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不器用なボクら 【創作BL】
日時: 2022/05/30 00:50
名前: みっつまめ (ID: 8pAHbekK)

全寮制の学園ものBL小説です。

浄化の力を持つ先輩×幽霊がみえ祓えるイケメン後輩

の物語です。
―――――――――
・誤字脱字お許しください
・更新頻度はまちまちです
・荒らしはやめてください
・苦手な人はバックお願いします
―――――――――

~~登場人物と関係性~~
清水きよみず 聡志さとし  高3 305号室 上の階
特徴…橙色の髪、琥珀色の目、長さが均一で無いツンツンさらさらヘアー。ある程度筋肉のある標準体型。基本ポーカーフェイス。関西出身ということもあり独特な訛りがある。身長は178センチ。
性格…面倒くさがりなだけで素っ気なく対応してしまうことがあるが根は優しい。上手に嘘をつく。
幽霊…みえないし感じない、生まれつき近くの幽霊を浄化してしまう体質。体調不良になれば浄化の力が緩む。

相馬そうま 慧斗けいと  高2 205号室 上の階
特徴…藍色の髪に暗めの青目。爽やかで整った顔立ち。シュッとした体型で太りにくい。身長は173センチ。
性格…争いごとが嫌いで人の良い笑みを浮かべている。臆病で甘えん坊で消極的。
幽霊…みえるし祓える。小学校上級生頃に祓えるようになり、現在は式神も使える。

菊池きくち 俊介しゅんすけ  高2 205号室 下の階
特徴…白に近い金髪頭、前髪をあげて赤のカチューシャで止めてる。茶色い目は猫目。身長は175センチ。
性格…バカで直球。でもちゃんと考えてる。
幽霊…みえないし感じないけど信じてる。ホラーやミステリーが苦手。

木崎きざき れん  高3 305号室 下の階
特徴…短髪の黒髪黒目。筋トレが趣味な為、肉体美。身長は183センチ。
性格…ノリが良く、気前も良い。ほとんど自室に居ることが無く筋肉バカ、後輩を可愛がりからかうことが多い。
幽霊…みえないし感じない。幽霊は信じないが宇宙人は信じるしオカルトは結構好き。

来間くるま 昭彦あきひこ  高3 201号室 一人部屋
特徴…襟足が首筋まである茶髪に黒目。左の前髪をピンでとめてる。細身体型だが足の速さは校内でも有名。身長は177センチ。
性格…イベント大好き女子大好きなチャラ男。面倒見は良い方。頭はそんなによくない方。
幽霊…みえないが引き寄せ体質な為、よく怪奇現象にあう。幽霊は信じていてビビりだが自分の近くには居ないと思っている。

高橋たかはし あおい  高1 203号室 下の階
特徴…外ハネの赤髪に黒目、着痩せするタイプのムキムキボディ。身長は低そうにみえて175センチ。成長期中。
性格…いつも元気ハツラツ。怖い物知らずで喧嘩も強い。グロイ映画やゲームをするのが好き。
幽霊…モヤ程度にみえる。祓えないためみえないフリをしていたが今は相馬が居るため厄介な幽霊は祓ってもらっている。

ーーーー物語ーーーー
★再会または出会い?
【相馬慧斗 視点】
・これから始まる寮生活 …>>1
・ルームメイト …>>2
【清水聡志 視点】
・変わり者の転入生 …>>3,>>4
★関係性
【菊池俊介 視点】
・気になる関係 …>>7
【相馬慧斗 視点】
・ドライヤー …>>10,>>11
・相違点 …>>12,>>13
★約束
【相馬慧斗 視点】
・俊介に憑いてる>>14
【菊池俊介 視点】
・え、マジでデート? …>>15
★日曜日
【菊池俊介 視点】
・デートなんだから …>>16,>>17
・ファミレスにて …>>18,>>19
【相馬慧斗 視点】
・過去の話とサトシ兄ちゃんについて …>>20,>>21,>>22
【清水聡志 視点】
・過去の秘密 …>>23,>>24,>>25

Re: 不器用なボクら 【創作BL】 ( No.21 )
日時: 2022/05/02 00:34
名前: みっつまめ (ID: 8pAHbekK)

「サトシ兄ちゃんと初めて会ったのは、公園だった」

〜〜回想〜〜
俺は、親の都合で同じ学校に通うことが少なく、珍しい容姿をしているのか、いじめの標的にされることが多かった。当時は同学年と1つ上と2つ上の計3人の男子生徒に、登下校中に後ろから体当たりされたりサッカーの練習がしたいとゴール前に立たされボールをぶつけられたりされてた。
勿論それはほとんどが強制だから、逃げが効くなら逃げたし隠れたし、強く断って家に走ることが多かった。

そんな楽しくない日々が続いて、その日も彼らの命令を無視して下校してた。
下校途中に彼ら3人がよく遊んでいる公園の前を通ると、普段は聞こえない猫の鳴き声が聞こえた。3人はまだ来ていないようだし、その日は夕方から雨が降ると天気予報で言っていたから気になって、猫の鳴き声がする方へ歩を進めた。

公園の手前の茂みにダンボールに入った小さな黒猫を見つけた。左後ろ足に怪我をして悲痛な鳴き声をあげていた。まずは怪我の手当てを優先しようと思ったが、道具は何も持っていないため、手持ちの傘を雨避けとして開いて子猫を覆うようにかぶせる。

走って家に帰り、公園に戻ってくると、あの3人が公園で大声で笑いあっていた。
見つからないように身を屈めながら、様子を伺えば、3人は公園の奥の茂みに布やらオモチャを広げ「秘密基地」と言いながら遊んでいた。

さっさと子猫の所へ行って手当して帰りたい、そう思うのに3人の所を見た途端に足が動かなくなる。
楽しそうにトランプカードで遊んでいる3人にはアレが視えていない。

さっきは居なかったのに、戻ってきたら公園には3体居た。1体は砂場で体育座りしてる坊主の男の子。1体は公園の中で割と大きめの木の下で俯いて立ってるセーラー服の黒髪女性。そして、もう1体が黒い帽子を深く被ったスーツ姿の男性。スーツ姿の男性は他2体と違って片手に包丁を持って3人のすぐ近くで、3人の遊びを見ていた。それが凄く怖くて動けなくなった。

「あれ、ソーマのやつ、こっち見てるぜ」
「は?どこ?」
「ほら、あそこ」

そのうち、3人の1人が俺に気づいて指をさしてはその場で立ち上がる。他2人も俺を見ると楽しそうに笑って手招きする。

「ほんとだ、アイツなに隠れてんだ?ブフッ」
「おい、来いよ、お前も特別に秘密基地に入れてやる」

1人が俺ところまで来て腕を掴むと、秘密基地まで引っ張られる。3人が怖いのではなくスーツ姿の男性が怖くて、掴まれた腕を振りほどこうにも力が出ない。

『やめてっ、やだ!』
「静かにしろよ、オレらがいじめてるみたいに見られるだろ!」
「そーだ、そーだ」
「ババ抜きのビリはジュース皆の分オゴリってのは」

スーツ姿の男性はゆっくりと刃物を持った腕を上にあげ、喋っていた1番年上の男子生徒に向かって勢いよく腕を振り下ろした。

『あぶないッ!』
「…は?」

咄嗟に大声をあげてしまっていた。
彼らには見えていないし、幽霊の攻撃も無害で、無傷な目の前の彼は、俺の怒鳴るような焦燥感にかられた言い方に腹を立てた。

「おい、何が“危ない”んだよ、言ってみろよ」
『うっ…い、いたい…』
「またオバケが見えたとか言うのか?」
「あぁ〜ん、ママぼくちん怖ぁーい」
「今どこに居るのか言ってみろよ、おら!」
『ッ、痛い…やめてっ』
「オレらにウソついたバツ〜」

腹を殴られて、屈んだら体を押されて地面に倒される。すぐ蹴られると思ったからお腹を守るように膝を地面についてうずくまる。予想通り3人は俺を囲んで背中を不規則に蹴られる。
こんな風になるなら、彼らを守るようなことを言わなければ良かった、その方が蹴られる事はなかったかもしれない。そう思っていた時、近くから声が聞こえた。

『それ、楽しいんか』
「あ? なんだお前」
『自分より小さい子イジメて楽しいかって聞いてんねん』

その声と共に靴が砂利に擦れる音が近づいてきて、俺のすぐ近くで止まる。

「なにコイツ」
「お前ソーマの味方?」
「初めて見る顔だな」
『まずオレの質問に答えてくれへん?』

子供にしては挑発的な口調に、俺をかばっては彼まで巻き込まれる、と思った俺は顔を上げて目の前の彼の服を掴む。オレンジ色とピンクと黄色白色が混ざった優しくて眩しくキラキラ光るものが俺の事を庇った少年から出ていた。初めて見るそれに、太陽より眩しく鮮やかで虹よりキレイだと思った。

「お前が誰か知らねえけど、弱いやつが強いやつの遊びに付き合うのは当たり前なんだよ」
『あそび…?自分らがやっとんのはイジメやろ』
「イジメ? チッチッチ〜、オレらのルールじゃこれが遊びなんだよ」
「お前がソーマの味方につくって言うなら、オレらのルールに従ってもらうぜ?」
『待ってよ、この人は関係な』
『ええよ』

3人は俺の事を庇う少年を標的にするつもりで、ニヤニヤと意地悪い顔をしていて、彼を巻き込む訳にはいかないと、彼の前に出ながら「この人は関係ないから、巻き込まないで」と口を開けば、話の途中で少年は遮る。3人の遊びに付き合うと返事をした少年に「なんで?」と驚きと焦りを隠せず顔を向ければ、服を掴んでいた手をスルリと解いて、俺の頭を片手で撫でた少年は優しく囁く。

『目ぇつぶっとき』

目を瞑っていろと言うことだろうかと解釈して、両手で両目を覆い隠すと、頭をポンポンとまた撫でられ「ええ子」と言った少年は、俺に背を向ける。

『ほな、始めよか?』

そう言った少年の後に、ドッゴッベチッドカッと様々な音が聞こえ、3人のいずれかの声を聞こえて、砂利を擦る靴底の音に「つ、強いとか卑怯だぞテメェ!」と1つ上の彼の声が聞こえ、少年は怒りと愉しさの混じった口調で彼らに言う。

『卑怯って何がや、自分らのルールに従って“遊んだ”だけやろ?』
「こ、こんなの、弱いものイジメって言うんだろ、母さんに言いつけ」
『調子ええこと言いなや、先にやってたんはどっちや』
「お、お前がやってんのと俺らのとは全然ちが」
『まだ遊び足りひんか…?』
「ヒッ!!」
『今後、二度とこの子に近付くな、ええか?』

「ひゃいぃ〜」なんて情けない声と足音が遠ざかっていき、両手を退けて目を開けると、俺を助けてくれた少年が、俺の服についた埃を払ってくれていた。

『あ、の…巻き込んで、ごめんなさ』

頭を下げようとすれば額をペシッと軽く叩かれる。痛くはないが何故叩くのかと額を両手で抑え首を傾げれば、少年は眉を寄せて自身の後頭部に手を当てながら言う。

『アホやなぁ、そこは、ありがとうでええねん』
『ありがとう、ございます』
『…おん』

言われた通り感謝を述べれば、少年は頬を赤くして唇を尖らせ、満更でもない表情をした。パチパチ弾ける眩しいオーラを持った少年の瞳は小さくても琥珀色で毛量のある髪が橙色であることを、その時はじめて知った。

『また、ああいう事されたら俺んこと呼び、どっからでも駆けつけたる』
『…でも、お兄ちゃんに迷惑かけ』
『あ、せや、名前言うてへんかったな、サトシや』
『さとし…?』
『おん、こうやって書いてサトシや、よろしゅう』
〜〜〜〜〜〜

「って、サトシ兄ちゃんは地面に木の枝使って“サトシ”って書いて笑顔で自己紹介してくれた」

軽くサトシ兄ちゃんとの出会った経緯を話せば、俊介は「へぇ〜」と虚空を見つめながら相槌を打った。俊介の頭でどのように解釈されるかは分からないが、処理が終わるのを待った。

Re: 不器用なボクら 【創作BL】 ( No.22 )
日時: 2022/05/05 21:58
名前: みっつまめ (ID: 8pAHbekK)

「へぇ〜なるほどな、サトシ兄ちゃんってスッゲーカッコイイな!!」
「うん、でしょ?」

頭の中で処理が纏まり始めたのか俊介は質問を始めてきた。

「でもこの“サトシ”なら清水先輩と漢字が違うぜ?」
「うん、そうなんだよね…」

スマホで打って俊介に見せた漢字を自身でも見つめる。確かに、清水先輩の名前の漢字は二文字で“聡志サトシ”だから俊介の言う通りサトシ違いとなる。それでも

「その…慧斗が見た虹よりもキレイなキラキラしたものが、清水先輩にも見えた…とか?」
「…うん」
「そ、それってさ、俺にも見える?」

俊介が自分を指差す。素直に頷いて「俊介は薄紫色」と答えれば嬉しそうに顔を綻ばせる。オーラならみんなあるけど、サトシ兄ちゃんのは不思議なチカラを感じる。当時は分からなかったけど、今なら思う。あの不思議なチカラを感じたオーラは霊を浄化させるものなんじゃないかって。ジュワッと灼熱の炎にあぶり焼かれた様な音に、ブチッと重量のあるものに潰された様な音などで、近くに居た霊が消える所を何度か見たから。基本的に未練をはらって天へ導く、自分がよく使う浄化では、天からたまに挨拶などで地上へ降りて来るヒトも見かけるけど、サトシ兄ちゃんのオーラによって強制的に浄化された霊を見かけることは二度とない。たまたまかもしれないけど、俺にはソレがちょっとだけ怖くて、今朝は俊介に憑いたを守るために清水先輩から隠した。
幸いなことに浄化はされなかったけど、清水先輩のオーラとサトシ兄ちゃんのオーラは見間違えないくらい同一色をしている。
磁場みたいにピリピリわずかにしびれる感覚を肌で感じるけど、攻撃的じゃなくて、とても温かい。

「清水先輩とサトシ兄ちゃんの、ソレって、少しでも違ったり」
「完全に一致してるよ」
「お、おおっ…そっか」
「うん」
「…それ持ってる人って結構居る可能性とかは?」
「…あんまり、見たことない」
「なら可能性が無いとは言いきれないってことだな、たまたま名前が一緒だったってことも考えられるし、清水先輩が慧斗を覚えてないんじゃあ…ホントに人違いって線も…ある、だろ?」
「…うーん」

俊介の言う様に、偶然近い条件が揃っただけでソレだと決めつけるのは良くないことだと分かってる。俺がずっと心の中でサトシ兄ちゃんに会いたいと願ってた想いが、たまたま揃ってるだけ。清水先輩は本当にサトシ兄ちゃんとは別人なのかもしれない。だけど、諦めきれない何かが心にモヤとして残る。
そんな俺に気を遣ってか、俊介は話題を変えた。

「そういえば、その後、子猫はどうしたんだ?」
「子猫は…その日は手当だけして、少しの間、智兄サトシにいちゃんと公園で世話してた、学校帰りとか様子見ながら」
「どっちか飼うとか出来なかったのか?」
「俺は親の都合で転校することが多かったからペットは飼えなかったし、智兄ちゃんの所は、お兄さんが猫アレルギーだから無理って聞いたかな」

結局、俺は一ヶ月後に転校したから子猫がその後どうなったのかを知らない。今は飼い主を見つけて元気にやれているだろうか、あの公園はイジメられていた時の嫌な思い出と、智兄ちゃんと遊んだ楽しい思い出が浮かびそうで、時間がある時に行けない距離ではないのに、複雑な思いから足が進まなかった。今度、勇気を出して行ってみるのもアリかもしれない。何か智兄ちゃんと会う手がかりが残ってるかもしれないし。
俺が考えていれば、俊介は子猫から次の興味の矛先へ話題を変える。

「へぇ〜、智兄ちゃんのお兄さんには会ったことある?」
「うん」
「え、スゲェどんな時に会うの?」
「どんな時って…智兄ちゃんが一度だけ高熱を出して学校休んだ時に、心配で家に行ったら、お兄さんが居て…みたいな?」
「…へ、へぇ〜心配で、ふーん…」
「うん、智兄ちゃんが学校休むなんて珍しかったし」
「あぁ〜なるほど、それで、お兄さんはどんな人だったか覚えてる?」
「え、うーん…」

会ったことがあると言っても十年前の記憶だし、自分でも曖昧にしか思い出せない。当時は智兄ちゃんを心配して家に寄った訳だし、お兄さんがどうだったかまではあまり記憶にない。覚えているのは、智兄ちゃんとは違った妙な訛り口調で銀髪で顔が整っていたような、背後に逞しい筋肉を持ったヒトを憑けていたなってことだけ。
名前とかは流石に思い出せない、ただ智兄ちゃんの見舞いだと言えば「ええ子やのう」と優しく頭を撫でてくれたことを覚えてる。

「…優しい人、だったのは覚えてる」
「優しい人かぁ、あんまり手がかりにはならないな」

まるで智兄ちゃん捜しを手伝ってくれるような言い方の俊介に、念の為、必要ない旨伝える。

「…俊介が気にすることないよ、智兄ちゃんは俺の尊敬する人だし、過去の約束とか、気になることは会えたら話をしたいだけだし」
「過去の約束?」
「う、うん、まぁ、それはこっちの話」

下手な断り方に口を滑らしたが、流石に約束の内容は、俊介には話せないから口を紡ぐ。
俊介は眉根を寄せて不服そうな表情をして、地面に転がる小石を蹴りながら口を開く。

「俺さ、慧斗が清水先輩と仲良くしてるの、ずっと不思議に思ってて…」
「俊介…?」
「なんていうか、その、慧斗は、智兄ちゃんと会えたら…スッキリするのか?」
「えっ…?」
「慧斗は、智兄ちゃんのこと、ずっと捜してる、のか?」
「……」

ずっと捜してるのか、と聞かれたら「ずっと捜してた」が答えになる。引っ越してからも会える奇跡を求めて、どこに転校しようが、学校中駆け回って生徒の顔を見て回って、捜した。「心配せんでも、絶対会えるて、オレらが再会するんは運命で決まってんねん!」そう笑顔で言った智兄ちゃんの言葉を信じてた。けど、俺の両親は離婚するし、引き取ってくれた父親からも離された俺が、何かを得られるとは思ってなくて、この高校に入ることが決まった時「智兄ちゃんとの約束を諦めよう」そう思ったんだ。
子どもの根拠が無い発言、未来は誰にも分からない、運命なんて無い。
そう思って捜すのを辞めたら、智兄ちゃんにそっくりな人が現れるなんて、それで別人なら…あまりにも、残酷じゃないかっ…!

「慧斗…慧斗が智兄ちゃんを捜すなら、俺は協力するぜ?」
「…捜してないよ、ただ…」

〜〜回想〜〜
俺が引っ越す1週間前の話。
「サトシ兄ちゃんに会えてホントに良かった」
「っ…なんやねん、急に」
「ずっと一緒にいたい」
公園の滑り台で呟いた一言に、智兄ちゃんに片手をバッと掴まれ手を繋がれる。何だろうかと顔を向ければ、頬を赤くした智兄ちゃんは真剣な面持ちで言う。
「今はオレら子供やし、無理かもしれん…けど、大人んなったら自由やん」
「…自由?」
「おん、大人んなった時、ずっと一緒に居ればええやん」
「…うん!」
大人になれば智兄ちゃんとずっと一緒に居られると浮かれて頷いた。それに満足そうに口角を上げた智兄ちゃんは俺から顔を逸らして夕日を見て、手を繋いだまま会話を続ける。真似して夕日を見る。
「鶴にはオレのオーラが見えんねやろ?」
「うん」
「大人んなったら、きっと見た目も変わる、オレめっちゃムキムキで身長高いかも知れんし」
「ふふっ、うん」
「せやから」
そう言って繋いでいた手に力が入った智兄ちゃんに顔を向ける。
「せやから、そんときは、鶴が俺を見つけてほしい」
「…オレが?」
「うん、俺が知らんふりしても捕まえて声かけて、絶対離さんでほしい」
そう言った智兄ちゃんは、いつもとは違って情けなく眉を下げて俺に懇願していた。そんな智兄ちゃんに元気になってほしくて、俺の目が見間違えることは無いって断言したくて、繋いだ手に俺も力を込めて頷いた。
「うん、絶対、絶対に智兄ちゃんを見つけるよ!」
「別人と一緒になったら許さんで?」
「ならないよ、智兄ちゃんのこと、大好きだもん!」
「…頼んだで、大人んなったらオレら___」
「うん、約束!」
〜〜〜〜〜〜
今でも夢だったんじゃないかってぐらい智兄ちゃんと居た時間は幸せだった。
智兄ちゃんの隣だけが俺の居場所なんだと思ってた。会えないなら、清水先輩みたいな「智兄ちゃんそっくりな人」を俺の前に出さないでほしい。
俺は、智兄ちゃんを捜すのは諦めた…ただ…

「ただ、清水先輩と別人だって証拠がほしい」

清水先輩は「人違い」と言った。
本当にそうなら証拠がほしい、俺が希望なんて持たなくなるぐらいの絶望がほしい。生ぬるい傷跡が一番苦しくて痛くてみるから、いっそ一思いに殺されるぐらいの絶望…

「…なるほど、それなら俺も協力するぜ」

頷いた俊介が、手伝うと言ってきて、巻き込みたくて話したわけでは無い為、両手を前に顔の前で振りながら断りを入れる。

「へっ、いや、いいよ、本人に色々聞くし」
「ここまで話聞いて何もしないは出来ないから何かさせてくれよ!」

話を聞かせてくれと言ってきたのは俊介だし、俺の話を聞いて俺に同情したのかもしれない。何かやる気に満ち溢れてる俊介に、これ以上断っても無駄だろうなと思い、あまり清水先輩の詮索もされたくもないけど、断れない雰囲気に押し負ける。

「うーん…わかった…」
「よっしゃー!」

慧斗へ話し終えたところで、俺達はまた歩き始めた。

Re: 不器用なボクら 【創作BL】 ( No.23 )
日時: 2022/05/15 01:34
名前: みっつまめ (ID: 8pAHbekK)

清水聡志side

ブーッブーッ

机に置いたスマホの振動で目が覚める。画面を見れば8時37分。学校が休みの日に、こんな朝早くから目覚ましをかける性格ではないため、二度寝をかまそうかと枕に顔を埋めれば、この間アイツがこのベッドで俺の髪をどうしても乾かしたいからと駄々こねていたな、と向かいの部屋の彼を思い出す。入学早々、俺と誰かを間違える、胡散臭い笑顔をいつも貼り付けてるくせに俺の前ではよく怒る、部屋に入る時にノックしろと言えば、ちゃんと従う忠実さがあるのにたまに融通が効かなくなる。初めはただの偽善の面被ったイケメンかと思ってたが、存外退屈ではない彼にクスッと笑う。

ブーッブーッ

2度目のバイブ音に、さすがに無視は出来ない為、体を起こしスマホの通知メッセージを確認する。

《もう寮着いてんけど、起きとる?》
《今日、ウチが来んの忘れてへんやろな?》
「…あ、せやった」

思わず零れた言葉は誰も拾うことなく部屋に響いて、下の階を覗けばルームメイトは既に外出しているようだった。
今日は父親の弟の娘、つまり従妹いとこが来ると数日前にメッセージが来ていたことを思い出す。
通知メッセージの内容から、寮の出入口付近に居ることが分かり、軽く外出用の服に着替えてスマホの画面を見れば、「既読」の確認が出来たからか、待つことが嫌いな彼女からは次々に脅迫のようなメッセージが届く。

《遅ない?》
《ずっと外で待ってんけど!》
《あと1分で来なかったら「ダーリン」って叫んだるわ》

アホか、っつか「ダーリン」てなんやねん、古いわ
自室を出て、向かい側の205号室が静かなことを確認すると、スマホを操作して「今向かってるわ、じっとしとき」とメッセージを送る。

寮の出入口の扉を開ければ「聡志ぃ〜」と抱きついてきた従妹こと清水きよみず 結衣ゆいの顔面を鷲掴んで、体から離す。

「痛いわアホ!何すんねん!」
「お兄様つけんかい」
「え〜?聡志ったらウチらの仲やん」
「はいはい、とりあえず部屋案内したるわ、着いて来ぃ」

結衣に背を向け、自室に案内しようと歩き出せば、結衣は辺りをキョロキョロ見渡しつつ、質問してくる。

「ノリ悪いなぁ〜…この寮、女子のウチが入っても文句言われないん?」

もちろん男子寮に女子生徒が入ることは禁止されているが、結衣はウチの生徒じゃない。

「結衣がウチの生徒やったらあかんやろなぁ」
「はぁ!?それむっちゃ危ないやん!校則ギリッギリのとこ突いてんで!バレたらどないするん!?」
「そんときはそんときや、まぁ、なんとかなるやろ」
「アンタがどうなってもウチ知らんで!」
「アホ、声小さくせえ…誰かに聞かれたらどないすんねん」

自室の扉を開けて結衣を先に中に入れる。誰にも見られていないことを確認して部屋に入って扉を静かに閉める。結衣は俺の責める口調に「アンタが悪いことしとるんに、なんでウチが怒られなあかんねん」とボソボソ愚痴垂れている。
そんな、結衣が俺に会いに来た理由は実際のところまだ聞けていなくて、本題を切り出す。

「ほんで、どないした?」

扉の出入口に立ったまま何の用かと聞けば、結衣は「せやせや」と思い出したように気を切り替え、椅子に座って人差し指と中指を立てる。

「おっきく言うと2つあってな、1つ目はウチの行きたい思うてた店が明後日で閉店する言うて、そん前に行きたなったこと」
「俺以外に一緒に行ってくれる人おらんかったんか」
「ちゃうわ!みんな忙しいだけやねん!ウチがボッチなんちゃうから!」
「誰もボッチや言うてへんやろ」
「あぁあ〜!むかつく!」

結衣は机にあったルーズリーフの1枚を手の平でグシャグシャに丸め俺に投げてくる。避ける気がなく胸元に当たって落ちた紙くずをルームメイトのゴミ箱へ入れつつ「もう1つは?」と理由を聞く。

「もう1つは…まだ、捜してるんかなって気になって…」

言いにくそうに小さめの声で言った結衣のセリフは、俺を気にしてる様子で「結衣には関係ない」と続けようと結衣を見れば、1枚の現像された写真を俺に見えるように前に出された。

「これ…鶴ちゃんやろ?アンタの初恋の人」

結衣の指先に写る黒髪で色白な青眼の子供。子供は顔立ちが整っており、はにかんだような笑顔を見せている。その隣には、歯を見せて嬉しそうに堂々と笑う俺の幼少期の姿。片手は人差し指と中指を立ててピースして、もう片手は隣の子供と手を繋いでる。背景は昔の俺の実家だろうか、屋内で撮られたものだ。

俺の記憶にその写真の映像は無い。

Re: 不器用なボクら 【創作BL】 ( No.24 )
日時: 2022/05/23 03:01
名前: みっつまめ (ID: 8pAHbekK)

俺は10年ほど前、事故にあって以降、日記に綴られた〝鶴 〟という子の記憶だけがポッカリとなくなった。

兄貴が言うには、その日は雨で、学校から帰ってきた俺はカバンを部屋に投げ捨てて傘をさして、いつも通り外に遊びに出かけたらしい。
その1時間後、俺が事故にあって病院に行くことを両親から知らされたと話していた。

なんでも、家主が無くなり廃墟化していた建物の敷地に入り、朽ちた外壁の木柱が目の前に落ちてきたことに驚いた俺は転んで、転んだ拍子に、飛び出ていた岩に後頭部を強打したらしい。
それを、たまたま一部始終見ていたオッサンが言うには、俺は「黒猫を追いかけて敷地に入って行った」とのこと。
だが、俺自身も家族ですら、猫にそこまで執着がないため当時の俺が何故黒猫を追いかけたのかは未だ謎だ。

その後、退院してからも少女と会うことはなく、俺は親の都合で2年おき又は3年おきに転校を繰り返した。
当時、担当してくれた医者は「特に大切にしてた物とか出来事とか人とか、何かしら失っている可能性は否めません、が、ご両親やご兄弟のことは覚えていますし、勉強にも問題ないようであればご心配はないかと」と適当めいたことを言ったようだ。
確かに、身内の事や授業で習った事、読んだ本や観たアクションドラマも全て覚えていて私生活になんの支障も無かった。

ただ、心残りがあるとすれば彼女のことについてだった。当時綴られた日記を読めば彼女との思い出ばかりで、それが俺にとって〝 特に大切にしていた出来事や人〟だったとすると、忘れたままにするのは納得できなかった。

あれからずっと、心のどこかに穴が空いてるような感覚で、日々の生活は楽しかったり驚きがあったりするが何か物足りなく感じてしまう。

この学校を選んだのも、俺が記憶を失くした地域に1番近い寮付きの学校だったから。

何かしら手掛かりは必要になるはずな為、実家から当時の日記を持ってきてたまに読み返す。

そんな中で、写真が出てきたのは大きかった。

何故、この写真を結衣が持っているのか。

「……これ」
「聡志に会いに行く言うたら、これ渡してっておばさんが…」

結衣にとってのおばさんは、自分の母親のことと理解出来た。その写真を受け取って、まじまじと見つめる。
写真に写る黒髪青眼の美少女は確かに俺の初恋の人かもしれない。けど、記憶が無いから断言出来ない。一緒に遊んだ記憶も会話をした記憶も、写真としてこうして残っていても思い出せない。ただ、幼少期に書いた日記につづられた、鶴って子との楽しい時間や将来自分が彼女を守ると決めた当時の想いに、どんな子だったのか、今はどうしているのか、1度だけ会って話したい。ただそれだけの為に、ずっと捜している。
写真を見つめたままの俺に結衣は続ける。

「…鶴ちゃんに会えたん? この学校入ったら会える気ぃする言うて家出たって聞いたけど、おった?」
「…まだ…そっくりなんはった」
「っ、ほんなら、その子で決まりやん!」
「そいつ男やで」
「分からんやん! 鶴ちゃんかもしれんやろ? 名前は?」
「名前に鶴は、いっこも入ってへんかったわ」

結衣は俺の返答に分かりやすく肩を落とした。

Re: 不器用なボクら 【創作BL】 ( No.25 )
日時: 2022/05/30 00:49
名前: みっつまめ (ID: 8pAHbekK)

それでも、写真が見つかったことで捜すヒントとしては大きい進歩で、もしかしたら写真は他にも探せば見つかるんじゃないか、と考える。

「写真てこれだけやった?」
「おばさんが渡してきたんはそれだけやで?」
「…」

俺は、今必要ないと思ったものはすぐ捨てる断捨離が得意なタイプだが、母親は何かと「記念に」と言って倉庫や押し入れの中に収納して忘れるタイプだ。
当時は日記しか手掛かりが無いだろうと勝手に思い込んでいたが、一つ出てきたとすれば、この写真以外に他にも手掛かりは残っている可能性がある。それなら、すぐにでも実家に帰って探したい思いだが、実家は遠く、帰省するなら再来週の三連休しかないか、と木崎のカレンダーを捲って考える。

「再来週帰るわ」
「は!?なんやねん急に」
「他にも写真あるかもわからんし」
「…」
「先に寮長に手続きしてくるわ、ちょぉ待っとき」
「ちょ、ちぃや…!」

部屋を出ようとすると、後ろの服を引っ張られる。振り向けば服の裾をガッシリ掴んだ結衣が口を歪ませ視線は下に、眉間に皺を寄せてる。何か言いたげな表情だ。
俺が振り向いて、部屋を出ようとした動きが止まれば、服から手を離して言いづらそうに小さく問いかけてくる。

「…あ、あんた、それでもええんか…?」
「どういう意味や」
「あ、あんたが…自分のことおざなりにして鶴ちゃん必死に捜しても…鶴ちゃんはアンタのこと、覚えてへんかもしれんし、彼氏だっておるかも」
「ええよ」
「…は…?」
「ええて、彼氏おっても俺んこと覚えてんくても」
「…は、な、なんで?そしたらアンタの捜してた時間は何?無駄やん」
「無駄ちゃうわ、俺が会いたいだけで捜しとんねん…向こうが忘れてようが相手つくろうが関係ないわ、会って話聞きたいだけや」
「…なんやそれ、それでアンタの人生棒に振ったら、アンタ報われないやん」
「関係ないやろ」
「…っアホ」

結衣が俺の事を心配して言ってきてくれてるのは分かってる。それでも心の穴を、モヤをスッキリ解消させたい俺は、写真の彼女のことを放っておけないから、こう言うしかない。
すまんな、と思いつつ、俺の言い方で泣いてしまった結衣を部屋に置いて、寮長室に行こうと部屋を出る。

部屋を出て扉の前で、先程の写真をもう一度見る。
見覚えのない少女のはにかみ笑いが、どこかで見たことがあるような気がするのは、目前の部屋の彼と顔が似ているからなのか。

ガチャッと205号室の扉が開いた音に驚いて顔を向ければ、写真の彼女と顔が似ている彼と目がバッチリ合った。部屋を出てこようとした彼が動きを留めたことに多少疑問に思うも、気にせず相手の身なりに目を向けつつ、写真をズボンのポケットに仕舞う。
外出用の服に、後ろにはルームメイトの菊池もいるようで、2人でどこかへ出かけるのか、こんな朝早くからと思い問いかける。

「こんな朝早くから買い物行くん?」
「いやいや、朝早いって、もう10時ですよ? いま起きたんですか? 長時間睡眠は脳細胞死にますよ?」
「自分、一言多いて言われへん?」

ただ、聞いただけなのに何とも生意気な返事が返ってきた。また胡散臭い作り笑顔を(人当たりの良い笑顔を)貼り付けた彼は俺の様子を伺っているようで、なにか緊張しているような張り詰めた空気感に、緊張されるようなことをしたか、と最後に交わした会話の記憶を辿っていると隣から彼のルームメイトである菊池が顔を覗かせる。

「おはようございまっす!清水先輩」
「おん、おはようさん」

相変わらず元気の良い挨拶に心地良さを感じて、挨拶を返せば、彼らはこれからデートをすると言ってきた。
デートか…と頭に文字を浮かべれば、菊池なら遊園地とかスポーツができる人が集まる場所に行きそうだなと思い、相馬はレストランや買い物、水族館とか落ち着いた所に行きそうだと思い浮かべ、そんな2人が行くデートはどこになるのか問えば買い物だと返ってきた。

「買い物ッス、慧斗から誘われたんで!」
「ほぉ~ん」
「んじゃ!」

それだけ言って首元に腕を回された相馬は菊池に引き摺られるように寮の出口へ向かう。
「気ぃつけや」と出そうになった口をつむぐ。何に気をつけろと言うのか考えたから。

きっと菊池の言う「デート」は相馬からすれば「ただの買い物の付き合い」なんだろうと、肩に腕を回された相馬の嫌がる様子から見て解る。ただ、何かを気にしてる様子の相馬が気にかかった。あまり外に出ない相馬が人を誘って外に出るなら、まず俺に声をかけても良かったんじゃないか?と思ったが、買い物なら学校の委員会等の出し物を探しに行くなんて、理由にもなるしな、と自己完結させ、寮長の部屋へ向かった。


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