複雑・ファジー小説
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 鎖解時 −第二章開幕−
- 日時: 2012/01/07 19:18
- 名前: 柚子 ◆Q0umhKZMOQ (ID: JbVqO821)
初めまして、柚子(ゆず)とかいう者です。
前々から居たのですが、名前変えてやろうって思いました←
‡お客様
*栗鼠隊長様
*凛様(鑑定を受けてくれた方)
*檜原武甲様
*宙燐丸w様
†めにう
プロローグ
【 壊していく 】「>>001」
第一章
【 壊しにいく 】
第一話『創めます』
「>>002」「>>007」
第二話『壊す過程で』
「>>008」
第三話『泣いても……いいですか?』
「>>011」「>>013」
第四話『全力で泣かせてもらいます』
「>>014」「>>015」
第五話『涙なんかもう捨てた』
「>>25」
第六話『涙の代わりに雨を』
「>>26」
第七話『初めての——』
「>>27」「>>28」
第八話『抑えきれない悲しみと哀しみと』
「>>31」「>>34」「>>39」
第九話『 』
「>>41」
第二章『プロローグという名の詩に近いもの』
「>>52」
*
参照100突破記念レス「>>022」
*
キャラクタプロフィール「>>006」
重要語句意味 「>>003」
キャラクタ募集 「>>40」
——注意事項——
1:環境があまり良いとはいえないので、更新は蝸牛並です。
2:作者の書き方が苦手。荒らしにきた。小説への文句を言いに。
該当する方は、すぐさまプラウザバックをお願いします。
3:微量にグロ表現が見え隠れしますが、苦手な方はプラウザバックお願いします。
4:アドバイスや、ご指摘有りましたらお願いします。
*お知らせ*
□参照100突破 (2011年12月05日)
□参照200突破 (2012年1月1日)
□キャラ募集について「>>34」
- Re: 鎖解時 第四話更新中 −参照100突破感謝です− ( No.24 )
- 日時: 2011/12/06 21:41
- 名前: 柚子 ◆Q0umhKZMOQ (ID: FQzo10Uq)
檜原武甲様
わざわざコメント有り難う御座います^^
檜原様も、小説をお書きになられていましたが、自分より数段上手だと思います(ΦωΦ)フフフ...
台本描写、楽に見えると思いますが案外難しいものと思ったりもするかもしれないです;
自分が難しいと感じたので; 描写をつけないっていうのが、不可能に近かったので;;
はい。
戦闘描写も頑張っていこうと思います^^
- Re: 鎖解時 第四話更新中 −参照100突破感謝です− ( No.25 )
- 日時: 2011/12/09 20:43
- 名前: 柚子 ◆Q0umhKZMOQ (ID: FQzo10Uq)
番外編。
キャラクタの過去編他。
尊side.
『涙なんかもう捨てた』
あの時自分に「力」と呼べるものが存在していただろうか。
あの日自分に「力」というものを感じる事ができただろうか。
初めて自分の非力さを怨んだ。子供だから仕方がない、立ち向かっただけ偉いじゃないか。哀れみと同情しか含まないその言葉に何かを思う価値なんか存在したのだろうか。
自分の存在価値が一瞬にしてなくなったとき、何を力にしたのだろう。十数年前の出来事でさえ、思い出す事が不可能になっている。思い出そうとすればするほど、何を考えているのか、何を思い出そうとするのか、誰が自分に話しかけたのか、そんな事まで解らなくなる。脳に記憶されているはずの映像も、フィルターが掛かっているとでも言うべきか、すりガラス越しに見た映像のようにピンボケしていた。
あの日あの時の映像以外は全て見えなくなっていた。
*
——あの日は喜びが溢れていた。
気分がよく、スキップをしていた帰り道。生憎天気は気分が最悪のようで、空から涙をこぼしていた。無数の涙は舗装されていない道に吸い込まれ、大きな泥沼を作っていた。大人が歩いても、子供が歩いても足を取られてしまうほどグチャグチャになっている道の上を少年は一人、スキップをしながら渡っていた。足を下ろす度にバチャ、と水がはねる音、足を引き抜くたびにグチュ、と泥が足裏に吸い付く音が繰り返し続いていた。少年はそんなこと気にする事も鳴くスキップを続ける。足がどんなに汚れても、服がどんなに汚れても少年は一切を気にする事はなかった。
少年が走っているのは雨音が響き、止まる事を知らない、といわれている街であった。何時からかこの土地一帯は年間降水量が1000ℓ以上を超える地域になっていた。雨が降っている間、町民は誰一人として家から出ない。偶に太陽が垣間見えたときのみ家から出る。他の町民からしてみれば、土砂降りの日に外を出歩くなど言語道断。有り得ない事であった。少年も今までは他の町民と同じ考えを持っていた。それでも出歩く必要があったのだ。隣町に越してきた母に会うために。
もう何分外にいるだろう。体が冷え切っていることを感じながらも少年はスキップを続ける。途中走ったりもしていたが足が沈み走る事が困難と知り、スキップをし続けた。歩くよりは早く、走るより足を取られない、そんな点を利点だと少年は思っていた。
早数十分経ったころ、ようやく景色が変わり始めた。背の高い木に囲まれた泥沼と化している道から、石畳で舗装され、住宅は煉瓦作りの家が立ち並んでいる。沢山立ち並ぶ住宅を前に、少年はポツリ呟いた。“必ず母を見つけ出す”と。
- Re: 鎖解時 第四話更新中 −参照100突破感謝です− ( No.26 )
- 日時: 2011/12/15 21:34
- 名前: 柚子 ◆Q0umhKZMOQ (ID: FQzo10Uq)
先ほどから降り続く雨は、雨脚が少し強くなり始めてきていた。
石造りの大型マンションの窓からは暖かい光がこぼれているところが多かった。たったそれだけ、光が部屋に灯っているという事だけで少年は少し心を痛めた。自分が家に帰っても光は灯っていない、自分が家に帰っても出迎えてくれる人はいない。父は死別していて、兄弟は一人もいない。ただ、母親がこの町で暮らしている、それだけが今少年の生活の支え、心の支えとなっていた。
息をのむ。ゆっくりと一歩を踏み出す。
——雨が強くなってきたかも。少年は一歩前進し厚い雲に覆われた空を見上げる。少年が町に入ることを拒むかのようであった。
少年は雨脚の強くなってきた雨に臆する事無く着実に一歩一歩、歩を進めていた。服もズボンも靴も髪も肌までもが酷く濡れ、少年の身体にぴったりと張り付いていた。
そんな少年がやってきたのは、町の入り口から徒歩約二分程度の所に位置していた他の総合住宅より群を抜いて大きい石造りの大型マンションだった。大体五階建て程度が主流であったこの時代では、考えも着かなかった高さだ——七階建てというのは。たった二階分違うというだけでも、それは大きな存在感と威圧感を伴っていた。
ガチャリ。
青銅で作られていると想像できる、少し青みがかった金属の扉のをあける。少年は比較的静かに開けた心算ではあったのだが扉に装飾品として付けられていた扉と同じ金属であしらわれていた鎖が音を立ててゆれてしまった。
入って直ぐ、管理人室と思しき部屋を背の低い少年は背伸びをして覗く。中には一人、肌が黒い少し小太りな小母さんが眼鏡を掛けて書類の整理をしているところだった。
「あら坊や、どうしたの?」
先に口を開いたのは、小母さんのほうだった。
「僕の母さん……僕の、母親は此処で暮らしていますかっ!?」
まだ筋力が十二分にない少年の脚は、ぷるぷると限界が近いことを知らせる。それでも少年は小母さんと目を離そうとはせずにしっかりと背伸びをした状態を続けていた。
「坊や、お名前は何て言うの?
私も入居者全員の名前を覚えているって訳じゃないのよ。よく世間話をする人と、最近新しく入っていた子の名前なら直ぐ言えるんだけれど……」
『最近新しく入ってきた子』? 少年の目の色が極僅かにだが変化した。小母さんのいった『新しく入ってきた子』、この言葉だけが脳内をグルグル駆け回っていた。もしかしたら海棠茉里(かいどうまり)——七平茉里(ななひら)がいるかもしれないのだ。
「お、小母さんっ! 新しく入ってきた人の名前っ、僕に教えてっ!」
背伸びをすることが、身体に鞭を打たれるよりも辛くなってきている少年は、相手に聞く口調が少し早口で切羽詰っている風になっている事に気付けるはずがなかった。
「わかったわ。最近の新規入居者は三人いるのよ。順番に名前言っていくわね。
まず、一人目。安立優子、二十代半ばの女性ね。
二人目は、ビル・ターナー一家。一週間前に家族で引っ越してきた人たちよ。
最後の三人目……加納麻奈。
以上よ、坊や。お探しの方は……、その表情からすると居なかったのかしら」
小母さんがふふっと笑っていた事なんて、その時の自分は気付きもしなかっただろう。
母が容易に見つけられないという事は解っている。母を探す上で承知していた事である。
ただ、こんなところで思わぬ協力者が現れるとは思わなかった。
「なぁお前。人探ししてんのか? 俺にも手伝わせろよっ」
幼き海棠少年の目に移ったのは、日焼けをしている肌に銀髪のアクセント……。
未来の、海棠尊のよき理解者になる男だった。
- Re: 鎖解時 第四話更新中 −参照100突破感謝です− ( No.27 )
- 日時: 2011/12/15 22:18
- 名前: 柚子 ◆Q0umhKZMOQ (ID: FQzo10Uq)
「お前……名前なんてゆーんだよ」
母親が住んでいないという事が判明し、自分の中でも簡単に見つかる訳ではないと言うことは分かっていた。それでも少年は少し体力と気力にダメージを受けていた。
そのときに現れた少年の気楽そうな顔といったら……。尊は少し呆れ気味にため息をついた。
「俺? 俺の名前はアレックスってーんだよ。アレックス=ターナー。この町に住んでるキレイな女の人とか、可愛い女の子とかならマークしてるから住んでるところも分かるぜ?」
家を知っているなど友達や近所の人でなければ唯のストーカーで犯罪じゃないか。こんな奴と母親を探すのか、と考えると尊はさらにげんなりとした様子でため息をつく。
ただ、少年のいうことに嘘偽りが無いとしたら協力した貰うほかないな、と脳をフル回転させて考える。
判断結果は自分ではもうわかっていて、恐らく相手もわかっていた。
「僕の名前は海棠尊。家のじじょーって奴で母さんを探してるんだ。ちなみに歳は十歳」
「はぁっ!? 十歳とかマジか? 俺と五歳も違うじゃん……」
どうやらアレックスは五歳も差があるということに驚いているようだ。
選択肢は三つかな……。
一、とりあえず慰めの声を掛ける。
二、一応謝っておく。
三、無視する。
四、この場から逃げ出す。
RPGゲームのように頭の中にコマンドが現れる。勿論モンスター側がアレックスと名乗る少年で、魔物を倒す勇者が自分だ。
まあ……。此処は無難に三、かな?
「あーあ。なーんか白けるわ……。ま、しゃーないか……。
とりあえず、尊って言ったっけ? 俺ん家こい。着替え貸してやるからさ」
へへっと笑いながら階段を上り始めるアレックスに困惑の視線を数秒向けていた尊は、アレックスが階段で「いてえっ!」と叫んだ事により我に返って、アレックスを追った。
- Re: 鎖解時 第四話更新中 −参照100突破感謝です− ( No.28 )
- 日時: 2011/12/27 23:45
- 名前: 柚子 ◆Q0umhKZMOQ (ID: C8D3KebB)
「まっ。とりあえずお前の母さんの特徴教えろろよ。それじゃねーと何処捜していいかも見当付かないしな」
客間と言われて通された部屋に設置されていたソファに向かい合って座る。少し不思議な感じがするのは気にしない事にした。
アレックスはなぜかニコニコしている。自分自身はアレックスの姉に渡されたタオルを首にかけている。濡れた髪を乾かすのに使ったため、もう少し湿り気を帯びているが……。
「本当にさ、力貸してくれるんだよね……?」
「だーかーらー……。さっきからそう言ってるだろ? お前の力になるって」
半ば呆れ気味に言葉を連ねるアレックスをはじめて不良みたい、と思った。同時に恐怖を感じもした。それでも、頼ることができるのはアレックスしかいないという現状が確かにあった。
「そ、それじゃ……僕の母さんのこと教えるから」
静まった部屋に二人の呼吸音だけが小さく響く。話を消したのは自分だ、とは分かっているものの勇気がなく中々口を開くことができない。少し口が開いても声がのどの辺りでつまり声も出ない。
沈黙のまま約数分が過ぎた頃、尊がゆっくりと口を開いた。そして震える声で言葉をつむいだ。
自分の母親と自分のことから、今までのことも全てアレックスに伝えた。