二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

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NARUTО 木の葉の里の大食い少女
日時: 2012/07/28 22:52
名前: わたあめ (ID: tdVIpBZU)

九尾襲撃以前に餓死した狐者異一族の生き残り、「狐者異マナ」が木の葉にて暴れる話。主に食卓の上で。
アンチ・ハーレム・チートはなしの方向で。

1.荒らし・中傷・パクリにきたという方はバックプリーズ
2.この小説はにじファンにて載せたことがあります
3.原作批判・過度な原作キャラマンセー及びキャラアンチはお断り 
4.残酷な描写が一部に見られます、ご注意を
5.亀☆更☆新

それでもいいというかたはどうぞ

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第一章 純粋すぎるのもまた罪。
 ∟アカデミー編 >>1-5
 ∟班分けと鈴取り編 >>6-11
 ∟巻き物奪還任務編 >>12-20>>28 
 ∟お見舞い編 >>21-27

第二章 呪印という花を君に捧ぐ。
 ∟第一試験編 >>29-33
 ∟第二試験編 >>34-48
 ∟第三試験予選編 >>
 ∟第三試験本戦編 >>

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Re: NARUTО 木の葉の里の大食い少女 ( No.45 )
日時: 2012/07/26 20:45
名前: わたあめ (ID: XiewDVUp)

 その言葉を言い終えると同時にドスは右腕を振り上げた。右腕に取り付けたそれに、かん、と音を立ててクナイが弾かれる。

「サスケサスケるせーんだよ、野郎の癖に気持ちわりィな!」

 駆け出したのはクナイを構えたマナだ。耳からだらだら血を流しながら走っている。ふらふらとその軌道が右に左に揺れていたが、それでも彼女が目指すはドスのところだ。

「ばかな、君は僕の攻撃を受けて……」
「てめえなんか食べ物もってんだろ! いいにおいしてんだよくっそやろう!」

 クナイを投げるが、しかし彼女は食べ物への執念でなんとか身動きできるとは言え、バランス感覚は依然崩れたままだ。投げられたクナイは目標を大きく逸れてザクの足元に突き刺さる。

「へっ、黙ってろ雑魚が!」

 ザクの掌から発される風に小柄な体が吹き飛ぶ。慌てて振り返ったサクラの視界の先、一人の少女が割り込んできた。両腕を広げた少女はマナの小柄な体を受け止めて、音忍達を睨みつけた。やがて少女の視線がリーへ向き、そしてその顔が心配そうな色を浮かべた。

「リー!」
「——気に入らないな」

 テンテンに抱きしめられたまま、マナは頭上を見上げる。腕組みをしたネジが凛とした風情でそこに立っていた。

「マイナーの音忍風情が、そんな二線級をいじめて勝利者気取りか!」

 倒れたリーを見下ろして、「ヘマしたな」と冷ややかに呟く。ザクが更に現れた木ノ葉の忍びどもに悪態を零す。ネジは音忍どもに視線を戻した。冷たい怒りがネジの白い瞳を燃やしているのを見てとって、テンテンはゆっくりとマナを地面に下ろすと、クナイを掴んだ。

「そこに倒れているおかっぱ君は、俺たちのチームなんだが——好き勝手やってくれたなァ!」

 発動された白眼の付近に浮んだ神経か血管か、もしくは筋肉的なもの(それが何なのかはテンテンに知りえることではなかった)は、ネジの抑えられた激情を示しているようにも思えた。普段はリーへの関心を余り見せないネジだが、ちゃんとリーのことをチームメイトとして思っているんだと再確認してテンテンは思わず微笑を零した。
 そんなテンテンの微笑を戦闘へ対する自信と余裕と読み取った音忍達は、ただでさえ初めて見る白眼の迫力に驚いているのに、テンテンの顔を綻ばせる姿にまだ何かあるのかと警戒と緊張の色を更に強めた。テンテンは別のことを考えていただけなのだが。

「これ以上やるなら、——全力で行く」

 そう言って殺気を放ちだしたネジの目が、唐突に驚きに見開かれた。その殺気が一瞬にして消え去り、白い視線は一点に注がれている。そんなネジを不審に思ったのか、「……どうしたの、ネジ?」とテンテンがネジを見上げた。

「気に入らないのなら、かっこつけてないでここに降りてきたらいい!」
「いや、どうやらその必要はないようだ」

 ドスの言葉に、ネジは余裕しゃくしゃくと言わんばかりの笑みを歪めた口元に浮かべた。
 ドスは逃げるつもりですか、と言葉を発しかけて口を噤んだ。視線の先、横たわるサスケの体から深い紫の禍々しいチャクラがあふれ出していた。——呪印だ、と彼は瞬時に悟る。
 天に向かって伸びる紫のチャクラを纏って、サスケが立ち上がった。

「サスケくん! 目が覚めたの、——っ!?」

 明るい声で振り返ったサクラの顔が凍りつく。禍々しいチャクラを纏ったサスケの肌は影に覆われよく見えないものの、僅かに見える肌は赤く爛れて見える。一歩踏み出して、サスケは魂を震わせる声で言った。

「サクラ」

 呼ばれたその名と共にチャクラが僅かながら収まり、サスケの全体がよく見えるようになった。赤く爛れているように見えたのは、赤く燃えながら地虫のようにサスケの左半身の皮膚を這っていた呪印だ。動きを止めた呪印は黒く変色して皮膚にへばり付いている。開かれた瞳は鮮血の写輪眼で、サクラにはまるで、サスケが何かの悪霊に取り付かれてしまったように思われた。

「……お前をそんなにした奴は、誰だ……?」

Re: NARUTО 木の葉の里の大食い少女 ( No.46 )
日時: 2012/07/26 20:46
名前: わたあめ (ID: XiewDVUp)

 サクラは答えるよりも先に、サスケの体に目が行っていた。

「サスケくん、その体……!」

 言われたサスケは左手を持ち上げて、そしてその手を這う呪印を暫し写輪眼で眺めていた。そしてサスケはなんでもないことのように、「心配ない」と言った。

「それどころか、力がどんどん溢れてくる。——今は気分がいい」

 その拳が握り締められた。その顔に僅かながら喜悦に近い何かが浮ぶ。あいつがくれたんだ、とサスケは言った。あいつ、という言葉が指す人を脳裏に思い浮かべて、サクラは「え?」と目を見開く。

「俺はようやく理解した。俺は復讐者だ。例え悪魔に身を委ねようとも、力を手に入れなきゃいけない道にいる」

 サクラは恐ろしかった。サスケがサスケじゃなくなる気がしたのだ。自分の好きなサスケが、自分から遠のいていく気がした。そしてサスケは本当に大蛇丸という悪霊につかれて、道を踏み外しかけているんではないかと、そう思った。

「——サクラ、言え! お前を傷付けたのはどいつだ!」

 サクラは言ってはいけないようが気がした。あんなに自分やリー、はじめにマナ、それにいのを傷付けてきた奴だとしても、それでも口にはできなかった。それほどにサスケが纏うチャクラは禍々しかったのだ。

「俺だよ!」

 しかしサクラの代わりに、ザクが自ら名乗り出る。サスケの写輪眼が激しい殺気を以ってザクを睨みつけた。その瞳に宿るのはネジの冷たい怒りとは異なり、激しく燃え上がっていながら絶対零度の憤怒だ。それでも臆せずにザクは余裕の笑みである。

「いのー! そのカッコじゃ巻き添えだぞ! 一度体に戻れーっ! チョウジもこっちこい、隠れんぞ!」

 いのの体共々叢に隠れこんだシカマルが叫んだ。チョウジがその傍に逃げ込み、いのが術を解いて自分の体に戻ってくる。とりあえずはチームメイトの安全を確保できたシカマルはほっとしたように笑った。
 呪印が紅く燃えあがった。赤く爛れたような色合いになった呪印はまた地虫のようにサスケの肌を這って、左半身から右半身へと移っていく。そのあまりのチャクラの量とその禍々しさ、そして呪印を受けても生き残れるその精神力の強さにドスは慄いた。

「ドス! こんな死に損ないにびびるこたぁねぇ!」
「寄せザク! わからないのか!?」

 焦燥に満ちたドスの声もザクは聞き入れない。

「——こいつら全員、一網打尽だ! いっきに片付けてやる」

 ザクの掌が、呪印を這わせたサスケ、地面に座り込んだサクラ、更に横たわるナルトに向けられる。

「斬空極波!」

 斬空波より更に上を行く、空気圧を使用した術だ。あまりの激しい風にドスすら体が引きずられていかれるような感覚に陥る。これを正面から受けたら一溜まりもないはずだ。
 風がやっと止んだ。それなりにチャクラを使うこの技を使用して、ザクの息も乱れている。風は進路にそって道を大きく抉り、そして七班の姿は見当たらない。ザクは嘲るような笑みを浮かべる。所詮はこのくらいか。

「へっ、バラバラに吹っ飛んだか」
「——誰が」
「!?」

 背後から突如として聞えたその声に振り返る暇もなく、自分の背後に立っていたサスケの左腕が振り下ろされる。首筋に直撃してきたその腕に叩き飛ばされたザクはドスの足元へ吹っ飛んだ。

「ザク!」

 サスケは斬空極波が放たれる一瞬前に、既にサクラとナルトの二人を抱えてザクの背後に回りこんでいたらしい。なんてスピードだ、とドスは慄きながらサスケを見つめる。そして素早くサスケの手が印を結び、そして火遁・鳳仙火の術が放たれる。火の固まりが数個飛んできて、ザクは空気圧で火を吹き飛ばすも、しかしその中には手裏剣が隠されていた。

「ザク、下だ!」
「!」

 飛来してくる手裏剣がザクの体を掠っていく中、ドスが叫ぶ。下方に視線を寄せれば、自分の飛ばした手裏剣を避けるように体を屈めて突進してきたらしいサスケが瞬時に自分の足元から飛び上がり、ザクの両腕を掴み、そして右足でその背中を押さえつけた。
 そして喜悦を滲ませたおぞましい笑みがサスケも口元に浮ぶ。

「両腕が自慢らしいな、——お前」
「っ、やめろ……!」

 サスケの意図を理解したザクの目が恐怖に見開かれる。そして聴くも恐ろしい音が響き、ザクは地面に倒れた。苦悶の呻きをあげるザクの両腕は動かない。よければ関節を外された、そして悪ければ骨折だろう。どちらにせよザクはもう戦えない。
 
「残るはお前だけだな」

 倒れてうるキンや痛みに気絶したザクには目もくれず、サスケはドスを振り返った。ひどく歪んだ、残酷な微笑だった。

「……お前はもっと愉しませてくれよ」

 ドスの体が小刻みに震える。全身の血を凍らす戦慄に、ドスは恐怖に目を見開く。
 ——こんなの……
 すたすたとサスケは進んでいく。そのおぞましい姿は自分の知っていたあのサスケとは程遠い。
 ——こんなの……!
 照れているサスケ、笑っているサスケ、「うざいよ」とサクラに言って来たサスケ、傷だらけになったサスケ、自分を必死で救ってくれたサスケ。思い浮かぶサスケのどれにも彼の姿は当てはまらない。
 ——サスケくんじゃない!
 大蛇丸が前に増して憎い。サスケくんをこんなに苦しめて、サスケくんに呪印をつけて、そしてサスケくんさえも変えてしまった。ねえサスケくんが貴方に何したっていうの。
 涙が頬を伝った。ゆっくりとドスへ向かっていくサスケの後姿に、サクラは必死で飛びついた。

「やめてぇ!」
 
 サスケをぎゅっと抱きしめて、「やめて」、ともう一度繰り返した。サスケが振り返る。鮮血の色の写輪眼の鋭い視線と自分の視線がぶつかる。涙はとめどなく溢れていたけれども、それでもサクラは必死にサスケを見返した。サスケを抱く腕は震えていても、でも彼を放したりはしない。お願い、とサクラは懇願する。

「やめて」

 そして、サスケの肌を這っていた呪印が赤く燃え上がって、ずるずるとサスケの首の付け根へ戻っていく。写輪眼も解かれ、そしてそれと共に力を失ったのか、がくんとサスケは尻餅をついた。荒い息をつくサスケの傍にしゃがみ、「サスケくん?」とサクラはその顔を覗き込み、その背に手を置く。

「——君は強い」

 そしてドスが差し出してきたのは地の巻き物だ。

「サスケくん。今の君は、僕達では到底倒せない。——これは手打ち料。……ここから、引かせてください。……虫が良すぎるようですが、僕達にも調べることが出来ました」

 ドスは巻き物を地面に置き、気絶したザクの腕を自分の肩に回して支える。そして左腕でキンを抱えあげると、彼は言った。

「その代わり、約束しましょう。——今回の試験で次に貴方と戦う機会があれば、僕達は逃げも隠れもしない」

 去っていくドスをサクラは呼び止め、大蛇丸とは何なのか、サスケに何をしたのか、何故サスケなのかを問いかけたが、しかしドスの答えは彼にもわからない、ということだけだ。
 サスケの体が震えている。手を握ることすら出来ないくらいに震えていた。先ほどの正気を失っていた自分に、自分でも驚いているようだ。 

「あのねサスケくん」

 宥めるようにその背に手を置いて、サクラは地の巻き物を取り出した。マナからもらったものだ。

「!? お前、自分で……?」
「ううん、マナ達はもう巻き物二つ揃えてて、それで内一つをくれたの。……だから、あの巻き物はマナに渡してもいい……かな。ご、ごめんね、サスケくんが勝ちとったものなのに……」

 サスケに意見することは少し気が引けるのか躊躇いがちなサクラに、サスケは視線をマナに移す。そして短く一言、わかった、と呟いた。掌を摩る。深呼吸してなんとか震えを押さえつけ、巻き物をもって立ち上がる。

「おい、マナ。この巻き物、やるよ」

 それを抱えられたマナの腹の上に投げる。マナがぼんやりとした目でそれを見つめ、持ち上げるなり、ホルスターから天の巻き物を取り出した。

「じゃ……やる」
「いらねえよ。お前がもってろ」
 
 その手を押し返すと、マナはそれを素直に受け取った。サスケの手がマナの手に触れた瞬間、一瞬マナは慄くように手を震わせる。
 けれど次の瞬間サスケには、それが自分の手の震えなのかマナの震えなのか、わからなくなってきていた。

Re: NARUTО 木の葉の里の大食い少女 ( No.47 )
日時: 2012/07/27 16:36
名前: わたあめ (ID: WpG52xf4)

 ——ズクン、ズクン。
 あれからまた一日休んで、バランス感覚の回復してきたマナとはじめ、それに紅丸は出発することにした。マナは長い間木の実しか食べていないのでぐったりとなっている。
 ——ズクン、ズクン。
 まだまだユヅルは目を醒まさなかった。息は小さく、とてもゆっくりとしている。呼吸に上下する動きすら小さいから、時たびその穏やかな寝顔をしてどきっとなることがある。そして慌てて耳を口元に寄せたり、手を左胸にあてたりしてみれば、ひどくゆっくりな寝息と、手の中で小さく震える虫のように脈打つ心臓の鼓動が聞えた。
 ——ズクン、ズクン。

「……そろそろ行こう。ユヅルは私がおぶるから」

 ——ズクン、ズクン。
 頷いて、マナは獣人分身を使った紅丸と共に、しゃがんだはじめの背にユヅルの体を乗せた。首の付け根の灰色の呪印は動く気配を見せない。偶に視線を向ければそこで哂っている——そんな感じだ。
 ——ズクン、ズクン。

「はじめ、ダイジョブかー?」
「大差ない」

 ——ズクン、ズクン。
 はじめが飛び上がったので、マナもその後を追って走り出す。紅丸が術を解いてマナの頭に飛び乗った。
 ——ズクン、ズクン。
 マナの頭は朦朧としていた。多分長い間木の実しか食べてない所為だ、とマナはそれを空腹で片付けてはじめの後を追う。喉も渇いていた。乾いた唇を今一度唾で湿す。チャクラが減ってきたな、そう思ってハッカ特製の兵糧丸を齧ってみたが、効果は全くなかった。
 ——ズクン、ズクン。

「……くっそー……」

 ——ズクン、ズクン。
 どのくらい駆け続けただろう。やっとこさ塔が見えてきたが、ユヅルを負ぶさって走っていたはじめは流石に限界なようで、木の上に腰掛けると大きく溜息を吐いた。
 ——ズクン、ズクン。
 腹を空かせたマナも崩れるようにしてその傍に着地する。はじめから貰った木の実を数個口に放り入れた。途端口の中をなんとも言えない苦味が襲う。ばかな、この木の実は甘酸っぱい味のはずなのになんで。
 ——ズクン、ズクン。

「あーもー、アタシなんか食べ物とって来るー!」
「……任せても、いい、か?」
「任せとけ、はじめはユヅルのことよろしくなー」
「……承知、した」

 ——ズクン、ズクン。
 息絶え絶えに言って、はじめは頷いた。マナは紅丸と共に走り出す。
 ——ズクン、ズクン。
 
 ——ズクン、ズクン。
 火の国木ノ葉隠れの外れ、小さな村にその少年は住んでいた。
 ——ズクン、ズクン。
 少年は呪った。自分を生んだ母も愛しい姉も憧れの兄も、全て全て呪った。
 ——ズクン、ズクン。
 呪いにかかった者達は、或いは行方をくらまし、或いは命を喪い、少年の呪いにかかりし者は、一人も無事ではいられなかった。
 ——ズクン、ズクン。
 少年は呪い続ける。愛しき者も疎ましき者も皆呪いにかかりて危難に陥る。
 ——ズクン、ズクン。
 少年は呪い続ける。己の意思も関係なしに、ただただ呪う。彼が呪うことを望まずとも、彼は呪い続ける。
 ——ズクン、ズクン。
 それが少年にかけられた呪い。「呪う」という呪いであった。
 ——ズクン、ズクン。
 呪印が痛んでいる。呪いの蛇につけられた呪いの印は呪いの少年を、呪いの神の呪いの夢に引き込んでいく。
 ——ズクン、ズクン。
 少年は今眠りの淵に於いて、絶望と憎しみの内に果てていった犬神の夢を見ている。
 ——ズクン、ズクン。
 犬神が呪う。蛇の頭よ砕けてしまえと。絶望と憎しみの内に、お前も死んでしまえと。少年は呪う。
 ——ズクン、ズクン。
 噫、羨ましきと。
 ——ズクン、ズクン。
 呪いの少年は呪いの蛇のつけた呪いの印に引き込まれて、呪いの神の呪いの夢にいる。
 ——ズクン。
 少年は目覚めない。

Re: NARUTО 木の葉の里の大食い少女 ( No.48 )
日時: 2012/07/28 22:51
名前: わたあめ (ID: tdVIpBZU)

「ほらよ、はじめ」
「ああ、すまないな。……どうした、顔色が悪いぞ」

 はじめと紅丸にとってきた肉を放り投げる。いつも携帯している木で造ったお碗に肉と水筒の水をいれ、がぶがぶスープを飲んだり肉を食べながら、はじめの言葉には「アタシよりも寧ろユヅルの顔色のが悪いだろ」と返した。
 ああ、と振り返ってはじめは、紫に変色した唇に土気色の肌のユヅルを見て頷く。その額には手拭いが乗せられていた。曰く、先ほどから水を飲ませたりと色々な措置をとっているのだが、中々よくならないらしい。
 紅丸が肉からふいと顔を背けて丸まった。肉を食べながら、はじめも聞いてくる。

「……これは何の肉だ? あまり食べたこと無い味だな」
「何だと思う?」
「……鹿? 兎? それとも……」
「へび」

 怪訝そうに肉を眺めたはじめにそう告げれば、はじめは噎せ返って肉を喉に詰まらせた。その背をバンバン叩いて肉を吐き出させる。はじめは信じられないと言わんばかりにこちらを見つめてきた。

「へ、へび……?」
「そ。森ん中ででっけーのが死んでんの見っけたから、肉切れとってきた。へびスープだよへびスープ」
「お前、よくそんなものが食えるな……」
「お前だって食ってたじゃねーか。それによ」

 アタシ今、お腹空きすぎておかしくなりそうなんだよ。肉を食べても、味がしねえんだ。まるで灰でも食べてるみてぇでさ。
 マナは言いながらスープを飲み干した。もう食べ終わっているらしい。

「……そ、そうか……こっちは暫く食欲でないぞ……」

 お腹空きすぎて味覚を失うのは果たして狐者異らしいのか狐者異にあるまじきことなのかはわからなかったが、マナの感覚がちょっと他人と違っているというのは一応理解できた。はじめとしては大蛇丸なんぞに会った後で蛇なんか見たくもないというもんだ。

「なんかさー、力つく感じはあんのな。チャクラ持ってるからかな、この蛇も。けどよ、味しねえの。なんかなー、他の肉食べたい」
「チャクラ?」

 チャクラを持っている蛇を食べて力がつくなんてことはあるのだろうかと疑問に思ったが、しかしマナは狐者異だ。食に対する感覚は敏感なのだろう——狐者異にはそんなこともあるんだろうなと、はじめはそう済ませることにした。

「そろそろ行こうか」
「そーだな。塔いったら何か食えるかも」

 マナが立ち上がり、ユヅルをはじめに背負わせるのを手伝い、二人して塔へ向かって駆け出していく。紅丸はマナの頭の上に縮こまってくぅうんと鳴き声をあげた。
 やっとついた塔に入ると、はじめは雪崩れるように中に転がり込んだ。ユヅルを地面に下ろすなり、どっさりと崩れ落ちる。マナもばったーんと顔から地面に激突し、そしてそのまま動かなくなった。

「い、生きているか、マナ?」

 見ると額から血が流れていた。完璧に気絶している。あたふたしながらはじめは自分のホルスターをまさぐって、そして二本の巻き物がごろごろと地面を転がりながら開いていくのを見て目を見開いた。

「人?」

 人、という文字と共に口寄せの術式。咄嗟に身構えていると、そこから煙りがあがって二十代くらいの女性が現れた。短く切りすぎたみたいな前髪と、キバよりも更に短く、色の薄い茶髪。日に焼けた肌に白い上着で、その上着は片腕だけ袖がない。袖のないその方の腕はもう片方よりやや短く見え、そして生気のない白をしていた。左肩から右腰にかけて奇妙な青いスカーフを巻きつけてあり、右腰と左腰のところに青い結び目がある。スカートは紺で、黒いスパッツを履き、ホルスターも額当ても持たないその女性は、薄い青の瞳を煌かせて、にこっ、と笑った。

「貴女は、」
「私は白腕のユナトって言うの。ハッカとガイの元チームメイトだったんだ」

 白腕のユナト、という所でその特徴的な白い腕を持ち上げ、微笑。彼女はマナとユヅルを眺め、「大分消耗してるみたい」と呟くと、またにっこりと笑みを浮かべ、大仰な仕草で両腕を広げた。

「第二の試験突破、おめでとうです!」
「へ、あ、……あ、ありがとうございます」
「むー、テンション低いー。皆疲れちゃってるっぽいけどさあ、わあいとかそんなリアクションないのー?」
「わ、わーい」

 唇を尖らして子供のように拗ねた彼女に、引き攣った表情ではじめが万歳した。
 
「とりあえずそこの二人は医務室行きかな。きょーは三日目……早くも遅くもないね。とりあえずお部屋かしたあげるから寝てなよはじめくんも紅丸ちゃんも。紅丸ちゃんは、キバくんたち到着してるからそこで赤丸ちゃんところいってもいいと思うけどね」

 はじめは喉を震わせるように長い溜息を吐くと、マナやユヅルたちと同じにばったりと倒れこんだ。紅丸が目を瞑って丸くなる。仕方ないです、と溜息をついてユナトは、部屋の一角にかけられてあった鈴を鳴らして医療班を呼ぶことにした。

Re: NARUTО 木の葉の里の大食い少女 ( No.49 )
日時: 2012/08/17 14:20
名前: わたあめ (ID: 91b.B1tZ)

「火影さま」

 サバイバル開始四日目、突如として入って来たヒルマとユナトの姿に火影はなんじゃ、と問いかけた。

「アンコ姉さま——失礼、アンコさんに用があって参りました。少しお時間いただけますか」

 アンコ姉さま、というヒルマの声は敬意に満ちていた。ヒルマは幼い頃から自分と一緒に遊んでくれたり、面倒を見てくれたアンコのことを実の姉のように慕っているのだ。ユナトもヒルマの背後で「お邪魔するです」と笑い、ドアを閉じる。

「今回の中忍試験参加者、火の国木ノ葉隠れの里、シソ・ハッカ率いる第九班の構成員いとめユヅルの首の付け根に呪印がつけられておりまして。ユナトさんがアンコねえ、いえ、アンコさんの呪印を見たいとおっしゃっているのですが、」
「そのこと自体は構わないけど……いとめユヅルに? 大蛇丸はうちはサスケに呪印をつけたと言っていたはず……!」

 思わず立ち上がりかけるアンコの手は呪印に置かれている。まだ痛むらしい。アンコは信じられないような面持ちで、ジジイにしかデレないジジデレ女とその傍に立つ、犬神の犠牲になった女の子を見た。

「ええ。……やはり、違っていますね。アンコ姉さまのは黒なのに、あの子のは灰色だ。いとめユヅルのはさして力を持っているわけではなさそうですね。けれど確かに体力を削られています。顔は土気色だし、唇は黒くなっているんです。熱も出ていないのに、ひどく具合が悪そうで」
「力を持っているわけではない呪印……でもそれでもきっといとめユヅルを殺すには十分なのかもしれないわね。……でもどうしていとめユヅルを——?」

 その狙いが犬神であるとしても、ユヅルが死ねば犬神は他者の体に憑依するし、それにそもそも笑尾喇をつくったのは大蛇丸だ。アンコは元師匠であった大蛇丸がそれをつくっていたことを知っているし、その力を最初に試されることになったのがヒルマの母だったことも。
 そしてヒルマの母は殺されて、大蛇丸に使い捨てにされたアンコはヒルマと共に木ノ葉に保護された。幼いヒルマは大蛇丸のことは覚えていなかったけれど、憎悪と絶望に狂って世界を呪った犬神に白い瞳の母親が殺されることだけは鮮明に覚えていたらしい。
 呪印はよほど精神力が強い者で限りとても負荷できるものではなく、最悪の場合そのまま死んでしまう。アンコは呪印を与えられて尚生き残った数少ない人間だ。
 自分はあの時高熱を出して苦しんでいたのを憶えているが、ヒルマとユナト曰く、ユヅルの顔色は悪くても寝顔は穏やかだという。

「あたしが直々に見てくるわ。どこ?」
「こちらです」

 アンコが連れられた病室に、土気色の顔に黒く変色した唇の、死人のような子供が眠っていた。息はしている。額に触れてみたが熱を出しているようではないし、呪印に目を向けると確かに灰色をしている。変ね、とアンコは呟いた。大蛇丸の目的がわからない。サスケが標的ならばサスケにだけしておけばいいものを、何故ユヅルにまで?

「とりあえず、この子のチームメイトに会わせて。それからハッカにもね」
「ハッカは、昨日九班到着直後にユヅルくんの具合が悪いと告げると断末魔みたいな叫び声をあげて“待っていろユヅル、私が世界一周してでも貴様を治す薬を見つけ出してやる!!”と宣言しつつ世界一周に出かけたです」
「……あの人バカ? いくら彼が木ノ葉最速のミントだとしても、そんなことできるわけないじゃない」

 呆れて目を回すアンコにヒルマが苦笑し、ユナトは「ガイそっくりです」と肩を竦めた。

「まあ、逆立ちで世界一周と言わないくらいまだマシでしょう」
「その内言い出すと思うです。ま、明日にはきっといち早く戻って誰よりも早く第三試験場で待機してるはずです」

 ユナトが呟くように言う。
 果たしてユナトの予言は実現した。

 キーボードが壊れてたのでソフトキーボードつかってぽちぽち打ってたらすごい疲れた。ちょっとよくなったけど、読点と句読点が機能しないぜ!


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