社会問題小説・評論板
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- いじめと反省
- 日時: 2015/09/23 17:18
- 名前: 波坂 (ID: DJvXcT4Z)
はじめまして。
小説カキコで初投稿させて頂きます波坂です。
いじめ等の描写が多くなると思います。
誤字脱字の事やアドバイスをよろしくお願いします。
僕は朝霧介斗[あさきりかいと]。中学生だ。
- Re: いじめと反省 ( No.14 )
- 日時: 2015/10/13 21:59
- 名前: 波坂 (ID: DJvXcT4Z)
今日に予定を変更したのにはちゃんとした訳があった。
別にチキンだからとか、そういう理由ではない……はず。
理由は簡単、今日が水曜日だから。つまり練習が休みだからだ。
今は放課後で教室の中には人影はほとんどいない。
僕と奈手葉はそのほとんどに含まれていなかった。
今日、また殴られたところが痛いはずだが痛みは一つの感情により意識から無意識に放り込まれた。
緊張という感情によって。
「…奈手葉!」
「……何かしら?」
冷たい視線を受けるがそんな事を気にしていられるほど僕の心は余裕が無かった。
心臓がバクバクする。
時間が遅い。
「ちょっと屋上に来てくれないか?」
奈手葉は黙って、僕に頷いた。
ガシャンとフェンスに手を掛ける。
今掴んでいるフェンスは屋上の物で、ついこの前取り替えたばかりなので崩れて落ちるなんて事にはならない。
「……なぁ。奈手葉」
「どうしたの?」
奈手葉の声は少し先程の棘々しい感じがとれた声だった。が、まだ僕に棘がある。
「奈手葉ってさ……告白されるならどんなポーズがいい? 僕、好きな人ができたんだ」
「………えっ!」
奈手葉は凄く驚いた表情をしている。その驚いた理由は僕にはいまいち理解しがたいが。
だが、奈手葉はすぐに冷静さを取り戻す。やはりその冷静さは称賛に値する。
「……抱き締めながら好きだよ。……って言ってくれたら最高かしら」
「……そうか……ありがとうな」
答えてくれた事にはとても感謝している。だが僕にはまだする事がある。
「……これ、玄関辺りで開けて読んでくれ……」
僕が差し出したのは一枚の封筒。薄茶色で中には紙が入っている。
奈手葉は黙ってそれを受け取り、
「……介斗の恋、応援してる……わよ」
そして奈手葉は屋上から出ていく。
奈手葉が歩いた後には水が落ちた跡が幾つかあった。
……今日、介斗に呼び出されて行ったら……好きな人ができたって。
はは。良かったわね。喧嘩したら駄目よ。
え? 私はどうかって? いいのよ。介斗が幸せならそれで…………なんて事が言えるほど私は大人じゃない。
好きな人ができたって聞いた時は、凄く胸が苦しくなった。何でだろう? ははっ……。
わからないけど私、泣いてるわ。
告白の仕方だって、本当は私が介斗にして貰いたかった。だけど介斗がするのは……私では……ない。
そうこう感傷に浸ってたら玄関だわ……あの封筒でも読もうかしら。
この中に介斗の好きな人でも書いているのかしら? 自分の前では恥ずかしいって。
私は封筒を開け、中身を読んだ。
『月夜奈手葉さん。
僕は貴女に対して恋愛という好意を持っています。
もしよかったら今日の放課後、屋上に来てくれませんか。』
私は何も考えずに、来た道を折り返した。
バン! と音を発てて屋上のドアが開いた。
「……奈手葉」
「介斗……これって……」
貴方が書いたの? 聞きたかった。だが、それは介斗の行為によって行動に変換する事ができなかった。
介斗は私の肩に手を回して、自分の胸に私の顔が接近する体制をとっている。つまり、抱き締めている。
自分の頬が羞恥心で少し赤みがかかるのがわかった。
鼓動が速くなり、急にドキドキし始める。
「奈手葉……僕は奈手葉の事が……好きだ。付き合って欲しい」
……ずるい。
これは私のアイデアよ。パクるなんてずるいわ……だけど……。
「……はい…喜んで」
介斗を自分から抱き締めている自分がいた。
「もう……何日待ったと思ってるの……」
「……ごめん」
「……バカ」
私は力をもっと強く込める。介斗の胸に顔を押し当てる。
泣いているのなんて、恥ずかしくて見せられなかった。
「………」ガチャ。
「お帰りなさい」
「…………」テクテク。
「ちょっとー介斗ー?」
「…………」バタン。
「どうしたのー?ねぇー」
今日、産まれて初めて告白をした。
とても嬉しかった。
それだけは、覚えている。
- Re: いじめと反省 ( No.15 )
- 日時: 2015/10/15 21:00
- 名前: 波坂 (ID: DJvXcT4Z)
付き合い始めて一週間たっただろうか。
中学生の付き合うなんてたかが知れているが、僕にはとても嬉しく、憂鬱だった学校がとても楽しみになった。
ある一部を除けば、だが。
例えば、好物を食べた後に苦手な物を食べると、その苦手な物がいつもより不味く感じられるように、温水に手を浸けて直ぐに氷水に浸けるととても寒く感じられるように、奈手葉の関係ではとても嬉しいが、理のいじめではとても苛つく。何が言いたいのかと言うと、幸せと不幸の温度差が激しすぎで、いつも以上にイライラするのである。
まず、靴がびっしょびしょに濡れていた。これはまだいい。
次に、シャープペンシルの芯が粉々になっていた。これもまだ、ギリギリ見逃せる。
だが、自分の授業で使ったノートに消しゴムがかけられているのは少しカーッときた。
さらには、給食をわざと落とす始末である。
そして、最後にはリンチが発生する。
殴られる中、ついに僕は我慢の限界が来たようだ。
殴りかかってきた理に、肘うちをプレゼントしてしまったのである。顔面と言う部位に。
理は鼻血を出して怒りをあらわにする。
「オイこのゴミ! どっちが上かわかってんのか!」
「俺に決まってんだろこの屑が!」
またもや一人称が変わったが感情的を含む口論では都合がいいのでやめなかった。
「はぁ? お前状況理解できてんのか?」
「この屑に威を貸すような頭が単細胞生物に負けず劣らずの脳の小ささをした糞の様な人間の威を借る糞にも数段劣る屑と、取り巻きのモブ以下五人と俺だろ?」
俺の言葉に理はとても憤慨して、あの脅しをけしかけてきた。
「うるせぇんだよカス! もうクラス中にいじめを広げてやるからな」
「ハッ! そんな事やってるから屑なんだよ屑。俺にどう頑張っても口論勝てないから物量的作戦か? あ、ごめん。お前には理解できないな。
要するに、お前の様な屑は俺に敗北を認め、数で勝負して嘘の勝利を掴みとるんだな? と聞いている。悪いな、お前と違って少しばかり賢くて。あ! 悪いのはお前の頭か! 二人称を統一できない様な頭だからな!」
俺は暴言を吐きまくり、最後にはすこし驚いた様な顔をして、少しニヤリとする。その顔を理に向けてだ。
「うるせぇ! だったらそれはやめてやるよ!」
「うるせぇ! って言わねぇと反論できねぇのかこの屑!」
この言葉の凶器に滅多刺しにされた理はうつむいて、
「バーカ! バーカ!」
とロケットを飛ばす様な名前をした組織改め団もビックリの捨て台詞を吐いて逃亡した。
今日はとてもいい気分になった。
……今日は。
- Re: いじめと反省 ( No.16 )
- 日時: 2015/10/17 17:46
- 名前: 波坂 (ID: DJvXcT4Z)
この小説も終盤だな〜。
続きです。
このいじめの本当の終わりは、唐突にやって来た。
午前中だけ練習がある日曜日、練習が終わり、シャワーを浴びて昼食を摂る。そんないつもと変わらない日常というやつだった。
だが、日常の終わりは唐突だった。
パカパカケータイにメールが一通入っていた。確認してみる。お、奈手葉からだ。
少々期待しつつもメールを開いた。
そして僕がとった一秒後の行動は、
「ふざけんな!」
ケータイを、ベッドの上に叩き付けていた。
机から機器をとりだし、バッグに詰め、チャリの鍵を乱暴にとる。
「いってくる」
おそらく、ボソッと呟いたその言葉は僕の母親には届いていなかっただろう。しかし、そんな事はどうでもよかった。
チャリの鍵を解除し、急いで走る。
行き先は廃病院。チャリで13分程度だろうか。
足に力を込めて加速する。息が乱れる。だがそんな事はどうでもよかった。
とにかく僕は急がないといけなかった。
メールに書いてあったのはこの文。
『やっほー。朝霧元気? 月夜ちゃんだよ〜!
あのね〜今ね〜理と楽しい事してるんだ! 朝霧も来れば?
早く来ないといけないよ〜!』
そして下には一枚の画像が貼ってあった。
縛られたままで気絶をしている奈手葉と、その上にニヤニヤした表情をした理が写った画像が。
「奈手葉は……僕を朝霧とは呼ばない!」
廃病院の裏手から入り、二階に登る。
だが、二階には何もない。
三階に登る。
ある部屋から、とても大きな笑い声がした。醜く歪んだ、粘着質のような声が。
その部屋の扉を開ける。
「あ、来た」
そこにいたのは、屑に威を借すような単細胞生物に負けず劣らずの脳の小ささを誇るゴミだめのゴミを超圧縮した人間の汚らわしい威を借りる人間の屑である理がいた。
そして取り巻きのやつらも数人いる。
「朝霧遅いよ〜。もう月夜ちゃんを食っちまったよ〜」
こいつの発した、言葉が理解できなかった。
「食っ、た?」
「そうそうー。まあちょっとグロかったかなー?」
「そうそう。何か処女膜って破るとグロかったなー」
「だからすぐに捨てたけどなー」
「「「「ギャハハハハ!」」」」
やめろ。
しゃべるな。
「いやー強情だったなー。介斗が悪いわけないでしょうが! とかほざいてたけど最後は泣いちまったからなー」
「あんなの一発殴って気絶させて、起きた後犯せばいいだけだったな」
こいつら。
絶対に。
……殺す。社会的にも。
「じゃあ朝霧は金属バットでいいな」
「いいねいいねー!」
「やっちゃえやっちゃえ!」
……そうだ。
「朝霧が何発で倒れるか賭けをしようぜ!」
こんなやつら、生きている価値は無い。
「1発で!」
「3発!」
だったらいっそ。
「よーし、じゃあ!」
殺してしまえ。
金属バットが降り被られる。
そして俺の頭めがけて降り下ろされた。
バキャリ! と鈍い音がした。
金属バットは、俺の挙げた右腕に掴まれていた。
血が出ている、きっと骨も折れている。が、それほど痛くない。何でだろうか?
「……おい」
自分で出した声に、自分で驚く。
自分はこんなにも、どす黒い声が出せたのか、と。
「お前、やってること、わかってんのか?」
俺に睨み付けられたであろうゴミはとても怯えている。バットを手放し腰を抜かして時折、ああ。と声にならない声を出している。
「お前らがした事はとんでもない事をしたんだぞ」
周りのやつらが、ひい。とか言っている。なんなんだこのゴミは? こんなことしでかす位なんだから覚悟があるかと思っていた。
「とりあえずお前は」
さっき俺にバットを降り下ろしたやつめがけて同じ行動、つまり降り被る。
「や、やめろ!」
今更どの口が言っている? お前は俺に面白半分でバットを振ったのか? どのみちお前は。
「俺の知覚範囲から消え失せろ」
俺は無慈悲にバットを降り下ろす。
俺の下には、綺麗とはとても言いがたい、赤くて、紅くて、液状の花びらが散っていた。
- Re: いじめと反省 ( No.17 )
- 日時: 2015/10/18 15:14
- 名前: バラバラ ◆wD3p6RHHU6 (ID: VpfXouOp)
上手ですねー。
描写がリアルで、かなり怖い(゜〇゜;)
- Re: いじめと反省 ( No.18 )
- 日時: 2015/10/18 16:54
- 名前: 波坂 (ID: DJvXcT4Z)
バラバラさん感想ありがとうございます!
久しぶりの感想とても嬉しいです。
続きです。
俺の目の前の奴は息をしているのだろうか?
俺は人を殺したのだろうか?
果たしてこんなやつを人と呼べるのか?
俺の頭では数々の疑問が浮かぶ。
だが頭は不思議とパニックを起こしていない。俺の頭はきっとおかしいのであろう。
そう考えると、やはりゴミたちの反応は正しいのだろう。
もう俺は狂ってしまった。壊れてしまった。
それならどうせ、狂える所まで狂ってしまえ。壊れる所まで壊れてしまえ。
俺の歪んだ思考はいつもの俺の常識からは大きくかけ離れた思考判断を叩き出した。
だが、俺は疑問を持たない。迷いもしない。なぜなら。
俺が、狂い壊れているからだ。
「ギ、ギャアアアアアア!」
ひとつのゴミは、もう正常な判断ができないのだろう。俺につっこんで来た。
手にはカッターナイフ。俺を刺し殺す気だろう。
だが、発生した音は、鈍く、重く、そして残酷でもある音だった。
俺の前に、また一体、人形ができた。
頭の紅い、グロテスクな色のお人形が。
残ったのは、ゴミが2人と理だけだ。
「おい」
俺の声色は変わらずにどす黒い。目付きも人生の中で最も険悪だろう。
もはやゴミや理は声を出すことを忘れたようだ。口が何度も閉開を繰り返しているが、一切空気は振動しない。
殺気とはこの事を言うんだな、と頭の隅で考えていると、一人が突如として電源が切れたかの様に倒れた。あまりの緊張に失神したのだろう。
「おい」
残った二人はビクっと反応し、ゴミの方は腰を抜かしてしりもちをつく。
「こんなもんで済むとか、思って無い、よ、なぁ?!」
一歩、また一歩と俺は理に歩み寄る。
「あああ……」
また一歩。
「ああああ……ああ」
また、一歩。
「あああああああああ!」
言葉を忘れた様に叫ぶ理の首を掴み、一度宙に浮かせ、トスバッティングの様に、バットをスイングする。
ゴギャリ! と俺の腕と似たような音がした。
トスバッティングのボールの様に打たれた理は、左腕を押さえて倒れている。
「ぎゃあああああ!」
悲鳴をあげた。
だからどうした。
今度は理の髪の毛を掴み、宙に浮かせる。黒い糸が手にはあったが気にしなかった。
再び鳴る、無慈悲な音。そしてそれに連なる悲鳴の声。
だからどうした。
理がいくら叫ぼうが喚こうが、俺には関係無い。
俺は復讐するだけだ。
左腕を二度、強打された理の腕は見るに耐えない、小学生の粘土細工の様になっていた。もっとも、小学生の粘土細工は、血を付けたりはしないだろうが。
更に、俺は左腕を踏みつける。力をかなり込めている。
「ああああああああああ!」
こいつは喚く事しかできないのか。
「ああああ……ぁぁ………ぁ……」
どうやら痛みで意識を失ったらしい。
理をボロ雑巾の様に蹴飛ばし、最後のゴミに近寄る。
「……奈手葉はどこだ」
「ひい!」
「奈手葉は何処だって聞いてんだよこのクソゴミがぁ!」
するとゴミはロッカーを指差す。
ゴミにバットを投げつけて、ロッカーまで移動する。後ろで悲鳴が聞こえたのはどうでもいい。
バン! とロッカーを開ける。
そこには、奈手葉が転がっていた。
ロープによって拘束され、気絶している。服が所々破け、血が付いている部分も少しある。
とりあえず、救急車を呼び、ゴミからスタンガンを取る。
そしてそれを、自分に押し当てる。
これは、意味ある行動だ。
そして俺は、意識を失った。