複雑・ファジー小説
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- 【短編】 目玉ちゃん目玉ちゃん目玉ちゃん 【物語】
- 日時: 2012/04/16 20:53
- 名前: 蟻 ◆v9jt8.IUtE (ID: hTgX0rwQ)
( くるしい、よ。ねえ。 )
.
勢いで作ってしまいました。どうも蟻です。
えーと短編集なんかを載せていきたいと思います。ジャンルはシリアスからギャグまでまあ色々と置いていく予定であります。
ではゆっくり見てってくれると嬉しい限りでございます。
@ 目次
[ それは蒸し暑い雨の日 ] >>1
[ Dreamer ] >>2 >>3 (佐々木夢芽・鈴木有芽/ささきゆめ・すずきゆめ)
[ イレギュラー ] >>7
[ 残酷な天の彼女 ] >>9
[ 馬鹿ですよ、どうしようもなく ] >>10 (池田嬉季/いけだきき)
[ 最高に熱い夢を ] >>11
[ すーぱーろりーた ] >>12 >>13 (崎本要・倉本燐・西垣鈴・西垣/さきもとかなめ・くらもとりん・にしがきりん・にしがき)
[ 光る星と光る花冠 ] >>15 (秋原遊生・星夜/あきはらゆうき・せいや)
[ 混ざり合う絵の具 ] >>18
[ ぎょろぎょろして叫んでます ] >>20 (目玉ちゃん/めだまちゃん)
[ 一緒に笑って、 ] >>21
[ ひらひらと、へらへらと、 ] >>22 >>23 (愛咲爽・愛咲陽・風日/あいさきそう・あいさきよう・ふうか)
[ ぎすぎす、な ] >>24 (透・蜜柑/とおる・みかん)
[ あなたの事しか見ていないのです ] >>25
[ 告白 ] >>28
@ お客様
ひゅるりさん wOkkAさん 友桃さん るき♂さん
.
2011/6/19 スレッド生成
- Re: 【短編】 混ざり合う絵の具 【物語】 ( No.21 )
- 日時: 2011/09/18 11:41
- 名前: 蟻 ◆v9jt8.IUtE (ID: V9u1HFiP)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode
[ 一緒に笑って、 ]
「お前はまだ、笑えないのか」
彼が放った言葉。私はそれをどう受け止めればいいのか、分からなかった。言うべき言葉が、探しても見つけられない。出すべき感情が、分からない。だから、私は、口を開けて間抜け面で、彼を向いた。
「じゃあ、笑ってよ」
「は?」
「表情の作り方が、分かんないから。笑い方を、教えてよ」
「そんなすぐに、笑えるわけないだろ」
ぶっきらぼうにそう言ったけど、君は確かに微笑んだ。
一緒に笑って、 / end
- Re: 【短編】 混ざり合う絵の具 【物語】 ( No.22 )
- 日時: 2011/09/30 22:19
- 名前: 蟻 ◆v9jt8.IUtE (ID: V9u1HFiP)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode
[ ひらひらと、へらへらと ]
私は一人だ。今日も勿論、一日中一人だった。一日中、私は静かに域をしていた。
今日も紅葉が舞い落ちる、どの季節よりも、涼しく過ごしやすい秋の日。風が、私の背中ぐらいまである、少し癖のある黒髪をなびかせた。あらぶってるなあ、なんて。少々迷惑に思いながら、私は口元をあげて、楽しく吹き抜ける彼女に声を掛けた。
「どうしたの? 余程、嬉しい事でもあったの」
「あったよあったあった! もうめちゃくちゃ!」
少し透けて見える彼女は、楽しそうに私の周りを飛んではしゃぎ、風を発生させる。私はその風が強すぎて腕で抗う。
「あ、ごめんごめん」
と、今更気付いてへらへらと笑う彼女。
「大丈夫。で、何があったの」
「それがさそれがさ!」
嬉しそうに、声を上げて彼女は手を出した。彼女の手の中には、ピンクの花びらがモチーフの髪飾り。
「何、これ」
「私の宝物! いやあ、最近見つかったんだよねー! 私が風になった時には、全て失くしちゃったから。そんでもう何も、持てないし」
先程の嬉しそうな表情とは異なり、悲愴な笑いを浮かべた。やっぱり、まだ人になりたいと思ってるんだ。
人を終えて、人になりたくてあがいて。それでも、人になれなくて。人の周りに居る事に全力を尽くし、人を見る事を楽しみ、人になる事を諦めた。そんな彼女。悲しい彼女。彼女の事を目に映してる私は、半ば人生を諦めている。妄想に溺れて、心の奥深くに閉じこもって。陰気な私。なんて自嘲してみる。なんだっていいけどー。だって彼女は、怒らないし。怒っても私の勝手って事を、知っているから。
「ふうん。良かったねえそれは。それはアンタの勝手だから、私にとってはどうでもいいんだけど。でも、持てないんなら意味ないんじゃないの?」
「うん。そうなんだよねー」
私の事を何も言わない彼女だから、私もそういう事を言っては駄目なんだと思うけど。と言うか、私としては、もっと悲しそうに怒ると思ってたんだけど。彼女の反応は、以外に落ち着いたものだった。へらへらと。いつも通りの彼女。何か、変な空気。
「アンタ、誕生日って明日でしょ?」
「何。それ、くれるの」
「うん。ご期待通り、これ、あげちゃう。お祝いには、少し早いんだけどね」
と、彼女の宝物の髪飾りを強引に押し付けられた。貰いたくないわけでもないんだけど。——ただちょっと、人に祝ってもらうのは久しぶりってだっただけで。
お母さんは離れてるし、お父さんは既に彼女と同じ様な存在になってるし。お姉ちゃんもこんなのだし。
「私の誕生日は今日だったのよね」
「今日じゃないでしょ」
「うっははー大正解ー」
「今の私としての誕生日はまた別の日だし」と、彼女は付け加えた。そんな事、とうに知ってる。
そして、少し落ち着いて過去を話す彼女。
「何年前かの明日。その日に私は人間をやめた。ちょっとした事故でね」
彼女は馬鹿みたいな笑いを零して言う。おてんばなのは、今も昔も変わらない。少し呆れつつ、カタルシスに溺れる。
「それで、ご存知だろうけど私はこんな感じになった。私の全てを失くしてね。全て焼けたわ。全て落ちたわ。でもたった一つ、無事であった物があった」
「これでしょ」
持っている髪飾りを彼女に見せながら、私は言う。彼女は痛い事を話している筈なのに、「ごめいとーう」と、明るく言ってみせる。その明るさが、逆に痛い。相変わらず私と違って、強いな。本当、私なんかが生き残って、彼女が死んでるのがおかしいぐらいだ。
「そうそう。それね、あの日落としちゃって、あなたに拾ってもらったのよ」
「……つまり、私の家に不法侵入してこれを盗ったと」
「違う違う! 元は私のなんだから! こっそり返してもらって、そして私の気持ちと共にプレゼントっていういい話……!」
不法侵入までして、わざわざ正面から私にあげるなんて。彼女に対して白けてくる。
こっそり返してもらってとか言ってるけど、実際その場に私は居ないし、誰も居ないし。盗ったと認めている様なもんだ。
……それでも、まあ嬉しい事には変わりはないけれど。
「あ、笑った!」
「は?」
「あー、戻ったー」
どうやら、表情が顔に出ていたらしい。恥ずかしい。彼女は嬉しそうにして、先程の私の笑みを全力で語っている。だが聞く気なんてない。そんなの聞きたくないわ。
「と言う訳で、過去の私にプレゼント!」
「なんで過去なのよ。今は?」
「アンタが今の分もあげたいんなら、今の分もいいよ?」
「なんで上から目線なのよ」
あげる筈の物もあげたくなくなるわ。普通に。
「それで、昔の私を呼んで欲しいんだけど」
唐突なプレゼントに、私は息が詰まった。
……うん、元通りになりたいよね。私も思ってる。昔の時を戻したいって。ずっとずっと、思ってる。思ってた。
だから呼んだ。もう居なくなった筈の彼女の存在意義を。もう一度、もう一度だけ、あなたがここに現れる。
————ねえ。お姉ちゃん。
ひらひらと、へらへらと、 / next
- Re: 【短編】 混ざり合う絵の具 【物語】 ( No.23 )
- 日時: 2011/09/30 23:05
- 名前: 蟻 ◆v9jt8.IUtE (ID: V9u1HFiP)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode
愛咲爽は、この私、愛咲陽と五歳離れていた。そして明日、愛咲爽が愛咲爽としての存在が全て消えてから、五年経つ。私はお姉ちゃんに、追いついてしまった。
——お姉ちゃんは、おてんばで、好奇心旺盛だった。静かな空間になる、読書の時間や授業時間だって、必ず怒られる程。小さい頃は動く事ができなければ駄々をこねて、それでもお母さんに駄目だと言われ、泣いていたらしい。
それでも、私のお姉ちゃんが泣く事は珍しかった。強がるのが得意で、いつだって弱気な私とは大違い。妹の私が泣いてしまったら、怒られるのはお姉ちゃんだけれど、それでも泣く事はせず、私に怒る事もせず、ただ優しく笑ってごめんね、と一言言ってくれた。あの時がとても恋しい。
おてんばなお姉ちゃんはいつまでもおてんばで、お姉ちゃんは五年前に、存在を失った。大学生だった。ただの事故で、私たちを泣かせた。もう戻らない。愛咲爽は、最後の最後に私たちをとても悪い意味で号泣させて、この世から消えた。それだけのお話。
だけど記憶は残った。私たちの中からは絶対消えない、お姉ちゃんの存在と、私の手には、彼女が出て行く時に落とした髪飾り。
そして月日は流れ——ついに私が大学生となった日。私はお姉ちゃんと同じ大学に入学し、同じアパートに住んだ。部屋まで同じとは、いかなかったけれど。
それなりに、普通の人生を送っていた。彼女が現れたのは、まだ少し寒い、二年前の春の日。出会いは、突然。なぜか知らないけれど目隠しされた。鬱陶しく思ったけど、私はそんな事なんてどうでもいいと思うくらい驚いた。彼女は、透けていた。
俗に言う幽霊とか言う存在なのだろうか。疑問符。半信半疑。私は、信じられなかった。彼女が、私の存在を知っている——だなんて。でも後から話してもらった。彼女が私のお姉ちゃんであった事を。そして、風に生まれ変わった事を。だから彼女は、もうお姉ちゃんじゃない。ただの、人間になりたい風。
でも彼女と話せる事が、嬉しかった。懐かしかった。
「ありがと、陽」
涙を流していた。透けて見えるその顔には、しっかり涙が頬を伝っていた。そして、私の頬にも、涙が伝うのが感じる。
「お姉ちゃんにそう呼ばれるのは、久しぶりだ」
「お姉ちゃんって呼ばれるのも、久しぶり」
お互いに泣きながら笑う。
でもお姉ちゃんは、既にお姉ちゃんじゃない。私は、いつまでもお姉ちゃんに、お姉ちゃんと言い続けていたいけれど。それは駄目だと、彼女が目で諭す。
「アンタのお姉ちゃんは、もう居ないから。来年のプレゼントでもいいから、私の名前をちょうだい」
「そんなの、去年の分のプレゼントよ、風日!」
「ふ、うか」
「風に日曜日の日。私とアンタの名前を合わせただけだから」
泣きそうだから背中を向けたら、風日の顔が前にあった。恥ずかしく思いながら、私は笑った。
明日笑うのは、私と風日。いつもの帰り道、風でひらひらと舞う枯葉を見ながら、へらへらと笑う。
そんな涼しい、秋の日。
ひらひらと、へらへらと、 / end.
- Re: 【短編】 混ざり合う絵の具 【物語】 ( No.24 )
- 日時: 2011/10/16 11:19
- 名前: 蟻 ◆v9jt8.IUtE (ID: V9u1HFiP)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode
[ ぎすぎす、 な ]
ああ、 気まずい。 私のいつもの帰り道は、 空気がきりきりと張り詰めていた。 静かなのは、 いつもと変わらない。
よりによってコイツと帰る事になるとは……一緒に歩いているのに、 会話ができないこのもどかしさに、 イライラする。
「おい、 くさったみかん」
「私が腐って見えるんならアンタは眼科に直行した方がいいんじゃない、 とオススメしてみたり」
「余計な心配ありがとう、 とだけ言っておく」
何が余計な心配だ。 透の言葉を最後に、 その場はまた静寂を取り戻す。 秋風が吹く涼しい筈の外の空気は、 誰かさんと居るせいで相変わらず、 楽しくない。
……て言うか、 コイツは私に何を言いたかったんだ。 用があるなら、 さっさと言えば良かったのに。 でもコイツは何か気にしていない感じだからなあ……むしろ気にしているのは、 私の方な気がする。
透を見ながら、 私は帰り道を歩く。 ああもう、 家が隣って嫌だ! 遠回りしてでも他の道から帰りたいところだが、 生憎私は方向音痴で、 この道以外に帰る道を知らなかった。
「んだよ、 俺の顔に見とれてるのか?」
「いや、 その鼻の穴にスイカぶちこんでみたいと思って」
「ちぎれるからやめろよ。 死ぬから」
「今の助言で実行してみようと思った」
罵り合い、 の始まり。
私と透はいわゆる幼馴染って奴で、 まあ当然仲は良くない——筈なのだが、 なぜだか皆から誤解されている。 こんな性格の悪いナルシストヤローとなんか付き合うわけねーだろ、へっ。 とか心の中で悪態をついてみる。
小学生低学年くらいまでの頃は、 普通に仲が良かったけども、 高学年に上がって、 生意気にも、 透を好きな子が現れた。それは私の友達であり、 物凄く可愛い子なのだ。 ちなみにその子は未だに透が好きである。 それはともかくとして、 私はその時思いがけない言葉を言われたのである。
「蜜柑ちゃんってー、 透の事好きなのー?」
全否定した私と相対に、 偶然にも教室の中で汗だくになっていた透は、 その言葉を聞いて、 「ばっかじゃねーの? あるわけねーだろ」げらげら。 そこで私と透の仲は離れていったたわけである。
まあ普通の男子よりは接しやすいものの、 あまり近付く事はなくなった。 多分そんな感じ。
「おい、蜜柑」
透が私の名前を呼んで、 私は過去から現実に引き戻された。 ん? 今ちゃんと名前呼んだ? 透が、 私の名前を?
ありえない。 コイツ麻薬でも飲み始めたか? うーん、 奇妙である。 おそろしい。
ちゃんと名前を呼ばれた事にあたふたしていた私は、 妙に真剣な透の顔を見て、 冷静になる。 とは言え、 落ち着かないのは変わらない。
既に空は、 オレンジと紫でグラデーションを作り上げている。 風が吹く中で、 先程のぎすぎすした沈黙とは違う沈黙が、 その場に流れる。 悪い予感。
「——俺、 お前の事好きだよ」
「そんな事言うなよ、 恥ずかしい」
そんな事、 とうに知ってるから。 ばればれだから。
でも私は、 あの日からアンタの事好きじゃないんだ。 あらゆる意味で。
「そんな事だろうと思った」
「なら言うなよ」
「いいだろ別に」
「今度寝てる時にクワガタ挟んでやるから。 鼻に」
ぎすぎす、 な / end
息抜きのつもりだったのに結構長くなってしまった。
ほのぼのとした恋愛は好きだけど告白ははずかしい。そんな感じ。
- Re: 【短編】 混ざり合う絵の具 【物語】 ( No.25 )
- 日時: 2011/11/11 18:02
- 名前: 蟻 ◆v9jt8.IUtE (ID: V9u1HFiP)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode
[ あなたの事しか見ていないのです ]
だいすきだいすきだいすき。
私があなたを見ると、 あなたは私の全てを見ているはずもなかった。 傷ついて、 気付いてもらいたくて、 吼えてみると、 あなたは私の悲鳴を迷惑そうにして遠くに行ってしまう。
どうしたら私を見てもらえるんだろう。 私の顔に位置している目玉は、 優しそうな笑みを浮かべたあなたを捉える。
服にも手にもついている無数の目玉からあなたの心を覗くと、 からっぽだった。 私の心を分かっているんでしょ。 なのに、 抱きしめてくれない。 私に対しての疑問があって私の隣に居るだけでも、 いいの。 それだけでいいの。
けれど、 優しく愛でてほしいと思う事もあるから。
私は眠ったフリをして、あなたの疑問を受け止める。
————私はいつだって、あなたの事がだいすきなの。
あなたの事しか見ていないのです / end
目玉ちゃん。の深層心理。
深くて暗い所なんて、何があるかわかりゃしない。