複雑・ファジー小説
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- 俺の妹はサイコキラー(最終話)
- 日時: 2013/02/17 15:10
- 名前: 阿厳 (ID: imuS2CMi)
俺の妹はサイコキラーだ。
比喩でもなんでもなく、正真正銘の。
俺、佐上武人(さがみたけひと)の妹、佐上愛理(さがみあいり)
はごく日常的に人を殺している。
最初の殺人は幼稚園の年少から、それから小学校五年の現在に至る
まで、かなりの人数を殺してきた。
・・・・・・数えるのをやめたのは、いつだっただろうか
「おにーちゃん!早くコレ、袋につめてっ」
そして今もわが妹の手にかかった哀れな人間が、俺の目の前で
解体されている。
「ああ・・・・・」
俺は充満する血の臭いにむせ返りそうになりながら。妹の差し出す
人間の腕を受け取る。
今回妹が殺したのは、名も知らぬ老人。
妹が何を、どうして、何を思ってこの老人を殺したのか
俺は知らない。
俺は何時もどおりに。ケータイで呼び出され、妹の死体処理を
手伝っているに過ぎないのだから。
「人間は唯一、考えることを許された動物だ、そして考え、さらに
行動に移すこともできる。それは、人間のもちうるオリジナリティ
だ。そして殺人もまた人間の持ちうるオリジナリティの一つである」
これは、バットエンドにしかつながらない物語だ。
俺、佐上武人が妹に翻弄され、弄ばれ、「最悪の選択」
をするまでに追い込まれる・・・・・・。
おそらくこの文章を読んでいる方々には決して後味のいい文
にはならない。
それでもいいというのなら、この先に進むといい。
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- Re: 俺の妹はサイコキラー ( No.6 )
- 日時: 2013/01/31 19:25
- 名前: 阿厳 (ID: oWbfUqQX)
俺は今夢を見ている。
俺は崖っぷちに立っていて、見れば切り立った岩が突き出ている。
当然落ちたら即死だ。
前を向けば今まで妹が殺してきた人間がたくさん、本当にたくさん立っている。
そして、迫ってくる。
じりじりと俺は崖へ追い詰められて、そして耐えられなくなって。
落ちる。
落ちてゆく。
そして突き出ている岩のうちひときわ鋭そうな岩が眼前に迫ってーーーーーーーーーーーーー。
「・・・・・・・・・・・・・・っ」
眼が覚める。
夢だと認識したと同時に安堵が押し寄せ、涙腺が緩み涙が出てくる。
「っく・・・・・・・あ」
よかった。生きてて良かった
俺はまだ生きていれば、愛理の役に立てる
目をつぶり、もう一度睡眠活動に入ろうと試みる。
幸いそれほど脳は覚醒していなかったので、すぐにまどろみの波が押し寄せてきた。
俺は願った。
これ以上無いほどに。
「(俺のことはどんなに恨んでもいい。どんなに憎んでもいい。」)
殺してくれたってかまわない。
だからーーーーーーーーー。
「(愛理だけはーーーーーーーーーーーー。)」
ゆっくりと俺は眠りにおちてゆく。
いつも差し込んでくる日の光は今日はない。どうやら曇りのようだ。
朝のニュースの音声が妙に無機質に聞こえる朝、俺はいつもどうりに
家族で食卓を囲んでいた。
『それでは次のニュースです。昨夜未明、○○県××市郊外の廃工場で
身元不明のバラバラ死体が発見された件についてーーーーーーーー』
どクン
心臓が脈打つ。
震える、腕が、体が、俺そのものが。
歯ががちがちなって付け根があわない。
母と愛理の会話が妙に遠く聞こえる。
『落ち着け・・・・・・!』
駄目だここで変な素振りを見せたらバレる。
震える腕の手首をつかみ、震えを抑える。
愛理はなんの変哲もない顔をして母と「怖いよねー」何ていっていた。
「愛理、そろそろ学校行くぞ」
「うん」
通学路ーーーーーーーー。
「愛理」
「うん、大変なことになったね」
どうやら妹なりにこの事態を深刻に捉えていてくれていたようだ
「これから、どうする?」
「とりあえず下手に動いたら逆にばれちゃうね。でもねお兄ちゃん
私面白いこと思いついちゃったんだ」
そうこう話しているうちに、いつもの合流&分岐地点にたどりついた。
明滅する信号、スピード違反じゃねーのかと思うような速さで走り去る車、ベンチに腰掛け音楽を聞く若者(俺もだけど)・・・・・・。
「おい愛理、面白いことって何・・・・・・っておい!」
愛理に先ほどの意味深な言葉の意味を問いただそうとしたら、何とびっくりベンチに腰掛けている若者のほうにむかっていくではないか。
「 」
「 」
・・・・・・・・・ここまでは聞こえないけどなんか親しげに話してるな。
少し面白くない心境で見守っていると・・・・・・。
妹が、その若者の喉笛をバタフライナイフで掻っ切った。
「・・・・・・・・・・・!!」
若者は困惑と驚愕に彩られた顔のままうつむく。
声はすでに出ないだろう。もう声帯は真っ二つになってしまっているから。
足掻こうとも足掻けないだろう。すでに命の行く先は決まっているのだから。
若者は喉を押さえうつむいたまま、やがて動かなくなった。
愛理は俺のところに戻ってきて、言った。
「私の思いついた面白いことはね・・・・・・・・」
まるで演説のように、誇るべきことのように。言った。
「宣戦布告、だよ」
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- Re: 俺の妹はサイコキラー ( No.7 )
- 日時: 2013/02/01 19:18
- 名前: 阿厳 (ID: oWbfUqQX)
「宣戦・・・・・布告・・・・・?」
俺がオウム返しにそう聞くと、愛理は自慢げにうなずいた。
「そ、宣戦布告」
「・・・・・・・・・何に?」
「決まってるでしょ、『警察』に」
は?
「・・・・・・・・クワシクオキカセネガエマセンカ」
「いいけど、おにいちゃん今日学校休める?」
多分大丈夫だとは思うけど・・・・・・サボれってことだろうか。
「うん」
心読むなや。
「・・・・・・・・じゃあ、愛理の学校には俺が連絡しとくよ」
別に親以外が連絡しちゃいけないというルールは無いはずだし。
「はい、はい分かりました。本人に伝えておきます。はい、それでは・・・・・」
俺は携帯を閉じ、愛理に言った。
「お大事にだって」
「大丈夫だよ、お兄ちゃんが大事にしてくれてるから」
なんて恥ずかしいことを・・・・・・(否定はしない)
「ところでお兄ちゃん、ここら辺ってネットカフェあったっけ?」
「確か駅前にあった」
「んじゃ。そこ行こう」
・・・・・・・・・・・・何するつもりなんだろう。
さっきから一心不乱にキーボードをたたき続けている妹を見ながら
そう思った。
「ねえお兄ちゃん。お兄ちゃんってメアドの編集って自分でやってる?」
「あ?いや普通に買ったときそのまんまだけど」
「だよね。多分大多数の人間がそうだと思う。携帯のメアドって携帯そのものが作られたときにランダムにアルファベットを組み合わせて作られるから、パソコンでメールを打つときに@マークと携帯会社の名前を組み合わせて適当に打つとたまーに送れちゃうんだよね」
携帯会社・・・・・ソ○トバンクとか、ド○モとかか。
「で、お前はそれをやろうってわけか」
「鋭いね、でそこにこのファイルを添付するんだよ」
愛理が言っていたファイルを見ると、そこには「動画ファイル」と記されていた。
「何の動画なんだ」
「ちゃんとお兄ちゃんのメアドも打ってあるから」
「なるほどいずれ見られるってわけか」
「そういうこと」
それからしばらく愛理はキーボードを叩いていたが、やがて。
「ふう・・・・・」
と息をついた。
「おわったのか?」
「うん。それじゃ送るから」
そしてバイブレーターの振動音が響き、俺は携帯を開く。
そして動画ファイルにカーソルを合わせ、センターキーを押した。
そこにはーーーーーーーーー。
警視庁は混乱していた。
会議に当たっていた捜査一課の携帯が一斉に震えだしたのだ。
もちろん多橋の携帯も例外ではなく、携帯を開くと「動画ファイル」
とだけ映されている。
どうやら話を聞く限りでは他の者にも同様のファイルが添付されているようだ。
多橋は例によっていやな予感をひしひしと感じながらファイルをひらいた。
そこにはーーーーーーーーーーーー。
「みなさんコんにちワ」
真っ暗な画面の中、ボイスチェンジャーを噛ませているのであろう無機質な機戒音が日本全土に響く。
「ワたしの名は『i』。異常殺人者(サイコキラー)でス」
機戒音は語る。
さあ、狂宴の始まりだ。
イッツ・ショータイム
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- Re: 俺の妹はサイコキラー ( No.8 )
- 日時: 2013/02/01 19:28
- 名前: 阿厳 (ID: oWbfUqQX)
さて、今回は色々なものが動きだす編です。
愛理の宣戦布告が始まって、次回からは警察と主人公たちがクロスオーバーします。
正直書いてる自分もこの先どうなるか分かりません(汗)
ですがここまで来たからには最後まで走り抜けたいと思います
これからもぜひぜひ応援してくださると幸いです
でわ(^o^)
- Re: 俺の妹はサイコキラー ( No.9 )
- 日時: 2013/02/02 20:58
- 名前: ゆぅ (ID: hAtlip/J)
はじめまして(^-^)/
ゆぅと申します@
お話、詠ませて頂きました!!
時間の関係上、最初の方を詠んだらパソコンを閉じようと思いながら読みはじめたのですが、気になってしまって結局最後まで一気読みしてしまいました。
もう何か引き込まれるというか…
言葉にはできない素晴らしさです!!
私は同じ複雑ファジーでミステリー小説(警察もの)を書かせて頂いているのですが、私の登場人物の刑事たちと兄妹をめっちゃ勝負させたくなりました@
是非謎を解き明かしたいですね@笑
暇な時にでも遊びに下さい(^-^)/
また詠ませて頂きます!!
でゎ、失礼致します。
- Re: 俺の妹はサイコキラー ( No.10 )
- 日時: 2013/02/05 19:06
- 名前: 阿厳 (ID: oWbfUqQX)
「コノ動画を見ていル皆様はいったい何事だトお思いデショウ」
真っ暗な画面の中、無機質な機戒音が響いているだけなのに、薄ら寒い
恐怖を感じる。
「さっきも言いまシタネ?私は異常殺人者(サイコキラー)ダト。つまりは人を殺すこと、『そのもの』が趣味、ないしは人生ノ一部と化しているノデス」
「さて、本題ニ入りマスガ・・・・・・、現在、世間を騒がせているバラバラ殺人、○○県××市で起きた事件。あれは、私の犯行デス」
「さらに、私はコレマデの人生で数え切れないホドの人間をコロシテイマス」
「みつけラレルモノならミツケテミロ。まあ愚鈍な警察諸君にみつけラレルかどうかはほとほと疑問ですガ・・・・・・」
「そして、日本の全国民ヨ、自分は殺されないト思ってるダロウ?『自分だけ』は決してヤラレナイと・・・・・」
「ソンなコトハない、私はイツデモ・・・・・・・」
「『ウシロニイルゾ?』」
「・・・・・・・・・・・・・」
愛理が作ったのであろう動画をすべて見終わった後、俺はとてつもない恐怖、それと一抹の誇らしさを感じていた。
愛理が送ったメールは驚いたことにかなりの人数に届いたらしく、俺の携帯がバイブレーションを発した途端に、ネットカフェ内でもあちこちに音が鳴り響いていた。
「すごいな・・・・・!」
「でしょ?」
誇らしげに胸を張る妹はやっぱりよだれが出るほど可愛かった。
ああ畜生、抱きしめてぇ。
だが落ち着けよ俺!ここは人がいっぱいいる!抱きしめるのなら家に帰って、『二人っきり』の時に『思いっきり』抱きしめてやればいいだけのこと!
「うぇへへへへへっへへへ・・・・・・・!」
「ねえ、お兄ちゃん?さっきから瞳が妖しい光を放ってるんだけど?」
「大丈夫だ問題ない」
「そ、そう?そのうち本当に『お巡りさんこの人です』って言われそうだよ・・・・?」
フフフ、さっきから喧嘩を売るようなことばっか言ってるけどそんなにお兄ちゃんからのお仕置きがほしいのかな?
警視庁捜査一課
「『愚鈍な警察諸君』って・・・・酒鬼薔薇かよ・・・・・」
謎のメールに添付されていた動画を見終わった多橋は、苦虫を百匹どころか千匹噛み潰したような顔をした。
多橋だけではない。今や会議室にいた捜査一課の面々全員がおなじような顔をしている。
「ただのいたずらと思いたいですけど・・・・これは・・・・」
「少なくとも「ただのイタズラ」じゃねえわな」
茜と浅田が口をそろえてただ事ではない、と見解を口にする。
「大丈夫だよ、もうすぐ通信科から逆探知の検査報告があるから」
そうだ。逆探知で位置が特定されればこの「犯人」を名乗る人物の居場所もわかる。
しばらく待っていると、会議室のドアが開きいかにも几帳面そうな男が
入ってきた。
「えー、現在のメールの発信元を逆探知したところ、××市内のネットカフェということが分かりました・・・・・」
ネットカフェと聞いた途端、会議室内が騒然となる。
ネットカフェから犯人を特定するのは、思いのほか難しい。
パソコンの数が多い上に、どのパソコンも不特定多数の人間が使っているからだ。
「この検査結果から上層部で考察した結果、捜査一課全体で個別にチームを組み、個々で捜査にあたることを・・・・」
「茜ちゃん、捜査いくよ」
「えっ、まだ話の途中ですよ?」
「時は金なり、時間は待ってくれないよ」
多橋は一息にそう言うと会議室を早足で出ていった。
「あっ・・!ちょっと待ってくださいよ多橋警部!」
無論、茜もセットだ。
その後の会議室にはぽかんとした顔の捜査一課の面々だけが残された。
結局、メールを送った後も、時間が余ってしまったので、そのあとも
いろいろなウェブサイトなどを愛理と一緒に見て回っていた。
ネットカフェを出たころにはもうすでに日が沈みかけていた。
(俺の個人的財政も沈みかけていた)
「早く家帰ってお兄ちゃんと一緒にお風呂はいりたいなー」
「いや駄目だからね何いってんの君」
「えーなんでー」
「なんでも!」
もうものすごく危険だから!多分襲っちゃうから!とは言えない。
「あの・・・」
不意に後ろから声をかけられた。
む、外とは言えさすがに騒ぎすぎたか?
そう思いつつ
「すいませ・・・・・・」
振り向いた瞬間に、声をかけてきた男の持っている物に全意識をもってかれる。
ーーーーーーーー警察手帳
そう、男の持っていたものは桜の大門が刻まれたまごうことなき警察手帳だった。
呆然としている俺の内心など露知らず、男は続けて言葉をつむいだ。
「僕は警視庁捜査一課の多橋春臣。・・・・・・ちょっと、話を聞いてもいいかな?」
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