BL・GL小説 (オリジナルで全年齢対象のみ)

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想い人
日時: 2017/03/01 23:29
名前: カニエ (ID: XWukg9h6)

【※完全オリジナル作品です。BL作品です。】

2016/11/27 投稿開始
2017/03/01 閲覧数100!

ーーーーーー

俺の曾祖父さんが亡くなって12年。

俺は17歳になった。

曾祖父さんは俺が5歳になるまで、色んな話をしてくれた。

曾祖父さんはこの世に超能力があるだとか、超能力者がいるんだとか、そういう話が好きだったみたいで、その話が中心だった。

『大事なものは忘れてはいけない』

無口な曾祖父さんはこの言葉だけは何度も俺に言っていた。

17歳になった俺は初めて知ることになる。
本物の超能力者というものを……

Re: 想い人 ( No.19 )
日時: 2017/02/13 20:50
名前: カニエ (ID: CjSVzq4t)

走ってる間は曾祖父さんのことを思い出してた。

曾祖父さんは俺以外に表情を緩めた事は見た事がなくて、まだ5歳だった俺に笑いかけてくれた時があった。その顔は今でも微かに思い出として蘇る時がある。でも、その笑顔は酷く哀しそうで、笑っているのに泣いてる顔だった。
その時、曾祖父さんは何を考えていたんだろう。曾祖父さんの目には何が映っていたんだろう。
その頃は何も考えてなかったけど、今思うと、ノートに書かれた事を思っていたんじゃないかと思う。

松尾さんに聞いた。ナオさんは治癒能力者。それなら曾祖父さんも生き返らせられる?

そんなことを考えてひたすら走ったり登ったりすれば、何も無い平地に見えるソコに黒い棺桶が一つ異様に置かれてた。その上を見れば雲が渦巻いてて、目となる場所だった。

そこへ吸い込まれるように向かって蓋が閉まっている棺桶にしがみつくようにもたれかかれば、疲れがどっと出た。

ああ、もう立てないかもしれない。
俺、正気を吸い取られてるのかな?
松尾さんは死なないとは言ってたけど、俺死ぬのかな?
死んでもいいや。死ぬ前に1度だけ、ナオさんの顔が見られれば!

その思いで最後の力を振り絞り重い棺桶の蓋を開けた。

Re: 想い人 ( No.20 )
日時: 2017/02/13 21:23
名前: カニエ (ID: CjSVzq4t)

棺桶の中には光を纏って輝く1人の人が目を瞑っていた。疲れを帯びていた俺にはその光が眩しくて目を掠めて、ガラガラと音を立てる足元に気づいて見ると、そこには数え切れない数の骨が散らばっていた。

「うわあああ!!」

驚いて足の痛みも忘れて跳びのき、よく辺りを見れば、骸骨や骨が棺桶を中心に土のように広がっていた。

俺は考えた。ここに散らばる骨は元々ここにいた生き物のもので、正気をナオさんが吸い取ってこうなったとして、誰も棺桶を開けようとしなかったのかということを。

よく見れば人の頭蓋骨も落ちてるのを見て、もしかしたら棺桶にも何か仕掛けられているのかもしれないと。

棺桶が閉まる仕組みになっているなら、早くナオさんをそこから出さないと!という気持ちでまた棺桶へ近づいた。

「ナオさん!ナオさん!起きて!ここから出しますね!」

ナオさんの肩を強く揺さぶっても人形のようにされるがまま、死んだ人間は硬いし色を失うけど、ナオさんには肌の色もあって、体温も少なからずあった。だから、生きていることはわかった。急いで腰の辺りに腕を擦り込ませ身体を持ち上げた瞬間下へ引かれた。何かと、引かれた場所を見れば、棺桶とナオさんの両足は枷によって固定されていた。
これでは無理だと、ナオさんをゆっくり戻して顔をまじまじと見つめる。

綺麗な人だ。睫毛長い。爽やかな顔つき。明るめの茶髪。サラサラの右分けの髪は不思議と伸びてない。白い肌。頬に手を添えれば肌がスベスベなのがわかった。いくら見つめても目を覚ます気配のないナオさん。
どうすれば目を覚ましてくれるだろうかと、考えれば一つの仮説を思いつく。
昔話でよくあったアレ。

眠姫は王子様のキスで目を覚ます。

…なんて、そんな単純なら良い話かもしれないけど、ここには王子様なんて居ないし、俺は王子様って柄じゃない。能力者は立ち入れない。どんな人が王子様なんだよ…でも、やってみる価値はあるかもしれない。ごめんなさい、ナオさん

そう思いながら、ナオさんの顔に近づいて、唇にキスをした。キスをしたことを実感する為か訳もわからず俺は三秒ぐらいした後、ゆっくり顔を離した。ナオさんの様子は変わらない。

と思った瞬間、ナオさんを中心とした突風が吹いてそこから3mほど吹き飛ばされる。岩に尻餅つき、手をあててナオさんの方を見る。

「なっ…なんだ?……ウッ!」

同じようにナオさんを中心とした突風が輪となって数回に渡って辺りに吹き荒れる。
突風が吹くタイミングでドックンッ、ドックンッと心臓の跳ねるような音も大きく鳴り響く。自分自身から鳴ってるように思えて胸が苦しくなる。苦しい胸を抑えて地面に縋りつくように俺は倒れた。

「っはぁ!……ナオ、さん…」

心臓の音は鳴り止まない。すると次は、鋭い耳鳴りがした。キィィィーンッ。

Re: 想い人 ( No.21 )
日時: 2017/02/13 21:50
名前: カニエ (ID: CjSVzq4t)

地面を見つめて目を掠めれば、灰色の世界に小さな緑が見えた。不思議に思って目を開けてよく見れば、1本の花が咲く。驚いて目を見開けば岩から苔が生えたように、石の間から茎が伸びて葉が出て芽がつき開いて花を咲かせる。灰色から緑、黄緑、黄色、赤、白と辺りに色がつく。

「なんだ、これ」

地面から出た幹が勢いよく天へと伸びる。太さを増して何本もの枝に別れて木草を生やす。死んで枯れた場所に生が降りてきたみたいに、早送りで創られる景色に夢をみているみたいでそれに見入っていた。

気がついた時には耳鳴りも心臓の音も聞こえなくて、木々の心地よく揺れる音と快晴の青空に落ち着いていた。

成長が止まって辺りが先程まで灰色の地獄のようだったとは思えない場所になったココを見て確認して草を引き抜いて茎が千切れる音を聞いて実感していると、後ろから声がかけられた。

「おいこら、いつまで地面に座ってんの?」

明るくて語尾に色気を纏う声。吐息を吐くように言葉を告げる。中性的な声。後頭部を軽く叩かれて反射的に顔だけ振り返れば、先程まで目を瞑って起きる気配の無かった人物がしゃがんで地面に上体を起こして座ったままの俺を見ていた。

状況の把握が出来なくて、ただ目の前の人物の目に吸い込まれるように見つめ返していると、痺れを切らしたその人は立って、片手を俺に伸ばす。

「ほら、立って」

俺に向けられた手の平に俺は手を伸ばして、手を掴めば勢い良く引っ張った。案の定、予想通り、その人はバランスを崩して驚きの声を上げながら俺の太もも辺りに倒れた。
怒られると思ったから怒られる前にとその人に聞いた。

「こぉら」

「あの!…あなたが、ナオさん、ですか?」

Re: 想い人 ( No.22 )
日時: 2017/02/18 02:53
名前: カニエ (ID: XWukg9h6)

「ぷっ、あはははっ」

「……えっ?」

俺の質問に目を開いてパチパチさせたその人は、急に目を閉じて笑い出した。その笑顔が太陽みたいで、輝いてて、眩しくて、反応が遅れた。頬をほんのり赤くして弾けたように笑うその人が目尻の涙を指で拭えば、まだ笑顔の消えないその顔で俺に謝ってくる。

「あぁ、ごめんごめん」

別に謝らなくてはいいけど、何でそんなに笑うのか聞こうとすれば、その人は立ち上がって、自分の服にてをかけてなんの躊躇いもなく脱ぎ始めた。

「えっ!え!?え、ちょっと!なんで脱い!?」

俺は驚いて、何で脱ぐのか問いながら、その人がナオさんなら女性だから、余計見てはいけないと思い、慌てて片手で口を抑えて下を向く。顔が熱い。多分赤いのかも。

「あははっ、顔上げろよ」

「でっ、でも!な、ナオさんが!」

「そうだな、ナオさん。それが俺」

「…え?おれ?」

笑い声の聞こえる方にナオが脱いでるなら見れないと返事をすれば、同意の言葉が中性的な声で返ってきた。でも、語尾にオレとついていて、疑問に思った俺は咄嗟に顔を上げた。

「そっ。ナオさんは、俺。男だよ」

顔を上げれば、その人は上半身裸で両手を広げてそう言った。上半身だけでも男だとわかった。白い肌についてないように見えるけど筋肉が程よくついてて、スラッとした華奢な体。俺はナオさんが女性だとばかり思ってたから驚きで空いた口と見開きになった目が綴じられないでいると、目の前のナオさんは俺を見てクスクス口に片手の項をあてて笑う。

ナオさんが服を着終えてやっと意識が戻る。ハッとして、ナオさんが男とはどういう意味か聞こうと問う。

「あの!ナオさんが男って、どういう意味、ですか!?」

「へっ?どういう意味って…誰かが俺を女だってキミに言ったの?」

「……それは…」

急に大声で聞いたからかビクッと肩を上げて驚いたナオさんは、考える素振りも見せずに首を傾げて俺に聞いてくる。言われて思い返せば確かに、誰もナオさんが女性だとは言っていない。自分の大切な人だという曾祖父さんと石井さんの言葉、愛称にちゃん付けしてた松尾さんに、俺が女性だと勝手に思ってただけだと。
勝手にした妄想と違って強めに聞いてしまった自分に反省して下を向けば、頭をわしゃわしゃと撫でられる。

「岩崎直也、ゴリゴリの男だよ」

「いわさき、なおや…さん」

「名前で呼んでいいから」

撫でられた頭が気持ち良くて、ナオさんの手が心地よくて、手に擦り寄るように頭をそちらへ傾ければ名乗ってくれた。吐息を吐くような話し方にも安心感を抱く。名前を覚えるように言い返せば、名前で呼んでいいと許可を得る。嬉しくて「なおや」と呟けば「ばか、先輩だろ」と軽く頭を叩かれる。

「そっちが名前で呼べって言ったんじゃないか」

と理不尽に叩かれるのは嫌で文句を言おうと顔を上げれば彼ははにかみ笑いを浮かべていた。
その顔が目に焼き付いて、胸に矢が突き刺さったようだった。

Re: 想い人 ( No.23 )
日時: 2017/03/17 17:48
名前: カニエ (ID: qMXr7W56)

「…何でそんなに嬉しそうなんですか?」

「えっ?ふっ、お前可愛いなと思ってさ」

「ちょっと、やめてくざさいよ!」

はにかみ笑いに疑問符をぶつければ、茶化され頭を両手でぐしゃぐしゃにされ撫でられる。立ったら分かったことだけど、意外と俺より身長の無い直也さんが俺の頭を撫でると、頭が下にさげられて首が痛い。辞めてほしいといいながら手を振り払えば名前を聞かれた。

「ん。名前は?」

「あ、安田です」

「下の名前は?」

「龍二」

俺は聞かれた通り、自分の名を直也さんに教えると、直也さんは少し驚いたように目を見開いて固まる。目が丸いなとか、目が大きいなとか、素っ頓狂な顔も可愛いなとか思ってれば、すぐに俺から目を逸らす。顔ごと逸らして、後頭部を片手でかいて下記を言う直也さんが少し気にかかった。

「…あ、いや、そっか…りゅう、じ…」

「あ!そうだ、これ!俺の曾祖父さんが遺したノートなんですけど…」

「タメでいいよ」

「え、でも…」

「ただ、呼び捨ては無し、な?」

「お、おう!あ、じゃあこれ…」

「曾祖父さん?俺が見てもいいの?」

「う、うん。直也さんに向けての…だから」

「俺に?」

本題を思い出して、肩から提げてた鞄から例の手帳を取り出し、直也さんに手渡す。曾祖父さんのことを知らないのか、不思議そうにしながらも、手帳を受け取ってくれた直也さんはそのまま、目をしっかり通すように手帳を開き見ていった。


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