二次創作小説(紙ほか)
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- 【落第忍者】戦雲の月、その影を【乱太郎】
- 日時: 2013/07/28 09:36
- 名前: 紫 ◆2hCQ1EL5cc (ID: NgR/a8mA)
- プロフ: http://id16.fm-p.jp/517/tyabana/
忍たまSS(短い物語)リクエスト(という名のネタ)募集中
詳しく(?)は下参照
こちらの板でははじめまして、紫と申すものです。
ゆかり、でなく、むらさきなのです。
普段はシリダクや複ファジに生息しているのですが、二次創作をいつかやってみたいと思っていたのと、こみ上げる落乱への愛をどこかで発散するために、やってしまった感たっぷりです。でも後悔はしてない
だいたい、愛故に春休み高知行くついでに尼崎(兵庫県)へ寄り道して聖地巡礼しとったし、夜行バス二日連続も愛さえあれば平気
この漫画、ギャク漫画ですけれど、よく考えるとすごく切なくなります。時代背景とかね、でも、そう言う時代でも庶民はたくましく生きていて、きっと彼らもそうなのかなと、いろいろ妄想が膨らみました。
忍たま好きへ、というより、そうでない人でも、一つの物語として楽しめるように書いていきたいなー、というのが目標。知らなくても大丈夫って胸を張って言える文章が書きたい今日のこの頃。
リアルがワタワタしています、でも、8月はほとんど短期留学に行くのでいないという、今のうちに夏休みのレポート片付けないと
URLは茶華名義の創作置き場。そのうちこっちのハンネも茶華にするかも
作りかけで、完成までの道のりは長いけれど、忍たまゲームブック(選択肢によって進み方が変わる小説)計画進めています、たぶん乙女ゲーム風味になる予感
文章は全く気にしてないよ
それから、忍たまのSS書きたいなーという。でもネタがないんでリクエストあれば教えていただけるとありがたいです。時間はかかるかもしれませんが精一杯書かせていただきます。
※この物語に沿ったものでなくても、落乱および忍たまなら何でも良いです。よろしくお願いします。
こちらに書き込んでいただいても、URLのフォレストページからでも大丈夫です。
注意
二次創作で、捏造、妄想がたくさん。
原作から年齢操作しています。
ギャク要素はないです、あまり、たぶん、シリアス
漫画の設定を参考にしますが、アニメのほうから設定を取ってくる場合もあります。
六年生愛してる、五年生も好き、四年生は勉強中、何より、用具委員会が大好きだ!
でも、今は三ろ三人への愛が溢れてる、特に富松作兵衛
紫は、日本中世史の勉強をはじめたばかりで、時代考証がお粗末です。勉強が進み次第直していきます。高校生に毛の生えた程度の知識しかないよ
文章ボロボロ、構成めちゃくちゃ、誤字脱字の宝庫、とまあ、そんな感じです
お客様
蒔さん(フォレストページより)
閑古鳥が鳴いている小説だよ、竹谷先輩のペットですね、きっと
アドバイス、感想等、二十四時間募集中です、お気軽に!
何よりの励みになります^^
それでは、落第忍者乱太郎、二次創作「戦雲の月(仮)」のはじまりです。
- Re: 【落第忍者】戦雲の月、その影を【乱太郎】 ( No.19 )
- 日時: 2013/05/11 00:59
- 名前: 紫 ◆2hCQ1EL5cc (ID: bIwZIXjR)
合戦場に出没する、無尽蔵の体力と並外れた身体能力を持つ武者の噂は、今から四年前には既に囁かれはじめていた。
重い甲冑をものともせず、四方八方、徒にも関わらず、まるで馬のような速さで走り回るその姿。
戦いを欲し、暴れ回る武者を例えるならば、一言で修羅。大きな合戦場では、必ずと言って良いほど出没している。
だが、話してみると、これがまた気風の良い好男子だとも言う。
細かいことは気にしないおおらかさと、裏表のない笑顔。果たして、合戦場の修羅とも言うべきあの姿と同じ人物なのであろうか。
さらに、こちらはもっと嘘のような話。それは、ある筋で囁かれている噂。
彼を通すと、正体不明の凄腕の忍者に仕事を頼める、というものだ。
「いけいけどんどーん!」
威勢の良い声が響き渡った。
粉塵の舞う野原。その明るい声とは対照的に、草花は踏みつぶされ、地面にへたり込んでいる。
倒れているのは草だけではない。数多の人間が、その草の上で息絶えていた。
ここは、鎧兜に身を包んだ武者、ろくな装備もない雑兵たち、それぞれが入り乱れ、殺し合いを続けていく合戦場。
太陽はちょうど、真上で輝いている、そんな時刻。
刀を振り上げて、陣を切り裂く一人の武者がいた。
黒い鎧が、日差しを受けてきらりと光る。くるりと回り、飛び跳ねて、さらには自身に振り下ろされた刀を小手で殴って真っ二つに折りと、明らかに無茶のある戦い方をしていた。
だが、男の体力が尽きる気配はない。
「私の名は七松小平太! もっと骨のある奴はいないのか!」
黒光りする兜の下から、ギラギラと輝く好戦的な瞳を、武者は辺りの兵たちに向ける。そのほとんどが、近隣の村から雇われた雑兵たちだ。
半ば強制ではあったものの、金になるからという、積極的な理由もあって参加していた。だが、所詮はそれまで。命と引き換える理由はどこにもない。
抜け目のない雑兵たちは辺りの武器を拾って、一目散に逃げ出した。一騎当千の武者も、あえて追おうとはしない。
退却を見届けると、武者は兜を脱いだ。ぼさぼさの黒髪が、窮屈さから解放されて四方八方へと広がる。一筋、汗がこめかみから首筋へと伝っていった。
案外、若い男である。まだ、二十歳かその辺りだろう。
「七松殿、助太刀感謝いたします」
鎧のすれる独特の音がした。見ると、立派な装飾の鎧兜をつけた武者が、若武者に近づいてきている。農民上がりの雑兵ではない。おそらく、それ相応の地位にいる人物だろう。
「何、なんてことないっすよ。呼ばれたから来たまでです。まあ、戦働きが目的ではなかったんでしょうけど」
豪快な笑顔でそう言う若武者。戦いのために呼ばれたのではない。それが分かっていても、彼は刀を取ったのだ。
位の高い武士は「さすがは七松殿」と、懐から白い包みを取り出しながらつぶやく。見たところ、銭かなにかが包まれているのだろう。
「本題に入りましょう。七松殿の伝の忍びに、ゼンマイ城の内情を探ってもらいたい。これは報酬の前払いと、今回の七松殿の戦働きに対するささやかな礼です」
若武者は、一瞬神妙な顔つきになり、包みを受け取った。懐にしまう。その頃には、元通りの豪快な笑顔に戻っていた。
「毎度! 伝えときます。じゃあ、これにて」
太陽が燦々と降り注ぐ昼下がり。
無尽蔵の体力を持つ若者は、その甲冑姿のままで、どこかへと走り去ってしまった。
依頼主の武士は、そんな若武者の去った後、しばらくその方向を唖然として見つめていた。
ふと気付く。かの若者が立っていたところ。その草影に、白い包みが落ちていた。紛れもなく、先ほど報酬として渡したもの。
これは大変だ。慌てて中を見ると、先ほどの戦働きの報酬分だけ、きれいに残っていた。
<雑文>
合戦については、実はまだ本を昨日図書館から借りてきただけで、この箇所を書くのがすごくためらわれました。そのうち書き直すかもしれません。
合戦は、庶民にとってはやはり大きなリスクであったと思います。直接戦場になるのはもちろんのこと、兵糧米や人夫等の徴収もあったでしょうし、軍団が荒らしていくということもよくありました。日本ではないですが、中世ヨーロッパでは軍隊が来ると言えば村人は村から逃げたと言います。面白いのは国王の軍でも同じ対応。
ただ、その反面。合戦が恵みをもたらすと捉えていた面もあったようです。戦による略奪は庶民にとってリスクであったと同時に、その庶民が略奪を働いていたということです。他の村を襲うなど。また、武器や馬奪うということもあったらしい。
これから庶民の合戦史を勉強していきますが、とても楽しみです。
- Re: 【落第忍者】戦雲の月、その影を【乱太郎】 ( No.20 )
- 日時: 2013/05/19 01:31
- 名前: 紫 ◆2hCQ1EL5cc (ID: bIwZIXjR)
ゼンマイ城は、海を見下ろす丘の上に立っている。
かつてはそこから様々な船が入っては出て行き、さらに大勢の商人、運送業者が入り乱れ、活気に満ちた様子が一望できた。
そう、かつては。
疫病の蔓延により、この辺りの中心地として栄えた港町は急速に衰えた。今では、それでも町に残った人々が、貧しい身なりで這いずり回るのみである。
その、ゼンマイ城である。どこかで戦があったのだろう、城兵達は塀の内側で酒宴を開いていた。明かりと派手な服に、差し入れられた大量の酒。この分だと朝まで続くかもしれない。
燃えるかがり火。煙は上へ、上へと舞い上る。
煙を辿った先には、二階建ての菱櫓。その上。若い二人の男が、すぐ下の様子とは対照的なほどの静かさで、暗闇でほとんど見えない町のほうに目を向けていた。
「留三郎、町に食糧はいつ届く?」
問いかけた男は立派な着物を着ている、背の低い若者であった。腕を組み、一心に港のほうを見つめる瞳は痛々しい程まっすぐで、きらびやかな酒宴の様子など目も留めず、ただ遠くの暗闇をのみ、その瞳に映していた。
見えなくても、暗闇、その町の様子は手に取るように分かる。港のほうから風が吹いてきた。うなり声を上げ、それは、民衆の叫びとも言うべきものであった。
「早くて三日後というところですね、善後様」
答えた男は黒い忍び装束。一歩下がった場所で静かに控えていた。
月明かりで青白く照らされた、その整った顔。まぎれもなく、ゼンマイ城忍組頭の食満留三郎であった。
「そうか、フキノトウには悪いことをしたが……」
「感傷に浸っている暇はありません、斬り捨てて、ゼンマイの復興を目指さなくては」
曇る若い高貴な男の言葉を、留三郎は鋭利な口調で斬りつけた。
しばらくの沈黙。城兵達の、勝利に浮かれる酒宴の声が、うるさく耳に入ってくる。
善後と呼ばれた若い男は、その低い背をさらに丸めて、一つため息をついた。
「……父上は、今フキノトウ城城主だった雪下幸左衛門殿の姫君、名月姫に大層ご執心だ。あれだけのことをフキノトウにした上、姫君まで辱めるとなると、フキノトウ統治も一筋縄ではいかなくなるというのに」
善後は、控えている忍組頭と顔を合わせることなく、そんなことをつぶやいた。父上というのは、このゼンマイ城城主渦々善前のことを指す。善後はその長男、本来このような批判は口に出すものではなかった。親子とはいえ、何を言われるか分からない。
だが、この歳の近い忍組頭にだけは、全幅の信頼を置いていた。
聞き役の留三郎は、何も言わない。ただただ、あれこれと思い悩む主君の子息を見つめる。
冷たい秋の風が再び吹き、月に雲がかかった。僅かにだが、その光が弱まる。
——気付いてはいまい。二人の会話をこっそりと聞き、このわずかな闇に溶け込んだ者がいたことを。
<雑文>
リアルが勉学とバイトと部活でワタワタしすぎてここのところ更新できなかったorz
小説の設定だけいろいろできたけれど
うーん、でもいまいち七松小平太の設定が出来上がらないんですよね。というより、6ろ二人とも、でしょうか。何とか納得できるものにしていきたいものです。
- Re: 【落第忍者】戦雲の月、その影を【乱太郎】 ( No.21 )
- 日時: 2013/05/25 08:28
- 名前: 紫 ◆2hCQ1EL5cc (ID: bIwZIXjR)
櫓の壁を伝い、誰にも見つからないように闇から闇へと渡っていく、黒い影が一つ。
ただ静かに。まるで誰もいないかのように、それでいて、城の様々な場所に表れては、その様子をうかがう。
黒い忍び装束が翻る。口まで覆う覆面をつけた男は、再び暗闇の中に消えてしまった。
本日無礼講、とは言っても、決して警備が緩んでいたわけではない。
むしろ、表向きは大々的に酒宴を開き、今が好機と忍び込んだ間者達を一網打尽にする。それが、ゼンマイ城忍組頭食満留三郎の狙いであった。
更けていく夜に、夜空に上った丸い月。
侍達の酒宴がなおも続く中、旅の遊女から城の下働き、酌をしてまわる女達はどこでも男達の引っ張りだこ。入り乱れ、風紀は緩んだように見え、城中に笑い声が響いていた。
そんな無礼講である。白いずきんの女が一人。確かにその娘は、どこから見ても、城の下働きのものにしか見えなかった。
「娘さん、ゆっくりお話でも」
「あら、困りましたわ、こんなところでは上に怒られます」
伏せ目がちの娘は、言い寄ってきた侍へ意味ありげな目配せをした。
ちらりと目を向けた先には、小さな用具庫がある。誰もいない、人から隠れるには都合の良い場所だ。
娘は口元に手を当て、その年齢に似合わない妖艶な笑みを浮かべると、香の香りを漂わせながら、静かに暗闇へと消えていく。
注がれた酒を一気に飲み干すと、侍は卑しい笑みを浮かべて娘の後を足音なく追う。用具庫の影。娘はきっとこの先で待っているに違いない。そろりと建物の角に張り付いて、男は鼻の下を伸ばしながら娘のいるはずの場所に踏み込んだ。
その時だった。
「……命が惜しければ答えろ、どこの忍びだ?」
「な……」
一瞬だった。
侍の首には後ろからクナイが突きつけられていた。ふわりと、先ほどの娘の香が鼻に入る。
耳元でささやくその顔は、まさしくあの下働きの女であった。
「な、何の冗談かな、お嬢さん」
「とぼけるなよ、侍がまきびし避け、消音用の綿足袋なんて履くはずないだろうが」
冷や汗を流しながらも、冷静を装おうとする男に、娘はさらにクナイを近づけた。いや、娘というべきか。その口調、声色はもはや若い女性でのそれではなかった。
「時間切れだ、お前がどこの忍びかはその綿足袋で分かった」
「……お前は、いったい」
かの娘は、突きつけていたクナイを何のためらいもなく、男ののど元に突き刺して、そのまま横にずらしながら引き抜いた。
のど仏から吹き出す鮮血に、娘の白いずきん、みすぼらしい着物は赤く染まっていく。
暗がりの中。倒れている屍に何の関心も示さず、娘は片手を上げた。すると、どこからともなく三人の黒装束の男達が姿を表す。
返り血のついた着物を、娘は何のためらいもなく、男達の前で脱ぎ始めた。黒装束の忍び達も、全く気にせずに死んでいる侍を持ち上げる。
そして三人のうち二人が死体をどこかに持っていってしまうと、残った一人が“娘”に笑いかけた。
「若いと美人に化けられるもんだな」
「それ褒めてるんですか?」
着物を全部脱ぐと、その下からは黒い忍び装束が表れた。より体格がはっきりと見える。
広い肩幅に、がっしりとした腕。まぎれもなく、それは男であった。
白いずきんをとり、結った茶髪を高く結び直す。
化粧をしていても分かる。誰であろうそれは、ゼンマイ城忍組頭食満留三郎の右腕、富松作兵衛であった。
その一部始終を、用具庫の中からのぞいていた男がいた。
先ほどの、闇に紛れては表れ、また何もなかったかのように消えていった、あの男である。
「富松作兵衛か、厄介だな」
忍びであろう男は声に出さず、唇だけ動かした。
冷静な色の瞳は、静かに窓の外の月明かりを映す。
その顔。この闇に紛れ、静かに諜報に徹する彼。無造作に結ばれた黒髪は、昼間とは違ってある程度のまとまりを持っている。
多くの間者が殺されていく中。ひとり食満留三郎や富松作兵衛といった、忍術学園卒業の強敵の目をかいくぐって情報を集める忍び。
それは、戦場で噂になっている修羅、元忍術学園六年ろ組七松小平太本人に違いなかった。
- Re: 【落第忍者】戦雲の月、その影を【乱太郎】 ( No.22 )
- 日時: 2013/05/30 23:20
- 名前: 紫 ◆2hCQ1EL5cc (ID: bIwZIXjR)
数刻が経った。
城へと忍び込み、密書や様々な噂を手に入れた七松小平太は、人の目をかいくぐって何とか外に出る方法を探っていた。
人気も明かりもない廊下、その壁にぴたりと張り付く。
曲がり角の向こう。進もうとした先には、一人のまだ少年といってよい風貌の忍び。
高く結んだ茶髪に、生真面目そうな顔立ち。
富松作兵衛が明かりを床におき、出窓から外、暗闇にぽっかりと浮かぶ月を、物憂げな表情で眺めていた。
(また作兵衛か、体育委員の後輩、次屋三之助が世話になったとはいえ……)
ここで、荒っぽく倒していこうとはしない。小平太は静かに息をひそめて角に隠れた。
戦場で見せた、あの剛胆な様子はどこへ消えたのだろうか。顔を見るまで、いや、見てもなお、同一人物とは思えない豹変ぶりである。
だからこそ、一流忍者なのだ。
(いっそのこと、女中に化けるか)
なかなか見つからない抜け道に、小平太は自らの顎に触れながら、そんな事を考えた。先ほど、この先にいる後輩、富松作兵衛は完璧に変装していたではないか。
そんな時、ふいに、学園時代が思い起こされる。
食満留三郎、潮江文次郎、そして彼、七松小平太。
この三人は同期の中でも有名な女装下手であった。そのひどさたるや、補習を命じられる程である。
(……留三郎、文次郎よりマシだとしても、私が女装をしてもダメだな)
己を過信する事なく、小平太は冷静に考え直した。正しい判断である。
そんな時だった。
「……ええ、福富屋とは縁がありましてね、その使いもたぶん、懐かしい顔でしょうし」
「顔が広いんだな、留三郎は。この国から出た事のない私としては、恥ずかしい限りだよ」
廊下の奥のほうから、声が聞こえてきた。一人は知っている。忍術学園時代の同期、食満留三郎だろう。ゆっくりと、だが確実にこちらへと向かってくる。
冷静な表情を貫いてきた小平太の肌に、はじめて冷や汗が浮かんだ。
いっそのこと、富松作兵衛のほうに行って、一瞬で倒して脱出するか。
忍びの頭にそんな作戦が浮かぶが、すぐに消える。
そんな事をしたら、組頭、食満留三郎が黙ってはいまい。それ以前の問題として、富松作兵衛、彼自身が、若くして食満留三郎の右腕が勤まる程の優秀な忍びなのだ。一瞬でなどと、甘い考えは通じない。
と、考えているうちにも、二人は小平太の潜む方向へと歩みを進める。
話し声が聞こえたのだろう。さらに悪い事に、富松作兵衛まで、月を見るのをやめてこちらに近づいてくるではないか。
万事休す。
七松小平太は観念して顔を歪めた。こうなっては、一か八かで戦って駆け抜け、逃げ切るしかない。
懐から、音もなくクナイを抜く。歪んだ表情に、好戦的な笑みが入り交じった。
いざ飛び出そうと、足を上げた瞬間。
「……隠れていろ。小平太……」
背後の壁。その横の戸が音もなく開いた。ボソボソとした、小さな声が聞こえる。
その途端、クナイを持った手が強い力で引かれた。完全に不意をつかれた小平太は、なされるがまま。部屋の中へと入っていった。
暗い部屋である。もちろん、声の主の顔も見えない。
だが、小平太にはそれが誰か分かっていた。昼の戦場で見せたような、裏表のない笑顔が部屋を出て行く影を見つめる。
影もまた、微笑んだように見えた。
<雑文>
時間が欲しい今日のこの頃。
そんなのはどうでも良くて、最近連歌って面白い芸術だなと思います。
連歌。その成立は平安時代で、人の作った句に、続く言葉をつなげる。
「人心憂し見つ今は頼まじよ」丑三つが過ぎたじゃないという裏の意味も
「夢に見ゆやと寝ぞ過ぎにける」子がすぎちゃったという意味も。こういう言葉遊びは面白いですね。
これなんかは代表ですけれど、こんな恋愛のあんたなんか信用しないわ! 夢で会ったんだよ! みたいな微笑ましい(?)会話もこれですますんですね。
これが時代が下るともっと文学っぽくなってそういう意味の面白みはなくなります。が、例えば古今集の作者の名前を歌に入れなければいけない、などのいわゆる縛りルールをつけて詠み合って、大いに盛り上がったみたいです。室町期ももちろん幅広く行われていましたから、忍たまの世界でもあったのではないでしょうか。
また、連歌はいくつ歌を詠めたかと点数を競うものであったようで、点数が良いと景品がもらえるのです。その景品を妖怪(実は飼い犬)に驚いて投げ捨ててしまった話が徒然草にありましたっけ。
こういう、文化の話もどこかに入れたいと思いつつ。
でも、今は藤原京の勉強しないといけないんで、もう少し先だと思うけれど。
- Re: 【落第忍者】戦雲の月、その影を【乱太郎】 ( No.23 )
- 日時: 2013/06/15 02:02
- 名前: 紫 ◆2hCQ1EL5cc (ID: bIwZIXjR)
——福富屋に就職しただ!?
それは、二年か三年前の冬、雪がしんしんと降り続く、ゼンマイの城下町から半日分程離れた農村。そこに立つ一軒の古びた小屋だった。
家中補強の跡だらけで、何とか冬の厳しいすきま風を防いでいる。囲炉裏にはぼんやりと明かりが灯り、その火に当たりながら、小さな女の子が気持ち良さそうにすやすやと寝息を立てていた。
寒村の冬。
そして、もう二人。
二人ともまだ若い男だった。一人はがっしりとした体格の、頬に傷のある男で、もう一人は整った顔立ちの男。ゼンマイ城忍組頭の食満留三郎である。
「だって、お前、城に就職したって卒業の時に」
「……しんべえのお父上の引き抜きだ。ずいぶんと良い値段で俺は売り飛ばされたらしい」
長身の男は、声を潜めながらも強い口調で問いつめる旧友に、やはり静かな無表情でぼそぼそと答えた。
昔から、表情を滅多に変えない男だった。本心は見えない。留三郎はそれでも何かを得ようと、まっすぐ目の前の男の強面を見つめた。一瞬よぎった影。だが、それだけである。
結局、男は留三郎と目を合わせようとしなかった。囲炉裏の薪が燃えて音をたてる。
寝ている女の子は何事か寝言をつぶやいた。思わず伸びた、長身の男の手。大きな手のひらで、その柔らかい髪を撫でていた。
——不意に戸が開き、その中から出てきた影。食満留三郎は鋭く目を光らせ、若君の善後を庇いながら、持っていた明かりをそちらへと向ける。反対側から来た富松作兵衛も、懐に手を突っ込みながら臨戦体制に入る。
戸の前。そこには一人の大柄の男。上等な着物に、きっちりと結ばれた茶髪。こちらを見つめる瞳は穏やかで、その頬にはいくつかの傷があった。
「福富屋の使い、やっぱり長次だったんだな」
留三郎は思わず眼光を緩める。しばらくぶり、いつかの雪の日、自宅で会って以来だった。
長身の男は、目を大きく見開いている富松作兵衛に、ぼそぼそと何事かつぶやいた。よく聞き取れない。だが、作兵衛は聞きかえさなかった。
そしてすぐに、もう何歩か足を進める。留三郎の横にいるゼンマイ城の若君、渦々善後。その小さい対照的な青年の前に立つと、長身の男は音もなくひざまずいた。
「渦々善後様。お初にお目にかかります。わたくしは福富屋から参りました中在家長次と申します。どうぞよろしくお願いいたします」
大きな身体に強面。それに似合わない柔らかで洗練された態度。
善後は少し意表をつかれながらも、やはりこちらも嬉しそうに微笑み、小さな身体をさらにかがめて福富屋の使いと同じ目線に立った。
「留三郎から聞いてるよ。知り合いなんだってな。大商人福富屋の関係者とこうして話せるとは光栄だ。これからもよろしく頼むよ」
気風の良い男であった。利害で動いているわけではないのだろう。あるのは純粋な人懐っこさだけだ。
さらに、留三郎達より幾分か年上だけあって、その後の対応も大人であった。
ゼンマイ城の若君、善後は大商人福富屋の使いへ簡単な挨拶をすると、留三郎に片手を上げて、もと来た道をスタスタと戻っていってしまった。旧友との再会に水を差すべきではないと思ったのだろうか。明かりを持って暗闇の中を戻り、そして闇の中へと消えていった。
<雑文>
いろんなものに追われていた(る)今日のこの頃です、こんばんは。
最初の方に出てきた福富しんべえ。忍たまでしんべえといえば、有名なキャラクターの一人ですね。鼻水たらして、太った男の子。
福富屋は使いようによっては便利だと思います。ただ、私自身経済って苦手で、上手い事歴史と経済をつなげて、さらに違う方向に発展させて考えられるようになりたいものです。絶対に、経済についても考えないと行けないと思うんです、この物語、というより、室町末期、さらに言えば忍たまの世界って。
アナール学派というのがありますよね。あの辺の史学をしっかり勉強すれば、目指している何かに使えそうな気がするんだけれども、触りだけ勉強するにも膨大な時間がかかりそうな気がしてorz
……結論として、もっと勉強しんなん