二次創作小説(紙ほか)
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- 東方夜廻抄 [夜廻・深夜廻]
- 日時: 2023/05/27 09:44
- 名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)
※注意
この物語は夜廻・深夜廻のネタバレを含みます。
・オリキャラは出ません。
・独自解釈あり
・微グロ描写
・東方キャラの死ネタ
それでも読みますか?
うん やだ
-プロローグ-
ある夜、二人の少女は離れ離れとなった。二人の少女は大切な物を失った。
山に住み着いていた-縁結びの神-に自殺に追い込まれた少女・ユイは、縁結びの神がいなくなっても尚、ハルと花火を見たこの山に幽霊として存在し続けていた。
しかし、何年か前に春雪異変で結界が緩んだ幻想郷にユイはいつの間にか迷い込んでしまう。
しかも、縁結びの神は生きていた。ユイの体に憑依していた縁結びの神は、ユイから抜け出して、冥界を超えて、幻想郷に逃げ込んだ。縁結びの神は妖怪の山に隠れ、密かに完全復活を遂げようとしていた。
- Re: 東方夜廻抄 7話 悪縁を断ち、絆を結ぶ ( No.7 )
- 日時: 2023/05/22 21:22
- 名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)
-博麗神社-
霊夢「...ユイちゃん。そろそろ中に」
ユイ「.........」
霊夢「もう夜だし、外にいたら寒いでしょ?」
ユイは何も言わず、じっと神社の鳥居の前で立ち止まっていた。よまわりさんの行動でユイは、ハルが幻想郷のどこかにいるかもしれないと悟った。霊夢の説得で、夜廻はしなかったが、ハルが自分を探しに来てくれるだろうと信じて、神社でひたすら待っていた。
ユイの行動に拍車をかけたのは、少し前の出来事だった。
-------------
よまわりさんの妨害でスキマを塞がれたので、やむなく紫は諦めて姿を消した。
よまわりさんも、ユイがスキマに入ろうとするのをやめた事でどこかに行ってしまった。その時、一人の天狗が霊夢と話していた。
射命丸文「では、霊夢さん。また今度!」
霊夢「じゃあね...文!」
新聞記者の文は、すぐに遠くへ飛んでいってしまった。
ユイ「どうしたの?」
霊夢「ちょっと話してただけよ。でも、何か変な事言ってたわね...」
ユイ「変な事?」
霊夢「さっきのは天狗の新聞記者だけど、人間の里で外来人を見つけたんだって。」
ユイ「外来人?」
霊夢「ユイちゃんみたいに外から来た人の事よ。青いリボンをつけて、左腕が無い子が里で座ってたって」
ユイ「ハルだ!!」
青いリボンに左腕を失った人など、ハルしかいない。ユイはハルが幻想郷にいる事に喜んだ。
ユイ「...ハルと会える!」
-------------
二年程、切れていた縁は再び、結ばれようとしていた。
-博麗神社前-
ハルとアリスの前には、長い階段があった。一番上には、鳥居が見える。
アリス「後少しよ...がんばりましょ、ハルちゃん!」
ハル「...うん!」
道中、お化けや妖怪に襲われたがアリスが撃退してくれた。
ハル「この階段を登れば...」
その瞬間、ハルの後方から何かが突進してきた。
コトワリさま「グワァァァァァァァァァ!」
アリス「ハルちゃん!危ない!」
アリスはハルの後ろに立って、コトワリさまに立ちはだかった。ハルが咄嗟に後ろを見る。
ハル「コトワリさま!?」
アリス「知っているの?」
ハル「うん...縁切りの神様なの。」
コトワリさま---縁切りを司る神であり、悪縁を断ち切る神様だ。心の底から願い、「もういやだ」と発言すると現れる。しかし、今回はハルの目の前にいきなり出て来た。
ハル「なんで...コトワリさまが?」
そう呟いたものの、大体の予想は出来ていた。コトワリさまが出てきた事で、この先に必ずユイがいる事を断言できる。
コトワリさまは、ハルとユイの縁を切ろうとしているのだ。
二年前、切った筈の縁が結ばれそうになったから、コトワリさまが現れて、完全に縁を切ろうとしていたのだ。
ハル「ごめんなさい...コトワリさま。」
ハルはコトワリさまを-見て-喋った。
ハル「私とユイはあの夜、あの怪物(縁結びの神)に悪縁を結ばれちゃったんでしょ?だから、結ばれそうな悪縁をもう一回切ろうとしてるんでしょ?」
コトワリさまは何も言わず、ただじっとしていた。
ハル「でも、もう大丈夫...私とユイが今から結ぶのは...悪縁なんかじゃない!」
コトワリさまからもらった紅い鋏を胸に当て、叫んだ。
ハル「本当の良縁を結ぶの!」
その言葉と同時に、コトワリさまは静かに消えていった。
辺りを静寂が包む。それを打ち破ったのは、一つの声だった。
ユイ「......ハル?」
ハルは声のする方向に顔を向けた。
階段の上からアリスとハルを見つめていたのは、ユイだった。
- Re: 東方夜廻抄 8話 新たな始まり ( No.8 )
- 日時: 2023/05/23 20:56
- 名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)
二年前の夏の夜に別れたはずの親友が立っている。これも夢なんじゃないかと疑ってしまう。しかし、階段の上にいたのは間違いなくユイだった。黒い洋服に赤いリボン...あの夜から全く姿が変わってないみたいだ。
ハル「...っ!!」
息をするのも忘れて階段を一気に駆け上がる。あの夜からもう一度会いたいと願っていた親友が目の前にいる...落ち着ける訳が無かった。階段を登り切って鳥居をくぐる。ユイとハルが見つめ合う。
ハル「ユ...イ...?」
ユイ「ハル...だよね?」
ハル「ユイなの?」
ユイ「そうだってば...ハ」
ハル「ユイ!
名前を叫んで抱きしめた。感極まって、そのまま泣き崩れる。ユイも抱き返して、一緒に泣いた。
ユイ「...寂しかったんだよハル?...二年も経っちゃったし...」
ハル「ごめんね...ごめんね...ユイぃっ...!」
泣き崩れて抱き合う二人に霊夢とアリスは困惑するしかなかった。
涙を拭って、しばらく黙り込む。静寂を破ったのは、ハルだった。
ハル「...そういえば、ユイってもう幽霊だったのに...暖かく感じるね...」
ユイ「うん、生き返ったよ。」
ハル「...え?」
思いがけない返答に驚いてしまう。
ユイ「コトワリさまに助けて貰ったんだ!」
ハル「なんで知ってるの?」
ユイ「実は、ハルがいなくなった後、幽霊のまま夜を彷徨ってたんだ...」
自分がいなくなった後、成仏もせずに町に残っていたらしい。二年間も一人ぼっちだったユイを想像してまた泣きそうになった。
ユイ「...それでね、コトワリさまの神社を見つけたの。」
コトワリさまはその前にも会った事があるらしい。
ハル「でも...良かった...」
ユイ「また一緒に花火見れるね!」
ハル「......うん!」
二人はお互いの手を握る。二人の絆がこれから切れる事は無いだろう。
ずりっずりっ...
その時だった。二人の横にいつの間にか、よまわりさんがいた。
ハル「...よまわりさん!?」
よまわりさんは、じっと二人の事を見つめると、ハルを袋に入れてしまった。
ユイ「ハルっ!」
会ったばかりで離れ離れになるのは嫌だった。ユイはよまわりさんに近づき、ハルの入った袋を引っ張った。
よまわりさん「グボァァァァァァァァッ!!」
豹変したよまわりさんは、ユイに脅しつけるように雄叫びを上げた。
アリス「ハルちゃん!」
階段を上がり、よまわりさんに人形を数体放った。しかし、よまわりさんはハルを返さまいと暴れる。
ユイ「やめて...やめてよ!また離れ離れにしないで!」
よまわりさんに涙ながらに訴える。
ユイ「離れ離れは...」
よまわりさんは何かに気がついたようにユイに突進する。
ユイ「もういやだ!」
コトワリさま「グワァァァァァァァ!」
ジョキン!
ユイの言葉によって現れたコトワリさまは、ハルの入った袋をアリスの放った人形と同時に切った。袋の中からは、気を失ったハルが出てきた。
ユイ「ハル!」
倒れているハルを肩に寄りかけ、神社の本殿に逃げる。
よまわりさん「グガァァァァァァ!」
二人に突進を仕掛けるが、霊夢とコトワリさまが立ちはだかって防いだ。
霊夢「あの子達には近づかせないわ!」
コトワリさま「グワァァァァ!」
すると、よまわりさんは黒い姿に戻る。
霊夢「...諦めてくれたのね。」
しかし、よまわりさんは諦めていなかった。霊夢が油断した隙に物凄い速さで二人の間をすり抜けて、ハルを連れ去ってしまう。
ユイ「ハルっ...そんな!」
よまわりさんは木々の中に突っ込んで姿を消してしまった。
-----------
ハル「...ここは?」
ハルはいつの間にか、よまわりさんに攫われた場所に倒れていた。
チャコ「クゥーン...」
そばにはチャコしかいない。
ハル「ユイっ!...ユイはどこに!?」
そこで、ハルは記憶を思い出した。幻想郷でユイと再会し、よまわりさんに連れ戻された事を。
ハル「また離れちゃった...っ!」
そばにはよまわりさんがいた。
チャコ「ワンッワンッ!」
チャコはよまわりさんに激しく吠えたが、意にも介さずハルに近寄った。
よまわりさん「...いえにかえれ。」
ハル「え!?」
ハルは困惑した。まさかよまわりさんが話せるなんて思っていなかったからだ。
ハル「ど...どうして私をここに戻したの?」
恐る恐る、よまわりさんに聞いた。
よまわりさん「あの子の家族はもういない。母親は死んだ。」
ハル「ユイのお母さんが...?」
よまわりさんによると、ユイが縁結びの神に殺され、ハルが引っ越した後、自宅で自殺していたらしい。子供と夫を無くしたショックで気が狂ってしまったのだ。
よまわりさん「あの子の帰る場所はもう無い。でも、君には帰るべき家がある。あの子はあそこに住んでもらう。」
ハル「じゃぁ...もうユイと...」
絶望した表情でハルは膝を崩す。
よまわりさん「いいや、また会える。」
そう言って、よまわりさんは消えてしまった。
-----------
-博麗神社-
ユイ「あああああっ!ハルが...ハルがまたっ!」
ユイは泣き崩れてしまった。
ユイ「あんまりだよぉっ...!なんで!」
霊夢「ユイちゃん...っ!」
その時だった。よまわりさんが戻ってきた。ユイはそれに気づくと、よまわりさんを睨みつけた。
ユイ「どうしてユイをっ!」
よまわりさん「それは今から話す。」
ユイ「え...!?」
よまわりさん「あの子には帰る場所がある。だから、ここに残っちゃいけない。」
ユイ「...帰る場所...」
ユイが幽霊として彷徨っていた時、母親が自殺してしまった事は知っていた。自分が今生き返ったとしても、外の世界に帰った所で行く宛は無いのだ。
よまわりさん「また明日、会わせてあげる。」
そう言って、よまわりさんはどこかに消えてしまった。
-次の日-
二人が再会した後、霊夢や紫は二人の過去を詳しく聞いた。何せ、ハルとユイは幻想郷に元々いた縁結びの神を追放した事によって、二年前の夜の事件が起こった。紫もその事を痛ましく思って、ユイを幻想郷に正式に迎える事にした。ハルは「友達の家に行く」という理由で休日だけ、幻想郷に行ってユイと会えるようになった。昼間はよまわりさんが出ないため、紫がスキマを繋げてくれる事になった。
-博麗神社-
霊夢「はい!これで大丈夫よ。」
ユイ「わぁっ綺麗!」
ユイは博麗神社の巫女として生活する事になった。
霊夢「異変解決は私がやるし、ユイちゃんには家事とかを任せるわ。」
ユイ「はい!」
二人が外に出た時、目の前に出現したスキマからハルが出てきた。
ハル「ユイ!来たよ...って、その服は!?」
ユイ「これ?可愛いでしょ!」
ユイは赤白の巫女服を羽織っていた。
ハル「うん!」
ハルは満面の笑顔で答えた。それから、ハルとユイは霊夢と一緒に神社の縁側に座って喋った。
ハル「そろそろ夏休みになるし、たくさん会えるようになるよ!」
ユイ「そういえば、そろそろ夏だったね。」
霊夢「...そうだ!」
その時、霊夢が何か思いついたように呟いた。
霊夢「今年は、人間の里で夏祭りがあるみたいなのよ。」
文々。新聞を開いて二人に見せた。今年の夏、里で祭りを開き、花火を打ち上げるとの事だった。
霊夢「あなた達も行ってみたら?」
ユイ「やったぁ!ありがとう!」
ハル「また一緒に花火見ようね!」
あの夜から三年ぶりに二人で迎えられる花火をユイとハルは楽しみに待っていた。
-妖怪の山-
犬走椛「...文か。」
文「久しぶりですね!」
椛と文は、山の奥で待ち合わせをしていた。
椛「それで、やっぱり減ってるんだよな...-白狼天狗-が。」
文はポケットから写真を取り出して見せた。
文「最近、山の警備につく天狗達が行方不明になってます。聞こえたんでしょうね...-声-が。」
椛「...文も聞こえるか。あの声には従わない方が身のためだ。」
二人は空虚な空を見上げ、何かを睨むようにしかめた。
オイデ...オイデ...イッショニオイデ...オイデ...オイデ...ミンナデオイデ...
続く...
- Re: 東方夜廻抄 9話 神は二度、蘇る ( No.9 )
- 日時: 2023/05/24 21:06
- 名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)
ユイが幻想郷で暮らし始めて一週間。幸せな日々を送っていた。霊夢に連れられ、幻想郷のいろんな所を見て回った。吸血鬼の住む館、一面向日葵の花畑、妖怪の山の神社、人間の里。度々訪れるハルと一緒にいろんな所を回った。自分が幽霊だった時の退屈感は吹き飛んでいった。
ユイにはさらに嬉しい事が起きた。明日から学校が夏休みなので、ハルが幻想郷に来れる時間が増えたのだ。二週間後のお祭りを二人は楽しみに待っていた。
-二週間後-
ユイ「ハル!はやく行こ!」
ハル「待ってよユイ!待ってってば!」
待ちに待った里のお祭りが始まった。夕日が沈みかけている。
はじめに、二人は手を繋いで霊夢と一緒にいろんな屋台を回る。しばらくして、霊夢の近くに一人の人間が近づいてきた。
霧雨魔理沙「お〜い霊夢っ!」
霊夢「魔理沙じゃん!最近見かけなかったけど、どうしたの?」
魔理沙「魔法の研究で家に引きこもっててさ...祭りの日ぐらい外でようって思ってな!」
霊夢と話す魔理沙の視線は、霊夢の近くにいる二人の少女に向けられた。
魔理沙「あれ?この子達は?」
霊夢「外の世界から来た子供よ。」
魔理沙「へぇ〜、二人ともリボンがよく似合ってるな!名前は?」
ユイ「ユイです!隣にいるのは私の親友のハルだよ!」
ハル「こ...こんばんは」
魔理沙「こんばんは!さてと、霊夢!一緒に酒飲もうぜ!」
霊夢「バカ言わないで、子供連れてんだから!」
魔理沙「悪い悪い...」
帽子を撫でて、軽く謝る。
魔理沙「そうだ!四人で山の方に行かないか?」
霊夢「どうしてよ?」
魔理沙「そろそろ花火が始まるだろ?あの山で花火が見やすい場所あるから教えてやるよ!」
魔理沙は強引にハルを箒に乗せて、山に向かって飛んでいった。
ハル「わぁ〜落ちる!!」
霊夢「全くもう...」
霊夢はユイを手に繋ぎ、魔理沙を追って飛んだ。
-妖怪の山-
魔理沙「よし、着いた!」
遅れて霊夢とユイが魔理沙の場所に来る。
ハル「しぬかと思ったぁ...」
ユイ「大丈夫?」
霊夢「操縦が荒いんだから...」
霊夢は溜息をつきながら魔理沙を睨んだ。視線に気がついたのか、魔理沙はバツが悪そうに俯いた。
魔理沙「ごめんなさい...」
霊夢「分かればよろしい。」
四人は木々が生えてなく、開いた場所に座った。
魔理沙「始まったぞ!」
里の方で花火が打ち上げられた。一つ二つと、いつの間にか真っ暗になっていた夜空を色とりどりの花火が埋め尽くした。
ハル「...綺麗だね。」
ユイ「うん...」
二人は手を繋いでただ静かに、打ち上がる花火を見ていた。二年前の夜、二人であの山の上で見たように。その手はもう離されない。
しばらくして花火は終わり、魔理沙は帰る準備をしていた。
魔理沙「さて、また研究とするか!」
霊夢「あら、祭りは行かないの?」
魔理沙「今の花火で技をひらめいたんだ。じゃあな!」
そう言い残して、魔理沙はすぐに飛んでいってしまった。
霊夢「相変わらず自分勝手ね...二人共、そろそろ山を降りましょ。」
ユイ「霊夢さん飛べるんじゃないの?」
霊夢「流石に二人は危ないからね...」
ハル「私も危ないと思うよ。ユイ!」
ユイ「楽しかったのにな〜」
名残惜しそうに呟いて三人は下山する。
しかし、もう目の前が山の出口という所でハルが立ち止まった。
ユイ「...どうしたの?」
ハル「まただ...いやだいやだ!」
ユイ「ハル!?」
ハルは頭を抑えてうずくまってしまった。
霊夢「ハルちゃん!大丈夫?」
ハル「...霊夢さん...聞こえるんです」
霊夢「え...?」
ハル「-あの声-がまた聞こえるんです!」
ハルが下山し始めた頃、二年前に倒したはずの-縁結びの神-の声が聞こえ始めたという。霊夢は急いで博麗神社へと戻り、紫を呼んだ。
紫「あの神がまだいるですって...?」
霊夢「これが証拠。」
霊夢の手には、御札を貼られて動かなくなっている蜘蛛の形をした両手の異形があった。
霊夢「ハルちゃんがうずくまってる時に後ろにいたのよ。」
紫「間違いないわ。これはあの神の配下よ。」
霊夢「この神社ではハルちゃんに声が聞こえないらしいわ。念の為に結界も貼ってあるし。」
紫「それなら良いけど...困ったわね。」
昔追放した神が復活して幻想郷に戻ってきたとなれば、人間の犠牲が少なくとも出てくるだろう。妖怪達にとって、人間が減るのは死活問題だった。
紫「最近、妖怪や妖精が急に減ったと思ったら...そいつに間違いないわね。」
今回の縁結びの神は少し違った。それは、人間では無く妖怪や妖精達をも狙っている事だった。
オイデ...オイデ...イッショニオイデ...
祭りの次の日、数人の人妖が行方不明になった。
続く...
- Re: 東方夜廻抄 10話 もう一つの絆 ( No.10 )
- 日時: 2023/05/27 08:05
- 名前: 10話 もう一つの絆 (ID: 7ZyC4zhZ)
祭りの日から3日後、里では人妖が数人行方不明になった事で混乱していた。妖怪の行方不明者が現れた事で、幻想郷の賢者達も動き出す。
-博麗神社-
本殿の前に幻想郷を造った賢者の八雲紫と摩多羅隠岐奈、博麗の巫女である霊夢が情報交換をしていた。
霊夢「で...やっぱりその神が犯人なのね。」
紫「幻想郷ができる前から妖怪の山にいたからね...あの時は大変だったわ。」
隠岐奈「あの神の能力は-言葉を操る程度の能力-だ。どこにいても、狙った獲物に話しかけて自殺に追い込む...そうやってあの神は人間を貪っていた。」
縁結びの神・山の神・お結び様...いろんな伝承が残っていたようだ。
隠岐奈が何個かの巻物や書物を取り出す。その中の一つを指さして喋り始めた。
隠岐奈「今回復活した神が縁結びの神である事に間違いないが、あれは完全に邪神として祀られて封印されたものだ。早急に手を打たないと大変な事になる。」
隠岐奈は扉を使い、どこかに行ってしまった。
紫「霊夢。今回の敵は神だけど...あなたには危険すぎる。あなたはハルちゃん達を守ってあげて。」
霊夢「わかってるわよ...」
紫もスキマへ入ってどこかに行ってしまう。
霊夢「あ、ハルちゃん達!大丈夫?」
本殿から出てきたのはユイとハルだった。
霊夢「この神社は結界が貼られてるから安心してね。」
ハル「いや...また声が聞こえてくるの。」
霊夢「何!?」
結界で遮断したはずの声はハルにまたもや聞こえるようになってしまったようだ。
霊夢「どうすれば...」
今にも泣き出しそうなハルを掴んだのはユイだった。
ユイ「大丈夫!私がいるよハル!」
ハル「ユイ...!」
ハルは安心した表情を見せていた。
ハルにユイがついていれば声に抗えるだろう。その姿を見て、霊夢は安心した。
霊夢「...きっと大丈夫よね。」
しかし、霊夢は気づいていなかった。自分の親友が辛い思いを溜めている事に...
-魔法の森-
魔理沙は一人、家の中で魔法の研究を続けていた。
魔理沙「ここをこうすれば...出来た!これで霊夢に...」
その時、魔理沙の手に持っていた瓶が爆発を起こした。起き上がった魔理沙はボロボロだった。
魔理沙「...これも失敗か」
しばらくして、机の上の材料を片手で全てなぎ倒し、拳を叩きつけた。
魔理沙「畜生っ!畜生っ!」
新しいスペルになるはずだった魔法は粉々になった。
魔理沙「...なんであいつに勝てないんだよ!」
霊夢とは親しかった魔理沙だが、何も、ただの友達として接したわけじゃない。ライバルでもあったのだ。霊夢は物凄い強さと美しい弾幕を持っている。それに感化された魔理沙は魔法を研究して新しいスペルを作っていたのだ。
しかし、新しい弾幕は全て一瞬で霊夢に見切られてしまう。
霊夢に勝つ時こそあったが、いずれも霊夢が手加減していたものだった。
全力の霊夢に勝ちたいが、どれだけ努力しても、才能で勝る霊夢は魔理沙にとって憧れであり、妬む者でもあった。
魔理沙「こんなに頑張っているのに...これだけ努力してるのに!私はあいつに勝てない...!」
魔理沙は机に持たれかかり、自分を恨みながら涙を溢した。
オイデ...
魔理沙「っ!?」
突然の声に魔理沙は恐怖する。
魔理沙「だっ...誰だ!」
八卦炉も片手に家の隅々を見回した。
...ツヨクナリタイデショ...?
その言葉に魔理沙は動きを止めた。
魔理沙「どうすれば...あいつを超えられるんだよ。」
バカバカしいと思いながら、声に尋ねる。
オイデ...ヤマニオイデ...
魔理沙「山...?」
オイデオイデ...ヒトリデオイデ...
魔理沙「......」
魔理沙は何か思いついたように箒にまたがり、妖怪の山へと飛んで向かった。
-妖怪の山-
麓に降りた魔理沙は声に従って動き、一つの洞窟へとたどり着いた。
魔理沙「この中か?」
魔理沙は穴の奥へ奥へと突き進み、広い場所に出た。真ん中には巨大な穴が空いており、その周りを蜘蛛の糸のようなものが取り巻いていた。
魔理沙「あれ...私はなんで声に従って」
コノナカオイデ
穴の方へと魔理沙が近づく。
その瞬間、魔理沙をここまで導いた縁結びの神が穴の中から現れた。
魔理沙「...っ!!なんだこいつは!?」
オイデオイデ...キテアゲテ...
魔理沙「明らかにヤバそうな奴だな...私が退治してやるぜ!」
カワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウ
魔理沙の心は既に疲弊しきっている。
続く...
- Re: 東方夜廻抄 11話 絶望はより深く ( No.11 )
- 日時: 2023/05/27 09:43
- 名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)
地面から休むこと無く黒い棘が魔理沙を殺そうと突き出ていた。
魔理沙「そんな速さで当たるか!」
洞窟の天井を飛び回り、伸びてくる棘からひたすら逃げていた。そこで、縁結びの神がまた何かを呟いた。
ハシレハシレ...ハシッテニゲロ...
魔理沙「逃げろだと?そんなつもりないぜ!」
八卦炉も向けて、《恋符・マスタースパーク》を発動させた。ビームに直月した縁結びの神はほんの一瞬態勢を崩した。しかし、目立った傷はどこにも無かった。
魔理沙「効いていない...っ!」
その瞬間、魔理沙の箒に無数の棘が突き刺さり、落ちてしまった。
魔理沙「痛ってぇ...」
箒を失って落下した魔理沙は頭を抱えてうずくまった。
ウゴクナ...
その時、またもや縁結びの神が魔理沙に語りかける。
魔理沙「うるさい!」
声を遮って神の方へと突っ走る。後ろから絶えず棘が迫って来ていたのだ。しかし、魔理沙は次の攻撃を準備していた。
魔理沙「喰らえ!《魔砲・ファイナルスパーク》!」
極太ビームは縁結びの神を覆い尽くして大爆発を起こした。
魔理沙「所詮こんな物か...声を操るとは珍しい妖怪だったな。」
勝ち誇った笑みを浮かべ、洞窟の出口を目指した。
カワイソウ...
魔理沙「っ!?」
後ろを振り向くが、先程の化け物が姿を表す事は無かった。
魔理沙「...気のせいか。」
折れた箒を担いで、山道を降りていく。しかし、縁結びの神は全くダメージを受けていなかった。縁結びの神は魔理沙を諦めていなかった。
カワイソウカワイソウカワイソウ...
次の日、またもや人妖が消えた。
-博麗神社-
魔理沙「よう、霊夢!」
霊夢「あ、魔理沙じゃないの。魔法の研究は?」
魔理沙「まぁ...いろいろとあってな。」
霊夢「最近、人妖が消えているのを知ってるわよね?」
魔理沙「当たり前だぜ霊夢。だけど、私と霊夢なら」
霊夢「しばらく自分の家に居なさい。」
霊夢の一言で魔理沙の動きが止まった。
魔理沙「は...?」
霊夢「あんたには危険すぎる。首を突っ込まないで頂戴。」
魔理沙「どうしてだよ霊夢!私だって」
霊夢「いつもの様な弾幕ごっこで戦える敵じゃないのよ!」
霊夢は魔理沙の横を通って、外に飛び出てしまった。居間に残っていた魔理沙は絶望したようにその場に膝をついた。
魔理沙「なんだよ...私は力不足なのかよ霊夢...」
八卦炉を握って呟いた。
魔理沙「どうしたらお前に追いつける...どうしたら認められる...?」
オイデ
ああ、またこの声だ。こうやって絶望した時だけ語りかけてくる。
オイデ...
やめろ...話しかけるな...
オイデオイデ...キミニハタリナイ...
何がだよ。もうやめろ...
イッショウオイツケナイ...カワイソウ...
私は諦めない...あいつに勝つんだ...
カワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウカワイソウ
うるさいうるさい!...もう...もういや...
ユイ「魔理沙さん!!」
はっと後ろを振り向く。魔理沙の後ろにはユイとハルが立っていた。
魔理沙「...二人ともいたのか。」
魔理沙は神社から立ち去ろうとするが、腕を掴まれる。
魔理沙「悪いな...独り言だよ。」
ハル「あの声が聞こえるんでしょ...?」
魔理沙「...知ってるのか?」
ハルは魔理沙に縁結びの神の事を話した。
魔理沙「手の異形?あ...そいつ山にいたぞ!」
ユイ「大丈夫だったの!?」
魔理沙「ああ、ビームでぶっ飛ばしたんだけどな...」
ハル「おそらく、あの神様はまだ生きています。」
その言葉で魔理沙の声が詰まる。あの時は倒していたと思ったが、攻撃は全く効いていなかった事を知って絶望した。
ユイ「あの神様は、私達の弱みを語りかけて...少しずつ自殺に追い込むんです。」
魔理沙「...そうか」
魔理沙はす呟いて、外に出た。
ハル「どこに行くの?」
魔理沙「帰るだけさ...ありがとな。」
直した箒にまたがって、森の方へと飛んでいった。
-魔法の森-
家に帰った魔理沙は絶望していた。やはり、霊夢に追いつけないという事が自分の弱さだという事に再度実感させられて、自分への苛立ちと嫌悪感で心はズタズタになっていた。
魔理沙「やっぱり私は追いつけないのか...」
いつの間にかロープを手に持って、家から出ていた。
方向キー、左スティックで移動します
魔理沙は森の奥へと進んでいた。
R1を押しながら移動で走れます
そばには一個の木箱が置かれていた。
小さいオブジェクトは持つことができます
魔理沙はその木箱を見つめた。
木の下へ箱を移動させましょう
何も考えず、魔理沙はその箱を手に持った。
○ボタンを押している間、持ち上げます
箱を一本の木の前に置いて、箱の上に乗る。
アクションできるオブジェクトの前では!アイコンが表示されます
持っていたロープを木にかける。
!アイコンが表示されている間、○ボタンで対象にアクションできます
吊り下げたロープに自分の首をかける。
魔理沙は木箱を蹴った。