二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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不死鳥 -song by.SEKAI NO OWARI-
日時: 2012/02/04 21:12
名前: 月詞 ◆oE3vS0unEQ (ID: VHEhwa99)



本作は私がインディーズ前からずっと大好きなバンド、
「SEKAI NO OWARI」の楽曲から
一曲 物語性のある曲から作り出された小説です

よって、本作を読み進める前に一度楽曲を聴いていただくことをお薦めいたします

本作は非公式であり、あくまで私の勝手な思考の展開となりますので
御了承下さい

SEKAI NO OWARIの楽曲はリアリティがありメロディもポップなものばかりですのでお気になった方は是非他の楽曲も聴いてみてください

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不死鳥 -song by.SEKAI NO OWAR ( No.2 )
日時: 2012/02/09 23:22
名前: 月詞 ◆oE3vS0unEQ (ID: VHEhwa99)



まだ蝉も鳴き始めていない初夏の頃




真っ昼間の空に火の花が上がる




無造作に鳴る花のはじける音




その下にはたくさんの人が群がっていた




『第19回、アンドロイド大会を開催致します──!!』
「オオーーー!!!」




俺は友人の透と領太と買いものをしていた




透「おおー、今回も盛り上がってるぜ」
領太「けっこうデカいイベントだから毎年盛り上がりすごいよな」




現代の日本には発達した技術と産業がある




大きく成長した日本はその後「アンドロイド」という




永遠の憧れと象徴に代わる機械を造りだした




人間と何ら変わらない




違うのはただ一つ




それは不死身だということ




慧「あんなの見て何が面白い訳?」




俺は造り物の女を多くの人間に見せびらかす
企業の人間の気がしれなかった




もちろんそれに群がるやつらもやつらである




毎年夏になると何度か開催されるこの祭り




もちろん楽しいと思ったことなど一度もない




領太「あー、慧にゃ分からねえだろうなあ」
透「俺らは見てくぞ」
慧「勝手にしろ」




古き良きことが




好きだった俺の心は




その大会には一切興味を示すことはなかった




そのはずだった

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不死鳥 -song by.SEKAI NO OWAR ( No.3 )
日時: 2012/02/11 11:47
名前: 月詞 ◆oE3vS0unEQ (ID: VHEhwa99)



人だかりの中心へともぐらのように掘り進んでいった領太たちはさておき




俺は家に一人帰ることにした




あんな造られたまがい物の女たちに目を奪われる男の気がしれない




ケッと悪態をつきながらその人だかりを避け、帰路につこうとした




ドンッ




慧「いてっ」




うるさかった人だかりの声が今度が耳を突き刺す




人が押しあう力が強くなり 満員電車の中にいるのかという
錯覚に襲われた




思わず顔をしかめる




そのとき人だかりの向こうにチラリと一人の娘が見えた




思わず息を飲んで立ち止まってしまった


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不死鳥 -song by.SEKAI NO OWAR ( No.4 )
日時: 2012/02/11 14:46
名前: 月詞 ◆oE3vS0unEQ (ID: VHEhwa99)



『プログラム1番!!イングリット社による舞踏です!!』
「ウオオーー!!」




むさ苦しい男どもの声はいっそう大きくなったが




まるで俺には聞こえていなかった




何も聞こえない




何も考えられない




見えるのはただ一つ




ステージに立っているあの女だった




「さすがイングリット社のアンドロイドは違う!!」
「ああ、どこのアンドロイドも人間味があるが
ここの会社はどこか違うな」




美しい金色の髪




瞳は湖のような深い碧




透き通るような真っ白な肌




一重だが大きく切れ長の目




薄く艶のある唇




北方系を思わせる娘だったが




顔立ちは全体的に日本人のようだった




その絶妙な掛け合いがなお




きっとたくさんの人心を惹き付けた

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不死鳥 -song by.SEKAI NO OWAR ( No.5 )
日時: 2012/02/11 21:57
名前: 月詞 ◆oE3vS0unEQ (ID: VHEhwa99)



俺は彼女に近づけるように




一歩 一歩




人の塊の中へと足を踏み入れていった




少しでも 見てもらえるように




いつから俺はこんなに女っぽくなったんだろう




きっと彼女から見たら俺なんかは




木々の葉のごとく




万もいる魅せられている男の中の一人なんだろう




それでも気づいてほしい




そのせつな




腕に着けていた青いバンダナが風に吹かれ飛んでしまった




ひらひらと宙を羽ばたいたバンダナは




よもや彼女の足元にふわりと着地した




まるでバンダナ自身が意志を持っているかのように




これは奇跡としか呼ばないだろう




美しく音にまたがっていた彼女は踊りをやめ
地に足をつけたそのバンダナを優しく拾いあげた




一瞬にして何人もの男の視線が俺に注がれた




ニコリと微笑んだ彼女は声も美しかった




「どうぞ」




真っ白な手にのせられている青いバンダナと




彼女の碧い目をつい比較してしまった




近くでみていても




どうしても人間に見えてしまう




心臓が早足になる




慧「ど…どうも」




直接バンダナを渡してもらったが




彼女に触れる俺の手が




どうしても汚く思ってしまった


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不死鳥 -song by.SEKAI NO OWAR ( No.6 )
日時: 2012/02/12 12:01
名前: 月詞 ◆oE3vS0unEQ (ID: VHEhwa99)



「ほらほらっ」




時間が止まったような錯覚に見舞われながら




声のした方向にゆっくりと振り向いた




そこにはカラスに化けたような




黒いスーツ 黒いサングラス




髪だけは白髪混じりの中年の男が立っていた




「ウチの"商品"は今仕事中なんだ。
悪いが邪魔しないでくれるかね?」




そうだ




俺がいくら人間に見ようとしてみても




この人は人間ではいないんだ




バンダナを受け取ったあと俺はゆっくりと踵を返し




下を向きながら歩き始めた




「あのっ」




その美しい声が聞こえて振り向くが早いか




さっきのカラス男が鳴いた




「お前も分かってるんだろうな?
さあ、早く舞を続けるんだ」




彼女は哀しい顔をしていながらも




気乗りしない様子で舞を舞いつづけた




もう二度と触れることはないでしょう




焦がれても触ることのできない不可触の娘




ゆっくりと一歩一歩遠ざかっていった




そのまま家へ続く道を歩いた

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