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- 生意気な後輩に恋をする(リメイク)
- 日時: 2015/09/09 22:16
- 名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)
高校生が主役のBL作品です。
第1話 >>1>>2>>3>>4>>6
第2話 >>7>>8>>9>>10
第3話 >>11>>12>>13
第4話 >>14>>15>>16>>17>>18
第5話 >>19>>20>>21
第6話 >>24>>25
第7話 >>26>>27>>28>>29
- Re: 生意気な後輩に恋をする(リメイク) ( No.12 )
- 日時: 2015/03/19 22:42
- 名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)
結局、清水はこの日、俺の前に姿を現さなかった。
あいつが言ったことは嘘だったのだろうかと思い、失意の中で家に帰る。夕飯を食べ、部屋に入りゲームをしていると、清水から電話の着信がきた。
あの野郎、俺を騙しやがって!
自分の瞳に炎が湧きおこるのを感じつつ、怒りに任せて携帯を取った。
「先輩、僕のステージ見てくれましたか」
電話越しの彼の声は生意気さを含みつつもどこか疲れの色が出ているかのように感じられた。だが、俺はこのとき自分の中に蓄積されていた感情を優先した。
「清水、ステージを見に行ったがお前どこにも出ていなかったじゃねぇか!!」
けれど俺の怒声を聞いても相手は対して動揺することもなく、冷静に告げた。
「出ていましたよ。先輩、気づかなかったんすか」
「どこに出演していたんだよ、お前の姿はステージのどこにもなかったぞ」
「当たり前ですよ。僕は女装していたんですから」
「女装!?」
その一言で思い浮かんだのは、会場を席巻していた美少女アイドルの姿だった。
「まさか、お前がハニーちゃんだったっていうんじゃねぇだろうな……?」
「今頃気づいたんですか? そうですよ。ハニーちゃんは僕の女装したときの姿です」
女装。彼の口から放たれたその言葉の衝撃たるや表現できないほどだ。
なせならば、俺は今まで女装した男などというのは本物の女の可愛さに比べれば劣るだろうと感じていた。だが、ハニーちゃんはどうだろうか。あの可愛らしいさは俺のクラスにいる女子達を凌駕していた。
けれど、清水は若干可愛らしいとはいえ、男である。
それがどうしてあんな風な美少女に変身できるだろうか。
そんな疑念を抱いていると、俺の考えを読んだかのように清水が言った。
「男でもちゃんと化粧をして可愛い服に身を包めば、可愛くなることができるんすよ」
「そういうものなのか……」
「そういうものです。ああ——そうだ先輩」
「なんだ」
「明日一緒に映画見に行きません?」
- Re: 生意気な後輩に恋をする(リメイク) ( No.13 )
- 日時: 2015/03/19 22:51
- 名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)
これまで、人に映画に誘われたことなどあっただろうか。
横になり、今までの過去を振り返るが、そんな経験は一度もなかった。
そもそも、俺は学校で友達というものがひとりもいないのだから、当たり前だ。小学校も高学年になると友達と映画館に行くということもし始めるのだろうが、俺には無縁の世界だった。家にテレビがないため、友人との話題についていけなかったのを思い出す。
テレビは今はあるにはあるのだが、あまり見ようとは思わない。
幼少期から見ない生活を送っていると、自然とそんな風になるのだろうか。漫画は読んだが、父が勧める20年、30年前の漫画ばかり読んでいたため、流行に乗り遅れて行った。それはそれで楽しかったが、話が合わないのは辛い思いをした。俺の友達ができない原因のひとつは、どれをとっても時代遅れだからだ。けれどそんな流行に乗り遅れた人間である俺に対し、清水は奇異な目で見ることはなく、ごく自然な口調で映画に誘ってくれた。最も、それは俺があいつが通う中学のOBだからなのか、それとも歳の離れた友人だと思っているのか、あるいは——
いや、行く前からあれこれ詮索するのはやめよう。
そんなことをしても、せっかくの楽しい空気に水を差すだけだ。
彼は俺になんの映画を見るか告げずに電話を切った。
それは恐らく、現地で決めるということなのだろう。
親父が聞いたら「計画性がない」などと言うかもしれないが、その方が逆に面白味を増す結果になるかもしれないし、俺の見たい映画の好みも判別することができるという彼なりの考えに基づいたものなのだろう。
明日は今日と違ってそれほど早起きする必要もないため、目覚ましも普通の時刻にセットした。ちなみに、俺はいつも目覚ましより10分早く目が覚めるのだが、明日はどうなるかわからない。備えあれば患いなしという諺もあるし、この判断は正解だろう。
「そろそろ寝るか」
電気を消し布団を被り、清水が明日どんな恰好をしてくるのか思案していると、いつの間にか瞼が重くなっていた。
- Re: 生意気な後輩に恋をする(リメイク) ( No.14 )
- 日時: 2015/03/20 05:46
- 名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)
「先輩、今日も僕より到着するのが遅かったすね」
案の定、目覚ましより早く起きた俺は二度寝してしまい、その結果約束の時間に遅れてしまった。清水は聞き取れないほど小さな声で何かを言っていたが、それはきっと待たされたことに対する愚痴だろうと推測する。
「先輩は何がみたいんですか」
映画案内を見ながら彼が訊いた。
「お前はどれが見たいんだ?」
「先輩にお任せしますよ」
言われて、俺は腕組をして考える羽目になってしまった。
軽く見ても15本以上の映画が公開されているが、上映時間などを考慮すると、なるべく待たずに始まる映画は3本しかない。どれにした方がいいだろうか。
3本のうち1本を選ぶのはなかなか勇気ある決断だったが、悩んだ末にSF映画に決めた。映画館の中は人が少なかった。日曜ともなれば映画を見る客達でいっぱいのはずなのだが、お昼時、それも映画館とはいえマイナーなものばかり揃っているのだから無理もない話と言えばそうなのだが。
「ポップコーン買ってきますね。飲み物は何がいいですか?」
「烏龍茶でいい」
コーラなどの炭酸飲料が昔から苦手でどうしても飲む事ができなかった。それは今でも変わらないが、清水はきっとヘタレの俺と違って炭酸飲料水を飲む事ができるに違いない。ところが、彼が自分専用の飲み物として買って来たのはアイスコーヒーだった。
「コーヒー、好きなのか」
「大好きですよ」
「そうか」
小さい頃、コーヒーはとても苦くてまずいものだと思っていた。
けれど成長するにつれて、段々とその美味さが分かるようになってきた。そのおかげで、清水と会うこともできたし、コーヒーには感謝すべきかもしれない。
- Re: 生意気な後輩に恋をする(リメイク) ( No.15 )
- 日時: 2016/01/10 04:38
- 名前: モンブラン博士 (ID: akJ4B8EN)
俺は今、最大の葛藤を迎えている。
それは、映画の最中にトイレがしたいなどというありふれたものではなかった。
その葛藤の内容とは——隣に座っている清水の頬にキスがしたい。
映画が始まってしばらくの間は、俺も彼と同じように映画に集中していた。だが、映画を見慣れていないため、その時間が段々退屈になってきた。上映されている映画がマイナーなこともあり、視聴に飽きてきたのだ。そのつまらなさを克服するために、目を閉じたり天井を見上げたりしていたが大した効果はなかった。そして次第に、俺の関心は映画よりも隣に座っている友人(?)に向けられていった。館内が暗いこともあってか、白い清水の顔がより白く見え、普段よりも色気が増しているように感じられる。さらには、どういう訳かこの回見る人が余程いなかったらしく、劇場には俺達ふたりだけしかいない、つまり、貸し切り同然と言っても過言ではない状態だった。
好きな奴とふたりきりで、隣同士で並んで映画を見る。こんな経験は俗にいうリア充でも滅多に経験できるものではないだろう。
ん? まさか清水はそれを見越してワザとこの映画館に俺を誘ったというのか!?
だとしたら、策士すぎる!
けれど、それはあくまで仮定の話であり、彼がこうなるように仕向けたという証拠にはならない。偶然が偶然を呼び、こんな風になってしまっただけということもありえる。いや、そんなことなどどうでもいい。
今は、俺の体から溢れる欲求にどう対応すべきかの方が遥かに問題のはずだ。清水は仮にも男、男なのだ。
それを同性である俺が恋愛に近い好意を抱き、キスまでしてしまったら、それこそ俺はホモということになってしまう。そうなってしまえば、今まで築きあげてきた彼との良好な関係は一瞬にして崩れさり、絶交されてしまうだろう。それだけはご免だ。
確かに俺は彼に対し、少なからず好きだという感情を持っている。
だが、それは友情と同義であり、恋愛ではない。
清水の声の美しさは表現できるものではないが、たったそれだけの理由——いや、確かにコイツは顔もそこそこ可愛いし、気遣いや優しさを見せてくれるかもしれないが——とにかく同性である以上好きになってはいけない相手なのだ。
拳を握りしめ、感情を押し殺す。
映画に集中しようとするが、自然と視線は彼の方を向いてしまう。
くそっ、俺は一体どうすればいいんだ!!
- Re: 生意気な後輩に恋をする(リメイク) ( No.16 )
- 日時: 2015/03/21 10:00
- 名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)
ダメだ。どうしても我慢できない。
すると、俺の心の中の天使と悪魔が現れた。
まず最初に、天使が俺に言った。
(出雲、キスはやめろ。好きかどうかもわからない奴、それも同性から突然キスされたらお前ならどう思う!?)
俺ならば、確実にドン引きするだろう。
天使の意見は的を射ている。コイツの言う通りにした方がいいだろう。
すると、悪魔が俺の耳元で囁いた。
(天使の戯言に耳を貸して、せっかくのチャンスを棒に振るんですか? ふたりきりの映画館で好きな人にキスをする。それはリア充でもまず不可能な話です。ですがあなたは幸運にもそのチャンスに恵まれた。これを逃さない手はないでしょう?)
天使の意見に従うべきかと考えたが、言われてみればこんなチャンスはもう二度とないだろう。隣の清水は映画に集中して気づいていない、まさに絶好の好機だ!
だが、もし彼がキスする瞬間に振り向いたらどうする。
そのときは言い逃れはできないだろう。
(そうだ。だからバカな真似はやめるんだ。男ならそんな卑怯な真似はしちゃいけない!)
卑怯。そうだ、確かに卑怯だ。告白もせず、キスだけするなんて男として恥ずべき行為なのではないだろうか。天使の言葉に己の卑怯さに気が付くことができた。
これで悪魔の誘惑を——
(清水くんがあなたの方を向いたら、唇にキスできるんじゃないですかねぇ?)
唇にキス。そんな発想を考えたこともなかった。
言われてみればその通り、振りむいた瞬間に不意打ちで唇を奪える可能性は十分にある。清水の唇にキス。唇に……想像しただけで息が荒くなるのがわかる。
(出雲、お前は一瞬の自分だけの快楽のために、清水の気持ちを台無しにするつもりか!)
(さぁ出雲さん、彼の唇を奪うなら今です。そのキスがもしかすると彼との距離をさらに縮めるかもしれませんよ?)
(お前がもし本当に彼を愛しているのなら、己の欲望を封じるはずだ)
(天使のくだらない説教に耳を貸す必要はありません。あなたはただ欲望のままに従えばいいのです)
そして、ふたりは心の中から消えた。
彼らの意見を聞き、自分なりの答えを見つけた。
清水の肩を叩き、彼をこちら側に振り向かせる。
「清水」
「どうかしたんすか」
「ごめん」
「えっ——」
俺はいきなり彼のうなじに触れて彼の顔を引き寄せ——彼の唇と自分の唇を重ね合わせた。