社会問題小説・評論板
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- 愚かな女王様の制裁
- 日時: 2016/01/10 11:14
- 名前: 雪 (ID: dP9cSz6y)
「山ノ内...咲良?」香月涼の声が、教室にこだました。
私、京極絵梨は咲良に近づく。咲良は悲鳴を上げる。
ーーーーー見て見ぬふりをする担任、いじめる仲間達。
誰も私に逆らう者はいない。逆らえば何をされるか...分かっているのだから。
私は気に入らない者が死のうが苦しもうが関係無い。
私がいじめて死んでいった人間はいないが。
「死にたくない」そう思っていても殺されるのだ。私はただ見ているだけ。愚かな少女達は殺されないために
人を殺す。
自分のために。
1・『そして、事件は幕を開ける。』>>1
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- Re: 愚かな女王様の制裁 ( No.22 )
- 日時: 2015/12/27 13:40
- 名前: 雪 (ID: dP9cSz6y)
私の知らず知らずのうちに、絵梨は短編小説を書いていたらしい。絵梨の遺族から渡された。
タイトルは「君へ贈る花束」。世界一大きな本屋の一番目立つところに置いてあろうが、ベストセラー
だろうが、怪訝そうな目を向け、無視するようなタイトル。最悪だ。
だが、百歩譲ってプロローグだけ読むことにした。主人公は、『京極絵梨』。嫌だとは思いながら、ただ
観ているだけの人間。
『私は、最悪な現実に押し潰されそうになっていた。毎晩、布団の中で涙を流していた。
社長の娘が自殺だなんて、有り得ない。沢山の人に迷惑を掛けてしまう。
私は泣いている人を、自殺したがっている人を、慰める立場から一変していた。毎日インターネットに
入り浸って、慰めてもらっていた。ただそれだけでは満たされなかった。なんで。
これは、私の日記。』
無理。最後まで読めるはずがない。まあこれはとっくにベストセラーになっているけど。
でも、みんな懲りずにいじめをしている。標的はもちろん、私。
犯罪って、金で買えるものなの?
- Re: 愚かな女王様の制裁 ( No.23 )
- 日時: 2016/01/01 23:08
- 名前: 雪 (ID: dP9cSz6y)
「嘘」
私は絶句する。
庭にゴミが散らばっていたからだ。嫌な言葉を書き殴った紙もたくさん貼られていた。これは......誹謗中傷だ。
「これ...」
私が見たのは、包丁とガラスの破片。
包丁はかなり小ぶりのもので、コンクリートの地面に突き刺さっていた...と言うより、持ち手が地面に嵌め込まれていた。
地面に穴が開いている。多分、包丁で一度刺したあと、持ち手を嵌め込んだのだろう。
ガラスの破片は、明らかに鋭くさせるために切られており、三角形のかたちになっていた。
それも立てて、うっかり踏もうものなら包丁の刃先が足に突き刺さり、ガラスで足を切っていたかもしれない。
『人を殺した』だけでこんなにひどいことをされなければならないのか。私は後悔した。
ごめんね、なんて言葉ではもう足りない。
死ななければならない。
私は地面から包丁を抜き取る。
そして首に向ける。準備は整った。
..................やっぱりダメだ。怖すぎる。
ごめんね、涼、美里、みんな。
- Re: 愚かな女王様の制裁 ( No.24 )
- 日時: 2016/01/02 13:19
- 名前: 雪 (ID: dP9cSz6y)
「さっさと死んでくれない?咲良」
「ウザい」
「涼様だって凄く嫌がっているじゃない?あのね...涼様から聞いたんだけど、昔咲良が涼様の親友を
いじめて、自殺にまで追い込んだらしいよ?
「嘘...優花ちゃん、それヤバくない?私たち...恨まれて殺されたりしちゃったらさ...
もしかしたら...下手したらさぁ、涼様とか優花ちゃんにまで及ぶかもよ...?」
「やだ、あんなやつに殺されるなんて。ねぇ、涼様?」
それは、明らかに私に聞いてもらうために作った言葉たちだった。
私をみんなが肯定している。今では、私さえいじめをやりたくないなんて思っていない。
「...え、まあ、そうね」
「でしょう?私も、何かできることがあったら手伝います」
「ありがとう。では昼休みまでに人材集めをしておいてね。そうね...人の首を物怖じせず絞められる人とか」
「わかりました!」
「私も早速お手伝い致します!ねっ、行こう優花ちゃん!」
「もー結実ちゃん、走んないでよー。じゃあ失礼しまーす」
「...」
「ウザい」「死ね」
「静かにしなさい!」
「な...何するの...涼...、涼様...っ」
「うるさい!」
優花が咲良を蹴り飛ばす。反動で体育館の壁に頭を思い切り打ち付けたのを見て、優花がまた咲良を蹴り飛ばす。
「早く。結実、ぼうっとしていないで、早く取り押さえなさい。優花、もう蹴るのはいいから」
「すみません女王様、ほらさっさと来なさいよ咲良!」
「嫌ぁぁぁぁぁぁ!」
結実が咲良をボールのように何の抵抗もなく優花の方へと頭を蹴る。私の手にはピンク色の、場違いな程
子供っぽい飛び縄があった。
「嫌ぁぁぁぁぁぁ!嫌ぁぁぁぁぁ...止めて...やめて...死んじゃ...う.....やめ...て....」
「やめるわけないじゃない、ね、女王様」
「まだ平気ね」
私は質問に答えることなく、独り言をつぶやく。
すると、「やめて」と叫んでいた咲良の首が、力なくかくりと折れた。
「きゃぁぁぁ!」
優花が恐怖に戦き、飛び縄を放り出す。
「まだ死んでないわ..........................................大丈夫..................」
だよね?
- Re: 愚かな女王様の制裁 ( No.25 )
- 日時: 2016/01/03 15:25
- 名前: 雪 (ID: dP9cSz6y)
咲良...あのゴミ屑が死んでいないとわかると、私たちはこの「ゲーム」を繰り返した。
「ねー 優花ちゃん、あたしにもやらせてー」
「私もやりたいなぁ」
「優花ちゃんばっかりずるいー」
「うるさいわよみんな、女王様、やらせてやってもいいですかぁ?」
「良いわ、死んでもどうせ私の権力で無かったことにだってできるもの」
「有難う御座います。女王様」
結実がうやうやしく頭を深く下げる。私は笑う。咲良は恐れ戦く。
「....や.........めて..............死んじゃ....死..............んじゃう.......」
「これくらいで死ぬ訳ない」
「.......................................」
やっぱり何度繰り返しても、死なない。死なないのならやってもいい。私たちはそう思った。たまに自習の時間を利用し、体育館でこの残酷な行為をしていることだってあった。教師にだって許可はとっている。まぁ、私の権力で脅しかけたのだけれど。
「自習の時間、体育館で『遊んで』居ても良いかしら?先生」
「えっと...多分駄目です。...いくら進学校だとはいえ...お嬢様高校だとはいえ...学習は義務なので...」
「あら。先生?まだお分かりになっていないのかしら?香月様はこの学園の女王様なのよ?
逆らったらどんな目に遭うかわかっているでしょう?」
「はい........わかりました」
教師は新人で、私たちはそこを突いた。教師は簡単にOKした。
明日はどんなに楽しい日が待っているのだろう。
- Re: 愚かな女王様の制裁 ( No.26 )
- 日時: 2016/01/04 14:33
- 名前: 雪 (ID: dP9cSz6y)
*遺書*
暫くのあいだ放っておいてしまっていたので、そろそろ家庭のことも書いておこうと思う。
*
「お母さんは、どうして私のことが嫌いなの?」
「私だって構われたいよ」
ずっと思っていた、こと。構ってよ、お母さん。なんで私が嫌いなの。
「お母様、どうして私のことが嫌いなの?」
小さい頃の私は、最悪なタイミングで聞いてしまった。お母さんはかなりイライラしていて、ああもう、と言っていた。
「うるさい!どこかに行っていなさい!」
そう言われてしまい、いつも可愛がられている姉の菜花に聞いた。ななちゃんは元々病弱で、私は漫画に出てくる
ような病弱なお嬢様なんかじゃなかった。だからだ。
「さっちゃんはかわいがられようとしないからじゃない。仮病でもすれば構ってくれるよ」
じゃあ、仮病を使おう。私は、咳をし始めた。すると、
「咲良!」
「どうしてあんたはこんな時に風邪なんかひくの!全く、もう知らないからね!」
と怒られてしまった。どうすればいいの?
二日後に理由がわかった。私が放っておかれて、お姉ちゃんーーーーー姉のななちゃんに。
私とは、まるで立場が違うのだ。
「お母様、風邪気味だから学校にいけない」
姉が言うと、お母様は困った顔をしたあと、笑顔に戻った。
「あら、大丈夫ななちゃん?大丈夫よ、学校なんか休んでしまって。寝て、安静にしていれば治るから」
「ありがとう、お母様」
そんなことが繰り返される度に姉がかわいくなって、私がお母さんの眼中から外れていくんだ。
「ななちゃん、もう風邪なんかひかないでよ!ううんーーーーーーお母様にかわいがられないで。
ななちゃんは私がきらいなの?」
私は泣きたくて、泣かないようにするため、大嫌いになってしまった姉に言った。
ー私はかわいがられたくてかわいがられているんじゃない。
最悪な答えだと思いませんか。
「私にはわかる!」
「どうして、あんたなんかに分かるのよ。私は、私は、かわいがられたいんじゃない!かわいがられたいんじゃない!」
長い髪を振り乱し、大声で泣き始めたななちゃんはお母様にこのことを言いつけた。
ーさっちゃんがね、ひどいことを言ったの。
ななちゃんはお母様に気に入られようとしているって...
「咲良!ダメじゃないの、そんなことを言ったら!ななちゃんが傷ついてしまったじゃない!」
「私はそんなこと言ってない」
真実を告げても、彼女は信じなかった。
私はこの日から、母に決定的に嫌われた。

