複雑・ファジー小説

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紫電スパイダー(旧版)
日時: 2022/04/29 19:14
名前: Viridis ◆8Wa6OGPmD2 (ID: Jhl2FH6g)
参照: http://www.kakiko.info/bbs2a/index.cgi?mode=view&no=313

*



『篝火』と呼ばれる異能の力が、ひっそりと息衝く世界。
陽が当たらぬ裏の世界では、日夜この国の実権を懸けた争いが行われている。

そんな強者犇めく宵闇に、ひとりの少年が舞い降りた。
少年の名前は『藤堂紫苑(トウドウシオン)』。
——のちに裏社会で最強と呼ばれ、君臨する男である。

無頼と死闘に明け暮れ、骨肉削る争いの日々に、彼と出会う人々は何を想うのか?
2010年夏金賞受賞、小説カキコのバトルファンタジー群像劇——ここに再始動。



※この作品には流血やグロ等R-15に相当する描写が含まれています。

□Introduction(挨拶)>>2
■Entry(オリキャラ募集) 上記URLから
□The main story(本編)

#1 『狒々』のイワシロ【VS Saiki Iwashiro】 >>1 >>3 >>4>>10
#2 『爆弾チンピラ』カズマ【VS Kazuma Kouga】 >>5 >>8 >>9>>11
#3 『拷問婦警』ユイイツ【VS Yuitsu Usagiri】 >>16 >>17 >>20 >>23(>>27)
#4 『It's a small world』ガイスケ【VS Gaisuke Toudou】>>26 >>30 >>32 >>33

■Twitter(面識ある方のみ) @viridis_fluvius

Re: 紫電スパイダー ( No.31 )
日時: 2016/03/18 16:45
名前: Viridis ◆8Wa6OGPmD2 (ID: /qKJNsUt)

>>28 モンブラン博士さん→
なんかすっげうさん臭さ出せていたらいいなと思います。
ガイスケはまあうん……がんばれ!

>>29 弟者→
そのネタすっげ懐かしくて思い出すまでちょっとかかった。

そんなワケで久々の更新になりますが、これからもよろしくお願いします。

Re: 紫電スパイダー ( No.32 )
日時: 2016/03/19 20:47
名前: Viridis ◆8Wa6OGPmD2 (ID: /qKJNsUt)





 たとえ世界を滅ぼす力を手に入れたからといって、それと食っていけるかどうかは別の問題である。
 農家が田んぼに苗を植え、実りの秋が来れば稲を収穫し、脱穀した米が袋詰めにされ、某と名付けられたブランド米がお近くの店頭にて並び、カネを払って米を買い、米を洗う、炊飯器にブチ込んでスイッチをポチっとな、待つこと約30分、今あなたの目の前でいかにもおいしそうな湯気を立てているお茶碗一杯のご飯ですらも、これだけの人生……否、米生を歩んでいるのだ。そしてたったこれだけの行程に、農家の人、運送業者の人、米屋もしくはスーパーの店員さん、炊飯器を開発する人、炊飯器を作る工場の人、炊飯器を売る人、そしてお母さんと実に大勢の人が関わっているのだ。
 つまり何が言いたいかって、ヒトは誰しもが誰かの支えを受けて生きている。ヒトが社会的動物という形態をとっている以上、無人島で0円生活でもするか某疾走島を開拓するかしない限りはこのルールからは逃れられないんじゃないかな。
 目黒エンを名乗る怪しげな男から貰った力を振るうのに、裏社会の用心棒という職業は非常に好都合であった。相手をうっかりブッ殺しても文句は言われない。謝礼も割が良い。力なき者は淘汰される世界——翻っていえば、力ある者には誰も逆らえない。見るからに自分よりも屈強そうな男たちが、雁首揃えて自分に平伏するのは独特の快楽がある。
 ガイスケ自らが『頂の星(アブソリュート・ワン)』と名付けたこの篝火で屠った人間は、1年でとうに3桁を超えていた。うだつの上がらないサラリーマンだったひとりの青年は、今や裏社会の残虐な超大型ルーキーとして名を馳せている。
 だからこそ、気に食わない事があった。まずひとつめに「それでも裏社会の頂点と呼ばれている男は他に居る」ということ、もうひとつが「自分と同じく、超大型ルーキーが他にも複数いる」ということだ。
 今や無二の篝火を手に入れたガイスケにとって、前者はいずれ仕留めるにしても後者は甚だしく不快なことであった。今や激しく膨れ上がった自尊心は、誰かと同列に扱われることさえ嫌悪している。
 なのでそのひとりと相対する機会を得たガイスケは、凶悪に牙を剥いて笑んだ。
 彼の名は藤堂シオンと言うらしい。苗字の読みが同じことすら、ガイスケには少し不快だった。これまで殺してきた屈強な男たちとは打って変わって、中肉中背の——むしろ、華奢とすら言える体躯の少年。場違いですらあった。どうせ少しばかり強い篝火で調子に乗ってここまで来ただけの、ただのガキだろう。そんな見当をつける。
 それよりも気にかかったのは、シオン以外に相手側の人間が見当たらないこと。強めの風が吹く夜の屋上には、自分と自分の雇い主、そしてシオン以外の人影は無い。篝火使い同士の決闘は、その雇い主も立会人として同席するのが常だ。どうやら自分の雇い主も不審に思ったようで、怪訝な表情である。

「安心しなよ。俺が藤堂シオンだ」

 よく通りながらも、恐ろしく落ち着いた、まるで温度のない声だった。

「……そっちの立会人は?」
「要らないらしい」

 言葉の意図が分からず、ガイスケが眉根をひそめる。それと見て取ったシオンが言葉を継ぐ。

「俺がアンタに負けるワケがないから、見届ける意味がないってさ」

 はっきりと、血管の切れる音がした。
 ガイスケの全身から、迸る白いオーラのようなものが立ち上る。大気が震えて、足元が揺れる。バチバチと稲妻のような閃光が弾けて消える。目には見えない莫大な力が、烈風のように流れてゆく。
 篝火(イグニス)とは詰まる所、雷子(スプライト)を操ることで発生する異能の総称である。

「——クソみてぇに」

 大量の雷子は他の物質にすら干渉し、それよりも密度の薄い雷子を——つまり他の、弱い篝火を消し飛ばす。
 そしてガイスケの篝火『頂の星』とはまさしく、圧倒的で膨大な雷子をそのまま振るうというものだ。端的に言えば最強の盾であり矛であった。
 振りかざした右腕に、純白の強烈な光が集まる。あまりのエネルギーに周囲の空間さえもが歪んで見えた。腹の底から震わすような低い音が響く。

「クソみてぇにグチャグチャになって無様に死ね! クソガキ!!」

 まるで特大の落雷だった。
 ガイスケが腕を振り下ろすと同時。ビルが屋上から真っ二つに割れる。山がひとつ転がりまわったような轟音。大地は深くから砕かれめくりあげられる。空の上に居る神様が、塔ごと巨大な指先で地面を掬い上げたような——そんな規格外の一撃が、辺りを蹂躙した。

Re: 紫電スパイダー ( No.33 )
日時: 2016/03/20 21:10
名前: Viridis ◆8Wa6OGPmD2 (ID: /qKJNsUt)





 篝火使い同士の戦闘で、廃墟が主に好まれるのは、とどのつまりそういう理由だ。
 篝火の規模はピンからキリまでといえど、少なくとも周りにもたらす被害は尋常なものではない。陰陽寮や警察の連中にしょっ引かれたら困るという理由で、たいていの場合はなるべく相手を倒すに必要以上の被害は出さない、というのが暗黙の了解となっている。
 しかし今や圧倒的な篝火使いになったガイスケは指図されるのが大嫌い。しかも怒りの沸点が低く感情的に輪をかけた彼が、この状況下で手加減しないハズもなかった。
 現に先ほどまでちょっとした廃ビルがあったその場所は、既に立派なガレキの山である。ガイスケ自身は超濃度の雷子で全身を包み、また雇い主も同じように保護していたため、どこにもケガは無い。
 雷子は熱や光と同じように、それ自体がエネルギーを持つ。あれほど超密度の雷子の塊を叩き付けたのだ、シオンは死体どころか蒸発して無くなっていても不思議ではない。
 だから瓦礫の中に平然とした様子で立っているその少年を見た時は、少しばかり驚いた。
 運よく直撃を免れたのだろうか。
 だが二度目は無い。先ほどよりは小規模な、しかしこの距離からでも人を薙ぐには充分な雷子の鞭を生成。そして打ち付ける。しかしシオンは避ける。打ち付ける。避ける。鞭という軌道の予測が難しい連撃を事も無げに避けられる。更に苛立ちを募らせる。
 ——同時に一片の暗雲が立ち込めていた。

「仮面を着けないんだな」

 先ほどと全く変わらない声色で、シオンが問い掛けた。

「仮面? ははっ、何で僕が仮面なんて着けなきゃいけないのさ」

 ガイスケはこれまで、数々の相手を無傷で圧倒してきた。それは、自分を捕らえようと刃向って来た警察の特殊捜査班や陰陽寮の刺客ですらも例外ではない。そして知ったのは、圧倒的な力さえあれば何かにおびえる必要すらもないということ。誰かの糾弾も、誰かの排斥も、誰かに差し向けられる負の感情ですらも、力で全てを正当化できる。ねじ伏せられる。たとえ自分がどんな人間であろうが、圧倒的な力は全てを正当化してくれる。

「力だ! 圧倒的な力さえあれば誰もが僕に害を成さない!」

 反撃の合間を縫って、ついにシオンが自らの篝火を——紫色の電光を放った。

「コソコソと隠れて生きるのは——弱いヤツらだけでやってりゃいいじゃないか!!」

 しかし紫電は、ガイスケの手によってまるで羽虫でも落とすかの如く払われる。
 それから直後、幾つもの白い光条が伸びた。そのうちのひとつがシオンの右肩を掠める。半歩下がって距離を取るシオンと、してやったりと口端を歪めるガイスケ。まるでゲームのようだと一瞬ふとそんな考えが頭を過ぎり——。

 ——はたと思い返る。はて、今まで自分はこの程度で喜んだことがあったか?

 ざわめく何かを振り切るように、更に連撃を繰り出す。白い光の球体を無数に繰り出し、それをシオンめがけて一挙に放つ。そう、これはただの一方的なゲームだ。なぜなら相手の攻撃が届くことは絶対にない。近寄って殴るか蹴ろうかしようものなら、圧縮された雷子の鎧がその肌から骨まで溶かす。鋼の刃や鉛玉すら通さない。だから、こちらが相手を何手で詰めるか、ただそれだけのゲーム。

「あと何手打てば詰められるんだろうなって?」

 思考駆け巡る脳内に、冷や水のような言葉が差し込んだ。
 我に返ってシオンを見れば、彼は仮面を外して嘲笑を浮かべていた。

「——お前に出来るワケないじゃん」

 そして鼻で笑われたのは、一体いつ以来だろう。
 激昂で正面が真っ赤に染まる。いつぞや上司を殺した日と重なる。

「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね! 死ね! このクソガキ! ナメてんじゃねえぞあぁあああああああああああああああああ!!」」

 最初の一撃よりも毒々しく、激しい輝きだった。ガイスケの右手に、目も眩むような雷子が集約してゆく。ガイスケから烈風が吹き荒んで、砂埃が撒き上がる。瓦礫の山を崩すほどの揺れが走り、頭が割れそうな高音も鳴っている。一度放たれれば避けきれるかどうかなどというレベルの話ではないだろう。今度は瓦礫どころか、周囲一帯が蒸発して消える。自らの雇い主のことなどは、もう頭の隅から飛んでいた。
 ただ目の前のシオンを殺す。
 その一念を具現したような一撃が放たれ、何もかもが消え去る直前。

「——『システムダウン』」

 シオンが指を鳴らすと同時に、消えた。
 ただし辺り一帯がではなく、ガイスケの手に集まっていた雷子が、だ。

「は」

 今度は目の前が真っ白になった。
 そして思考を取り戻す前に、鋭い蹴りが横っ面を深々と突き刺した。一気に駆け寄ったシオンの蹴りだ。都合2メートルほどブッ飛んだガイスケは、久しく味わっていなかった痛みの衝撃にとうとう混乱を極める。
 呆然とする視界に、自分を見下ろすシオンが入り込む。

「圧倒的な力を持つ自分に仮面は必要ない、ね」

 今度のシオンは嘲笑も浮かべず、ただ鋭い眼光でガイスケを射抜いていた。

「——じゃあその圧倒的な力を取り除いたら、アンタはいったい何なんだろうな?」

Re: 紫電スパイダー ( No.35 )
日時: 2016/11/03 16:56
名前: ・ス・ス・ス・ス・スフゑソス・ス・ス (ID: 9Zr8.vma)

ずっとまってるよ

Re: 紫電スパイダー ( No.36 )
日時: 2019/01/14 09:47
名前: マ,・4 (ID: ms4vV0xW)

まだ?


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