二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
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- ポケットの中の楽園にはモンスターと旅烏
- 日時: 2013/01/13 12:41
- 名前: 雷燕 ◆bizc.dLEtA (ID: d8VBwGf9)
ポケットのなかみはいつだってファンタジー。
こんにちは、初めまして、お久しぶりです。ライエンと申します。
えー、随分前に書いた懐かしい小説を書いていきます。
題名からは分かりにくいですがポケモン小説です。オリ設定有り。割と詳しくないと分からないネタあるかも。
文章その他のアドバイス・批評は大歓迎です。反論はしても無下にはしません。
注意! ノリと気分で書いていきます。
故に「矛盾しとるやないかコルァ」とか「さっさと更新しろやボケェ」とかなるかもしれません。
なる可能性が高いです。特に後者。それでも飽きずに相手してくれると嬉しいです。
■目次
序章 >>1
第一章 「無限なる光の道」
第1話 >>04 >>06 >>07 >>08 >>09
第2話 >>15 >>16 >>19 >>20 >>22
第3話 >>23 >>24 >>25 >>26 >>28
第4話 >>29 >>30 >>35 >>37 >>38
第5話 >>39 >>40 >>45 >>50
■最愛なるお客様
ゆn様 香兎様 パーセンター様 白黒様 基山 ヒカリ様
■履歴
・2012/03/10 更新再開
・2011/12/11 一時更新停止
・2011/08/29 小説カキコ☆小説大会[2011年・夏]の二次小説(紙ほか)部門で第2位を頂きました
・2011/03/07 執筆開始
- Re: ポケットの中の楽園にはモンスターと旅烏 ( No.36 )
- 日時: 2011/10/29 21:31
- 名前: 雷燕 ◆bizc.dLEtA (ID: tOdZcpTQ)
1ヶ月超も更新サボっていました……すみません。
なかなか執筆が進まず……。まだ第1章の転にも辿り着いてないのに(泣)
3ヶ月くらい空いても突然更新するかもしれません。ちびちび書いてるので。
定期的に更新できるようになりたいです……。そのためにも受験よ死ねえ!←
- 第4話 ( No.37 )
- 日時: 2011/12/27 23:34
- 名前: 雷燕 ◆bizc.dLEtA (ID: l5XoqW5Y)
しかし、玄関前に出ても、ルイがいない。まさか、自分を探しに行って行き違ったのだろうか。
いやそれよりも、と思ってルイが漫画を読んでいた場所に行ってみる。すると、ルイはそこで漫画に没頭しているではないか。そんな気はしたが。
「おーい、まだ時間かかりそう?」
「あ! ごめんもうそんな時間?」
ルイははっとして顔を上げる。近くには何冊かの漫画が詰まれていた。全く悪気はなさそうだ。ルイが読んでいたのは、表紙から察するに少女マンガ。学園モノか恋愛モノか、両方か。
「今12時40分過ぎたくらい。腹は減ってないから、もっといてもいいけど」
「いや、昼ご飯食べよう。漫画が面白くてつい時計見るの忘れちゃって」
「分かる分かる。漫画って、気付けば時間喰われてるから恐ろしいよな」
それから、2人で昼食を取った。「情報誌によるとここがおいしいらしいよ」とルイが言うのでそのファミリーレストランに入る。店内は暖色にまとめられて暖かい感じのインテリア。昼時とあって、客の数は多い。
ルイはハンバーグ定食、レイアは鉄火丼をそれぞれ注文して、食べ始める。食べながら、カントー地方について話した。
「カントー地方って、いろんな場所があるよね」
「ハナダの洞窟とか、ポケモンタワーとか?」
「あはは、わざわざそんな怖い所選ばなくても」
「着く場所はやっぱり港町のクチバシティかな。クチバといえばジムリーダーはマチスさんだっけ」
「あはは! ヒトカゲ一匹で挑むつもりなの? 気が早いって! レイアって意外と面白いんだね」
「いやそっちが勝手に爆笑してるだけな気がするんだが……」
ルイの無駄に高いテンションにつっこみながら、図書館に行く途中に見た建物を思い出す。——ミオジム。他の建物とは違う、厳かな雰囲気をかもし出していた。港町のミオシティだから水タイプの爽やかな感じをイメージしてしまいそうだが、ジムリーダーはトウガンという言うなればおっさんで、主な使用タイプははがねだ。
昼ご飯を食べ終わってから、船のチケットを買った。いくつかあるカントー行きの船で出航時間が一番近いものを選んだので、船に乗るまでそこまで時間が無い。船に乗れる時間になるまで、二人で雑談をした。
と言ってもほとんどはルイの話を聴いて相槌を打っていただけなのだが。レイア自身話すのがあまり得意ではないからそのほうが楽ではある。兄との思い出、ここまでの道のり。本当に楽しそうに話す。そう言うとルイは、「ここまでずっと話し相手がいなかったから」と笑った。
船乗り場の中で話していたので、船に乗れるようになると従業員の人が声をかけてくれた。船は、ホエルオーが何匹も乗せられそうなくらい大きなフェリーだ。2人用の部屋は1泊もするわけではないがベッドつき。食事のサービス自体はあるらしいが、夕方には着くので利用する必要は無い。
レイアとルイは貰った鍵に書かれている番号の部屋へ行き、大きな荷物を置いた。レイアはモンスターボール、ポケギア、財布などが入ったウエストポーチだけ持ち歩くことにした。
そして、何をしようかという話になる。すると、船の探検以外に無い、というのがルイの頭らしい。レイアも興味が無いわけでも代案があるわけでもないので、ルイと一緒に船の中を歩き回った。
廊下を渡ってデッキへ出る。船に乗り込んでくる客が見えた。ミオシティの町も、目線が変わるとまた違って見える。デッキで船橋を見つけて、周りの目を盗んで立ち入り禁止の看板を無視して入ってみる。中は結構広くて、水道や冷蔵庫なんかもきちんと備えられてある。
「へえこんな風になってるんだな……」
なんて言いながらのんびり船橋の中を散策していたのだが、少しすると
「オイコラ看板があっただろう」
という男性の声がしてきた。心臓が飛び出そうになりながら反射的に入り口のほうを向く。すると白い服を着た体付きの良い男(ゲームで言えば「船乗り」になるのだろうか)が立っていた。
「す、すみません!」
ルイと一緒に走ってデッキへ出る。船橋に人が来たということはそろそろ出発だろうか? しかし出発のちょっと前にしか船橋に来ないというのは有り得ないか。何か理由があって席を外してたんだろうな。そんな話をルイとしながら船の中をのんびりと歩く。行き先は決めていた訳ではないが、何となく自分達の部屋へ向かっていた。
いくつもの部屋へ続く廊下を歩いていると、ちょうど真横にあったドアが開いて、中から出てきた人とぶつかりそうになった。
「あ、すみません」
「あらごめんなさい」
ほぼ同時に謝った相手は20代かそこらへんの細みな女性。体は引き締まっていてスタイルが良い。……いやそんなことはどうでもよくて。問題は部屋の中にちらりと見えた個性的な服である。胸元に大きく赤い字で「R」と書かれた、とっても個性的な服である。
——ロケット団?
あんな服を持っているといったらあいつ等しか浮かばない。あのポケモンマフィアくらいしか。
この船はシンオウからカントーへの直航船だ。ロケット団はカントーを拠点にしているだろうから、シンオウで何かをやった帰りだろうか。あるいは、シンオウへ来ていた人が何か大掛かりな物事のためにカントーに集められているのだろうか?
どちらにせよロケット団の行く先に良いことが待っているとは思えない。もし奴等が悪事を働いたとして自分がその被害者、あるいは目撃者だったとしたら、私はそれを止められるだろうか?
レイアは考えてみるが、自分にそんな力量があるとは思えなかった。サトシのような勇気もなければ、レッドのように強さも無い。そもそもポケモンバトルがこんなに弱いのにロケット団などに抗える気がしなかった。
そこで気付いた。
「そういえばルイ、まだバトルしてなかったな」
「あ、ホントだ。よし、まだ出航まで時間があるし今からやろう!」
「でもスペースが……あ、さっきのデッキに行こうか」
「よーし決定! れっつゴー!」
- 第4話 ( No.38 )
- 日時: 2011/12/14 15:41
- 名前: 雷燕 ◆bizc.dLEtA (ID: jrBI1rLC)
引っ張られるままに、船のデッキでバトルを始める。ルイの手持ちで分かっているのはラプラスだけだ。ラプラスとヒトカゲが戦えばこちらが負けるのは目に見えているが、ルイは他に手持ちを持っているのだろうか?
「出てきて、ミツハニー!」
ルイがそう言いながらモンスターボールから出したのは、虫タイプの中では珍しくかわいらしいあのポケモンだ。成る程、これならまだ勝算はある。
「頼んだぞヒトカゲ」
レイアは足元にいる彼に声をかけた。ヒトカゲはやる気に満ちた顔で前へ出て、ミツハニーと対峙する。今日何回目のバトルだか分からないが、疲れた様子は全く見えない。相手はミツハニーだしこれなら力任せでもいけるかな、と考える。どうやって戦うか考えるのに、こちらが疲れた。
「ミツハニー、かぜおこし!」
ルイが言って、ミツハニーはその小さな羽根を懸命に動かす。それで起きた風はポケモンという生物にまだあまり慣れていないレイアにとっては驚くべき強風だった。川に突き落とされて濡れた髪が乾いてくれるかな、とどうでも良いことを考える。
それはともかくとして、ルイはあまり戦略を立てると言うタイプではない気がするから、ゴリ押しでくるだろうか? だったら、
「ひのこ!」
こっちもゴリ押しだ。
ヒトカゲの口から飛び出された火の粉は、ミツハニーをめがけて向かっていくが、風に押されて途中で消えてしまう。当たれば効果は抜群なのだからどうやったて当てようかか考えているうちに、ヒトカゲのほうが疲れて技は途切れ、ミツハニーの風に飛ばされてしまった。うむ、パワーでは向こうに分があるか。
「ヒトカゲ、ひっかく!」
ヒトカゲは助走をつけたあと力強くデッキを蹴って、ミツハニーへ跳びかかる。
「避けて!」
ルイが言い、ミツハニーは小さくて透明な羽をはばたかせてヒトカゲの進む軌道からそれる。
「え、ちょ……」
ヒトカゲのジャンプ力はとても高く、自分の体長の2〜3倍近く跳ぶ。しかも考え無しに前方向へ斜めにジャンプしたため、落ちるときも最高地点まで前へ進んだ分さらに進む。それで落ちるであろう地点を予想してみると……。
船の外だ。
「ヒトカゲ!」
ヒトカゲはデッキの柵の向こうへ見えなくなった。すぐ後に何かが水へとび込んだ音がする。ほのおタイプのヒトカゲが海の中へ入ったりしたら……!
レイアはかるっていたリュックとモンスターボールの入っているウエストポーチを投げ捨て、柵を越えて海へダイブした。ルイの止める声など耳に入らない。
濁った緑の海水の中で目を凝らすと、微かなオレンジ色が沈んでいくのが見えた。水を吸った服が重いが、どうにか水をかいて泳ぐ。ヒトカゲの尻尾を掴んで水面へ上がる頃には、息もかなり危なかった。
水をかき分けるのに既に疲れた腕でヒトカゲを持ち上げ、水の中から出す。すると非常に弱々しくも尻尾の先に火がついたので、少し安心した。レイアも顎をぐいと押し上げて口を水面から出し、大きく息を吸い込む。
しかしコイツ何気に重い。教科書やノートがめいっぱい詰め込まれたスクールバッグ並みに重い。ヒトカゲは頭に乗せ、きついので鼻と口は海に浸かる程度に顔を浮かべてどこか陸に上がれる場所はないかと探す。すると、上からルイの声がした。
「レイアー! 大丈夫!? ヒトカゲも大丈夫!? それと服のままとび込んじゃってポケットの中とか何か入ってないの? ねえ!」
「大丈夫だから早くラプラス!!」
レイアは精一杯の大声で叫んだ。
ラプラスの背中に乗って、港へ上がる。今日2度目のびしょ濡れだ。こんなことならジャージを着替えなければ良かった……そう思っていると、船に乗る前に声をかけてくれた従業員にまた会った。
「どうしたんだ、そんなに濡れて? それに早く乗らないと搭乗時間を過ぎちまうぞ?」
「本当ですか? やば、急がないと」
ぐったりと意識を失ったままのヒトカゲを抱えたまま、船の搭乗口まで走る。風があたって寒い。ラプラスは海の中を船へ向かっていった。搭乗口ではルイが待ってくれていて、船員に事情を説明してくれていたようである。
「譲ちゃん勇気があるなあ。怪我はしねえように気をつけろよ」
そんな言葉をかけられながら船に乗り、まずは部屋に戻って生乾きのジャージへと着替えた。そして着ていた服を干し、ヒトカゲを休ませる場所が無いかを探す。
搭乗員に訊いてみると、この船は長旅をすることもあるためポケモンを回復させるための施設があり、ポケモンドクターも乗っているとのこと。そこへ案内してもらって、ポケモンドクターにヒトカゲの様子を見てもらう。
「水に濡れたせいで体温が下がって衰弱してるけれど、暖かくして休んでいればよくなるでしょう」
「そうですか、良かった……。ありがとうございます」
「いいえ。それより君もそんな無茶して、風邪引かないようにね」
「はい」
苦笑いしながら答えた。
ルイと一緒に雑談をしながら待ちしばらくするとヒトカゲも元気がよくなって、毛布に包まってじっとしているのが苦痛になってきたようだ。ポケモンドクターにもう一度様子を見てもらって、OKを貰えたので濡れた服が待つ部屋へ戻る。
「ねえ、部屋にいても暇だし、デッキに出ようよ。服もデッキのほうが乾くんじゃない?」
少しもしないうちにルイが言った。広いところが好きなのだろうか? ともかく服が乾きやすい、というのは同感だったので冷たい服を持ってデッキへ出た。
デッキには何人かの人がいて、間を心地よい風が吹き抜けていた。太陽は傾き始めてきたところで、左手にはだだっ広い大海原が広がり、右手にはぼんやりと陸地が見える。
カントー地方……。ポケットモンスターシリーズの始まりの地方。オーキドの研究所のある地方。ロケット団の本拠地がある地方。レッドが、グリーンが、ワタルが、その他諸々がいる地方。
期待に胸が膨らむ。そしてその期待がちょっと怖くなる。既に私は、この世界が好きじゃないか。来る前から好きなのだから当たり前か。しかし、できるだけ早く帰らなければならないんだ。待っていてくれる人がいるはず。
まだ1日も過ごしてないのにな、とぼんやり考える。
- 第5話 ( No.39 )
- 日時: 2012/03/10 14:59
- 名前: 雷燕 (ID: xbduus1y)
第5話 深くて大きな天然の迷路
ヒトカゲを抱えてデッキへ出ると、快い風がレイアの髪を撫でた。船が進む先に見えるのは水平線ではなく、カントー地方の港町クチバシティだ。日はだいぶ傾いてきて、オレンジ色の光が海を照らしていた。
「ほら多分お前の故郷、カントー地方だぞー」
ヒトカゲはレイアの腕の中で嬉しそうな声で鳴いた。こいつも元々はカントーにいたのだろうか。分からないけど、とりあえず元気そうなのでよかった。
荷物はリュックの中にまとまっているしそもそもまとめる程物を持っていないので、船が止まるまでデッキで過ごす。近づくにつれてだんだんと町の様子が見えてくる。
まず目に付くのがポケモンジムだ。クチバのジムリーダーは電気タイプ使いのマチス。今挑戦しても当然負けるだろう。あの赤い屋根はポケモンセンターだな。建物が多いのであまり遠くまでは見渡せない。
——カントーで何しようかなあ。
クチバの町を眺めながら思う。考えずに、思う。明確な答えを出す気はないのだ。ただのんびりと地面の上を歩いていたら、それが何よりの幸せだと思う。レイアにその幸せに浸っている暇はなく、早く抜け出す手段を見つけなければならないのだが。
「ねえ、どこ行く?」
ルイが明るく訊いてきた。カントーに来たのは初めてらしいから、気分も高揚しているんだろう。質問されたので、答を探した。
行きたい場所というよりは、会いたい人を考える。まず第一はレッドだけど、どこにいるか分からないしな。今は、ポケモンの世界での時系列ではいつ頃なのだろうか。ヒカリとコウキが殿堂入りを果たしていたから、少なくとも初代から3年以上経っているとは思う。つまり、レッドはシロガネ山にいるかもしれない。だとしたら会うのは随分と先になりそうだ。そんなにポケモンバトルが強くなる前に帰りたい。
グリーンは多分トキワシティのジムリーダーをしているから、ジムに行けば会えるだろう。だがどうせジムに会いに行くなら挑戦してバッジを貰いたい。後は……チャンピオンのワタルとか、ロケット団のボス、サカキとかか。どれも難しそうだな。
「特に行きたい場所はないなあ……」
結局出てきた言葉はそれだった。元の世界に帰るというはっきりした最終目標はあっても、そこへ繋がる道筋が何も見えないので目の前の目的が思いつかない。バッジ集めはやってみたいがそんなにのんびりしていいものか。
「あはは、カントーに来たいって言ってたのにないんだ? じゃあタウンマップとガイドブックでも買ってから考えようか」
「そうだな」
ゆっくりと速度を落としつつあった船が、完全に止まった。
船から降りて、まずはトレーナー向けの店であるフレンドリーショップへ向かう。町では多くの人が行きかっていた。クチバシティは港町ではあるが、漁業をしているといった雰囲気ではなく貿易港、といった感じだ。背の高い建物も多く、結構都会な雰囲気だ。レイアは前の世界で関東地方に行ったことがない。
口さえあれば京へも上るとはよく言ったもので、フレンドリーショップの位置は全く知らなかったのだが、人に訊いていけば難なく着くことができた。口と喉と度胸さえあればタウンマップなんていらないんじゃないかなんて思う。思うけど買った。同時にカントー地方の名所なんかが載ったガイドマップを買って、二人で覗き込む。
「クチバシティといえばやっぱりポケモン大好きクラブかな?」
「会長の自慢話を聞きに行くのか?」
「あーそれも面倒だね。じゃあどこに行こうか?」
「いっそディグダの穴でも通ってニビシティにでも行くか」
なんて、冗談で言ってみたつもりだったのに。しかしルイが洞窟の中を通っていくことに妙に興味を持ってしまったようで、「レイア天才! そうしよう!」という具合に乗り気になってしまった。
クチバシティを東に進み、町を出る。するとすぐ左手に洞窟の入り口が見えてきた。中に入ってみると、トレーナーのためか明かりがつけられていて、懐中電灯も必要なかった。梯子を降りて地下へ行き、ディグダやダグトリオがあちこちで顔を出したり引っ込めたりするのを眺めながら、進んでいく。
あれを引っこ抜いたらどうなってるのかと思い立ち、ディグダが頭を出した隙に掴んで持ち上げようとした。無理だった。ディグダの頭を掴むのには一応成功したのだが、雷のごときスピードで潜られてしまい、つい手を離してしまった。
しかもそんな事をしていたらルイに「何してるの!?」なんて言われてしまい、もう一度挑戦することもかなわなくなった。
そして道中たまにすれ違うトレーナーに勝負を持ちかけるのだが、初めの方はほとんど断られてしまった。つれないなあなどと考えて歩いていると、ある短パン小僧が勝負にのってくれたので、じゃんけんをして勝ったレイアがバトルをした。すると、既に相手は疲れがたまっているのが目に見えた。
成程そういうことか。この先道が長いんだな。すれ違うトレーナーのみならず、ディグダやダグトリオとの戦いも続いているのだろう。
つまり、今からの中盤が一番バトルできるってことだよな。
うずうずしながら、ヒトカゲに指示を出す。
- 第5話 ( No.40 )
- 日時: 2012/03/18 00:55
- 名前: 雷燕 ◆bizc.dLEtA (ID: kphB4geJ)
2人でランダムに交代でバトルをしていったため、思ったほどヒトカゲは傷つかなかった。しかし、それにしても、それにしても、長い。ヒトカゲもバトルというより歩くのに疲れたみたいだ。それで「モンスターボールに入るか?」と訊いてみたのだが、ヒトカゲは首を横に振った。
すれ違うトレーナーが向こうから勝負を仕掛けてくるようになった頃、上へ問と続く階段が見えてきた。時計を確認してみると、この洞窟に入ってからゆうに3時間は経過していた。外へ出てタウンマップを広げ、移動した距離を確認して驚く。この距離をバトルしつつ歩いたのなら3時間でも早い気がした。
カントーに着いたのが昼下がりだったので、辺りは暗くなり始めている。
「今日はどこに泊まろうか。トキワの森をぬけるのは時間がかかりそうだから、野宿か、ニビシティかだな」
「ニビシティってすぐそこでしょ? ポケモンセンターに泊まろうよ」
「ポケモンセンターに泊まれるのか?」
「うん、トレーナーカードがあれば無料だよ」
洞窟の中の明かりといい、この世界のトレーナーのための整備にはつくづく感心させられる。
レイアたちはニビシティへ行き、ポケモンセンターでポケモンを回復させた。それからポケモンセンターのお姉さんに宿泊の旨を伝えると、そのための部屋があるそうで、案内してくれた。部屋の中心に机と椅子があり、その周りには二段ベッドがいくつもある。
「11時になったら消灯だから、それまでに食事や入浴を済ませてね」
ポケモンセンターのお姉さんが言った。風呂や食堂まであるらしい。
部屋のベッドの中のいくつかには、荷物が置かれていた。他にもトレーナーがいるのだろう。
今日はずいぶん歩いて疲れたので食堂に行くと、5人ほどののトレーナーが話しながら食事をしていた。定食(さすがに有料であった)を頼んで、そのトレーナーたちのところへ行った。
「ここ、いい?」
ルイが言う。
「勿論」
一番近くに座っていた少年が言って、レイアとルイは向かい合って席に着いた。
座っていたトレーナーの内訳は、レイアと同じ年頃の少年が3人と少し年上らしい男女。おそらく2グループだろう。今日あった出来事なんかを他のトレーナーと話すのは新鮮で、何より楽しかった。
夕食の後は、風呂に入る。ポケモンセンターでは洗濯もでき、夜の内に干すらしい。まだ無事の服を着て寝ることにして、ずぶ濡れになった服はすべて洗う。風呂は立派と呼べるものではなかったが、歩き疲れた体に温かさがしみた。
部屋に帰ると、それぞれのグループで明日の予定なんかについて話している。ルイの話に耳を傾けながら、レイアは日記を書くことにした。朝目が覚めてから、風呂から上がるまで。
——本当に散々な日だったな。
改めて思う。気づけば突然知らない場所に来ていて、「ぽけもん」なんて生物がいて、生意気なポケモンのせいで2回も全身水浸しになって。……これから、こんな毎日が続くのだろうか。母親も、父親も、兄も、慣れた友達もいない、そんな日が。
照明が消えて毛布に潜ると、不安と寂しさが襲ってきた。涙がこぼれそうになるのをこらえていると、疲れていたからか、すぐに眠ることができた。
朝、目が覚めると、窓の外は朝の光が差し始めていた。ポケナビで時刻を確認する。大体5時半。いつもと同じくらいだ。学校へ行くための準備をしなくていい、という大きな違いはあるが。
顔を洗ってロビーへ行くと、昨日とは違うお姉さんがいた。夜勤の方だろうか。
「あら、早いのね。起床は6時よ。それまで食堂も開いていないわ」
「じゃあそれまで、ちょっと散歩してきます」
朝の静まり返った空気が好きだ。薄暗くて少し肌寒い町を一通り歩いていると、周りと明らかに違う雰囲気の建物が目に入った。美術館や博物館といった外見だ。表札を見ると、「ニビ科学博物館」と書かれている。そういえばこんなものあったっけ。カントー地方の記憶はあまり詳しく残っていない。
博物館の近くには、ニビジムがあった。今ヒトカゲで挑戦しても、相手は岩タイプを主に使ってくるし、負けるだろうな。道に迷わないよう、来た道をなぞって帰った。
変える頃にはちょうど6時で、ポケセンのお姉さんに皆起こされている時だった。皆で朝食をとって、各々出発する。ニビジムに挑戦する組、トキワの森へ向かう組。
レイア達は、「なんか面白そう」という理由でトキワの森へ行くことにした。
中はハクタイの森よりもさらに暗い。そして頭の中で流れるBGMのせいか、ポケモン屋敷なんてものもないのに、不気味だった。ピカチュウを探して歩き回ったなあ、ここ。
虫ポケモンや虫捕り少年とバトルをしながら進む。ヒトカゲが大活躍だ。ゲームであればすぐに抜けられるが、やはり上から眺めているのと実際にその中にいるのとでは随分と違うもので、道筋が全く分からない。とりあえず方角だけを頼りに進む。
「あれ、家があるよ」
ルイがそう言って前方を指差した。
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