複雑・ファジー小説

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ゴッド・コードウルフ。
日時: 2011/09/07 16:05
名前: 龍宮ココロ (ID: dmgQ4onE)
参照: http://yaplog.jp/yukimura1827/

初めましての方は、初めまして。
知っている方はどうも。
只今同じ小説掲示板「複雑・ファジー小説」の【白ずきんちゃんと。〜ワンダーランドの住人童話〜】を執筆している龍宮ココロと言います。
今回は新しく掛け持ちでこの小説も連載していきますのでどうぞよろしくです。
ちなみに、この小説【ゴッド・コードウルフ。】はマフィアのお話です。


——————————————☆注意★ー—————————————
1.荒らしは止めてください。(中傷的な言葉もお止めください)

2.文章をコピーしたまたは似た感じの場合、管理人に訴えます。

3.流血表現などグロイ表現が書いてある場合があります。
嫌いな方はすぐに逃げてください。(グロイ表現の時は小説目次に「※」を付けて載せておきます)

————————————————————————————————

マナーを守って読みましょう。


★【紹介・語句解説・歌詞】★
・紹介・語句解説 >>1
・歌詞『On a dark night a flower(闇夜の華)』 >>40

★【本文目次】★
P1.プロローグ >>2

——第一章——
P2.第1話「Talk」 >>3
P3.第2話「Drink」 >>4
P4.第3話「Game」 >>14
P5.第4話「Meeting」 >>17
※P6.第5話「Provide」 >>20
※P7.第6話「Start」 >>23
※P8.第7話「Count」 >>29
P9.第8話「New classmate」 >>30
P10.第9話「Report」 >>31
P11.第10話「Hunch」 >>34
P12.第11話「The back」 >>37
P13.第12話「Approach」 >>41
P14.第13話「Tension」 >>42
P15.第14話「Intention」 >>43
P16.第15話「Disadvantage explanation」 >>44
P17.第16話「Heat」 >>45
P18.第17話「Mystery」 >>48
P19.第18話「A plot」 >>49

★【更新などの通知】★
9/14 第18話更新。

Re: ゴッド・コードウルフ。 ( No.40 )
日時: 2011/07/29 19:31
名前: 龍宮ココロ (ID: 6xS.mLQu)
参照: http://yaplog.jp/yukimura1827/

白雪さんからこの小説のイメージ歌詞を頂きました。(ありがとうございます♪)
タイトルは…『On a dark night a flower(闇夜の華)』です。

『On a dark night a flower(闇夜の華)』

闇にひとり
紅に染まりしその瞳
孤独を恐れし時忘れ
少年は今 何を想う

一人芝居は御仕舞だ
闇夜の遊戯
さぁ、咲かせてくれよ
綺麗な花を…

華麗なる血の花
散り逝く中に 微笑んで
どうせたがわぬその運命さだめ
失望?絶望?
どうだっていいから
消してしまえば 同じ紅なのだから…

闇にひとり
紅に染まりしその身体
恐怖を忘れし時覚え
少年たちは 何を求める

一人芝居は御仕舞だ
闇夜の遊戯
さぁ、始めようか
美しき乱舞を…

華麗なる血の花
散り逝くと知りつつ終いに縋り
どうせ叶わぬ命乞い
失望的?絶望的?
そんなもの あった?
消えてしまえよ 同じ紅へ染まれ…

一人芝居は御仕舞だ
闇夜の遊戯
さぁ、咲かせてくれよ
綺麗な花を…

華麗なる血の花
散り逝く中に 微笑んで
どうせ違わぬその運命
失望?絶望?
どうだっていいから
消してしまえば 同じ紅なのだから…

闇夜の遊戯
少年たちは乱舞する
闇夜の遊具
遊ばれし者は散ってゆく

美しく華を咲かせながら…

消えぬように灯を燈せ
追い詰め終いに
消してやるからさ。

Re: ゴッド・コードウルフ。 ( No.41 )
日時: 2011/07/31 09:22
名前: 龍宮ココロ (ID: 6xS.mLQu)
参照: http://yaplog.jp/yukimura1827/

「王我、待ってたよ」
いつものマフィアが着る黒い服に身を包んだ俺はマンションの階段を降り終えた時、凛とした声の持ち主である臨兄がいた。
臨兄のすぐ後ろには黒光りが目立つリムジンがある。
というか、あまりリムジンなんて見ないし乗らないんだけども。
「紅真と巡斗は、今回の幹部集会場所に先にいるらしいから俺達も急ごう」
臨兄の言葉に少し俺は頷いた。
一瞬も気持ちを緩めてはいけない、それが今回のヤクザ達との“全面戦争”だ。
俺の緊張は一向に高まりながら、リムジンのドアが開いた瞬間吸い込まれるように俺は中に入って行った。
その瞬間は、いつもの平凡な日常に離れて寂しいような変な気持ちを持ったような気がした。

———

霜雪流空茂、14歳。

いつもの平凡が大好きで、両親も大好きだった14歳。

今日はそんな私の誕生日、両親はいつも笑顔で一緒にいた。

一緒に過ごして行く、それが普通だから。

霜雪流空茂、14歳。

いつもの学校が好きで、明るく友達もいた14歳。

今日は私の誕生日、皆祝福してくれた。

笑顔が増えてとても私は皆大好きだった。

それが普通だと知っていたから。

それなのにあの14歳の誕生日は—— 闇夜の赤い雨の中に私はいた。

私には分らなかった、今私の目の前に倒れているのは誰?

いつもは温かい光の中、なのに今いるこの部屋はとても冷たく赤い何かが私の髪に付いて——。

私は分らなかった、今私の目の前にいる脅かすような影は誰?

私は分らない、今私に近付いて来る脅かすような影の所有物に。

私は息を止めた、血だらけでいる脅かす影に。

そうして私はやっと—— 理解した。

目の前に倒れているのは私の両親で、私に近付いてくるのは私の両親を殺した何者かで、その何者かが持っている所有物は——両親の血を吸う太刀で。


「—— いやぁぁあぁあぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁあぁぁああぁぁぁぁぁぁぁぁああぁぁあぁぁあああああぁぁぁぁぁぁっ !!」


怖くて動けなくてしょうがなかった私は、ただただ叫んで逃げていく。

そんな私の姿を脅かす影は…あの影は——。


        ——“ヒ ト ノ ヒ メ イ ニ ワ ラ ッ テ イ タ”——


「じょう…ま、お…様—— 流空茂お嬢様っ !」
「—— !!」

ハッと急な大きな声により、彼女は大きく眼を見開いた。
少し自分自身息切れている、少し汗もかいていた。
眼を見開いた世界はあの影が笑っていた闇夜の世界じゃない、光が包みあの影などいない平和な世界だ。
少し挙動不審のようなそんな顔の彼女を見て—— 執事の累は心配そうな顔でいた。
「…私、寝ていたの?」
やっと喉から自分の声を出して発する、その言葉に少し執事の彼は頷いた。
「はい、お疲れだったのでしょうから…。それよりもお嬢様…大丈夫でございますか? 学校に着いたのでお声を掛けましたら凄くうなされておらっしゃって…」
「うなされ、て…」
少しだけクラッと一瞬目の前が真っ白くなるが、自分自身耐える。
「そうだ、またあの夢を見たから…」と心に思って。
「また、見たんですかあの悪夢…を」
彼は彼女の顔色を見てそう口にする。
彼もだてに執事と秘書をやっているわけじゃない、父親の時から彼は若くして執事としている。
だからこそ彼女の事は十分分っている理解者だ。
「…えぇ。でも…もう大丈夫だから」
心配を掛けない様に彼に少し笑って見せた。
そんな彼女の顔に少し彼はちょっと眼を伏せる、痛々しいと思ったからだろうか。
それでも、彼女は—— やり遂げなければならない事がある。
その事を理解するのも彼は十分分っている、けれど彼女はまだひ弱いように感じていた。
「…そろそろ、私行くわ」
その言葉に彼は少し間を開けてから頷いた後、彼女を車から降ろした。

       ——ここで留まっちゃいけない。私は…“復讐”するために、生きているのだから——

      第12話「Approach」

Re: ゴッド・コードウルフ。 ( No.42 )
日時: 2011/08/02 17:12
名前: 龍宮ココロ (ID: zLrRR1P.)
参照: http://yaplog.jp/yukimura1827/

「うわ…高級のホテルじゃんっ !!」
乗ってから二時間後、集会場所に到着し降りた後すぐに俺は声を上げた。
凄く宿泊料の高く、前テレビで見たセレブや有名人しか泊まらないと言う超セレブホテルだからだ。
俺は確かにマフィアでのお金は報酬として貰ってある、けれどこんなホテルに泊まるほどの大金は持っていない。
凄く感動してちょっとキョロキョロと見ていると、臨兄は俺の姿に苦笑した。
「ふふ…騒がしいよ王我、少し気持ちを落ち着かせて。周りが迷惑だ」
「—— あ…」
俺の姿を見ていたセレブらしい女の人がクスクス笑ったのを見て少し恥ずかしくなったため、シュンと黙った。
だってねぇ…こんな所で集合だって聞いた事ない。
というか、来ただけで思いっきりなんか自慢出来そうなんだけど。
ソワソワとちょっと俺はする。
「おいで、王我。ここは広いから」
臨兄は優しい声でそう言ったのを俺は聞いて、迷わないように着いて行く。
フロントに入り、臨兄は小さな声で「ここで待ってて」と言うのを聞き俺は立ち止まる。
臨兄はその俺に「良い子だ、王我」とニコッと笑った後、フロント係らしい男の人に話しかけた。
俺は待っている間、少し周りをジッと観察する。
綺麗なシャンデリアに気持ちが落ち着くようなシンプルな色使い、そして眼を奪われるほどの庭が一望できるような造り…。
あまりに凄くて新鮮で嫌になるほど頭に焼き付けた。
…将来ここに一度泊まってみたいな、うん。
チラッと臨兄を見ると、どうやらちょっと手こずっているらしくまだ話している。
臨兄ならこのホテルとかセレブホテルに泊まっているんだろうな。
そう思っていた時——。

「坊や、ここは初めて?」
「—— !」

急な声にビクついた後、バッと振り返る。
そこには豹柄をふんだんに使ったセレブらしい女の人がいた。
「というか、マジで豹だろ」と言う位にふんだんに。
その人は少しクスッと笑い、口を開く。
「急に声を掛けてごめんなさいね、つい綺麗な坊やだったから」
「あ、い、いや…俺は別に」
少し遠慮がちで俺は返す、その俺に少しずつその女人は近付いて来た。
「遠慮しなくていいのよ、坊や今日は一人で来たの?」
「え、今…臨…いや、連れがいるので」
危うく途中で“臨兄”と言う所だった。
本当なら言ってもいいのだが、マフィアの幹部だけの掟で“『決して知らない奴に気安く仲間の名前を呼んではいけない、敵に情報を知らせる』”とあるからだ。
気安く名前も言えないのが本当に少し辛い。
「あらあら、そうなの」と言って女の人は笑った後、ズイズイと顔を俺に近づける。
「本当に綺麗ねぇ…坊や。その綺麗な坊やは—— 女の人にも興味があるのかしら?」
「—— !!」
女の人は自分の胸を俺の腕に押し付けてくる。
な、何だこの人…凄く寒気が一瞬に体の中を走ったぞ !?
普通なら男性としては良い雰囲気だろうけど…俺、そんなの知らないしなる気ないし !?
そんな俺に構わず女の人の顔が至近距離まで来たその時——。

「俺の弟に何か用でございますか、マダム?」
「—— !」

さっきまでフロントの人と話していたはずの—— 臨兄が爽快な笑顔でいつの間にかいた。
急な声に女の人は驚きもしないで「あらあら、連れの方が…お兄さんなのね」と少し妖艶な笑みを垂らしている。
そしてヒタッと、臨兄の右の片頬に女の人は触った。
「ご兄弟にして綺麗なのね、私の好みだわ」
「そうですか、マダム」
笑顔を一つも変えず臨兄はそう受け答えた後、少しクスッと笑った。

「ですが、俺達ご兄弟は貴方の好みであっても—— 貴方の物にはなりませんよ?」
「あらあら、物分りの早いのねお兄さん。もしかして女の扱いはお上手なのかしらね…?」

もっと女の人は妖艶な笑みを垂れ流した。
その女の人にゾクッとするのに、臨兄は何一つ動じていなかった。
「マダム、貴方の気品さには俺達ご兄弟は引き立てられないからそう言うのです。貴方は誰よりも気高く美しいんです。…だからこそ、お断りをするのです」
「—— !…貴方、なかなかね」
「いえいえ、マダムこそ。普通なら貴方の魅力の虜になってますね」
そう臨兄が言ってから少し時間が空いた後、女の人は「また会えるといいわね」と言ってどこかへと行った。
俺はいなくなったのを見た後、思いっきり脱力感が増えた。
「な、何だあの人…凄くゾクッとしたし…」
「あはは、そう言う世界なんだよ王我」
「遅くて悪かったね、ちょっと手間がかかったから」と臨兄はそう言って付け足した。
「本当に、臨兄がいなかったら俺…マジで死んでた」
「だから、悪かったよ王我。ちゃんと謝罪のお礼はしとくから」
ペロッとちょっと舌を出して臨兄は言った。
まぁ、臨兄の事だからお礼は高い何かなんだろうな…それしか思えないし。
それにしても…臨兄は本当に謎過ぎる。
さっきの女の人の言葉に一歩も動かずただ受け流し笑う…まるで女の人の対処法を元々知っているみたいだ。
「…本当、臨兄って凄いよなぁ」
ボソッと呟く声に少し臨兄は「何か言ったかい?」と言ってきたのにちょっと苦笑して「何でもない」と返した。
臨兄は左腕に付けてある腕時計を見て口を開く。
「そろそろ行こう、二人が待ちくたびれているだろうから」
「あ、うん。分っているよ、臨兄」
臨兄の行く方向に俺はただただ後ろで付いて行った。

      ——さぁ、気を引き締めよう…“全面戦争”への作戦会議だ——

      第13話「Tension」

Re: ゴッド・コードウルフ。 ( No.43 )
日時: 2011/08/05 11:47
名前: 龍宮ココロ (ID: esqt3hj.)
参照: http://yaplog.jp/yukimura1827/

ウィィィン…とエレベーターの機械音が静かな空間にいる俺と臨兄の間に鳴り響いて通り過ぎる。
今、俺と臨兄はようやっとエレベーターの画面に表示された26階の所まで来ていたのだが…未だに止まる事を知らないように上へ上へと上がって行く。
その空間に俺は凄く飽きて、ようやっと声を出した。
「…臨兄、これ何階まで行く気なの?」
その声に反応した臨兄は少し眼鏡をクイッと少し指で上げた。
「飽きるのが早いよ、王我。これから幹部集会なのにね」
「だってこんな静かな空間とか機会音とか俺飽きたんだよ〜…」
「…まぁ、王我は静かにしてられない性質(タチ)だからね」
その言葉に俺はむっとすると、臨兄はクスクスと笑った。
本当、臨兄ってちょっと遠まわしに酷いな…まぁそれは俺の事を知り尽くしているからだろうけども。

「…臨兄って本当、謎の人だよなぁ」

ポツリとそう独り言のように呟くのにハッと我に帰って臨兄を見ると、臨兄は少し笑ってみせた。
「おやおや、王我はいつも俺の事をそう思っていたんだね?」
「え、あ、いや…その…」
ちょっと逆鱗に触れちまったかな。
臨兄の笑みは正直本当に笑っているのか、はたまたは裏があるのか分らない。
当然、目の前にいる臨兄の笑みは俺でさえ分らない。
チョンッと臨兄の右手の人差し指が俺の上唇に触れた。
急な事により少し俺は目を見開いた後、体がビクついた。
その俺を見て女の人だったらコロリとイチコロされ、虜にされそうな妖艶な笑みで口端を少し上に上げて囁く様な優しい声が響いた。

「—— ふふ、そう思うならちゃんと俺に言えば教えてあげたのにね」
「…へぇ、なら今教えてくれるの?」

少し俺自身、臨兄の妖艶な笑みに圧倒されながらも苦笑しながら言うと「今は時間がないから教えないよ」と言い返された。
うわぁ…言っておきながら教えてくれないって不憫じゃねぇの?
未だにお子様の俺には教えられない事がたくさんあるって言うのか?
まぁ、臨兄は俺よりも6歳くらい歳離れで俺の兄貴分で幹部筆頭だし。
あとはどっかの大手企業の社長で女の人でも男の人でも見惚れるほど群を抜いて美人だしな。
…凄く羨ましい要素ばっかり持ち合わせていて恨めたしいけども。
どうせそこら辺に転がっていた庶民とはかなり違うんだろうな、大金持ちって。
ふとエレベータの画面を見ると、もう39階に来ている。
40という表示になった後の瞬間、チンッと鳴ったのが聞こえた。
「もう着いたようだね」
臨兄はそう小さく言った後、エレベーターの扉が開いたのを見てから出る。
一瞬俺はちょっとポカンとしていると臨兄の声が聞こえた。
「王我、エレベーターの扉が閉まっちゃうよ?」
「わわ… !」
俺はちょっと慌てて臨兄の遅れが出ないように着いて行く。
さっき俺がポカンとしたのは、着いた40階の広間に少し驚愕していたからだ。
フロントのシンプルな色づかいとは一変して、この40階の広間は中国風みたいな感じで主に赤が多い。
そして、中国人らしき人達の数名の横を通り過ぎる。
「…なんで中国人がいる階に俺達の集合場所があるんだ?」
俺がちょっと不機嫌そうに声を漏らした。
「あぁ、そうか…。王我は中国人にちょっと偏見があったね」
臨兄は俺の言葉に思い出したように返した。
俺は別に中国人を嫌っているわけじゃない、ただ偏見癖があるだけの話だ。
だけど、中国人への偏見は俺は凄い強い方だ。
なんせ—— 俺の人生を滅茶苦茶に壊し、俺をどん底に落した奴が中国人だったからだ。
ズキンッと一瞬だが頭に痛みが走った。
治っていたはずの古傷が思い出しただけで蠢いている。
実は俺はあの時、その中国人に鈍器で殴られて一旦は生死不明の状態だった。
だけども、そんな俺はひょんな事にラッキーなのか俺だけは意識を取り戻した。
—— 両親は帰らぬ人になってしまったが。
ズキンッズキンッと少しずつだがますます蠢くのが早くなる。
「…大丈夫かい、王我。古傷が…痛むのかい?」
心配そうな臨兄の顔が見えて「…大丈夫、何でもないよ」と返した。
でもこれも嘘、何でもなくない…本当に。
そんな嘘を付いた俺に、臨兄は心配な顔で口を開いた。

「王我、幹部の皆には嘘を付いては駄目だと言っているだろう? 俺には見抜けないと思っていたかい?」
「—— !…そう、だね。臨兄には俺の嘘、全部見抜けるんだった」

唯一俺の嘘を見抜ける、臨兄と初めて会った時もそうだった。
そんな俺である赤の他人を受け入れてくれたのも多分今思えば臨兄だけかもしれない。

「…大丈夫だよ臨兄、俺はもうあの時じゃないし」

弱くて、怖くて、呪いたくて、世界を憎みたくて——。
武器に飢えて、血に飢えて、世界なんていらないと思って——。
あの時の俺をどん底に落したあいつが—— とても憎くて。
「…そうだね、王我は王我。あの時じゃなくて今ここにいるもんね」
少し臨兄は俺を撫でた。

「さぁ、行こう王我。もう時間がないからね」
「…分ってるよ」

後ろめたかったあの時、自分が嫌いでしょうがなかった。
弱くて、怖くて、呪いたくて、武器に飢えて、血に飢えて——。
その時の俺はただただ怯える事しか出来なかった。
だけど、今は——。

           ——あの時よりも強く“生きたい”と思っているから、ここに存在している——

          第14話「Intention」

Re: ゴッド・コードウルフ。 ( No.44 )
日時: 2011/08/05 15:38
名前: 龍宮ココロ (ID: esqt3hj.)
参照: http://yaplog.jp/yukimura1827/

この階の奥の通路に『Keep off. An employee only.(一般の方は立ち入り禁止。従業員のみ)』と書かれた看板があった。
その看板があるのにもかかわらず、臨兄は進むのにちょっとギョッとした。
「り、臨兄っ !ここに“一般の方は駄目”って… !」
「ん?…あぁ、大丈夫だよ。ちゃんと許可は取ってあるし」
「許可…?あ、まさか… !」
臨兄の言葉に俺は思い当たる節があった。
そう言えばフロントで以外にも手間がかかっていた、もしかしたら—— ここの通る許可を取る為に?
でも、そう言うと…俺の嫌いなあいつと巡兄は何処から入ったんだ?
そう考えている俺に臨兄は「あ、そうそう」と何か言い始めた。
「俺達は正面から入ったけども、紅真と巡斗は事前からここの地図を持って警備員の姿に成りすましていたからここを通って奥の部屋で待っている。…っていうのを今教えておくよ」
「はぁ… !?え、ちょ、ま…それを先に教えてよ !!」
「ごめんごめん…最近忘れっぽくってね」と苦笑して付け足す。
俺は聞いた瞬間に心に心底「警備員の姿に成りすましたかった !」と思った。
そうすれば、俺こんな目に会わなかったのに… !!
…でも、意外に似合いそうだよなあの二人の姿は。
俺は多分もうちょっと身長があれば、警備員出来るかも…。
「さぁ、着いたよ王我」
臨兄の声を聞いて少し間を開け頷く。
ドアの上のプレートには『応接間』と書かれてある、相当広いんだろうな…。
臨兄はドアノブを時計回りに優しく回し、押していくと——。

「—— 遅かったな、フロントの奴に珍しく手間がかかったか?」
「こ、こんにちは…待ってました、よ臨音さん…」

ソファに座っている二人がいた。
臨兄は「あぁ、珍しくね。まったく…俺も舐められたもんだよ。そして巡斗、こんにちは…だね」と笑って言っていた。
臨兄の後に俺が入って来ると巡兄は「あ、王我さんも…こんにちは…」と声を掛けてくれた。
その声にニコッと俺は笑うだけで返す。
臨兄が「こっちに座っていいよ、王我」と言って、ポンポンと隣の場所を軽く叩く。
俺はただ頷いて、ちょっと勢い良くボスッと音を出して座った。
その座り方が俺の嫌いなあいつは気に入らないらしく小さな声で「静かに座りやがれ…この馬鹿野郎…」と言ってきたのは気にしない方向で。
だってここは幹部緊急集会だし?
まぁ、キレたらキレたで今日は俺の暗殺武器とか持っているから対処できるし?
そう思いながらちょっと俺の嫌いなあいつにベェッと舌を出して挑発してやった。
勿論、俺のやっている事に一瞬にして理解して俺の嫌いなあいつはムカッと来たのか凄い鬼の形相で睨んでくる。
そんな表情したって、俺がビビるわけないっしょ。
…子供には絶対トラウマだけども。
パンパンッと、急に隣から聞こえて俺はビクつく。
見ると臨兄が、手を叩いて「こっちに集中して」というような顔でいた。
その臨兄の顔を見た瞬間、俺は一層に緊張を高めたのが分った。

「…じゃあ、始めようか。俺達4人の『ゴッド・コードウルフ』幹部緊急集会を」

ピシャリと臨兄の静かな声が応接間を包み込む。
「今回集まったのは言うまでもない、昨日の夜…「ソルジャー(構成員)」と「アソシエーテ(準構成員)」の集団約280人が—— 何者かに殺されたのについてだ」
臨兄の言葉を聞いて3人とも頷く。
そして、頷いた後に俺の嫌いなあいつが口を開いた。
「その事についてだが…俺の知り合いのマフィア共には何も接点もなし。つまり、今俺達が畳み掛けているヤクザ共で間違いの無い様だ。そして、悪いニュースだが…畳み掛けているヤクザ共の資料がどうやら一日に何ページという速さで消滅(奪われた)もしくは、相手がその情報が取られたのを気付いて奪い返し。…俺達の情報が漏れる危険性があり、そのため巡斗の使っていたパソコンのデータフォルダを違うパソコンに移し変えたが—— 一部、俺達の情報が消滅(奪われた)したため…嵌められたと推理」
「—— !!」
その言葉に俺は一瞬にして絶句した。
巡兄は凄腕の情報屋でちゃんとフォルダに保存するほどの几帳面さがある。
勿論俺達の情報も保存してあるため一部消滅(奪われた)と言う事は—— 相手も相当なる腕の持ち主。
「…申し訳ありません、臨音さん。僕も死守したのですが…相手の方が一枚上手なようです…」
「…いや、いい。巡斗は良く頑張った方だよ」
謝る巡兄に臨兄は優しく宥めた後、俺の嫌いなあいつに臨兄は目を向けた。
「紅真、後の情報は来ているかい?」
「あぁ、来ている。この出来事の後に回収版を出した後—— 手紙が置いてあった」
スッと、机の上に白い封筒を置く。
何も変哲もないただの白い封筒だ。
その封筒を臨兄は受け取った後、ビリッと上の止めている部分を破く。
「…どうやら中身は一枚の紙だけのようだね」
綺麗に折り畳まれてあった紙をペラッと開いた後、臨兄の表情が硬くなった。
その臨兄の表情により俺達3人にも伝わった。
何かあったしか他ならない、臨兄がこうも表情を固くするのは。
臨兄は読み終えたのかスッと机に置いた。
「…なるほど、どうやら—— あちらも本気のようだよ」
「—— !」
臨兄がそう言うのはいつも何かがあるというのは俺達3人も知っている。
と言う事は…何か見たんだな、臨兄。
ゴクリとつばを飲み、臨兄の言葉の続きを待っていると—— 何か冷たいような物が刺さるような声が響いた。

「—— “『ゴッド・コードウルフ』幹部に宣戦布告する。今から2週間後各自4つの場所を設置しておく、その場所へと1人ずつ分かれて相対しよう。その場所によっては戦闘のルールがある、持参の武器を使っても良い。…ただし、こちらのやり方で対戦する事を提案するとし部下の乱入は禁止といたす。そして、他幹部と接触する事も禁止といたす”」

その言葉の一文字一文字が、俺の心と脳に深々刻んだ。
俺達『ゴッド・コードウルフ』の幹部は互いにコンビネーションで殺った時はいくつもある、勿論個々もあったけれども…。

        ——個々の戦闘はあまりに少なく、協力出来ない事に俺は一瞬“不利”と感じた——

        第15話「Disadvantage explanation」


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