社会問題小説・評論板
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- 愚かな女王様の制裁
- 日時: 2016/01/10 11:14
- 名前: 雪 (ID: dP9cSz6y)
「山ノ内...咲良?」香月涼の声が、教室にこだました。
私、京極絵梨は咲良に近づく。咲良は悲鳴を上げる。
ーーーーー見て見ぬふりをする担任、いじめる仲間達。
誰も私に逆らう者はいない。逆らえば何をされるか...分かっているのだから。
私は気に入らない者が死のうが苦しもうが関係無い。
私がいじめて死んでいった人間はいないが。
「死にたくない」そう思っていても殺されるのだ。私はただ見ているだけ。愚かな少女達は殺されないために
人を殺す。
自分のために。
1・『そして、事件は幕を開ける。』>>1
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- Re: 愚かな女王様の制裁 ( No.2 )
- 日時: 2015/12/09 19:46
- 名前: 雪 (ID: c07RIgum)
「嘘でしょ...涼!涼!」
「はぁ?あたしたちに散々偉そうにしてたくせに、よくそんなこと言えるわね。
だって、あんただって皆を虐めてたんでしょ?報いを受けるべきよ。
それに、絵梨様の命令にはーーーーーーー誰も逆らえないのよ」
血...私の記憶の中にある血は、絶対に他人の物だった。私は血なんて出さない、私はいじめられたりしない。
「じゃあ早速開始ね」絵梨、いや絵梨様と呼ぶべきだろうか。絵梨様が言うと、皆帳尻を合わせたかのように私から離れた。
「ねぇ、ごめん、涼。涼、ごめん。ごめん。土下座でも何でもいいから、許してよ...。
お願いだから、お願いだから...許して」
必死に謝っても謝っても、涼は私を無視した。中心にいた私から人間がどんどん去っていく。
お願いだから、私を無視しないで。
ひとりが、こんなにつらいなんて...知らなかった。
「ねぇ咲良さん、あなたは謝れば済むと思ってるのかしら。
ねえ、皆」
そこには、今まで私が散々虐めた人間達。いつもの嫌われメンバー。
「私はーーーーー私は、咲良が...咲良が大嫌い。」
「いつも絵梨様に気に入られようとして...媚びてて」
ーーーーーーー大嫌い。
あの人間達は『大嫌い』と言ったではないか。
「ごめんね、みんな」
そう呟いたけど、そんな気なんかさらさら無かった。
こんな愚かな人間達に、頭を下げることなんかできない。
- Re: 愚かな女王様の制裁 ( No.3 )
- 日時: 2015/12/10 18:36
- 名前: 雪 (ID: c07RIgum)
『ごめんね』...坂本 美里様宛
美里、あなたがこれを読んでいる今はもう、あなたは死んでしまっているのですね。
私はあなたを守れなかったことを、深く反省しております。未だに自分を許せません。
ーーーーーー「山ノ内咲良」という名の「いじめ」によってあなたは死んでしまいました。
いえ、殺されたのです。でも咲良は「いじめ」の「存在」を無視し、何事もなかったかのように日々を過ごしていました。私はそれも許せませんでした。
自分と友達の咲良に降り掛かった許し難い事実。押し隠してしまえばそれまでの事。絶対にバレない。
坂本美里はもう死んでいるのだから。
美里の死は本当にショックでした。こうして届かない手紙をあなたに書いているくらいです。
改めて、謝ります。ごめんなさい。守れなかったのは私です。それは事実です。
咲良がいじめをしたのも事実ではありますが、私が守ればあなたが死ぬことも無かったのです。未然に防ぐことが
出来たはずです。
みんなもやりたがっていた訳ではありません。美里は見ていたかわからないけど、ちーちゃん達やりっちゃん達もあんまりやりたがってた訳じゃないよ。でも私は傍観者。ただ見ているだけ。
こんな私と美里じゃ釣り合わない。もう私たちは友達とは言えないーーーーーーー永遠の友情なんかない。
ごめんね。
...香月涼より ごめんね。
- Re: 愚かな女王様の制裁 ( No.4 )
- 日時: 2015/12/11 17:21
- 名前: 雪 (ID: c07RIgum)
『ごめんね』...坂本 美里様宛
今日も、咲良いじめは続きました。私も流石に胸が痛みます。でも一つの命の重さは、こんなに
軽いものではないはずです。そう思って私も、今日一日咲良をいじめました。
今回は、私がいじめを始めたところから書いていきたいと思います。
*
私はずっと、悪いことをした人への制裁をおこなっているときも、ずっとずっとつぐなえる方法を考えてきました。
それは、咲良を責めればいいーーーーーーーーそんな、ずるい考えでした。
でも、私にはこれくらいしか思い浮かばなかったのです。ごめんね。
そもそも、制裁というのはこの学園、『私立北本高等学校』の少女、京極絵梨によるものです。
悪いことというのは何か嫌なことをされた際に絵梨に言う、そんなシステムでした。
私はそのシステムを利用しました。絵梨のお姉さんもこの学園の女王様だったそうです。
誰も逆らえません。
誰も急に口を聞いてくれなくなって、咲良はうろたえていました。そんな咲良が、私はかわいそうでなりません。
しかし、今私は大変なことに気がつきました。
いつまでやればいいのか。
耐えられなくなって転校するまで?
考えたくもありませんが、それとも...
耐えられなくなって美里のように自殺するまで?
まさか...殺されるまで。
私の行動はいつも軽率です。今度は、許されることのない失敗をしてしまったようです。
...香月涼より ごめんね。
- Re: 愚かな女王様の制裁 ( No.5 )
- 日時: 2015/12/11 18:59
- 名前: 雪 (ID: c07RIgum)
私は、800字程の手紙をクリップで綴じ、溜め息をつくと急いでファイルに仕舞う。
「失礼します...お嬢様、勉強は...」
「ごめんなさい、今行くから」
なんの不自然のないように、普段通りに開け放しておいたドアから入り掛けた使用人に断る。
「何をしてらしたんですか?なんだか随分落ち込んだ顔されてますけど...大丈夫ですか?」
「...ごめんなさい」
使用人とは優しいものだ。私なんかには一生出来ない気遣い。もっと落ち込んだ。
「ごめんなさい」
「どうして、謝るんですか?」
「ごめんなさい!ごめんなさい...」
馬鹿みたいに繰り返す私に愛想を尽かしたのか、それとも気遣ってくれたのかはわからないけれど部屋を出ていってくれた。
「失礼致しました」
そういう使用人の姿が、次第にぼんやりとしていく。
泣きながら眠ってしまったのか、時計は30分間程進んでいた。
「...あれ」
結局何もならないまま、寝ていてしまったなんて。勉強しなきゃいけないのに。塾あるのに。
「あの、お嬢様、失礼します。もうそろそろ塾の時間です。うるさいと思うかもしれませんが... すみません」
「ごめんなさい。私に、そんなに優しくしてくれてるのに、何の期待にも応えられなくて...」
「良いんです。私だってそんなものだったし...失礼致しました。あの、無理しないで下さいね」
「.........」
そう言ってお辞儀する彼女の短いけれども黒い髪が痩せた背中で跳ねる。大きな窓から差し込む日差しで
髪が輝いた。
私は髪を払い、準備を始めた。私がやらなければならない訳では無いけれど、これくらいはやらなきゃ。
ピンク色の可愛らしいリュックサックに教科書やノート、筆記用具などを入れる。背負うとかなり重い。
私って、生きてる価値あるのかな。死んだほうがいいんじゃないの?いつの間にか、そんな事を考えていた。
本気でそんな事を考えているくらいだから、死んだ方がいいのかもしれない。
「もう、涼。車はもうとっくに来て、ずっと待ってるのよ。準備早くしなさい。 それと、ちゃんとお願いしますって言うのよ。いつもいつも遅れて」
「ごめんなさい...ママ。今すぐ行くから」
「まったくもう。準備だって自分ひとりで出来ないのかしら」
さっきから謝ってばかりだが、それは仕方が無いのだと思う。
私は生きてる価値なんかない、ただの人間なんだから。
- Re: 愚かな女王様の制裁 ( No.6 )
- 日時: 2015/12/12 12:49
- 名前: 雪 (ID: knWr5sbP)
塾では、大金持ちということで私最優先の授業がされる。私はそんな事を頼んでもいないのに。
そのせいで、塾では「なんで涼ちゃんばっかり」という冷たい目線で見られてしまった。
だから皆にそんなこと頼んでなんかない、って必死に言ったら皆ようやく分かってくれた。だから私は少しだけ
人気者。
「香月様、お判りになりましたか?皆様も」
眼鏡の頭の良さそうな塾の講師に睨めつけられ、つい言い澱んでしまった。
「あ...はい。すみません」
「では...授業は終了です。有難う御座いました」
皆ショルダーバッグを肩に掛け、教室をぞろぞろと出ていく。大金持ちばかりが集う塾だから、高価なものばかりを身につけているのだ。
私もショルダーバッグを肩に掛け、皆と同様に教室を出た。するとそこに、飛び抜けて高価そうな車が止まっていた。
「お嬢様、お迎えに参りました」
何だか悪い事をしたみたいで、私は俯いて言った。
「...毎日ごめんなさい。大変でしょう」
運転手はそれ以上何も言わず、車を発進する。もう10年以上乗っている車なのに、傷ひとつなくピカピカと輝いている。
「何だか今日は遅かったわね。もうご飯冷めてしまってるのよ。申し訳ないと思いなさい」
「はぁい...ごめんなさい」
お母さんはいつも、私に辛く当たる。今日も何かあったんだ...仕事の事かな。お父さんの事かな。
こんなストレスはいじめで発散したい。...でもいじめなんて、やってはいけないものなのではないのか。
でも、咲良は深い深い罪を犯した。
ーーーーーー悪い事をした人間が罰を受けるのは当たり前。

