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生意気な後輩に恋をする(リメイク)
日時: 2015/09/09 22:16
名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)

高校生が主役のBL作品です。

第1話 >>1>>2>>3>>4>>6

第2話 >>7>>8>>9>>10

第3話 >>11>>12>>13

第4話 >>14>>15>>16>>17>>18

第5話 >>19>>20>>21

第6話 >>24>>25

第7話 >>26>>27>>28>>29

Re: 生意気な後輩に恋をする(リメイク) ( No.1 )
日時: 2015/09/09 22:18
名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)

なぜだろう。
いくら考えてみてもわからない。
事実は小説より奇なりという言葉を以前聞いた事があるけれど、これほどまでに奇なのだろうか。
あの瞬間まで、確かに俺は女子が好きで同性を好きになることなど微塵もなかった。
そう、あいつ——清水天(しみずてん)に会うまでは。

日曜が終われば次の日から学校が始まる。
ああ、明日から学校か……また退屈な一週間が幕を開けるのか。
そんな気持ちで入った近所のコーヒーショップ。
別にコーヒーが飲みたいという訳でもなく、ただの暇つぶしだった。
なんとなく空いていた外の景色が見える窓側の席に座り、何も注文しないのは気が引けると頼んでいたコーヒーが来るのを待ちながら、ぼんやりと外を眺めていると、突然背後から誰かに肩を叩かれた。
誰だろうかと思って振り返ると、そこにはひとりの少年が立っていた。
外ハネのさらりとした茶髪に若干大き目の瞳、色白の肌に細い顎が男にしては少し女らしさを感じさせていた。背丈は平均より低く、どちらかというと小柄な部類に入るだろうか。

「隣、座ってもいいですか?」

「……ああ」

「どうも」

少年は短く返事をし、俺の真正面に位置する席に腰かけた。
俺が注文したコーヒーが届く。
接客係が踵を返そうとした時、彼はそれを呼び止め、「これと同じものをひとつ」と呟いた。
接客係が去った後、俺達ふたりは長い沈黙に包まれた。
初対面、それも男同士であるため、無言になるのも俺の経験からして当たり前なのだ。
それに、そう言ったことは今までの経験上何度もあった。
相席になったぐらいで話しかけるなんて、ウザい奴と思われるに決まっている。
だが——いつもならそう結論付け、無言に徹するはずなのだが、今回は違っていた。
話したい、この男と。
そんな気持ちが心の中に芽生えているのを自分自身でも感じ取ることができた。
それはなぜか。
理由は簡単だ。
俺の真正面に座る少年の声が、今までに感じたことのないほど美しい響きを持っていたからだ。高すぎず、低すぎずそれでいてどこか艶のある少年の声——文学的に表現できないのが残念に思われるほど、その一言一言が「もっと声を聞きたい!」という感情を湧き上がらせたのである。
赤の他人、それも初対面で同性の相手に対してそのような感情を抱くのはどうかとは思ったが、それでも相手の声を聞きたいという感情が収まることはなかった。
そして俺はついに、彼に自分から話しかけた。

「あの、どうしてこの席を選んだの? 他の席はたくさんあるのに」

Re: 生意気な後輩に恋をする(リメイク) ( No.2 )
日時: 2015/09/09 22:20
名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)

なぜ、いきなりあんなことを言ったのであろうか。
本当ならば、もっと別の話題があったはずだ。
例えば、彼が読んでいるライトノベルと思しき本の話題などだ。
だが、俺は読書を苦手としており、本を読んでいるという印象だけで測るならば、彼は本が嫌いではないはずで、少なくとも俺よりはたくさんの本を読んできているだろう。
そんな相手に対し、自分の得意としない話題で話かけるとその内ボロが出てきてしまい、話が長続きしなくなるだろうと考えたからだ。
それで話題を何にしようかと考えた挙句、彼がどうして俺の席に座ったかと訊ねることにした。
何しろ周りにもたくさん席は空いている。それならば、他の席に座ってもおかしくはない。だが、彼は俺の座っているこの席に腰かけた。
無論、理由などとくにないと答えるに決まっているはずだが、苦手なジャンルの話を続けたり無言になったりするのよりは、はるかにマシな選択だと言える。
コーヒーを一口飲む。
考え込んでいる間にコーヒーは少し冷めておりぬるくなっていたが、そんな些細なことなど今の俺にはどうでもいいことであった。相手の目を見つめ、聞こえるように、けれど大きすぎない声で俺は訊ねた。

「あの、どうしてこの席を選んだの? 他の席はたくさんあるのに」

「景色が見たいからですよ」

「でも、俺からしたら景色よりライトノベルって感じに見えるけど、本当にそれだけが理由なのかな?」

「……」

「もしかして、俺、怒らせること言ったかな……?」

「別に」

彼はぶっきらぼうと思えるほど短い言葉で返し、再び本のページに目を走らせる。
本を読んでいる彼の姿はなんというか、穏やかな文学少年と言った雰囲気をもたらす。だが、先ほどの「別に」の一言で、どうやら彼は俺が思っているほど穏やかな性格ではなく、むしろ冷めた性格なのではないかという印象に変わってしまった。
彼に気づかれないように小さくため息をつく。
聞き惚れるような声であったとしても、所詮は男。
男である彼に変な感情を少しでも抱いた俺がバカだったのだ。
そう自己分析をして、席を立とうとしたその時だった。
中腰になりかけた俺に、彼がこんなことを言った。

「コーヒーの代金、僕が払いますよ」

「えっ……!?」

Re: 生意気な後輩に恋をする(リメイク) ( No.3 )
日時: 2015/03/19 19:17
名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)

彼の言った言葉を理解するのに、数秒時間を要した。
すると彼は再度俺に言った。

「コーヒーの代金、僕が払ってあげるって言ったんです」

「えっ、なんで?」

俺の質問に彼は目をぱちくりとさせる。
その動作が、なんだかリスみたいで可愛らしく思えたのは、心の中にしまっておこう。二回瞬きをして、彼は再度口を開いた。

「なんでって、僕があんたに嫌な思いをさせたからに決まってるじゃないすか」

その物言いは、先ほどより丁寧さが抜けた少々生意気さを感じさせるものであった。恐らく、これが彼の本性なのだろう。けれど彼の放った言動の内容は「嫌な思いをさせた詫びがしたい」というなんとも優しさに溢れたものであった。
しかし、彼の好意に甘えてもいいのだろうか。
小遣いなら俺も持っている。
見ず知らずの彼に奢らせるなどという厚かましい真似ができる訳などない——
彼には気が引けるが、ここは素直に断った方がいいだろう。
だが、少年は俺が拒否するよりも早くレジに向かい、さっさと会計を済ませてしまった。名も知らぬ彼に奢られたまま別れるのは、己の正義に反する行いだと思い、店を出る彼を急いで引き止めた。

「待ってくれ!」

「どうかしましたか」

振り返らずに告げる彼。

「俺、あんたに嫌な気なんてひとつも抱いてねぇよ」

「そうですか、それはそれで嬉しいっスね」

彼は振り返るとやや小さな白い手で俺の手を掴んで降ろした。

「でも別に僕はそれほどまで気にしていませんから、あなたも気にしないでください」

「しかし、このままじゃ俺の気が済まねぇんだ。何か奢らせてくれねぇか?」

先ほどまで赤の他人であるという意識が働いていたのだが、奢られたことでそのダガが外れ、俺はある程度砕けた口調で話していた。
彼は顎に手を当てクスリと可愛らしく微笑み、

「そこまで言うのでしたら、そこの自動販売機でジュースでも奢ってくだされば満足です」

Re: 生意気な後輩に恋をする(リメイク) ( No.4 )
日時: 2015/09/10 08:07
名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)

俺と彼は公園のベンチに座り、ジュースの蓋を開ける。
ちなみに彼が持っているジュースは俺が彼に奢ってあげたものだ。
だが、本当に彼はこのようなものでいいのだろうか。
本来ならばもっと高価なものを願ってもいいはずなのに、彼は俺にまたしても気を使ったのではないだろうか。
そんな不安と疑念を抱いていると、彼がポツリと呟いた。

「そう言えば、自己紹介してませんでしたね。僕は清水天(しみずてん)です」

「俺は出雲雄三(いずもゆうぞう)だ」

清水天という彼の名前を聞いたとき、一瞬ところてんと勘違いしてしまった俺はバカだ。

「出雲さんは、今高校生ですか?」

「ああ……今年で2年だ」

「高校って楽しんスか。僕はまだ中学三年ですから、高校がどんなところなのかよくわからなくて」

「俺が言うのもなんだが、結構楽しいぞ。中学とは違うことだらけだ」

「そうっすか」

段々と清水が馴れ馴れしい態度になってきたなと思いながらも、嘘をついた自分自身を責めていた。
なぜ、俺はコイツにこんな嘘をついてしまったんだ。
だが、言ってしまった言葉は取り返しがつかず、かと言って相手もまた俺の発言をそこまで気にしている様子ではなかった。
ほっと一息ついてると、彼は飲み終わった空き缶を燃えないゴミ入れに放り投げた。空き缶は見事な軌道を描きゴミ箱の中に命中し、中へと消えていった。

「さてと……そろそろ行きますか。あんたと話して結構楽しかったっすよ」

「俺も会えて楽しかった。また会えるといいな」

こうして俺達は別れたが、後日彼と思わぬ形で再会することになろうとは思ってもみなかった。

Re: 生意気な後輩に恋をする(リメイク) ( No.6 )
日時: 2015/03/19 21:25
名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)

「清水天、か」

部屋のベッドに横になりながら、俺はコーヒーショップであった惚れ惚れするほど美しい声の少年のことを考えていた。

「あいつが女だったら、きっと好きになっていただろうな」

自分で言って自嘲的な笑みを浮かべる。
だが、現実的に清水は男だ。
けれど、俺はあの男に他の男子に対して抱く感情を抱かなかった。
例えば、鬱陶しいとか暑苦しいとか、嫌な奴などといったものだ。
初めて声をかけられた時、静かでおとなしそうな奴だと思った。
けれど話してみると意外と会話は弾むし、やや生意気な言動は所々にあったものの、だからこそ奴と打ち解けることができたと考えた時、彼のもっている生意気という性格は俺の中で長所に変わっていた。昔、恋をしている時というのはあばたもえくぼで、相手の嫌な部分も恋愛感情を抱いているうちはいい風に思うことができる——と言った意味の言葉を聞いたことがある。だが、俺は奴の全てを好きになるほど惚れたわけじゃない。
ただ、あの声、彼の声に惚れたのであって、彼に惚れたのではない。
今の時点では、それだけは確かだ。
そもそも、初めて会った人間、それも同性に対して恋をするなどと言うのは、現実にはあり得ないだろう。

「どっちにしても、偶然あっただけなんだから、もう会えねぇだろうしな」

携帯の電話番号やメールアドレスを交換していないため、奴との接点はなにもない。ただひとつだけ、接点があるとすれば、あのコーヒーショップだけだろう。
仮にまた行ったとしても奴はいない可能性の方が高い。
つまり、俺と奴——清水天との出会いは一期一会だったということだ。

「もう、あいつに会う事はねぇだろうな」

電気を消し、暗い中でひとり呟く。
自分のその言葉が、このときなぜかとても苦痛に感じた。


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