してくれているのね。有難う。」
アイリッシュはリンクの白い頬に顔を当てて言った。
「じゃあ、私達も一休みしましょう。疲れちゃった。」
リオはうーん!と伸びをして、リタが寝ていても空いているスペースに腰をおろして眠ってしまった。イオとアイリッシュは椅子にもたれかかって眠ってしまう。俺もそろそろ疲れてきたかな・・・。と俺はまどろみの中に落ちて行きながらおもう。俺は眠る最後に、ドアから犬が入って来るのを見たような気がした。
俺は、リタの悲鳴で起きた。どうやら目が覚めたらしい。ガバッと起き上がると、リタは歯をガチガチと鳴らして一匹の犬を見ていた。俺はその犬を見て犬に飛びつく。
「ああ、ラピード!無事だったんだな!!」
俺はラピードのフワフワな毛に顔をうずめて言う。
「ななななな、何よ、その犬!」
リタが悲鳴を上げながらラピードを指差す。
「ん?ああ、ラピードは俺の相棒みたいな存在で、去年、乗っていた船が転覆してそれ以来行方不明になってたんだよ。」
俺はラピードに顔をうずめたまま言った。リタはハッとした顔になると、
「べ、別に怖がってなんかないんだからねっ!!」
と言って、額にくっついていたタオルを取って立ちあがった。いつの間に起きていたのか、アイリッシュがクスクスと笑っていた。
「「んー?何ー?」」
イオとリオが同時に起きた。今のリタの声で起きたのだろう。リタは顔を赤くして部屋を出ようとする。
「ほ、ほらっ。アレクセイはザーフィアス城にいるんだからっ。さっさと行くわよっ!」
照れ隠しでリタは語気を強くしていった。俺達はリタの後について行った。
〜第十三話へつづく〜
- Re: テイルズオブヴェスペリア 日常と非日常 ( No.18 )
- 日時: 2010/07/28 14:30
- 名前: リクア (ID: lYj7ms9H)
第十三話
俺達は、照れ隠しで部屋を出て行ったリタについて行き、下町から広場を通り過ぎ貴族街の入り口前のザーフィアス城の、門の前に来ていた。
「ったく、今日は面倒な日ね。見張りがいつもなら一人なのに今日は五人も居るわよ…」
リタは舌打ちをしながら、門の見張りをしている五人を睨んで言った。俺達は今、茂みの中に隠れて様子を見ているのだが、見張りが気を緩める気配は全くない。俺が強行突破を提案したが、それは平和主義のアイリッシュによって否定された。…リタとイオとリオは賛成してくれたんだけど。
「じゃあ、他の道を探せばいいんじゃないでしょうか?」
アイリッシュが小声でリタに言った。リタは首を横に振った。俺はふと貴族街の方を見てみた。見たこともないような大きな屋敷が立ち並び、いかにも高級そうな服に身を包んだ貴族達が見えた。その時、俺は今まで体験したことが無いくらいの頭痛がした。持続的に痛み、特に脈打った時が痛む。キィィィィンと高い音に混じり、声が聞えた。
「我の声にこたえよ。力は満ちつつある。さあ、我が声にこたえよ!!」
この場に居る誰の声でもなかった。低い声が俺の中に秘められた何かを出そうとしている。
「くっ・・・うっ!?」
俺は思わず頭を押さえてうめいた。途端にこの場に居る全員の顔に心配する色が浮かぶ。俺の中でしばらくその声は響き、次第に聞こえなくなっていくのにつれ、痛みとあの高い音もなくなっていった。
「ユーリ、大丈夫なの?」
リオが俺の顔をヒョコっと覗いてきた。俺は片手を軽くヒラヒラと振り、立ちあがって貴族街の方へ歩いて行った。何故かこっちの方に城に入れる所があるような気がしたのだ。いや、ぼんやりと覚えているのだ。それも本当なのかどうか分からないが。アイリッシュ達は意味も分からず、とりあえず焦って俺の後をついてきた。
「あんた、貴族街入ってどうするつもりよ。」
リタが小声で俺に聞いてきた。おれはさあ?と答えて、貴族街に入ってすぐ横の屋敷の手前の像の前に立った。
「…この像がどうかしたの?」
イオが像を見て顔をしかめながら聞いてきた。
「さあな。分からねえけど、何故かここの下にある地下水道みたいな所を通って出ていけば、城の中に繋がってるような気がするんだよ。気がするっていうか、なんとなくぼんやりそんな事を覚えている様なかんじがしてさ。」
「気がするって、感じがするって…どれもあやふやじゃない。大体、なんでユーリがそんなこと知ってるの?」
リオが不思議そうな顔をして、俺の答えにケチをつける。俺はフッと笑って像を動かした。すると、地下に向かって穴があいていて、ご丁寧な事に梯子まで突いていた。
「おっ。ビンゴ♪」
俺はさっそく穴の中へ足を突っ込み、地下へ降りた。他の奴等も後からついて降りてくる。その時にミニスカートだったリタは、やれ降りる場所から離れた場所に居ろだの、自分が降りている間は絶対上を見上げるなだのうるさかったが、これ以上騒がれても迷惑だったので、言う通りにした。この地下は、俺がぼんやりと覚えていた通り、地下水道のようになっていて、水も豊富だった。
「うわぁ・・・・魔物がいるじゃない。」
降りてきたイオが、地下のところどころに居る魔物を見て、面倒くさそうに言った。
「ま、とりあえず倒せばいいって話だろ。」
俺はニカッと笑って歩き出して、とりあえず近くに居た魔物はバッサバッサ斬り倒していった。そして俺達は、もうひとつ梯子を見つけた。
「これが出口なのね!!」
アイリッシュは駆け出して梯子に近寄った。その時、道の横にあった水がゴプンッと揺れた気がした。俺は一回目をこする。すると、水がどんどん上に引っ張られるように上がって行き、最後には巨大な魔物のようになっていた。
「な、何これ!」
リタは一歩後ずさった。しかし、足を何かに取られて転んだ。俺はリタの足元を見る。そこは、道の石が一つだけ突き出ていた。リタはしばらくそれを見つめていた。そのうちに徐々に石が出てきて、終にはゴーレムのような、大きな壁のようになった。おかげで俺達の足場が無くなってしまった。落ちる!!!と思って全員が目を瞑った。しかし、いつまでたっても水の感覚はしなかった。恐る恐る目を開けてみた。俺は、その光景をみて息をのんだ。今まで何もしていなかったリンクが、顔を歪めて透明な床を作り出していた。手を高く上に掲げ、そこから溢れた光がやがて透き通り、それが道を作っていた。
「う、ううん…!早く、行って…それほど長くは持たないからっ…!!」
リンクが今までとは少し違う声で俺達に言った。俺はコクンとうなずき、全員に梯子を登るように言った。だが、アイリッシュだけはその場を離れようとはしなかった。
「アイリッシュ!行かなきゃやばいぞ!」
俺がアイリッシュの腕をつかんで引っ張っても、アイリッシュは動こうとしない。ただひたすらに、俺達の為に頑張ってくれているリンクを見つめていた。
「嫌よ!嫌っ!リンクを置いて行くなんてできない!私のリンクっ・・・!」
アイリッシュは泣きながらリンクに手を伸ばそうとした。だが俺はその手を叩いた。
「アイリッシュ!!まだ分かんねえのか?!何のためにリンクがあそこまで頑張ってくれていると思ってる!俺達を助けるためだ!リンクのその思いを、無駄にしていいのか!?」
俺はアイリッシュに向かって怒鳴った。リタとイオとリオは、長い梯子の上の方で肩をすくめた。アイリッシュは涙でぬれた顔で俺を見上げ、素直に立ちあがった。そしてアイリッシュが行こうとした時、梯子の前の方の床が、今目の前に居る石でできた壁に一体化してしまった。俺はハッとする。さっきからなぜ、俺達にあの巨大な敵からの攻撃が来ないのか。それが分かったのだ。いつの間にかリンクは床だけでなく、梯子から天井の方にかけてまで、結界を張っていてくれていたのだ。けれど、梯子の方まで床がなくては梯子を使って上に行けない。リンクはそれを察してくれて、透明な床を梯子の下までのばしてくれた。
「ありがとな、リンク!」
俺はアイリッシュと一緒に、リタとイオとリオの後を追った。俺達が上って行って、やがて何かにぶち当たったから、それをどかして外へ出た。最後に俺が出た途端、下からバッシャーン!と何かが水に落ちる音と、石が転がり落ちる様な音が聞えた。その音を聞いて、アイリッシュが再び地下へ戻ろうとしたが、俺はそれを無言で制した。アイリッシュは泣くのを堪えて立ちあがった。
「ここは、ザーフィアス城内ね。よしっ侵入成功!」
リタはぎこちなく笑いながら言って、歩き出した。おそらくアイリッシュに気を使ったのだろう。俺達はそのリタの後について行った。
〜第十四話へつづく〜
- Re: テイルズオブヴェスペリア 日常と非日常 ( No.19 )
- 日時: 2010/07/30 23:25
- 名前: リクア (ID: ze9J8nGv)
第十四話
一体何時間この城の中を歩いただろう。何回か騎士が出てきて、その度に倒してはいたけれど、城の中が広い+構造が複雑、という事で俺達は完全に迷子になっていた。俺もう半分ヤケクソで一つの扉を勢いよく蹴り開けた。
その部屋の中には——————
「アレクセイ・・・ディノイア。」
リタが声を漏らして部屋の中に居たひとの名前を呼んだ。現騎士団長、アレクセイ・ディノイア。アレクセイは、部屋の扉の真正面の執務机の大きな椅子に腰かけていた。いかにも俺達が来るのを想定していたかの様な顔をしていた。
「アレクセイ、私達の記憶について研究しているという噂は、本当なのですか?」
アイリッシュが一歩前に出てアレクセイに尋ねた。アレクセイは大きな椅子を揺らして立ちあがった。
「ああ、研究しているとも。君達の記憶はこの帝国に大きな繁栄の源をくれたのだから。」
アレクセイは形だけの礼の仕草をした。しかし俺達はその仕草よりも言葉に引っかかった。俺達の記憶が、帝国の繁栄の源になった・・・?それはどういうことだ?と。
アレクセイはそんな風に考えていた俺達を見てフッと笑った。
「君達の記憶は実にいいものだった。記憶とエアルを使ってあれだけの威力を生み出せるとは。」
クックックと笑いながらアレクセイは俺達に一歩近寄った。リタは何かを考えている様だった。腕を組んで考え込んでいる。
「しかし、物はいつか尽きるものだ。それが切れかかっている時、君達が来てくれたから大助かりだよ。」
アレクセイは俺達を馬鹿にしたように笑うと、指をパキンッと鳴らした。すると今まで何処に隠れていたのか、騎士が5人ほど部屋から現れ、扉を開けてさらに5人が入ってきた。
「客人を、別室へお連れしろ。」
アレクセイの合図とともに俺達は騎士に取り押さえられる。そして投獄されてしまった。俺は入口に一番近い牢屋、アイリッシュとリタは俺の左斜め後ろ、イオとリオは俺の左隣の牢屋だった。
「リタ、さっきは何を考えていたんだ?」
俺は鉄格子越しに前の牢屋に入っているリタに聞く。
「もしエアルと魔導器と関係しているのなら、私にも分かるかもって思って…解析中だったの。」
リタは眠そうなあくびをしながら答えた。イオとリオの声がそのあとに続いて言う。
「「つまりエアルと魔導器を使って記憶をどうにかしてたって訳でしょ?」」
さすが一卵性双生児。喋るときは殆ど同時で見事にハモってる。リタはそう、と言った。
「おおよその事は分かってるんだけど、まだ確信まで行かなくて…何か資料があればいいのに…」
リタは落ち込んで溜息をついた。しかし次の瞬間、何かひらめいた様に自分の服にぶら下げていたノートを取り出し、ペンで何かを書きだした。その様子は俺の牢屋からも見えた。アイリッシュがそれを覗きこんでいるが、全く理解できていないようだった。
「源、繁栄、エアル、魔導器、記憶…」
リタが何かブツブツと呟いている。俺は見張りの騎士の様子を見る。グースカ大口を開けて寝ている。
「そうね、てことは…うん、まず脱出しよ!」
リタが声を張って立ちあがり、魔術を発動させた。簡素なつくりの鍵はすぐに弾き飛び、リタとアイリッシュは牢屋の外へ出て俺達も出してくれた。こんなにあっさり壊せるなら最初からやればいいのに、と俺は思ったが、口には出さなかった。
俺達は牢屋を出て、没収されていた荷物も取り返して脱獄した。俺達はそれからしばらく、また城の中を彷徨っていた。俺はもうだんだん面倒くさくなってきて、適当に部屋のドアを開けた。他の部屋とは少し作りが違う感じだったからだ。
まあ、そんなわけでとりあえず開けたのだった。しかし俺は部屋の中に居たひとを見てすぐにドアを閉めようとしたが、イオとリオによって阻まれた。部屋の主は俺を見て目を見張る。
「ユーリッ!一体今まで何処を歩いていたんだ!騎士団をやめたと思ったらすぐにどっかに行っちゃったって聞いたし!」
部屋の中に居た金髪の青い瞳の青年が、俺に対して怒りながらズカズカと歩いてきた。
「…誰この人。知り合い?」
イオが俺の事を見上げながら聞いてきた。俺は少し頭をかきながら部屋に入って説明した。
「フレンだよ。フレン・シーフォ。俺の幼馴染、らしいけど。前に騎士団で一緒だった奴さ。」
俺は軽く目の前に居る俺に怒っている青年、フレンを指差しながら言ったが、フレンは怒りから安堵の表情へと変えていった。
「もうあえて幼馴染らしいって言った事には突っ込まないでおくよ…でも、君が帰ってきて本当に良かった…でも、君がココに居るなんて十中八九やっかいごとだろ?」
フレンは俺に歩み寄ってきて俺の手を取った。最後の一言は無駄だったけど、目にはうっすらと涙を浮かべていた。俺は実はフレンの事も、全てを覚えている訳じゃない。騎士団で一緒に生活したのは覚えているけど、幼馴染であるという事は、全く覚えていない。
「あ、そうそう。アレクセイ閣下がさっきなんか急いで地下の方に向かっていたけど、何なんだろうね?」
フレンは首をかしげながら言った。俺はフレンの手首を掴んで部屋の外へ出た。他の奴等も着いてきた。
「フレン、ちょっとそこへ案内しろ。」
俺はフレンに言った。フレンはコクンとうなずくと、少し離れた所にあったドアをギィィと開けた。ドアからすぐに階段になっていて、そこから地下へ繋がっていた。そして俺達は地下室へと進んでいった。地下室が、どんな場所なのかもわからずに。
〜第十五話へ続く〜
- Re: テイルズオブヴェスペリア 日常と非日常 ( No.20 )
- 日時: 2010/08/02 12:58
- 名前: リクア (ID: 5YBzL49o)
第十五話
あれから暗い地下へと続く階段を俺達は降りて居た。照明もついてはいるものの、ほとんど照明器具として役に立っていなかった。すると、何故か俺は気持ちが悪くなってきた。身体がだるい。
「ユーリ、大丈夫かい?エアルが濃いみたいだけど。」
フレンが俺の異変に気づいて声をかけてくれた。俺は眼だけで大丈夫、と返事をしたが、身体はあまり大丈夫ではなかった。他のメンバーも苦しそうだ。
「大丈夫じゃなさそうね。みんな。フレンだって大丈夫そうにしてるけど、結構つらそうじゃない。」
リオが詠唱を始めた時、リタがそれを手で制した。
「これだけのエアルが、普通にある訳が無いじゃない…もしかしたら、この先にあるのはエアルクレーネかも知れないから、ダメ。」
リタは結構辛そうに言った。肩で呼吸をしている。そういえば、赤い粒が飛んでいる。これは…エアル?!俺は心臓がドクンとはねた様な気がした。リタはそんな様子の俺の気持ちを見透かしたように笑った。
「エアルは異常な濃度になると赤くなるの。そしてその異常な濃度のエアルは、人体に影響を及ぼす…特に成長期のガキとかはね。エアルクレーネはエアルがある場所なの。まあ、エアルは台地を流れてるからどこにでもあるのは当たり前なんだけど、特に噴き出す場所ってのがあるの。」
「それがエアルクレーネって事か…」
リオがリタの説明を聞いて納得したように呟いた。そゆこと、と小さく言ってリタは何か自分の服にぶら下がっていた物を取り外した。魔導器だ。
「これはエアルを吸収して分解して、再構成できる術式が組み込まれた魔導器よ。これで周囲のエアルを吸収して分解していけば、多分行けるとは思うけど…これも魔導器だから起動しても正常に動いてくれるかは分からない…」
リタは魔導器を階段に静かに置いて起動させた。すかさずポケットから何かを取りだして魔導器の魔核にかざして読み込ませていた。
「それ、何ですか?」
アイリッシュが不思議そうに聞いている。リタはエアルに過剰に反応しないようにする術式、と短く答えて魔導器を進ませていた。すると周りにあった赤い粒がフウッと消えていき、息苦しさも無くなった。これは本当にその働きをする魔導器なんだ、と俺は思った。フレンはその様子を呆けて見ていたが、息苦しさが完全に無くなると、また階段をおり始めた。俺達それから何十分か歩いて、地下に降りた。地下室は薄暗かったが、そこにいたのは—————
「アレクセイ閣下!」
フレンが地下にいたアレクセイの姿を見て飛びつきそうになった。だが俺はそのフレンを制した。アレクセイは俺たちに背を向けていたがゆっくりとこちら側を振り返った。薄く笑っている。アレクセイはこの大きな地下室の天井にまで届きそうな程大きい魔導器を見て居たのだ。リタはアレクセイの手元にあった透明な解析盤を見て、目を疑っていた。信じられない、という表情で。どうした?と俺が聞こうとした時、リタが口を開いた。
「やっぱり…私の仮説は間違えて居なかったのね…間違っていて欲しかったのに…!」
ギリギリと歯ぎしりをしながら言うリタの横顔は、怒りに満ちていた。アレクセイはそのリタを見て鼻だけで笑った。
「これはこれは。天才魔導士のリタ・モルディオか。私とした事が迂闊だったな。では、もうそちらでは全てが理解できただろう?リタ・モルディオ。説明してみろ。」
アレクセイはなおも笑い続けて、解析盤を消した。リタはクッと言った。
「あの魔導器は、あの子は、エアルと記憶を使ってマナを作り出すモノよ。マナはエアルから物質に変わる中間の物。だから不安定なのよ。その不安定な物質でもない、エアルでもないマナを固定させるのが、記憶。おそらくそれで記憶とかのカケラが出来るんでしょうけど。でもマナは作り方によってはすごく軍事的な物にもなる…」
リタは手をぎゅっと握っていた。悔しさをこらえる様に。俺にはマナと言う物が良く理解できなかったけど、とにかくそれに俺達の記憶が使われている事は分かった。アレクセイは怪しげな笑みを浮かべた。
「そうだ。お前たちに冥土の土産にいい事を教えてやろう。そのリタ・モルディオが説明した通り、私はお前たちの記憶を使って記憶の欠片を作った。これにはとてつもない力がこめられていてね。元々魔核とは聖核(アパティア)を砕いて術式を組み込んで出来た物でね。それと同様に、記憶の欠片を魔核と同じように術式を組み込んで。魔核の代用にすると魔導器の性能を最大限まで引き出してくれる!これを兵装魔導器(ホブローブラスティア)に使用すれば得難い福音となる!君たちの記憶は少ない量で実に良い記憶の欠片を作る事が出来た。さあ、もう一度その記憶を!」
アレクセイはバッと腕を上にあげて何かのスイッチを押した。するとドンッと何か波の様な物が来た。赤い粒が集束したものだった。エアルだ!俺は勢い良く魔導器の後ろを見る。何か太いホースの中に赤い粒が吸い込まれていくのを見た。アレはエアル!その時、ドクンッと何か俺の奥で勢いよく跳ねた様な気がした。
血が熱くなる。俺は無意識のうちに刀を鞘から出していた。なんでだ!?俺、今は刀を出そうとしていないのに、身体が、勝手に!俺は視線だけをアレクセイにうつした。アレクセイはいつの間にか見た事がない剣を掲げている。
「ユーリッ!どうしたんだ!?ユーリ!」
フレンが必死で俺に話しかけている。なんだか気が薄れてきた…俺、どうなるんだろ…そう思った時、あの頭痛とキィィィィンと脳に響くような音がした。
「うっ!?ああっ!!」
今度の頭痛は前よりもずっと酷い。頭が割れてどうにかなってしまいそうだ。すると、あの声も聞こえた
———時はもうじき満ちる。我に力をゆだねよ———
今度は遠くから響くような感じだった。そこから俺の意識は完全に途絶えた。
〜第十六話へ続く〜
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