二次創作小説(紙ほか)

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東方夜廻抄 [夜廻・深夜廻]
日時: 2023/05/27 09:44
名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)

※注意

この物語は夜廻・深夜廻のネタバレを含みます。

・オリキャラは出ません。
・独自解釈あり
・微グロ描写
・東方キャラの死ネタ

それでも読みますか?

うん  やだ


-プロローグ-

ある夜、二人の少女は離れ離れとなった。二人の少女は大切な物を失った。

山に住み着いていた-縁結びの神-に自殺に追い込まれた少女・ユイは、縁結びの神がいなくなっても尚、ハルと花火を見たこの山に幽霊として存在し続けていた。

しかし、何年か前に春雪異変で結界が緩んだ幻想郷にユイはいつの間にか迷い込んでしまう。

しかも、縁結びの神は生きていた。ユイの体に憑依していた縁結びの神は、ユイから抜け出して、冥界を超えて、幻想郷に逃げ込んだ。縁結びの神は妖怪の山に隠れ、密かに完全復活を遂げようとしていた。

Re: 東方夜廻抄 最終話 幻想の楽園 ( No.20 )
日時: 2023/07/07 21:06
名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)

黄色い閃光が霊夢の横から飛んできた。山の神に《マスタースパーク》が直撃する。突然の攻撃に混乱しながら、山の神は苦しむように雄叫びを上げた。

霊夢「だ...誰っ!?」

霊夢は即座に横に振り向いた。草むらからガサガサと音が聞こえる。どうやら近づいてきているようだ。中から出てきたのは、魔理沙だった。怨霊のような姿では無く、本当の魔理沙の姿だ。横には死んだはずの妖夢と咲夜。その後ろには、小町が立っていた。

小町「ありがとさん!おかげでクビにされずに済んだよ。」
霊夢「は...?なんでここにいるの?」
小町「ユイちゃんに取り憑いていた縁結びの神を逃しちゃってさ、閻魔様に怒鳴られてずっと探してたんだけど、もう始末したらしいな。」
霊夢「あの神はどうなったの?」
小町「あいつは閻魔様に裁かれてるよ。もう地獄から出られる事は無いと思うけど。」
霊夢「それは分かったけど...どうして魔理沙が?」
小町「魔理沙は特例だ。あの邪神は昔から是非曲直庁の殺害対象だったからね。あの神に立ち向かって、地獄行きのチャンスを出してくれたから、映姫様が生き返らせたってわけさ。私は仕事がまだあるからじゃあね。」

小町は距離を操って、その場から消えていった。

霊夢「本当に生き返ったのね...」
魔理沙「当たり前だぜ!」
霊夢「妖夢達も生き返らせてもらったのね。」
咲夜「魔理沙が閻魔様に私達も生き返らせてくれって、泣きながら頼んでたからね。」
魔理沙「つ...ついでに生き返らせただけだぜ!」
妖夢「あの時、幽々子とレミリアが悲しむだろ!って言ってくれましたよね?」

二人はニヤニヤとしながら魔理沙をジロジロ見た。山の神はその光景を見て、あっけにとられていた。

山の神『...願いはどうするのだ?』
霊夢「...魔理沙達以外に犠牲になった人妖が大量にいるわ。みんな、生き返らせてほしいの!」
魔理沙「待てよ霊夢!」

霊夢の願いを遮って、魔理沙が山の神の前に出る。

霊夢「...何よ」
魔理沙「霊夢が傷ついたのは、私のせいなんだ...」

魔理沙は涙を流して、霊夢に語りかけた。

魔理沙「最初は、ただ一緒に仲良く、喋り合って、ふざけ合って、そんな幸せを望んでいたのに...お前の才能を超えられないなんていう勝手な嫉妬心だけで、自殺するまで塞ぎ込んでたんだ...憧れてただけなのにな...しまいにはお前を殺そうと...!」

そこまで言って、魔理沙の言葉は止まった。霊夢は魔理沙の前で静かに、泣いていたのだ。

魔理沙「霊夢...」
霊夢「私...本っ当にバカだなぁ...私だって貴方を無意識に追い詰めて、傷つけたのに...それでも魔理沙の心に気づけなかった。...」

霊夢は空を見上げた。真っ暗な空に、次第に煌めく星が浮かび上がっていった。

霊夢「妖怪と渡り合えるってだけで、里の人に怖がられて、誰も私に近寄ることすら無かったのに...そのわだかまりを、貴方は全部吹っ飛ばしてくれた。魔理沙のおかげで、今の私があるってのに、本当に恩知らずよね。」

自嘲しながら、霊夢は力無く笑った。魔理沙はその表情を見て、何も言わず、霊夢に抱きついた。

魔理沙「...お互い様だぜ。」

二人は泣きながら、しばらく抱擁とした。

魔理沙「でも、もう霊夢に迷惑はかけたくないんだ。これは...私の責任でもある。」

魔理沙は山の神の目の前に立つ。霊夢はもう止めなかった。

山の神『生贄は決まったようだな。』
魔理沙「目玉を一つやるだけだぜ?...私の願いは、あの神によって犠牲になった人妖が生き返ってほしい...ただそれだけだ。」

山の神『......その願い、しかと受け取った。』

そう呟いた瞬間、魔理沙の左目がパンッという音と一緒に破裂した。それと同時に山の神の姿は消えていた。魔理沙はその場に膝をつくが、霊夢がそれを受け止めた。

霊夢「それじゃ...帰ろっか。」
魔理沙「...そうだな」

霊夢と魔理沙は体を支え合って、山道を下った。その後をハルとユイが追う。

ハル「...終わったね。」
ユイ「...うん。」

ハルとユイは手を繋いだ。縁結びの神が結んだ悪縁は完全に断ち切られたのだ。妖夢と咲夜も、自分を待つ主人の元へいち早く帰ろうと、山道を下っていった。

これから、夜はもうさらいにこない。少女達に夜の恐怖が牙を剥く事は無いだろう。それぞれが自分のいるべき場所へと帰っていった。

よまわりさんはその姿を見守り、立ち去っていった。












-エピローグ-

縁結びの神を倒して3日後、朝早くから文の新聞が幻想郷中にばらまかれていった。人妖が行方不明になる異変が終わった事、その原因が霊夢達によって退治された事が載っていた。

-博麗神社-

ハル「え〜っ!ユイが巫女になるの!?」
ユイ「えへへ...そうなんだ。」

山の神の神社は、天狗達にも承認されることになった。守矢神社にも分社があったからか、参拝客は山の神の神社にも増えていった。その山の神の神社の巫女として、ユイが選ばれたのだ。

ユイ「大丈夫だよ!何か困った事があったら紫さんが助けてくれるって。」
ハル「良かった...」

ユイは赤黒の巫女服を身に纏い、山の方へと走っていった。

ハル「待ってよぅ!」

ユイとハルは楽しそうに、山道を走っていた。

-妖怪の山-

山の神の神社には早苗、霊夢、魔理沙の三人がいた。歩いてくるハル達に気づいたのか、魔理沙が手を振った。

魔理沙「よう、久しぶりだな!」
ユイ「こんにちは!」
早苗「ユイちゃんの巫女服、とっても綺麗ですね!」
ユイ「えへへ、紅魔館の咲夜さんに作ってもらったんだ!」

ユイ達が話している中、ハルはリュックから紅い鋏を取り出した。

ハル「そういえば、コトワリさまの神社は外の世界だったな〜」
紫「それなら大丈夫よ。」

ハルの真上に開いたスキマから紫が顔をのぞかせる。

紫「地面をよく見てみなさい。」
ハル「...これは!」

ハル達の立っている地面には、人の形をした石畳が浮かんでいた。

紫「神社を合併しておいたのよ。」

それだけ言うと、紫はすぐにスキマへと入って消えていった。

魔理沙「また新しい神が入ってきたな。賑やかになりそうだぜ!」

魔理沙の左目には黒い眼帯がかけてあった。霊夢は魔理沙の左目を痛々しそうに見ていた。

魔理沙「どうしたんだ?」
霊夢「...いや、何でも無いわ。」

霊夢は何事も無かったように立ち上がり、お祓い棒を構えた。

霊夢「久々に弾幕ごっこでもしない?」
魔理沙「...上等だぜ!」
早苗「頑張れ〜!」

霊夢は虹色の光弾を、魔理沙は八卦炉から煌めく閃光を放つ。その美しい弾幕にユイとハルは心を踊らせた。

ユイ「ねえ、ハル。」
ハル「なに?」
ユイ「一緒に遊ぼ!」
ハル「...うん!」

ユイとハルは追いかけっこを始めた。少女達が戯れている中、山の神とコトワリさまはその光景を羨ましそうに見ていた。

山の神『...楽しそう』
コトワリさま「グワァ...」

こうして、ハルとユイは幻想郷を通じて、二年ぶりの再開を果たした。
二人の幸せな夏休みが、始まろうとしていた。

おしまい。

Re: 東方夜廻抄・続 [夜廻三] ( No.21 )
日時: 2023/09/18 20:59
名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)

この物語は[東方夜廻抄]の続編です。

※注意

・オリキャラは出ません。
・夜廻三のネタバレを含みます。
・独自設定あり
・ユズの年齢はハルとユイに合わせています。(11歳程度)
・ユズとコトリの関係は姉妹という設定です。

それでも読みますか?

うん  やだ




-プロローグ-

悪縁結びの神が完全に現世から消えて一年後。幻想郷に住む人妖達を巻き込んだ異変が終わり、ユイは妖怪の山にできた新たな神社でコトワリさまと山の神を祀る巫女として平和に過ごしていた。一方、ハルの学校では新学期が始まろうとしていた。転校生ながらも、生徒達とは良好な関係を築いていた。六年生のハルは、一緒のクラスに入った少女-ユズ-に出会った。その少女もまた、神に運命を弄ばれ、大切な者のために夜を廻っていたのだ。

Re: 東方夜廻抄・続 第一話 独りぼっちじゃない ( No.22 )
日時: 2023/09/18 23:33
名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)

また新学期が始まった。
私の名前はユズ。今年で六年生。でも、この学校に友達はいない。同級生はあの時から私をいじめるようになったからだ。

二年前...私のいじめは夏休みの肝試しで、私が勝手に友達をおいて離れてしまったからだ。とっくの前にムギは死んでしまったというのに、その事実から目をそらして、ムギの幻想を追っていた。無論、気味悪がられた私のいじめはそこから一年間も続いた。そして耐えきれなくて、屋上から飛び降りようとして、-あの森-に入った。

お姉ちゃんとの思い出の場所を歩いて、自分の都合の良いように改変してしまった嘘の記憶を本物の記憶に塗り替えて、ムギの死も乗り越えて、私は夜を廻った。でも、私が得られたものは何も無かった。お姉ちゃんは手遅れだった。自分だけの呪いを解いて、自分だけがあの森から帰ってきた。

最初から私は独りぼっちだったんだ。

でも、お姉ちゃんは最後の最後で私に勇気をくれた。怖かったり辛かった時にする勇気のおまじない。それに縋って今日まで耐えてきた。いじめは今も続いているけれど、もう怖くない。

-学校-

新学期の初日、ユズは重い足取りで教室に入った。自分の新しい机。きっと一週間も持たず、汚されてしまうだろう。幸い、まだ誰も自分のクラスにはいなかった。ランドセルを下ろして椅子にゆっくりと腰掛ける。いじめは自分のクラスの子じゃなくても、広められた-呪い-の噂でみんなが気味悪がっていた。みんながユズを避けていた。ユズは新しいクラスになってもいじめだけは変わらないと分かっていた。父親はユズを昔から可愛がってくれていた。父親は毎日学校から家に帰ってくるユズを心配そうに見ていたが、ユズは父親に迷惑をかけたくないと、いじめの事は黙っていた。相手は同級生全員。話したって解決しない事が目に見えていた。母親はユズが幼い頃にお姉ちゃんを連れて離婚してしまった。母親は呪いにかかってもう死んでいる。お姉ちゃんもそうだった。

中学生はまだ続くだろうが、高校生にさえなれば、この学校の生徒とは絶対に顔を見せなくて済む。どこか遠い高校にでも通えば良い。それまでの辛抱だ。

ユズは机に突っ伏した。そうして窓の外をぼーっと眺めていた。








「お...おはよう」

そうしていると、ユズの耳に声が聞こえた。自分に話しかけてくる事は少ない。何かするつもりだろうかと思いながら、ユズが顔を向けた。

「あ...寝てた?」

机からいきなり顔を上げたユズに驚きながら尋ねた。ユズは無視しようとしたが、その少女の腕を見て動きを止めた。

その少女の-左手は無かった-のだ。本来左手があるはずのぽっかりと空いた空間を見つめていると、その少女はまたもや喋り始めた。

ハル「ごめん...名前言ってなかったよね。私の名前はハル。よろしくね。」
ユズ「...会うのは初めてだよね?」
ハル「うん。一年前に転校して来たの。」

確かに、一年前に夜を廻った後の9月に転校生が一人来たという話は聞いていた。

ユズ「あっそ...」

ユズは不機嫌そうに席を立って窓の方に寄りかかった。

ハル「...どうしたの?」
ユズ「転校生って言ったよね...私に話しかけないで。」
ハル「えっ...」

突然の言葉にハルが困惑する。

ユズ「私はいじめの的になってる。近づかないほうが良いよ。」
ハル「そんな...誰がいじめなんて...」
ユズ「この学年のみんなだよ。私が呪われてるって噂でみんな私を無視するの。」

ユズはあたかも当たり前の様に話していた。

ハル「みんな...そんな風に見えないのに...」
ユズ「転校生のあなたにはそう見えてるだけ。分かったらもう話しかけないで。」

自分のせいで他人にまで迷惑をかけたくないと、ユズはそっぽを向いてしまった。

-一週間後-

案の定、クラスが変わってしばらくして、私の席は汚されていた。赤や黒ペンで机に悪口が書き殴られている。先生達は既に諦めたのか、いじめは見てみぬふりをしていた。ユズの机にはほとんど誰も近寄らず、下校時間になって先生がいなくなると、ユズの周りに数人の男子が集まって、どこから持ってきたのやら、皿に芋虫を乗せては目の前に突き出してくる。一年前まではずっと黙って無視し続けていたが、今日は少し違った。一人の男子が教室から立ち去ろうとするユズの背中を思いっきり蹴飛ばしたのだ。

ユズ「...ッ!」

今まで直接手を振るわれた事は無い。背中に痛みが走り、ユズの顔が一瞬歪んだ。

その顔を見た他の男子達がユズに歩み寄って笑い始めた。馬鹿にするような笑いに怒りを覚えたユズが蹴飛ばしてきた男子を両手で勢い良く突き放した。

ユズ「...邪魔」

倒れた男子に強く睨むと、今度は周りの男子達がユズを突き飛ばした。

ユズ「...ぐっ!」

壁に強く打ち付けられて呻いた。

男子生徒「調子に乗るんじゃねえ!」

一人の男子が近くの棚に置かれたボールをユズに思いっきり投げつけた。

ユズ「......」

ユズは何も言わずにランドセルを掴んで教室から飛び出す。廊下を走り抜けて、校舎を出て、正門を越えて走り続けた。

夕日が落ちて、夜に覆われかけている空の下。街の中をひたすら走った。

-ユズの家-

息を切らしながら家に入る。父親は夜遅くまで仕事でいない。階段を登って自室に入ると、力無く座り込んだ。

ユズ「はぁ...はぁ...はぁ...」

自分が憎い。

ムギの死を受け入れていれば、いじめられる事なんて無かった。今日こうやって帰る事も無かっただろう。自分勝手に幻想を追って、気味悪がられる。自業自得だ。お姉ちゃんも知っていたのだろう。いるはずの無いムギがまるでそこにいるかのように話す自分の姿を見て...







ユズ「...もう何もいらない」






今日までお姉ちゃんがこんな自分に残してくれたあのおまじない。もうユズの心は限界を迎えていた。

-廃ビル-

いつの間にかユズは廃ビルの屋上にいた。既に無数の星が夜空に浮かんでいたが、ユズは顔を上げない。屋上に鎮座しているお社を無視して、壊れた柵を越えて屋上の端に立つ。

ユズ「......お姉ちゃん」

目を閉じて、地面から片足を離し...























ハル「待って!!」

ユズの背後からハルが息を切らして駆けつけていた。

ユズ「なんでここに...」

踏み外した足を戻すと、ハルは屋上の端からユズを右手で引き寄せた。そして...



バチンッ!



ハルがユズの頬を思いっきり叩いた。

ユズ「......ッ!」

うずくまるユズをハルが押し倒して、その目を真っ直ぐ見た。

ハル「自殺なんてしないでっ!」
ユズ「...」

ハルの顔は涙で濡れていた。叩かれた頬にハルの涙が落ちる。

ハル「自分の命を簡単に捨てないで!どんなに辛くてもそんな事は私が許さない!!」

我に返ったユズが今度はハルを押し返した。

ユズ「あなたに私の何が分かるの!!」

これまで溜まってきた辛さが怒りとなって込み上げる。

ユズ「自分のせいで全て失って...今まで何も得られなかった私の何が転校生に分かるのよっ!」

ハルの胸ぐらを掴んで叫び散らす。

ユズ「私のお姉ちゃんもムギも...もういない!自分の命なんだから自分の好き勝手でしょ!」

そういってユズが屋上の端まで走り出そうとするが、その体をハルが後ろから抑えた。

ハル「...自分のせいで失った!?...ならば、あなたのお姉ちゃんはどうしてあなたの命を拾ったのよ?」

その言葉でユズの動きが一瞬止まった。

ユズ「...何?」
ハル「そうやって大切な人が救ってくれた命を捨てちゃうの!?」
ユズ「.........ッ!」

ユズはその場に立ち尽くしていた。ハルは黙り込んだユズに追い打ちをかけるように喋り続ける。

ハル「私は友達の心の傷に気づけなかった...その友達は一度死んじゃったよ...」
ユズ「...え」
ハル「自分ばかり支えてもらって...自分だけでも必死に救ってくれた友達は私の代わりに命を落とした。そうして私は自分を責めて...いっその事、首を吊ってしまおうなんて考えたよ...」

ハルは今はない左手の所に右手を重ねる。

ハル「でも...私は自分の弱さに向き合って...深い深い夜を廻ったの。」

ハルが一本の紅い花を取り出した。

ハル「...私にはもう一人友達がいるんだけど...その子がくれたんだ。」

ハルがユズに紅い花を手渡した。ユズは何も言わずにその花を掴んだ。

ハル「もう見えなくても...たとえそれが幻想でも...必ず、大切な人達は見守ってくれるよ。」

ユズの耳にどこからか猫の鳴き声が聞こえた。視界は歪んでいた。

ユズ「あぁ...あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

ユズはその場に膝をついて泣いた。紅い花を握って夜空に向かって泣いた。ハルは泣き叫ぶユズに優しく抱きついた。

ハル「あなたは独りぼっちなんかじゃない...あなたを大切に思う人は絶対にいるよ...」

無数の星が煌めく夜空が二人を見守っていた。静寂の中にまた、-よまわりさん-が二人を人知らず見守っていた。

















-幻想郷・妖怪の山-

木の葉ざわめく森の奥で緑髪の女性が倒れていた。彼女の名は-コトリ-。ユズの姉であった。

コトリ「...ここは?」

目を覚まし、頭を抑えながら周りを見渡すと、自分があの雪に塗れた森の中にいない事を理解する。

コトリ「私はもう手遅れなんじゃ...」

呪いのタイムリミットは過ぎ去り、永遠にあの森の中にいるはずなのだが、全く違う景色に戸惑いを隠せないでいる。

コトリ「確か...人面鳥になって...妙なものを見て...」

ユズの呪いを解き、しばらく時間が立った後、完全に人間から人面鳥に変化したコトリは、全ての時を観察していた。その時、廃ビルのお社で一瞬開いた-スキマ-を視た瞬間に意識を失ったのだ。

コトリ「...奥に何かあるな」

少し遠くに古い建物が見えた。いつの間にか、すぐそばに落ちていた愛用のカメラを手に持って、歩き始めた。

-双神の神社-

コトリが向かった場所には神社があった。

コトリ「誰かいるだろうか...」

鳥居を抜けて、境内に入ると、箒で地面を掃いている赤黒の巫女服を来た少女がいた。気付いたのか、手を止めてコトリに近づいて来た。

ユイ「こんにちは、お参りですか?」
コトリ「こんにちは。えーと...名前は...」
ユイ「あ、ユイって言います!」
コトリ「ユイちゃんか。私の名前はコトリ。聞きたい事があるんだけど...ここがどこか知ってるかい?」
ユイ「...もしかして外から来ましたか?」
コトリ「外...?」

子供ながらもやけに丁寧な口調に戸惑う。

ユイ「話すと長いんですけど...ここは-幻想郷-の妖怪の山です。」
コトリ「...よ...妖怪の山?...一体私はどんな場所に...」

思わぬ返答にコトリは頭を抱えたのであった。

続く...

Re: 東方夜廻抄・続 [夜廻三] 第二話 忘れ去られた者は ( No.23 )
日時: 2023/09/21 23:52
名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)

ユイ「話すと長いんですけど...ここは-幻想郷-の妖怪の山です。」
コトリ「...よ...妖怪の山?...一体私はどんな場所に...」

思わぬ返答にコトリは頭を抱えたのであった。

ユイ「えっと...幻想郷っていうのは...」

コトリはひとまず落ち着くと、ユイの話に耳を傾けた。

コトリ「幻想郷...一応、日本の中なんだね。」
ユイ「実は、私も外の世界から来たんです。」
コトリ「...君が?」

ユイ「...私がここに来る前に-お化け-に会った事あるんです。」
コトリ「...お化けか。夜の町で会ったとか?」
ユイ「なんで分かるんですか!?」
コトリ「ちょっとした勘だよ。」
ユイ「...コトリさんも夜を廻った事があるんですね」

神社の壁に箒を立てかけると、縁側にユイが座る。その横にコトリも座った。そして、二人は自分達の経験した夜廻を話し始めた。

コトリ「...大変だったね」
ユイ「いやいや、コトリさんも色々と大変じゃないですか!」
コトリ「三途の川で寝てた訳じゃないし、早くここから出て探さ...誰を探しに...?」

コトリが小声で呟いた。

ユイ「どうしました?」

ユイが呼びかけるが、コトリは縁側から立ち上がり、神社の外へ歩き始めてしまった。

コトリ「色々と教えてくれてありがとう。また会えたらいいね...」
ユイ「ちょ...ちょっと待って!」

ユイの声を無視してコトリは再び山の奥へ入ってしまった。

ユイ「...行っちゃった」

追いかけるのは無理だと諦め、また箒を手に持ち、掃除を再開した。

-妖怪の山・中腹-

コトリ「...私は何を探してたんだっけ」

先程、ユイと会話する前には覚えていたはずだった。呪いの影響を受けていたからなのか、頭痛もたまにする。

コトリ「...ッ!」

コトリの意識が急に覚醒した。その直後、コトリの頬すれすれを一本の剣が過ぎて行った。

コトリ「武器?」

後ろの地面に突き刺さった剣を見つめていると、背後から誰かが近づいてきていた。

白狼天狗「貴様何者だ!」

コトリに攻撃したのは、山を警備する数人の白狼天狗達であった。

コトリ「本当に妖怪っているんだな...」

先程、ユイから話は聞いていたものの、幻想郷に来て一時間も立っていない。妖怪が本当にいるというのも、色んなお化けを見てきたコトリからしたら、あまりにも妖怪が人間よりの姿だったため、あまり実感は湧かなかった。

コトリ「勝手に入ってしまった事は謝る...今は少し静かにしてくれないか?」

さっきから頭痛が続くのだが、時間が進むに連れて悪化していた。

コトリ「うぐっ......!」

耐えきれず、その場にしゃがみ込んで頭を抑えた。

痛い...痛い痛い痛い...

何か考えようとすると、さらに頭痛がひどくなっていく。

白狼天狗「...どうしたんだ?」

異変に気づいた一人の天狗が心配そうにコトリに近寄る。その瞬間、コトリが絶叫し始めた。



コトリ「あぁあぁぁぁあぁぁっ!!」



コトリの周りにモザイクのようなモヤがかかる。そのモヤが消えたと思うと、中から出てきたのは、異形の姿だった。

白狼天狗「...なんだあいつは!」

白狼天狗達の前に現れたのは巨大な一つの目だった。その目を取り囲むように、色とりどりの丸い翼が開く。良く見ると、目から一本の長い嘴が生えていた。鳥の姿を思わせるその異形は、ユズのいる町で古くから伝承されてきた-全ての時間を観測する怪異-コトリ-という人面鳥であった。

コトリが翼を広げて、甲高い声で鳴いた。その音を聞いた白狼天狗達は次々と倒れていく。

白狼天狗「ぐわあああ!頭が...頭が割れる!」

しばらくして、その場にいた白狼天狗達は全員頭から血を流して倒れてしまった。それを確認したコトリが人の形に戻っていった。しかし、黒く澄んでいた目は紅く光り、本来手のある場所は不完全な翼になっており、足も片方だけ鳥のようなままだった。

コトリ「......探さなきゃ」

目の前の虚空を見つめながら、一言呟くと、麓の方へ歩き始めた。未だに記憶は思い出せなかった。

-ユズの家-

昨日、廃ビルの上で会った子はハルと言った。ユズはハルの呼びかけに心を開き、家にハルを連れてきたのだ。今日は休日なので父親がいたが、友達を連れて来たとユズが言うと、父親は安心したような表情でユズに「良かったね。」と笑顔を見せた。ハルへ挨拶すると、父親は仕事が残っていると、部屋に入っていった。ユズはハルを連れて、二階の自室へ向かう。


ハル「ここがユズのお家なんだ...綺麗だね。」
ユズ「うん...」

ユズは少しモジモジしながら、ハルと話していた。

ユズ「友達とか...家に呼んだ事ないから緊張しちゃって...」
ハル「大丈夫だよ。私も結構人見知りなんだよね。」

ハルは部屋の置物に興味が向いていた。

ハル「これって、夜に集めたの?」
ユズ「うん、そうだよ。」
ハル「私も集めたなぁ。今も家にあるけどね。」

ハルはクジラの骨を触っていた。

ハル「クジラの骨もあるんだ...」
ユズ「港の方で見つけたんだ。」
ハル「ドリル弾飛ばしそうだね。」                  G.T.
ユズ「え?」
ハル「あ、何でも無いよ!」

慌ててユズに向きなおった。

ハル「そういえばもう五時だね...また明日も来ていい?」
ユズ「...うん!」

ハルはさよならと言って、家へ帰っていった。久しぶりに友達が出来たユズは喜んでいた。

-次の日-

今日は日曜日なのだが、父親はリビングに、急に仕事が入ったという置き手紙を残して、ユズが起きる前に家を出ていた。一人でテレビを見ながらユズは食パンを食べていた。

ユズ「...ハルはいつ来るかな」

食器を片付けて、キッチンで皿を洗いながら呟いた。リビングには、誰の耳にも届かないニュースが淡々とアナウンサーによって話されていた。

-続けまして...一週間程前から米国で確認されていたトイレ型生物の鎮圧に向けて、政府がAI搭載の人型無人機[カメラマン]を実戦投入したとの事で...-




ハル「こんにちは!」

ハルが来たのは午前10時だった。

ユズ「こんにちはハル!」
ハル「あれ?お父さんは?」
ユズ「いきなり仕事が入ったみたいで家にいないよ。」
ハル「そうなんだ...じゃあ、私の家に来ない?」
ユズ「良いの?」
ハル「うん。私の両親は最近出張で家にいないんだ。」
ユズ「なら行ってみたい!」
ハル「決まりだね!」

ユズは既に支度を済ませており、鍵を閉めると、ハルに連れられて歩き出した。

-ハルの家-

引っ越し先の家も前の家と同じような形らしい。ユズはハルと一緒に二階に入っていった。

ユズ「うわぁ...たくさん置物があるね」
ハル「まぁね。」

壁には妙な落書きのお面がついていたり、床に白い毛玉のような物が落ちている......今動いたのは気のせいだろうか?ベッドには何故か画面の割れたスマートフォンが置いてあった。

ハル「ちょっとトイレに行ってくるね。」
ユズ「うん......ん?何これ?」

机の上に置かれた日記に目を通した。

ユズ「...え?」

一見、普通の日記だが、途中に書いてある三年前の夏休みの内容にユズの目が止まった。ハルの引っ越す前の町の話だろうか。

-きょうははなびのひ。でも、かえりみちでみたことのないいきものにであって、おそわれて、ユイとはぐれてしまいました...-

ユズの意識は日記の内容に集中していた。

ユズ「元いた町にもお化けはいたんだ...」

ハルはユイという友達を探して夜を廻っていたらしい。だが、その先のページでユズの表情が強張った。

-わたしにはしんじられません。だって、ユイとはなびにいった。にぎったてのあたたかさもおぼえてる。でも、もし...ユイがしんでいたのなら。ユイは、なんでしんじゃったの?いったい、いつオバケになったの?オバケでもいい。ユイにあいたいよ。-

しかし、ページをめくる手は止まらない。そして...

-わたしのせいだ-

ページの一面が真っ黒に塗りつぶされ、真ん中に書かれたハルの言葉。良く見ると、塗りつぶした所にも文字が見える。

ユズ「...ハル」

その時、ハルが部屋へ戻ってきた。ユズは驚いて日記を落としてしまった。

ハル「その日記は...」

ハルが落ちた日記を拾い上げる。ハルは黙ったままだった。

ユズ「その...ごめんなさい...」
ハル「別に良いよ。」

ハルは日記を左手に持って見つめる。

ユズ「ユイって...ハルの死んじゃった...友達なの?」
ハル「...うん。ユズと会う前までは正直、毎日泣いてたよ。もう帰ってこないって分かってるのに、無理な願いをずっと想ってね。」

ハルは喋り続けた。

ハル「何年か経てば、あの夏の事も記憶から幻に消えてしまうんじゃないかって、ずっと怖かった。生きていくのってとっても怖いと思っていた。」

ユズは静かに、ハルの言葉を聞いていた。

ハル「でも、その記憶がいずれ幻になっても、それはどこかに残ってるって知ったの。」

ユズは後ろから何かの音を感じた。

ハル「幻想なんかじゃなかった。諦めてた夢は本当に叶ったの。」

ユズ「えっ!?」

ユズが-スキマ-へと吸い込まれた。ハルがその後を追う。

ユズ「...ここは?」

ユズとハルが出てきたのは、妖怪の山の中腹に位置する-双神の神社-であった。

ハル「幻想郷にようこそ!ユズ!」

続く...

Re: 東方夜廻抄 [夜廻三] 第三話 見えない絆と縁 ( No.24 )
日時: 2023/09/23 21:47
名前: 博士 (ID: 7ZyC4zhZ)

-妖怪の山・双神の神社-

ハル「幻想郷にようこそ!ユズ!」
ユズ「...げんそうきょう?」

ユズとハルの今いる場所は妖怪の山の中腹に位置する森の中の神社。いきなり家の中から場所が変わった事でユズは少し混乱していた。

ハル「あ...まだ説明してなかったね。」

ハルがユズに幻想郷の事を教える。

ユズ「妖怪とか神様がたくさんいるんだね。」
紫「そうよ。私みたいにね。」
ユズ「え...女の人!?」

ユズの隣から、スキマから半身を出して八雲紫が笑っていた。

ハル「連れてきてくれてありがとう!紫さん!」
紫「外とここを繋ぐのは簡単だからね。じゃ、私は結界の方に行くわね。」

そう言うと、紫はスキマを閉じて、そこから消えてしまった。その様子をユズは口を開けて見ていた。

ユズ「本当なんだね...」
ハル「うん...あ、ユイ!」


二人のもとにもう一人の少女が近づいてきた。青と白を基調にした服を着たハルとは対照的に赤と黒色の巫女服を着たその少女の名はユイだ。

ユズ「あなたがユイ?」
ユイ「え?そうだよ。会うのは初めて...だよね?」

ハル「学校で友達になったんだ!」
ユイ「良かったね!名前は?」
ユズ「あ、ユズって言います。」
ユイ「私はユイ。よろしくね!」

ユイが微笑みながらユズの手を握る。ユズは横にいるハルにキョトンとした顔で尋ねた。

ユズ「ねぇ...ハル。ユイって死んじゃった友達じゃ...」
ハル「......まぁ、色々あってね」
ユイ「神様に助けてもらったんだよ!」

ユズ「神様?この神社の?」
ユイ「うん。二人いるけど...今なら一体だけ呼べるけど。」
ユズ「いやいや呼ばなくても良いよ!」

神様と聞いて嫌な予感がしたユズは首を横に振る。そんなユズの仕草を見て、ハルが微笑む。

ユズ「でも、どうして私をここに連れてきたの?」
ハル「...ユズのお姉ちゃんは死んじゃったんだよね?」
ユズ「......それはそうだけど」

ユズが俯きながら呟く。

ハル「ユイは壊れた結界から幻想郷に来たって言うし、もしかしたら、ユズのお姉ちゃんもここに辿り着くかもしれないと思ったんだ。」
ユズ「...お姉ちゃんは救えるの!?」

話を聞いて、ユズがハルに近づく。

ユイ「もしかしたらの話だよ...でも、探さないよりは良いと思うよ!私とハルが再会するまで時間はかかったし...」

その時、ハルが空を見上げて指差し、呟いた。

ハル「...あれは何?」
ユイ「...え?」

ユイとユズの視線がハルの指さした方向に向いた。黒い煙の様なモノが空に浮いている。

ハル達がしばらく見ていると、煙が晴れて、中から緑色の丸い翼が開き、球体の様な体の真ん中から巨大な一つの眼が三人を見つめていた。

ハル「...妖怪!?」
ユイ「二人とも下がって!」

二人を守るようにユイが前に立つ。それに反応したかのように、-人面鳥-が翼を広げ、大きな鳥の姿になって、ユイ目掛けて嘴を開きながら突進する。

ユイ「避けて!」

ハルは右へ、ユズが左の方に転がる様に逃げると、ユイは持ち前の運動神経で左に飛んで躱した。

ハル「ユイ!」
ユイ「私は大丈夫だよ!」

突進した人面鳥の嘴は巨木に思いっきり刺さった。嘴が取れず、人面鳥は身動きがとれないようだった。それを確認したユイが、腰のポケットから紅い御札を一枚取り出した。

ユイ「霊夢さんに貰ったこの御札なら...妖怪を倒せる!」

ユイが人面鳥の目に御札を貼ろうと近づくが、隣にいたユズがいきなりユイの手を掴んで止める。

ユイ「な...なんで!?」
ユズ「お願い!やめて!」

ユズが泣きながらユイに叫びながらしがみつく。

ユイ「...でも」
ユズ「私のお姉ちゃんを殺さないで!」

その言葉でユイとハルの動きが止まった。

ハル「まさか...お姉ちゃんって」
ユズ「お姉ちゃんは呪いのせいで人面鳥になっちゃったんだ...」
ハル「人面鳥って...学校の噂の!?」
ユズ「私の町で私が生まれる前から噂になっているお化け...お姉ちゃんは神様に呪われて...全ての時間を見れるお化けに変えられたの...」

ハル「そんな...」

その瞬間、ようやく拘束が解けた人面鳥がユイを睨んだ。

ユイ「ひっ...!」

ユイが後退りすると、人面鳥が甲高い声を浴びせた。

ユズ「うっ...!」

ユズは咄嗟に耳を塞ぐが、ユイは御札を持っていて、すぐに耳を塞ぐことができなかった。

ユイ「...頭が...痛いっ...!」

ユイの額に血が流れている。頭のどこかが裂けそうになっていた。

ハル「ユイっ!!」

ハルが二人の方へ駆け寄ろうとするが、あまりにも強い音で顔を顰めて耳を塞ぎ、その場で止まってしまう。

ユイ「...うぅぅ...痛い痛い痛い痛い痛い痛い!」

ユイが絶叫しながら、その場に倒れ込んでしまった。それを見ると、人面鳥は叫ぶのを辞めて、何か呟いていた。

人面鳥「...ヨンデイルヨンデイルヨンデイル」

しばらくすると、里の方へと飛んで行ってしまった。

ハル「ユイ!起きて!」

ハルがすぐさまユイの元に駆け寄った。ユイは頭から血を流して気を失っていた。

ハル「早く手当てしないと...ユズ!少し手伝って!」
ユズ「...うん」

ハルとユズがユイを支えながら、麓の方へと歩き始めた。

ユズ「ごめんなさい...私のせいで...」
ハル「...ユズは悪く無いよ。少しびっくりしたけどね...」
ユズ「ハルが言ってた永遠亭って所に行ければ、ユイは治せるの?」
ハル「うん...霊夢さんから、そこにお医者さんがいるって聞いてたんだ。」

だが、妖怪の山と永遠亭のある迷いの竹林は真逆の方向である。到底、ハル達が歩いてすぐにつけるような場所では無い。

ハル「...どうすれば」

その時、ハル達の上を人影が通り過ぎた。

ハル「......魔理沙さん!!」

見上げた先にいたのは、箒を使って空を飛んでいた魔法使いの霧雨魔理沙であった。

魔理沙「あ...久しぶりだぜ!」

魔理沙がハル達の元に着陸すると、ユイを見て驚いた。

魔理沙「ユイちゃん!?一体何があったんだぜ!?...それに、もう一人の子は?」
ハル「話は後にして下さい!早くしないとユイが死んじゃう!」
魔理沙「わ...分かったぜ!かっ飛ばすぞ!」

魔理沙はユイを乗せて、猛スピードで永遠亭に飛んで行った。

ハル「私達も追いかけよう!」
ユズ「うん!」






-永遠亭-

ハル「...やっと着いた」

ようやく着いた二人は急いで永遠亭の中に入って行った。奥に位置する-病室-と書かれた看板がぶら下がる扉を開けると、ベッドに眠っているユイがいた。その頭には包帯が巻かれていた。横には、魔理沙と永琳が座っていた。

魔理沙「ユイちゃんは無事だぜ。」
ハル「ありがとう!」
永琳「良かったわね...出血は酷かったけど、命には関わらないわ。」

ハルがベッドに近づくと、早速ユイが目を覚ました。

ユイ「...ん」
ハル「ユイ!大丈夫!?」
ユイ「...ここは?」
ユズ「ここは永遠亭だよ。」

ユイ「ユズ...魔理沙さん...心配してくれてありがとう。」

ユイは頭を擦りながら、ハルに顔を向けた。

ユイ「ねぇ...」
ハル「どうしたの?」


ユイ「.........あなた誰?」

続く...


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