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- 生意気な後輩に恋をする(リメイク)
- 日時: 2015/09/09 22:16
- 名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)
高校生が主役のBL作品です。
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第2話 >>7>>8>>9>>10
第3話 >>11>>12>>13
第4話 >>14>>15>>16>>17>>18
第5話 >>19>>20>>21
第6話 >>24>>25
第7話 >>26>>27>>28>>29
- Re: 生意気な後輩に恋をする(リメイク) ( No.7 )
- 日時: 2015/03/19 21:32
- 名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)
目覚まし時計の音が鳴り、俺は目を覚ます。
時刻は午前7時。
スイッチを押し、目覚ましのアラームを消して部屋の窓にかかっているカーテンを開ける。
太陽が眩しい。本来ならばもう少し寝ていたいところであるが、今日が月曜なのだから、仕方のない話だ。制服に着替え、リビングで母が作った朝食を食べ、学校へ向かう。ちなみにメニューは、卵焼きにご飯に海苔、それに味噌汁という日本の朝食と表現してもいいほどの定番メニューであった。育ちざかりの高校生には少しばかりすくない食事だとは思うが、食べ過ぎは健康を害する恐れがある。やはり腹八分は将来の健康のために続けた方がいいだろう。
特に何のまあたらしい変化もない道を歩いていると、目の前に見知った背格好の学生服(冬服)に身を包んだ男子を発見した。茶色の髪にやや小柄で細身の体、間違いない、奴は昨日会った清水天(しみずてん)だ。気づかれないように抜き足差し足で忍びより、彼の右肩にポンと手を置いた。彼はビクッとしたものの、相手が俺と分かると見開いていた瞳を元の大きさに戻し、言った。
「あんたですか」
「俺で悪かったか?」
「そんな事はありません。ただ——」
「ただ、何だ」
「いえ、何でもないっすよ。気にしないでください」
少し暗く低い声で返した彼の様子に、何かを隠していることを感じたが、そこは気安く触れてはいけないことだろうと悟り、敢えて深く追求しないことにした。けれど一期一会だと思っていたが、こうしてまた会うことができたとは嬉しい。この際だからもっと距離を近づくためにも、俺は奴と携帯電話の番号とメールアドレスを交換した。学校へ向かいながらも、俺達ふたりは昨日と同じく会話に花を咲かせる。今回分かったことは、清水は俺が卒業した中学の後輩だということだった。同じ中学ならば少しは接点ぐらいありそうだが、俺の通っていた中学は1学年の人数が500人と多いため、顔を覚えていないのも無理もない話であった。しばらく歩くと分かれ道になったため、そこで俺は奴と別れる。それにしても、清水が中学の後輩だったとは驚きだ。
中学は嫌な思い出しかなかったが、あいつはどうなんだろうか。
- Re: 生意気な後輩に恋をする(リメイク) ( No.8 )
- 日時: 2015/03/19 21:42
- 名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)
教室に入り、カバンを机の上に置いて教科書を取り出す。
そしてトイレに行く。
何もトイレは登校早々行くものではないかもしれないが、行きそびれると列になり大変な目にあう羽目になる。
そのため、なるべく早めに用を足しておいた方がいい。
トイレに行った後は、何をするでもなくただ時間が過ぎるのを待つだけだ。こうしている間にホームルームの時間になった。
退屈な授業が終わり、昼食時間になる。
弁当はどこで食べるか。友達のいる連中は、きっとそんなことを考えているに違いない。だが、俺は友達がいないため、そんなことを考える必要はなく、教室の自分の席で弁当を食べた。ひとりで食べて面白いのかと自問自答することがある。そのときの俺の答えは決まっている。話が合わない人間と食べても面白くないに決まっている。
——昔から、そうだった。
話が合わないため友達ができず、結果俺は常に孤独だった。
顔立ちが優れていれば、女子から人気が出たかもしれない。
顔が悪くてもスポーツ万能だったり、成績が優秀であれば、自然と人は興味を持つ。だが、俺は美形でもなければ成績優秀でもなく、スポーツ万能でもなかった。
つまるところ、俺は学校のスターではない。
なんの特徴もなく、話しても対して面白い話の出来ない俺に話しかけてくる奴など、ひとりもいなかった。だからこそ、清水が声をかけてくれたのが嬉しかったのかもしれない。今まで自分と近い年齢の人間と自分から進んで会話をすることなどなかったが、あいつとは打ち解け合うことができた。それに同じ中学に通っているということもあり、親近感がわいてきていた。恋とまではいかなくても、俺はあいつに何か特別な感情を抱いていることは確かな事実だった。
そして昼休みが終わり、午前と同じように授業が始まる。
全ての授業と清掃が終了し下校時刻になった。
帰り道を歩きながら、俺は密かに清水に会えるかもしれないと期待していたが、やはり下校時間が違うのだろうか、残念ながらこの日は彼と一緒に帰ることはできなかった。けれど、携帯電話の番号とメールアドレスは知っている。
もしかすると、あいつからメールがかかってくるかもしれないじゃないか。そう考えると気持ちが前向きになり、猫背になりかけだった背筋が伸びて足取りに自信がつき、速度が上がる。こうして俺は、いつもより軽い足取りで帰宅した。
- Re: 生意気な後輩に恋をする(リメイク) ( No.9 )
- 日時: 2015/03/19 21:52
- 名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)
夜の8時のことだった。
夕飯を食べ、自室で漫画を読んでいると、メールが来た。
送り主は清水だった。
まさかメールのアドレスを教えてからその日から送られてくるとは思わなかったために、少なからず驚いてしまった。だが、肝心なのは送られてきたことよりも中身だろう。
一体どんなことが書かれているのかと、メールを開けようとした。
けれど、指先が震え、なかなか行動に移すことができない。
ボタンひとつ押せば済むはずの動作であるはずなのに、緊張と不安からかたったそれだけのことができない。だが、迷っていても無駄な時間を浪費するだけはないかという考えにいたり、彼の書いたメールの中身を読んでみる。
『出雲先輩へ もしよかったら明日から途中まで僕と一緒に登校しませんか?』
2行あるかないかの短い文章。それも疑問文だ。けれど、その内容は、今まで訊いたどの言葉よりも嬉しいものだった。
あいつが、この俺と一緒に登校しようと言ってくれている。
昨日会ったばかりにも関わらず、まだ互いのことを深く知らない間柄であるにも関わらず、彼は俺と登校することを望んでいる。
中学まで、俺はいつもひとりで登下校していた。友達がひとりもいなかったため、それが当たり前だった。けれど心の中では、誰かと帰りたいという思いが常にあった。
でも、勇気もなく話題もなかったため、半ばあきらめかけていたのだが、ここにきて、初めて他人と一緒に登校できるチャンスに恵まれたのだ。他の男子からしてみれば、友人と帰るなど当たり前の出来事なのかもしれないが、俺にとってこの誘いは、まさに奇跡と言っても過言ではないほどの嬉しい誘いだった。信じられなかったので、そのたった2行程度の文を何度も何度も読み返す。
もしかすると冗談かもしれないと、疑いかけたが、会って間もない男に冗談をメールで送信し何の得があるというのだろうか。
清水からメールが投稿されて20分以上が既に経過していたが、取りあえず俺は彼の願ってもない誘いをOKするという主旨のメールを送信し、風呂に入って歯を磨いて寝床についた。
- Re: 生意気な後輩に恋をする(リメイク) ( No.10 )
- 日時: 2015/03/19 22:10
- 名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)
翌朝、彼が指定した待ち合わせの場所に向かうと、彼は俺を待っていた。
「清水、早いな」
「大したことありませんよ。先輩が起きるのが遅いだけじゃないですか?」
悪戯好きな猫のような表情で挑発的な口を利く彼に、生意気さと自分の意見を物おじせずに言うことができる芯の強さを見た気がした。
俺達ふたりは、一歩ほど距離を開けて歩く。
ふたり並んで歩くと、カップルだと誤解されてしまう可能性があるからだ。しかしながら、彼と登校できて嬉しい反面いざ会話をするとなると何を話していいのかわからない。あれこれと脳内で考えていると、彼の方から口を利いてきた。
「先輩は音楽とか好きですか?」
「好きだけど、それがどうかしたのか」
すると彼は恥ずかしそうに頭を掻いて、
「実は今週の土曜日に音楽のイベントがあって、そこに僕も参加するんですが、暇なら見に来てくれないかな〜と思って」
音楽のイベントというのはあまり馴染みがなかったけれど、清水が参加するというのであれば話は別だ。彼のことを今よりもっと知って仲良くなるためにも、イベントに行ってみる価値は十分にある。
「土曜日暇だから、行ってみるよ」
「それは嬉しいっすね。一応、チラシあげておきますね」
彼がかばんから取り出した一枚のチラシには、開催場所と時間が書いてあった。もしかするとこのチラシは俺のためにわざわざ彼が用意してくれたものなのかもしれない。考え過ぎの可能性もあるが、ここは彼の思いやりと解釈し、ありがたく受け取ることにしよう。気が付くと、いつもは歩いて十分ほどかかる分かれ道に、五分で到着していた。やはり、気の合う奴と話しながら歩いていると自然と移動速度も速くなるらしい。
「じゃあ先輩、また明日会いましょう」
「ああ、そうだな」
昨日と同じように分かれながらも、イベントが開催される土曜日を待ち遠しく感じた。
- Re: 生意気な後輩に恋をする(リメイク) ( No.11 )
- 日時: 2015/03/19 22:20
- 名前: モンブラン博士 (ID: EhAHi04g)
土曜日。
朝一番に起きた俺は、身支度をして外へと飛び出した。
空は雲一つない快晴で、適度に冷たい風が吹いており、気持ちのいい日だ。こんなにいい日にイベントが行われるのだから、きっとたくさんの人が集まっているはずだ。
けれど、俺の予想はいい意味で裏切られた。
たくさんの人数どころか、数えきれないほどの人がライブ会場に集まっていたのである。この集まりようは、こどもたちに人気の特撮ヒーローに勝るとも劣らないだろう。
しかし、『ロリっ娘アイドルのハニーちゃんと一緒に楽しく盛り上がっちゃおう♪』というライブの名称からして、清水と関連性が結びつけることができなかった。いや、待てよ。あいつは確かに参加しているとは言ったものの、ステージで何かをしているというニュアンスを含んでいるような口ぶりではなかった。と、すると奴はこの群衆の中に紛れている可能性が高い。右を見ても左を見ても、まるで通勤ラッシュ時の満員電車のようなおしくらまんじゅう状態で、とてもじゃないが、清水を見つけることはできそうにもない。
俺は仕方なく、群衆の波をかき分けてステージの周辺から離れ、彼の携帯に電話をかけた。だが、携帯の電源は切られており、通じなかった。
「あいつ、どこにいやがるんだ……」
若干の苛立ちを覚えたものの、持ってきたペットボトルのミネラルウオーターを飲んで冷静さを取り戻し、この場はライブイベントを楽しんだ方がいいと発想を切り替え、ステージに注目することにした。
すると急にステージに設置されていた証明がパッと輝き、観衆が一斉に歓喜の声をあげる。どうやら、ライブイベントの主役であるハニーちゃんとやらが現れたらしい。どんなアイドルなのかと気になったため、再びファンの輪の中に入る。
幸い俺は客席連中では長身だったため、そのアイドルの姿をよく見ることができた。金髪のゆるやかなウェーブに、ぱっちりと開いた大きな瞳に色白の肌、黄色と白を基調としたフリルのたくさん付いたゴスロリを身に着けた童顔で小柄な美少女は、ペコッと可愛らしく頭を下げる。女を見る目はあると自分では思っている俺でも、思わず顔をそむけたくなるほどの愛くるしさを放つハニーちゃんは、アイドルと称されるのに相応しい存在だと思う。
容姿もさることながら、その歌唱力が半端ではなかった。
幼くあどけない甘い声、俗にいうロリ声は、歌声を聴いたものを魅了し、たちまちとりこにしてしまう魔法のような不思議な力を感じられた。だが、彼女の声と容姿を見ていると、なんとなくではあるが、俺の知っている人物に似ているような感覚を覚える。それにしても、清水はどこをほっつきまわっているのだろうか?