二次創作小説(紙ほか)
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- 【銀魂】はろー、幕府のお犬さま【花見篇】
- 日時: 2014/10/28 19:35
- 名前: 春太郎 (ID: D7i.SwLm)
- プロフ: https://twitter.com/05haru18
生まれた時から、誰かの庇護を受けて育った。
いつまでも守りたい約束があった。いつか会いたい人がいた。
笑顔を浮かべて、頭を撫でてくれる優しい人が居た。とても居心地の良い箱庭に住んでいた。
それがいきなり無くなったのが、二年前の冬。
いつまでも破れない約束がある。いつか会いたい人がいる。
もう、守られるのはごめんだと思った、二年目の春。桜はまだ咲かない。
○
銀魂の世界に、オリキャラをぶっ混んでみようと思います。
・基本原作沿い、時々オリジナル
・主人公はオリキャラ
・キャラ崩壊とか日常茶飯事
・URLはたいてい作者のTwitterに飛びます。
・作者の主食は、皆さまからの温かいコメント
・作者の今年の目標は、「楽しく生きる」
2014年3月21日開設。来年まで続いたら奇跡。
【 開催中の企画 】
「ハッピーバースデー皆さま! 銀魂キャラ&オリキャラが貴方のお誕生日をお祝いしちゃいます企画」
>>18
「はろー、秘密のお犬さま! 大暴露合戦!(ポロリもあるよ)」
>>31
【 登場人物一覧 >>2 】
【 イラスト 】
・沖田さんを描いてみました。>>30
・遥を描いてみました。 >>34
【 目次 】
第一訓「初登場って無駄に格好付けようとして結局気合いだけが空回りして後の黒歴史になるから、有りのままの自分で行け」
>>1
第二訓「学校の図書室の本って、借りパクしても案外バレないらしい」
>>3
第三訓「徹夜勉強して体壊したら大変だからテスト前日は早く寝るべき」
>>4
第四訓「兄弟ってのは不思議なもんだ」
>>5
第五訓「久しぶりにじいちゃん家とか行くと何か緊張して人見知りしちゃうよね」
>>6
第六訓「あれ? これ第六訓であってるよね? あってるよね? あれ? まあいいや……」
>>7
第七訓「お前らテロなんてやって幕府の犬に噛みつかれても俺は知らねぇからな」
>>8
第八訓「約束ってもんは指じゃなくて心でするもんだ」
>>19>>24-25
第九訓「そんなしつこさも含めてうちの局長はゴリラなんだよ」
>>27
第十訓「最初はグー出すアホがいるって言うやつが一番アホ」
>>37>>41-42
第十一訓「死んでも守りたい約束」
>>45-46>>49-50
第十二訓「イライラしてる人に「カルシウム足りてないんじゃないの」っていう奴と好き嫌いがある人に「えーアレ食べたことないとか人生の半分損してるわー」っていう奴はたいてい同一人物」
>>53-54>>58-59
第十三訓「酔ってなくても酔ったふりして上司の息の根止めろ」
>>60>>62
【 番外篇 】
遥誕生日「誕生日って祝われる方はもちろん、祝う方も幸せになれる魔法みたいなもん」
>>20
琥次郎誕生日「え、誰コイツって思った人。一旦>>2を見てきてください。by琥次郎」
>>47
【 お誕生日企画 】
しゅうさん>>21>>36
- Re: 【銀魂】はろー、幕府のお犬さま ( No.4 )
- 日時: 2014/08/07 18:32
- 名前: 春太郎 (ID: D7i.SwLm)
昨日はあのまま、朝まで五人で話をしていた(私そっちのけで四人が話してただけだけど)。
私は何だか置いてきぼりにされたまま、気付いたら鶏の鳴く時間になっていた。
つまり、何が言いたいかというと昨日は一睡もしていないわけで。
…………寝不足で死にそう。
第三訓【徹夜勉強して体壊したら大変だからテスト前日は早く寝るべき】
「オイ。テメエの部屋はこっちだ。寝るんなら自分ンとこで寝ろ」
「はっ!! え?今私寝てました?」
土方さんの声で、我に帰る。さっきまでの記憶が全くない。知らない間に、夢の世界に片足を突っ込んでいた。
危ない危ない。気を付けないと今度は全身浸かってしまう。
眠気を覚まそうと、頬を思い切りぶん殴る。
そんな私を見て、呆れたような目をしている土方さんに連れられ、屯所内の廊下を歩く。私たちの後ろからは他の三人が、近藤さん、山崎さん、沖田さんの順で着いてきている。
ひたひたと五人分の足音が鳴る。
ひたひた、ひたひた。
ひたひた、ひたひた。
ひたひた、ひたひた。
土方さんに案内されたのは、一番奥にある部屋。
土方さんに、襖を開けろと言われる。私の後ろでは、近藤さんと沖田さんが何やらにやにやした笑みを浮かべている。
「な、何なんですかその顔は……」
とりあえず、言われた通り襖を開けてみる。恐る恐る開いた襖の隙間から中を覗くと、見えた光景に思わず声が漏れた。
「ッう、わあ……!」
畳に静かに伸びる日向が、部屋を明るく照らしている。この部屋、かなり日当たりがいいんじゃないだろうか。
部屋に入り、周りをぐるりと見渡してみる。私が両手を広げて回ってみせても、大丈夫なくらいに広い。かといって、広すぎるわけではなく、人一人が生活するのにちょうどいい空間。
廊下にいる近藤さんたちの後ろには、中庭があって桜の木がどっしりと構えている。今はまだ蕾しかないけど、もっと温かくなればこの部屋から花見ができるだろう。
そして何より……、
似ているのだ。兄の居た部屋に。
「こんな良い部屋もらっちゃっていいんですか?」
「どうせ空き部屋だったし、遥ちゃんの好きに使ってもらっていいぞ」
私の質問に、にこにこ答える近藤さん。
まるで、はしゃぐ子供を見るような目で私を見ているけど、それは気にしないでおく。
「わーい! ありがとうございます!!」
真選組のイメージが少しアップした、今日この頃。
「あ、私今から寝るんで部屋出てってください」
「えっ? ちょっとォ遥ちゃん!?」
「オイてめっ! まだやることが残ってンだけど!?」
「二時間したら起こしてください」
「安心しなせィ。俺がしっかり起こしてやりまさァ」
「そのバズーカでってかコノヤロー!?」
- Re: 【銀魂】はろー、幕府のお犬さま ( No.5 )
- 日時: 2014/08/07 18:37
- 名前: 春太郎 (ID: D7i.SwLm)
あれから沖田さんに永眠させられるのを恐れた私は、仕方なく眠るのを諦めた。
そして今は、土方さんに言われた任務を遂行中です。
その任務というのが、「今のうちに要るもん家から取って来い」というもの。
これから屯所内で生活するから、その準備がいるんだって。
「ただいま、兄さん」
第四訓【兄弟ってのは不思議なもんだ】
仏壇の上にある兄の写真に話しかける。
写真たての中の兄は、相変わらず穏和そうな笑顔をしている。
「兄さん。私、あの真選組に入隊することになりました」
「あの、幕府のお犬さまだよ」
「兄さんからもらった刀、やっと役に立ちそう」
「兄さん、あんたの妹が帰ってきましたよー……」
〇
「お兄ちゃん!」
刀の手入れをしていた兄が、こちらを振り返る。背中に抱きつくと、ぽんぽんと頭を撫でられた。
「遥、お兄ちゃんが刀持ってるときは来ちゃ駄目って言っただろ」
「だって、暇なんだもん」
「あとで遊んであげるから」
「いつまでも子供扱いしないでくださいー」
「はいはい」
ふて腐れる私を見て、可笑しそうに笑う兄。
両親が一度に亡くなり預かり先の無かった私を、兄は一人でここまで育ててくれた。
兄に引き取られたのが10年前。本当なら、そのときの兄はまだ大人からの庇護を受けているはずだった。
それを周りの大人との縁を切ってまで、兄は私を引き取ってくれた。
馬鹿な人だと思う。けれど、私は一生この人に頭が上がらない。
「いいなー。私も刀欲しいなー」
「女に刀は必要ないよ」
「護身用に一本!」
「木刀で十分ですー」
兄の口癖は「女子供は笑ってるだけでいい」だった。
笑ってるだけで、華になる。守るのは男の仕事。
私が刀が欲しいとせがむ度に、兄はそう言った。
私には、兄の意志がよくわからない。それで良いと兄は言う。
お前は何にも知らずに笑ってればいいよ。そしたら、俺も頑張れる。
「じゃあ、後で稽古つけてください」
「うん、いいよ」
〇
何だか、懐かしい夢を見た。どうやら、いつのまにか私は眠っていたらしい。
体を起こすと、周りには着物や、本が散乱していた。
お気に入りの着物と、数冊の本。他に歯ブラシや、家中からかき集めたお金。
まとめてみると、案外荷物は少ない。それらを大きなかばんに詰め込む。
「あー」
兄さんも連れてかないと、怒るかな。
仏壇から兄の写真を取り、かばんの中に入れる。ついでに線香をあげておいた。
かばんを肩に引っかけ、戸締まりの最終確認を行う。次ここに帰れるのは、いつになるか分からない。
「行ってきます」
誰もいない家に向かって挨拶を済ませ、屯所へ向かい猛ダッシュする。
居眠りしたせいで、とんだ時間ロスをしてしまった。早く帰らないと土方さんに怒られちゃう。
- Re: 【銀魂】はろー、幕府のお犬さま ( No.6 )
- 日時: 2014/08/07 19:13
- 名前: 春太郎 (ID: D7i.SwLm)
屯所前まで戻ってきました。
が、門をくぐって良いものか迷ってます。
土方さんの説教が嫌っていうのもあるんだけど、こういうのってどんな顔して入ればいいの?
お邪魔しますでもないし、無言で入るのもあれだし……。
第五訓【久しぶりにじいちゃん家とか行くと何か緊張して人見知りしちゃうよね】
「遥、何やってんでィ。ンなとこいたら邪魔でさァ」
背後から声がかかる。振り返ると、そこには不思議そうな顔をした沖田さんがいた。早く入りなせェ、と催促される。
いや、でも、どう入ったら……。
いつまでたっても中に入らない私に痺れを切らしたのか、背中をどんと押してくる沖田さん。
「沖田てめえ! 痛いじゃないですか死ね!!」
「てめえが死になァ」
「あ、沖田さんお帰りなさい。遥ちゃんもお帰り」
いがみ合っている私たちに気付いた山崎さんが、声をかけてくれる。
山崎さんだけじゃない。他の隊士たちも、次々にお帰りと言ってくれる。
チンピラみたいな顔をしたみんなが、当たり前みたいに笑顔で言ってくるのが、なんだか可笑しい。
「た、ただいまっ!」
「ただいまじゃねェよ! どこで油売ってたんだテメエ」
満面の笑みを浮かべていた私の頭に、ガツンと鋭い衝撃が走る。どうやら、土方さんに拳骨で殴られた様子。
お、女相手になんてことを……!
「あ! そういえば土方さん。真選組って、私以外に女の子いるんですか?」
「いや、お前だけだけど」
「さっき、女の子がパトカー運転してましたよ。なんか、スクーター追いかけて暴走してたみたいですけど」
「フン。テメエの見間違いだろ」
そうなのかな。やっぱ私の見間違いかぁ。
「そうですよね。真選組に美少女は二人も要りませんよね!」
「胸無いくせに何が美少女なんでさァ。一回鏡見てこい」
「うっせー! 私のは慎ましいだけだ!!」
「あ! 居た居たっ! 遥ちゃん探したよ〜!」
声がした方を振り返ると、嬉々とした表情の近藤さんがこちらへ駆けてきていた。
その手に握られているのは……
「何ですかそれ?」
「ああコレ? 制服だよ」
近藤さんは制服を広げて、私に見せてくれる。
確かに、みんなが着ているものと同じ、真選組の制服だ。
「ありがとうございます」
「部屋で着替えておいで」
〇
私の部屋に集まる、いつもの四人。制服にポニーテール姿の私を、奇妙なものでも見るように見つめている。
「どうですか? 似合います?」
「おお! なかなか制服も似合うなぁ!」
「サイズもぴったりみたいですね」
「やっぱり美少女はなに着ても似合うんですよ」
「馬子にも衣装ってやつだな。少しはまともに見えますぜ」
「私がまともじゃないみたいに聞こえるんですけど」
「そう言ってるんでさァ」
「ひど!」
「おお。馬子にも衣装」
「土方さんもそれ言いますか……」
「他のみんなにも見せてきますねー!」
部屋から出て、廊下を駆けていく。すれ違うみんなが、私に声をかけてくれるのが嬉しい。
でもやっぱり、馬子にも衣装という感想が一番多かった。
「……アイツ、もう馴染んでやがる」
- Re: 【銀魂】はろー、幕府のお犬さま ( No.7 )
- 日時: 2014/08/07 19:26
- 名前: 春太郎 (ID: D7i.SwLm)
「土方さぁん。眠いんですけど」
「うるせェ。ごちゃごちゃ言ってんじゃねェよ」
どうも、お久しぶりです。遥DETHじゃない、遥です。
真選組に入隊してから、一週間が経ちました。
が、土方さんやら、沖田さんやらに朝早く起こされて寝不足気味ですが何か?
今流行りのブラック企業ですかコノヤロー。馬鹿なんですか? 馬鹿なんでしょう。
「馬鹿野郎土方死ね!」
「テメエ今死ねって言ったよな? 完全に言ったよな?」
「言ってません。シネマって言っただけです」
「何なの? その下手な誤魔化し方」
第六訓【あれ? これ第六訓であってるよね? あってるよね? あれ? まあいいや……】
「ところで、今日は何しに行くんですか?」
「テロリストの監視だ」
「テ・ロ・リ・ス・ト!! うひゃあ! マジですか!?」
ヤバい。これ真選組入って初めての大事件だよ。
今まで、猫耳つけた変な女泥棒の取り調べしかしたことないから、嫌でもテンション上がる! 嫌じゃないけども!
「テロってあれですよね、爆破とかありますよね?」
「あー、まァあるかもな」
「土方さん、爆風で吹っ飛ぶんですよね?」
「てめっ! 俺殺す気か!! って、何でそんな目ェキラキラさせてんの!?」
「だって、テロですよ!? なんかウキウキするじゃないですか!」
爆弾でも、ミサイルでも、何でも来いテロリストめ!!
〇
「……つまんない」
とある一室に来てから、かれこれ二時間……。
未だに何も起こりません。
「そう簡単にテロが起こるか」
土方さんは、二時間ずっと窓に張り付いて、外を監視している。トイレに行く様子もない。
ちょっとこの人変態なんじゃないの、ってレベルなんだけど。
沖田さんは、人を小馬鹿にしてるみたいなアイマスクをして、すやすや眠っている。
ちなみに、一度イタズラしてやろうとアイマスクに手を伸ばしたら、眠ったまま急所を的確に狙ってきたので、それからは恐ろしくて一定の距離をとっている。
そして私はと言うと、土方さんみたいに仕事馬鹿でもなければ、沖田さんのようにどこでも寝れるわけじゃないので、あやとりをしている。
山崎さんがいれば、相手をしてくれるのに、今日はみあたらない。
「チッ。使えねぇやつだな」
とかなんとかぼやいていると……。
ドカン!!
ガラガラガラ……。
ガシャアン!!
突然聞こえる爆音と、お腹に響くような大きな揺れ。あまりの衝撃に、声を出すのも忘れていた。
「とうとう尻尾出しやがった」
先ほどまで窓に張り付いていた土方さんが、ぽつりと呟く。
「山崎。何としても奴らの拠点おさえてこい」
「はいよっ」
土方さんの声に、どこからともなく現れる山崎さん。てか、あの人いたのか。
「土方さん、今のって……」
「アァ」
土方さんが、煙草の煙を吐き出しなから頷く。
「天人との戦で活躍したかつての英雄も、天人様様の今の世の中じゃただの反乱分子か」
手に握っていた紙を丸める土方さん。
天人との戦って、やっぱり攘夷戦争のことだよね……。
窓の外を見ると、格好がバラバラの四人組が逃げているのが見えた。
ってことは、あの人たち、攘夷志士なんだ……!
土方さんが投げたゴミが、沖田さんの枕に当たって跳ねる。
「オイ、沖田起きろ。お前よくあの爆音の中寝てられるな」
「爆音って…またテロ防げなかったんですかィ?」
沖田さんもようやく目を覚ましたようだ。
「何やってんだィ、土方さん。真面目に働けよ」
「そうですよ土方さん。窓から見てる場合じゃないですって」
「永遠に眠るかコラ」
永遠に眠るかとかこの人どんだけ血の気多いんだろう……。いやてか、そんなことより!
「天人の館がいくらフッ飛ぼうがしったこっちゃねェよ。連中泳がして雁首揃ったところをまとめて叩き斬ってやる」
「真選組の晴れ舞台だぜ。楽しい喧嘩にな……」
「テロリストキタアァーー!!」
「てめっ! 俺の台詞に被せてンじゃねェ!!」
- Re: 【銀魂】はろー、幕府のお犬さま ( No.8 )
- 日時: 2014/08/07 19:53
- 名前: 春太郎 (ID: D7i.SwLm)
攘夷とは、二十年前の天人襲来の時に起きた、外来人を排そうとする思想である。
高圧的に開国を迫ってきた天人に危機感を感じた侍は、彼らを江戸から追い払おうと一斉蜂起して戦った。
しかし、天人の強大な力を見て弱腰になっていた政府は、天人との不平等な条約を締結。天人の台頭と廃刀令により、主だった攘夷志士は大量粛清された。
そして、未だに残る攘夷志士を即時処分する対テロ用特殊部隊こそ、武装警察「真選組」である。
第七訓【お前らテロなんてやって幕府の犬に噛みつかれても俺は知らねぇからな】
バン!!!
「御用改めである! 神妙にしろテロリストども!!!」
土方さんによって蹴破られる襖。テロリストを取り囲むように、散らばる隊士たち。
緊迫した空気の中、私は土方さんの後ろからテロリストを覗き見ていた。
何故なら、これが初任務である私は、最前線に立つことを禁じられているから。
というのは建前で、土方さんの本音は「女の私に用はない」というところだろう。
「どいつもこいつも、人のこと除け者にしやがって…」
「なんか言いやしたかポニーテール」
「べっつにィー?」
「一人残らず討ちとれェェ!!」
土方さんの指揮でテロリストへと食らいつく隊士たち。そのあとを、少し遅れて追いかける。
意外にも、テロリストたちの逃げ足は速く、普段から訓練をしているはずの隊士たちも苦戦しているようだ。
「オイ」
ズガン、と何かが突き刺さるような音が聞こえる。
音がした方を見れば、土方さんがテロリストの一人に刀を向けていた。
「逃げるこたァねーだろ。せっかくの喧嘩だ、楽しもうや」
「オイオイおめーホントに役人か」
何なの!? ウチの副長超怖いんですけど!
これじゃ、そこら辺のチンピラと変わんねーぞオイィーー!!
「よく面接通ったな。瞳孔が開いてんぞ」
「人のこと言えた義理かてめー! 死んだ魚のよーな瞳ェしやがって!!」
「いいんだよ、いざという時はキラめくから」
「ちょっとォォー! 何やってんのアンタら!? 仲良しなの? 漫才でもしてんの!?」
敵だよねこの人たち!? なんか真選組副長とテロリストの会話とは思えないくらい息ピッタリだよ!?
アァーー!! と頭を抱えていたら、沖田さんが「どきなせィ」と言いながら私の前に出てきた。
その肩に担がれているのはバズーカ。
「土方さん危ないですぜ」
いやいやいや。まさかとは思うけどコイツ……!!
ドゴンッ!!!
「やっぱりかァァーー!!」
「生きてやすか土方さん」
「バカヤローおっ死ぬところだったぜ!」
「チッしくじったか」
「なんてことしてんのアンタ!? 狙うならちゃんと狙って!」
「しくじったって何だ!! 遥てめーも何さらっと言っちゃってんの!? こっち見ろオイ!!」
〇
「副長ここです」
「テロリストも、土方さんも、残念ながら無事でした」
「オイ、心の声だだ漏れだぞ」
「てへぺろっ」
テロリストが逃げた先には、タンスやら段ボールやらが積み重ねられていて、容易に侵入することはできない。
「遥、てめー隙間から上手く入れねーんですかィ」
「いや、いくら私が細いからってこれは無理」
「俺が引き伸ばしてやりまさァ」
「ンなことしたら殺しますよ」
「オイッ出てきやがれ!」
「無駄な抵抗は止めな!」
「ここは十五階だ!? 逃げ場なんてどこにもないんだよ!」
次々とバズーカを構える隊士たち。
私たちの説得にも、テロリストたちが出てくる様子は全くない。
そろそろ帰りたいのになー。
「オーイ出てこーい」
「マジで撃っちゃうぞー」
「土方さん、夕方のドラマの再放送始まっちゃいますぜ」
「あ、あれ面白いですよね」
「やべェ。ビデオ予約すんの忘れてた」
「えー。だから、毎週予約しとけって言ったじゃないですかー」
「よし、さっさと済まそう。発射用意!!」
その瞬間、目の前の襖からテロリストたちが飛び出してくる。何人かの隊士を襖の下敷きにして、こちらへ猛ダッシュしてくる三人。
不意を突かれて動けずにいる隊士たちに、土方さんの激が飛ぶ。
「とっ…止めろって言ったって!!」
「止めるならこの爆弾止めてくれェ!! 爆弾処理班とかさ…なんかいるだろオイ!!」
「おわァァァ! 爆弾もってんぞコイツ!!」
「ぎぃやァァァーー!! こっち来んなばかァーー!!」
「ちょっ待てオイぃぃぃ!!」
ガラスが割れる音と、誰のものとも分からぬ奇声が聞こえ、咄嗟に伏せる。
爆音がビル中に響き、煙が割れた窓から入りこんでくる。
「わ、私生きてる……!?」
自分の無事を確認してから、土方さんたちの元へ駆け寄る。
隊士の視線の先には、もくもくとした煙が浮かんでいる。
そして、足元に目をやれば、垂れ幕に必死にしがみつくテロリストもとい、銀髪の侍が見えた。
「もしかして、あの人被害がでないようにあんなこと……」
思わず、笑ってしまう。なんて馬鹿な人なんだろう。
「……面白いなぁ」
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