社会問題小説・評論板
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- 愚かな女王様の制裁
- 日時: 2016/01/10 11:14
- 名前: 雪 (ID: dP9cSz6y)
「山ノ内...咲良?」香月涼の声が、教室にこだました。
私、京極絵梨は咲良に近づく。咲良は悲鳴を上げる。
ーーーーー見て見ぬふりをする担任、いじめる仲間達。
誰も私に逆らう者はいない。逆らえば何をされるか...分かっているのだから。
私は気に入らない者が死のうが苦しもうが関係無い。
私がいじめて死んでいった人間はいないが。
「死にたくない」そう思っていても殺されるのだ。私はただ見ているだけ。愚かな少女達は殺されないために
人を殺す。
自分のために。
1・『そして、事件は幕を開ける。』>>1
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- Re: 愚かな女王様の制裁 ( No.12 )
- 日時: 2015/12/17 15:23
- 名前: 雪 (ID: knWr5sbP)
「絵梨様ぁ?ちょっと聞いてくださいよぉ。
咲良ってばぁ、絵梨様に報いを受けるのは当然の事なのに抵抗したんですよぉ?
有り得ないと思いませんかぁ?
「ちょっとこっちに来なさいよ」って言っただけで暴れ出して抵抗して、百花の事蹴ったんですよぉ?
ほんっと、咲良って、最っ低!」
「嫌ぁぁぁぁぁ!止めて...っ」咲良にしてみれば絶対に言って欲しくないことだったんだろう。かわいそう。
私は目を背けたくなるような現実から逃れられなかった。
「辞める訳ないじゃない、こんな楽しいこと。皆好きに虐めていいのよ」
そう言うと、咲良を皆寄って集って虐げる。アピールの為だ。玩具にならないための。
ようやく、火曜日の地獄の時間が終わる。すると私は人目につかない体育倉庫裏で咲良に会った。
「咲良...」
咲良だった。咲良はもうボロボロで、今にも倒れて、消えてしまいそうだった。
「絵梨ぃ!痛かったよ!うわぁぁぁぁぁん!」
咲良は私に泣きついた。
普段なら付き放つ所だけど、そうしてしまったら、きっと咲良は二度と戻ってこないーーーー。
「ごめんね、ごめんね、咲良...何もしてあげられなくて、ごめんね...ごめんね、ごめんね!」
- Re: 愚かな女王様の制裁 ( No.13 )
- 日時: 2015/12/18 15:41
- 名前: 雪 (ID: knWr5sbP)
私って、どんなにひどい子なんだろうーーーーーー。
ひどいいじめっ子の私を、美里や涼が許してくれるわけがない。
許してほしいけど、許してなんかくれない。
「バカ」「死ね」「消えろ」「学校に来るな」ひどいことを書かれた机。そしてたったの、小学三年生の美里が
落胆したり泣いたりするのを皆で目配せして、大声で笑う。
すごく楽しかった。美里を、中学二年生くらいまでいじめた。小、中、高と一貫校だったからずっといじめられた。
暴力こそしないけど、いじめはこそこそ陰湿にやっていた。
油性ペンで机に悪口を書く。美里は泣いた。私たちは笑った。
持ち物を隠す。美里は探し回っても見つからなくて、先生に怒られて泣いた。私たちは笑った。もちろん全部捨てた。
階段から突き落としたり、ボールをわざと当てたり。美里はだんだん泣かなくなった。代わりに、笑いもしなくなった。
「あいつなんかつまんない」「なんにもできない」「大嫌い」...。
こそこそといじめをしているうちに、美里は居なくなった。不登校にでもなったのか。
ざまあみろ。そう思っていたけど、まさか自殺をしてしまっていたとは...
後悔の念に尽きる。
- Re: 愚かな女王様の制裁 ( No.14 )
- 日時: 2015/12/19 13:48
- 名前: 雪 (ID: knWr5sbP)
わからない
美里は、どんな気持ちでいたの?
いじめられて、悲しかった?悔しかった?嫌だった?
私は、わからない。さっきまでできたことが、できなくなったり。絶望に呑まれてしまったり。
これは、たったひとり、取り残されてしまった私の遺書。
いつ死のう、いつ死のう、...そればかりを考えていました。もう私は、人間として壊れたのでしょう。
日に日にあざが増えていきました。あざは変色して、醜かったのです。
最初こそ無視されていたけど、あまりの多さに使用人が嫌そうな顔をして聞いてきてくれました。
「どうしたんですか?大丈夫ですか?」
「...平気。体育の跳び箱の時に転んでぶつけただけだから」
私は嘘をつきました。使用人も、お嬢様のあざには手が回らないほど忙しいのか、無視していました。
「気づいて」後ろでつぶやきかけたこともありました。あのときは気がつかれなかったから良かった
けれど、気づかれなくて良かったです。
だってこれは制裁。気がつかれてしまったら終わりだから、ね?
それと、この遺書を発見しても、絵梨や涼を糾弾しないでください。悪いのは私ひとりです。
- Re: 愚かな女王様の制裁 ( No.15 )
- 日時: 2015/12/20 13:02
- 名前: 雪 (ID: knWr5sbP)
どうして、許さない?
どんな謝りかたをしたとしても、涼は許さない。こんなに醜いこと、いつまで続けるつもり?
私が悪いのはわかっているけど、いつまで続くのか。
許さないだなんて、当然ではあるけれど埒が明かない。もう血が出るのは慣れてしまったけれど。
遺書 ②
痛めつけられても、当然のように泣かない私に、涼は苛立ちを感じたようでした。
普通に見てみれば一見、ただの新学校。でも、中身は異様でした。
朝はみんな、普通です。本を読んでいたり、おしゃべりをしていたり、勉強をしていたり。私には、そのことが
信じられませんでした。
でも、絶対にひとりだけ、傷だらけの少女が紛れ込んでいるのです。
その少女には、絶対に誰も声をかけません。かけられないのです。
少女は絶望的なほど、傷だらけで悲しげな雰囲気を醸し出しているのです。
それが、私なのです。体育館に呼び出されて叩かれたり蹴られたり、この世のものとは思えないほどの
痛みを受けなければいけないのです。
私は雄叫びを上げたりなんかしません。それは、とても悲しいことだと思うのです。
- Re: 愚かな女王様の制裁 ( No.16 )
- 日時: 2015/12/21 17:02
- 名前: 雪 (ID: knWr5sbP)
無造作に咲良の机の上に置かれた、綺麗なノート。ただの自主勉強のノートかと思ったら
ーーーーーーーーーそれは、
遺書だった。
絶対に絶対に絶対に絶対に絶対に、絶対に咲良を死なせてはいけない。私の大切な親友を...
殺してはいけない。
私は愕然とした。私のことなんてこれっぽっちも信頼してない。それは、美里という子が自殺したことへの
『償い』によって生きている咲良の心。
私は読んだ。
私は泣いた。こんなことを思っているなんて。私のことなんてこれっぽっちも信頼してない。
助けてあげたつもりになってる私は、自己満足じゃん。
私は書いた。
咲良のボールペン。黒い文字がノートの紙に書き込まれていく。
山ノ内咲良へ
私は、私は咲良のことを助けてあげた気になってた。でも咲良はそんなこと思ってないよね。ごめん。
助けてもあげられなくって、逆にいじめてまでいる。
傷を増やしてるのは私じゃん。なのに助けてあげた気にさえなってる私が大っ嫌い。
絶対に死んじゃダメだよ。これは私が言える最後の言葉。私はこれからも咲良をいじめる。
私は弱いから、みんなから嫌われることが怖かった。今でも怖い。
自分は助けてもあげられないくせに、ただの傍観者のくせに、こんなこと書くなんて恥ずかしい。
逃げたっていいんだよ。でも絶対に、涼や先生や皆のために死んじゃダメだよ。
咲良、ごめんね。
京極絵梨
こんなことを書いたって何のためにもなりゃしない。私は気づけなかった。
もしかしたら、死ぬつもりでいるのかもしれない。もしくは、美里という子への償いのために、
死ぬまで玩具でいるつもりなのかもしれない。
私は絶対に逃げてはいけない。絶対に逃げてはいけない。

