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- 生意気な後輩に恋をする(リメイク)
- 日時: 2015/09/09 22:16
- 名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)
高校生が主役のBL作品です。
第1話 >>1>>2>>3>>4>>6
第2話 >>7>>8>>9>>10
第3話 >>11>>12>>13
第4話 >>14>>15>>16>>17>>18
第5話 >>19>>20>>21
第6話 >>24>>25
第7話 >>26>>27>>28>>29
- Re: 生意気な後輩に恋をする(リメイク) ( No.17 )
- 日時: 2015/03/21 17:35
- 名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)
いつだったか、聞いたことがある。
恋人にした初めてのキスは甘い味がした——と。
最も、それは初めてだけとは限らないが。
だが、俺の場合、それは違っていた。
清水の唇に触れた瞬間分かったのは、ほろ苦いコーヒーの味だった。
どうしてそんな味がしたのだろうか。
答えは簡単だ、彼が俺とキスするより前にコーヒーを飲んでいたからである。唇と唇が重なり合ったその刹那、俺の中で劇場全体の時が止まったかのように感じられた。彼の口は男にしては少し柔らかいなと思ったものの、それでも男らしく堅かった。
清水は女ではなく男。
その事実を再確認すると同時にハッと我に返る。
俺は、なんということをしてしまったのだろうか。
映画に集中している彼の肩を叩き、振りむいた隙を狙ってキスをした。
俺はなんて卑怯者なんだ。
相手は好きかどうかもわからないのに強引に唇だけ奪うだなんて、最低の男だ。悪魔の誘惑に騙され、人としての道を踏み外してしまった俺は、彼に嫌われても仕方がない。飛んでくるであろう彼の平手打ちに恐怖するあまり、思わず両目をぎゅっと瞑った。だが、いつまで経ってもビンタが放たれる気配がないため、恐る恐るながらも目を見開くと、そこには先ほどと同じく何事もなかったかのように、映画を鑑賞している彼の姿があった。
- Re: 生意気な後輩に恋をする(リメイク) ( No.18 )
- 日時: 2015/03/21 18:33
- 名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)
俺達ふたりは映画を見終わった後、近くの喫茶店で昼飯を食べることにした。2人用のテーブル席につき、メニューを選ぶ。
俺はカレーライスとコーヒー、清水はオムライスとコーヒーを注文した。店員がメニューを確認して去ると、彼は水を一口飲んで言った。
「先輩、僕の事好きでしょ」
「!」
彼は頬杖をつき、ジト目で俺を見つめる。
その瞳にはいつもとは違う冷たい雰囲気が漂っている。
言い訳は不要だと考えた俺は、ダメもとで自分の思いを告げてみることにした。
「そうだ」
「やっぱりね」
「清水、お前さえよければ俺と付き合ってくれないか?」
「あんたバカじゃないの」
「なっ……」
「会って一週間しか経っていない相手に、それも同性に対して普通告白するなんてバカっすよ。そんな短い期間で相手のことをよく知りもしないのに、その場の感情に任せて勢いだけで告白し、相手を口説き落とそうとする——残念ですが、僕には先輩の考えが丸見えですよ」
彼が言った言葉は、まさに俺の心情そのものであり、その眼力の高さに驚愕するとともに、自分がいかに愚かであるかということを嫌というほど思い知らされる。
更に彼は、満身創痍である俺の心に止めの一撃を炸裂させた。
「本物の恋愛、それも同性を好きになった場合は特に——漫画や小説のようにうまくいきませんよ。それを実は心の奥底であんたも分かってたんじゃないすか?」
「それは——」
口を開きかけるが次の言葉がなかなか出てこない。
すると彼は微笑を浮かべ、
「残念かもしれないっすけど、今は恋人として付き合うことはできないっすね」
恋人として付き合うことはできない。
だが、裏を返せば嫌いになったというわけではなく、友達としては付き合ってもいいというニュアンスが含まれていることを察した俺は、まだ希望が失われた訳ではないと内心喜んだ。
- Re: 生意気な後輩に恋をする(リメイク) ( No.19 )
- 日時: 2016/01/10 05:15
- 名前: モンブラン博士 (ID: akJ4B8EN)
行きつけの喫茶店でひとりの男にあった。
名前は、出雲雄三(いずもゆうぞう)。
中の下の外見で深慮深い性格の、俺、清水天(しみずてん)の通っている中学の先輩だ。俺は彼の事を敬意と親しみを込めて、「先輩」と呼んでいる。最も、本人はそう呼ばれて嫌な顔をしないということは、俺が付けた愛称を気に入っているんだろう。俺と彼は歳は少し離れているが、仲がいい。ぶっちゃけた話、付き合っても悪くないと内心思っていたりする。もちろん、男同士で付き合うなんて言ったら普通の女子はドン引きするだろうけど。
アレは忘れもしない日曜日の夕方近くの頃だった。
俺は日曜日ということもあってバイトもなく、家でゴロゴロしていた。
けれど母さんが俺の部屋に入ってきて、「部屋でゴロゴロばかりしてないで、外に遊びに行きなさい」と言ってきた。うるせぇなと思ったが、下手に彼女の機嫌を損ねると、ゲンコツ攻撃が炸裂されるため、少々不満だったけれど、読みかけのライトノベルと財布を小型のリュックに入れて外へ出ることにした。空は快晴だけど、心の中は少し曇り気味だった。家を出てしばらく歩いたけれど、特に何の収穫もない。
ただブラブラしているだけなのは、時間の無駄だと考えた俺は、行きつけの喫茶店に向かうことにした。
喫茶店に一歩足を踏み入れた俺は、少し口をポカンと開けて呆然としてしまった。らしくないとは思ったが、それほど目の前の光景が信じられなかった。いつも座る窓側の席に、先客がいたのだ。
他の奴なら、きっとこう言うに違いない。
「席を取られたぐらいで大げさだ」と。
だが、俺にとっては大問題だった。
1番景色がいい窓側の席に座って読みかけのライトノベルを読みながら、この店自慢のコーヒーを飲む。それが密かな楽しみであったため、先に座られてしまった悔しさは堪えようにも堪えることができずにいた。なんとしても座りたい、あの席に。
その一心で男性客の肩を叩き、口を開いた。
「隣、座ってもいいですか?」
- Re: 生意気な後輩に恋をする(リメイク) ( No.20 )
- 日時: 2015/03/22 18:08
- 名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)
真正面に座っている男子は、先ほどから黙って俺を見つめている。
そうじっと見つめられると、ライトノベルを集中して読む事ができない。とはいえ、彼の座っているところに相席をしてもいいかと言ったのは俺だから、自業自得だけど。仕方がない、視線は少し気になるけど、そのまま読み進めるとするか。すると、不意に彼が口を開いた。
「あの、どうしてこの席を選んだの? 他にも席はたくさん空いているのに」
正直、ウザいと思ったが相手の気を悪くしてはいけないと思い、彼の顔を見ないように外の景色を見るふりをして言った。
「景色が見たいからですよ」
初対面、それも年上であるから自然と丁寧な口調で返したが、これは正しい判断だと思う。これで読書を再開することができる。
そう安堵したのも束の間、彼が次の言葉を発した。
「でも、俺からしたら景色よりライトノベルって感じだけど、本当にそれだけが理由なのかな?」
ああ、ウザったい。
こうなったら、黙るしかない。
けれど彼は構って欲しくない俺をなぜか心配そうな顔で覗き込み、
「もしかして、俺、怒らせるようなこと言ったかな……?」
「別に」
短く答え、彼との対話を終わらせようとした。
それから数分が過ぎたが、俺の心はライトノベルどころではなく、目の前の相手にそっけなく答えてしまったことに罪悪感を覚えていた。そして気が付いたら、こんなことを言っている自分がいた。
「コーヒーの代金、僕が払ってあげましょうか?」
- Re: 生意気な後輩に恋をする(リメイク) ( No.21 )
- 日時: 2015/03/22 18:54
- 名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)
それが、俺と先輩の出会いだった。
この日以来彼と意気投合し、歳は離れているけれど、友達のような間柄になった。
けれど、初めて会ってから一週間が経過した日曜日のこと、映画館の中で先輩に唇を奪われてしまった。別に男に唇を奪われたぐらいで怒るような真似はしないが、そのキスで先輩が俺に好意を持っていることが確定的になった。実は、初めて出会ったときから、そのような感情を彼が抱いているという疑念は常に持っていたものの、あからさまにつきつけられるとさすがにショックを受けてしまった。
俺としては、先輩とこれからも仲良くしていきたい。
しかし、彼は友達としてではなく、明確に恋人として付き合うことを望んでいる。
初対面してからまだ1週間しか経っていないため、常識から言えばあまりにも告白するのが早すぎるのではないかと責められてもおかしくはないが、俺の中では彼と過ごした7日間は半年にも相当するのではないかと思っている。
だが、そうだとしても、今この場で付き合いを承諾するのはあまりにも軽率だ。もしも、本当に俺が先輩のことを思っているのならば、ここは冷たく突き放し、もう少し時間をおいて思いを再確認した方が互いのためになると考え、彼の告白を冷淡に振った。
それから4か月が経ち、今は8月だ。
互いのことも前よりずっとわかりかけてきたし、友達としての親密さも増したと思う。だけど、まだ互いに全部を知りえているわけじゃない。
俺はまだ、先輩に隠している秘密がある。
それを明かしても、彼は俺のことを好きでいてくれるだろうか。
これは、賭けだ。
自分の最大のコンプレックスを晒す、大きな賭けになる。
けれど、実をいうと4か月以上も行動を共にしているうちに、俺も少しずつ彼のことが好きになっていた。
彼ならば、自分の弱みを見せてもいいかもしれない。
それで嫌いになられたら、それはそれで仕方がないと諦めもつく。
それほど俺のコンプレックスは大きなものなのだから。
俺は、深呼吸をひとつし、緊張と不安で震える手で彼の携帯に電話をかけ、平常心を保った声で言った。
「先輩、夏ですし、海水浴にでも行きません?」