複雑・ファジー小説

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覚醒者<アウェイカー>
日時: 2015/11/18 10:05
名前: 凜太郎 (ID: 1Fvr9aUF)

人には魔人の力が宿っているということが発覚し、それは世界に流れを作った。
魔人の力は、全ての人に宿っているが、ほとんどの人間は覚醒せぬままその生涯を終える。
稀に現れる覚醒者を、人は口を揃えてこう呼ぶのだ。
アウェイカー
≪覚醒者≫、と。
−−−
初めましてか何度目まして、凜太郎といいます。
本日から書いていくのは、寝る前の妄想が地味に面白かったので試しに小説化してみようという謎の試みから始まったものです。
廚2病っぽい内容です。
それでは、よろしくお願いします。

Re: 覚醒者<アウェイカー> ( No.21 )
日時: 2015/12/05 21:18
名前: 凜太郎 (ID: 1Fvr9aUF)

 さて、みなさんのクラスにも何人かはいるのではないでしょうか。
 妙に知名度が高い人とか、変な人。
 僕のクラスにもいますよ?そういう人。
 まず、目の前で見ていて恥ずかしくなるようないちゃいちゃを繰り広げている大村 澪と香川 皆人。
 僕の隣で読書を続ける北山 春太。
 真後ろの席では他の女子と人気のアイドルの話で盛り上がっている斉木 彩。
 ななめ後ろの、今は誰も座っていない席は藤井 太我。
 そしてこの僕、宇治村 修。
 この6人班はクラスの中でカオス班と呼ばれている。
 まず、目の前のいちゃいちゃカップルのことは分かる。今でもキスをされていい迷惑だ。
 次に北山君。彼は、この学校では珍しい《覚醒者》である。しかも顔も良く、なんでもできるため、女子からはかなりモテる。
 そして斉木さん。彼女はビッチらしく、いつも一緒にいる彼氏が代わっているという。美少女なので、モテるのは納得だ。
 そして藤井君。彼は一言で言えば不良だ。今もサボりだろう。
 そんな中で僕は平凡。凡人。特筆するべきことは何もない。
 そう、文字通りカオスだ。
 個性豊かすぎてクラスメイトからは生暖かい目でいつも見られている。

「なんでこうなるかなぁ・・・」
「いやいや、こういう経験もある意味ないもんだぜ?」

 そう言って笑うのは僕の友人の遠藤 和人だった。
 彼は日に焼けた顔で笑顔を浮かべながら続けた。

「それに、不良といいつつも藤井は別に喧嘩しまくってるわけじゃねえし、北山は見た感じ普通に良いヤツじゃねえか。斉木だって面白いし、バカップルのやつらは迷惑かもしれねえけど」
「そうだけどさ、やっぱり視線を感じちゃうよ」

 僕が溜め息混じりに言うと、和人は僕の背中をバシバシと叩いた。
 その時、ちょうど子猫が道路を横切ろうとしているのが見えた。
 少し先から、トラックが見える。

「あぶなッ・・・」

 僕が叫ぶよりも先に、僕を追い越していく姿があった。
 それは北山君だった。
 彼はトラックの前まで躍り出た。
 子猫を攫っていくのかと思いきや、右手を突き出したのだ。
 何をする気かと思っていた数瞬後、トラックは彼の片手であっさり止まってしまった。
 僕も和人もポカーンとするしかなかった。

「すごいな、《覚醒者》って・・・」
「・・・・・・そうだね」

 北山君は僕たちに気付くと、少しだけ驚いた顔を浮かべた。
 しかし、特に気にせず、その場を立ち去ってしまった。
 僕たちは、しばらくその場に立ち尽くしていた。

Re: 覚醒者<アウェイカー> ( No.22 )
日時: 2015/12/06 17:23
名前: 凜太郎 (ID: 1Fvr9aUF)

 僕の人生から、輝きが消えた。
 色も、何もない、白黒の人生。
 ただただ毎日という名の日々を消費していくだけの日常。

『大好き』

 あの日から、僕の時間は止まったまま・・・——————————。

−−−

「昨日のテレビ観た?」「この前買った服がさぁ」「この前モールでね」「マジ面白い」「王様だーれだ」「あれすぐに壊れちゃってさ」「アイドルの○○君に出会っちゃってさ」「俺はそう思わないけど」「じゃあ1番が5番に」

 音の洪水が、今日も僕の耳を襲う。
 僕は人を避けながら、なんとか自分の席に辿り着く。
 鞄の中身を引き出しにいれたりしながら、今日の予定を改めて思い浮かべる。
 今日はたしか、体育があったな。今日からソフトボールだったはずだ。
 あとは特に何もなかったよな。よし、それじゃあ放課後はゲーセンで遊ぼう。

「き、北山君。おはよう」

 そんな中で挨拶をしてきたのは、隣の席の宇治村 修だった。
 普段は挨拶をするほどの仲ではないが、きまぐれだろうか。

「ん・・・おはよう」

 適当に返事をしておく。
 今日はまだ前の席の迷惑バカップルは来ていないので、安心して読書に没頭できる。

「皆人〜。なんで昨日ライン返してくれなかったの〜?」
「ごめん、寝てた。その代り、今日は一緒に喫茶店に行こうか」
「本当?ありがとう〜。大好きだよ〜」
「あはは、相変わらず可愛いやつだな」

 出たよ、バカップル。
 クラスの大半がそう思っただろう。
 2人は恋人繋ぎをしながら登校し、そのまま席でいちゃいちゃを続行する。
 そして香川 皆人の膝に大村 澪が乗り、それはそれは濃厚な接吻を交わすのだ。
 僕は自分の目が汚れないうちにと本を取り出し、改めて読書に没頭する。
 その時、乱暴にドアが開いた。
 見ると、それは僕の後ろの席で不良の藤井 太我だ。
 茶色に染めた髪に無数のピアス。鋭い眼光、パンツが見えそうなほどに下げたズボン。
 彼はクラスメイトを睨みつけながら僕の後ろの席に座る。
 参ったな、僕の平和な日常が崩されそうだ。
 
−−−

 今日も授業が終わった。
 僕は鞄の中に持って帰るものを入れ、いの一番に下校。
 先に公園のトイレに行き、着替える。
 赤いパーカーに黒いズボン。制服の下に着ておいた白地にポップな英語がプリントされたTシャツ。
 ワックスで髪を逆立て、だて眼鏡を外す。
 今の僕を見ても、誰も僕だとは気付かないだろう。
 鞄からリュックを取り出し、広げる。
 そして学校の鞄を詰め込み、トイレから出る。
 僕はそのまま、ゲーセンに向かった。

Re: 覚醒者<アウェイカー> ( No.23 )
日時: 2015/12/07 17:48
名前: 凜太郎 (ID: 1Fvr9aUF)

 ゲームセンターは、いつものように高校生や大人などで賑わっていた。
 僕はそれをかわしながら面白そうなゲーム機を探す。

「見ろよ、あれ。赤パーカーの男だろ?」
「え、もしかして噂の?ランキング形式のゲームで、すべてのハイスコアを塗り替えているっていう」
「あぁ。俺本物初めて見たかも」

 よしてくれ。僕は目立ちたくないんだ。
 とはいえ、声を聴かれるのも嫌なので、早々にその場を立ち去る。
 ただゲームを楽しんだだけでわけわからない噂を流され、有名人になってしまった。
 見ただけで騒がれては、堪ったもんじゃない。
 僕は手近にあったシューティングゲームに百円を入れて、拳銃のようなものを手に取る。
 そして目の前に出てきた敵を一匹ずつ撃ち落としていく。
 すぐにそのスコアはランキングの一番上に出る。
 名前は適当に『aaaa』で。

「おい」

 その時、背後から声をかけられた。
 振り向くと、それは同級生の藤井 太我だった。

「お前が赤パーカーか」
「・・・・・・なにか用?」

 いつもよりも声を低めにして問う。
 サングラスもかけてることだし(来る時に百均で買った)バレることはないだろうが・・・。

「俺さぁ、ついこの間までゲーセンの神って呼ばれてたんだよ。ハイスコア叩き出したりしてさ。でもよぉ、お前にやられちまって知名度はダダ下がりだよ」

 幼稚だな、と思った。
 しかし、言わない。声は極力聴かれたくなかったからだ。

「それでな?俺と戦ってくれないかな?」

 僕は頷いてみせた。
 そして、戦いの火蓋が切って落とされた。

 ———閑話休題。

「なッ・・・」

 結果は僕の勝利。
 彼も上手かったが、僕よりは下手だったというだけの話だ。
 僕は会釈だけしてその場を立ち去った。

 まぁ、これが僕の日常です。

Re: 覚醒者<アウェイカー> ( No.24 )
日時: 2015/12/22 09:09
名前: 凜太郎 (ID: 6kBwDVDs)

「昨日、俺赤パーカーの男初めて見ちゃった!」
「え、あの噂の?すごいじゃん!」

 昨日、このクラスの藤井 太我を倒してから、クラスメイトの話題はなぜか僕、というより赤パーカー男の話で持ちっきりだ。
 正直、自分の話をこんなにされるのは気持ち悪いが・・・。
 しかも、姿をばらすわけにはいかないのでやめろとも言えない。
 なので開いてある本に集中するのだが、これまたどうして、さっきから情景が浮かんでこないのだ。
 いつもなら文章を目にするだけで勝手に情景が浮かび、集中できるのだが。
 イライラしてるのか、僕は。

「馬鹿らしい・・・」

 誰にも聞こえない声でそう呟く。
 ホント、馬鹿らしいよ。
 というか、僕らしくない。
 そりゃ、中学2年生の、『あの頃』の僕だったらまだ感情的になる部分も多かっただろう。
 しかし、今は違う。
 昔の僕は捨てたんだ。
 なのに・・・。

「ホント、マジイラつくぜ。あの赤パーカー野郎」

 後ろから声がする。
 藤井 太我だ。
 僕はイメチェンをきっかけに着け始めただて眼鏡の位置を直し、本に集中する。

「フジがゲームで負けるなんてな。俺も驚いた」

 そう同調したのは隣のクラスの男子だ。
 2人は不良仲間なのかな。

「あーあ、このクラスにいたら今すぐボコボコにしてえよ」
「あははっ!同じ学校だったら笑えるよ。フジは《覚醒者》だからね、ワンパンで余裕っしょ」

 その会話を聞きながら、僕は溜め息を吐く。
 さすがに目立ちすぎた。
 今度からはキャラを変えよう。
 もっと平凡なキャラを演じるんだ。
 僕は目立つわけにはいかない。

「はぁ・・・」

 溜め息を吐きながら、窓の外に視線を向ける。
 そこには木の陰から、こちらを見ている黒い服を着た男の姿があった。
 彼は僕のことを監視するスパイだ。
 おそらく、《共有旗》関係かな。
 なんで僕を監視するのかは分からない。
 このクラスには藤井 太我だっているのに、彼の視線は真っ直ぐ僕だけに向いている。
 僕は平凡に暮らしたいだけだ。
 僕は幸せに生きたいだけなんだ。

「もう、放っといてくれよ・・・」

 僕はもう、疲れたんだよ・・・。

Re: 覚醒者<アウェイカー> ( No.25 )
日時: 2016/01/02 20:22
名前: 凜太郎 (ID: 6kBwDVDs)

「今日は転校生が来たぞ」

 先生の言葉に皆が感嘆の声をあげる。
 転校生?興味ないよ。そう思って本に目を向けようとした。

「それじゃあ入れ」
「はい」

 たった2文字の言葉に、僕は自分でも驚くような速度で顔を上げる。
 なんで・・・?なんで、コイツがいるんだ・・・?

「今日からこのクラスの仲間になる七森 真治君だ」
「七森 真治です。今日からよろしくお願いします」
「うわぁ、イケメン〜」「彼女とかいるのかなぁ」「くっそ、美少女じゃねえのかよ」「つまんねー」
「コラ、騒ぐな。七森はそうだな、窓際の一番後ろで」
「分かりました」

 鼓動が速くなる。
 七森 真治・・・。
 僕の幼馴染であり、《共有旗》のリーダー。
 ダメだ、彼を見るとあの情景を思い出してしまう・・・。
 燃え盛る炎、笑う、由梨・・・・・・。

「ッ・・・」

 咄嗟に口を押える。
 吐き気がする。
 いやだ、思い出したくないのにッ!

「それじゃあ今日も元気に明るく安全に過ごすように。以上」
「起立。気を付け。礼。ありがとうございました」
「ありがとうございました」

 僕はチャイムが鳴るのと同時にトイレに行き、朝食をそこに流し込んだ。

−−−

 気分が悪い・・・。
 僕は本の背表紙を見ながら溜め息を吐く。
 なんであいつがこの学校に来るんだよ?
 他にも学校なんていくらでもあるだろ。
 どうしてよりによってここなんだ?

「よ。元気してたか?」
「ん・・・うわぁ!?」

 突然背後にいた真治に驚き、僕は大声を出してしまった。
 くそ、こんなのキャラじゃないのに・・・。

「急にいなくなって心配したんだぞ?お前、狙われやすいんだから」
「狙われやすいって、なんのことだよ?」
「そりゃ、お前の中の魔人はかなり強いからな。欲しがる人は多いんだよ」
「・・・・・・それだけ?」
「え?」
「別に僕。狙われても怖くないし。というか、もう関わらないでよ。僕はただ、平凡に生きたいだけなんだ」
「だからこそ俺が守って・・・」
「小さな親切大きなお世話って言葉知ってるかい?」

 僕はできるだけ感情を込めずに言ってから、彼の胸を強く押す。
 これでいい。これで、いいんだ・・・。


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