複雑・ファジー小説

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覚醒者<アウェイカー>
日時: 2015/11/18 10:05
名前: 凜太郎 (ID: 1Fvr9aUF)

人には魔人の力が宿っているということが発覚し、それは世界に流れを作った。
魔人の力は、全ての人に宿っているが、ほとんどの人間は覚醒せぬままその生涯を終える。
稀に現れる覚醒者を、人は口を揃えてこう呼ぶのだ。
アウェイカー
≪覚醒者≫、と。
−−−
初めましてか何度目まして、凜太郎といいます。
本日から書いていくのは、寝る前の妄想が地味に面白かったので試しに小説化してみようという謎の試みから始まったものです。
廚2病っぽい内容です。
それでは、よろしくお願いします。

Re: 覚醒者<アウェイカー> ( No.11 )
日時: 2015/11/22 11:05
名前: 凜太郎 (ID: 1Fvr9aUF)

「さて・・・」
「いよいよか」
「長かったね」
「あともう少し」

 僕たちは木を見上げる。
 そこには、そこそこ立派なツリーハウスができていた。
 制作期間は2週間と3日。
 ついに、ついに完成だ。
 代表して僕が釘を打つことになった。
 ゆっくりと、釘を板にあてがい、トンカチをぶつけた。

「っしゃぁ!」
「完成!」

 僕たちはハイタッチをしたりして喜んだ。
 さっそく梯子を登って中に入る。
 自分達が作ったとは思えないくらいに立派なものだった。

「いいな、これ」

 僕は呟く。
 これは、いわば僕たちの友情の象徴ともいえるんじゃないだろうか。

「なんかさ、成人式とかの時もここに来て、語り合ったりとかしたいよね」

 思ったことがついそのまま口から零れた。
 直後、みんなの顔が強張った。

「あれ、どうかした?」
「いや、さ・・・春太にしてはまともなこと言ったから、びっくりしちゃって・・・」
「うわ、ヒドッ!」
「そうだよね。大人になっても、おじいちゃんおばあちゃんになっても、ずっと友達でいたいよね」

 琴音の言葉に僕たちは笑い合う。
 そう、僕たちはずっと友達。
 これからも、ずっと。



 そう思っていたのに・・・どうして・・・・・・。

Re: 覚醒者<アウェイカー> ( No.12 )
日時: 2015/11/22 17:26
名前: 凜太郎 (ID: 1Fvr9aUF)

「いよいよ夏休みも終わりか〜」
「なんか、あっという間だったな」

 今日は夏休み最終日。
 僕たちは秘密基地の中で談笑していた。

「来年は中3か〜」
「受験勉強であたふたしてるかもね」
「春太は、勉強とかせずにのんびりしてそうだけどね〜」
「なんでそうなるんだよ」

 僕は笑いながら言う。
 みんなも笑った。
 一体、どれだけの時間を、こんなことを繰り返しただろうか。
 何も変わらず、何も変えようとせず。
 生きてきたこの時間。
 これからも続いてほしいこの時間。

「春太・・・」
「ん?」

 突然名前を呼ばれたので、見ると真治が真剣な面持ちで僕の顔を見つめていた。

「どうしたんだよ?」
「ちょっと、思ったんだけどさ・・・お前は、《反乱鬼》と《共有旗》。どっちに入るんだ?」

 《反乱鬼》と《共有旗》。
 最近有名になってるとある軍だ。
 《覚醒者》を集め、反乱を起こそうとしている《反乱鬼》。
 同じく、共存を望む《共有旗》。
 似ているようで違う目的を持ったこの軍隊に、大体の《覚醒者》が所属していると聞いたことがある。

「僕はそういうの興味ないから。なんとも言えないや」
「じゃあ!さ・・・どっちが正しいと思うの?」

 由梨が微かに興奮したような目をして僕に問いかける。

「どっちが正しいのか、なんて。僕には決められないよ。というか、どうしてそんなこと言うんだよ?」
「・・・それは・・・」
「ねぇ。もう言おうよ。ずっと隠し通すなんてできないよ」

 琴音の言葉に、二人は頷いた。
 え?なんの話?

「今まで黙ってて悪かった・・・。実は、俺は《共有旗》のリーダーなんだ」
「へ?」
「それで、その・・・私、いや、俺は、《反乱鬼》の総帥をしている」

 なんで?どういうこと?

「ねぇ・・・どういうことなの?」
「本当にすまない!」
「謝らないで教えてよッ!」

 つい声を荒げてしまった。
 だって、真治は、由梨は、琴音は・・・え?
 どういうこと?
 僕は・・・僕は・・・。

「頼むから、聞いてくれよ。俺の話を・・・」
「聞いてるよ。さっきからずっと・・・」
「いや、ここは俺が話すよ。春太。俺達も、このことは最近気付いたんだよ」

 そう言って、由梨は語りだす。

Re: 覚醒者<アウェイカー> ( No.13 )
日時: 2015/11/22 17:41
名前: 凜太郎 (ID: 1Fvr9aUF)

「なんで、お前が・・・?由梨、お前は・・・」
「ごめんね。真治と殺し合いたくなんてなかったんだけど」
「俺もだよッ!どうして、どうして・・・」
「分からないの?春太に宿っている《魔人》は、他とは別格だよ?」

 そう言ってクスクスと笑った。
 なんで、なんでお前が敵なんだよ・・・?

「しかし、これも運命なのかもね。どうするの?琴音と春太を保護する?あの二人、混乱しちゃうよ?」
「・・・・・・琴音に隠し事はできない。今度の夏祭りに日に、二人に暴露する」
「俺と真治が敵でしたって?ハッ、残酷だね〜真治は!」
「何がだよ!」
「春太は、友情とかああいう系、結構大事にしてるよね。もし、俺と真治が敵同士でした、なんて言ったらへこむよ」

 たしかに、春太はああ見えて意外と弱い部分があることを俺達は知っている。
 アイツは、もしこのことを知ったらどうなってしまうんだろうか。
 多分、壊れてしまうだろう。

「・・・・・・どうするんだ?」
「隠し通そうよ。琴音にも口裏を合わせてもらってさ」
「春太だけ仲間外れにするようで気が引けるよ」
「じゃあ、全部ばらしちゃう?」
「ッ・・・」
「嫌だよね?それじゃあ、どうすればいいか、分かってるよね?」

Re: 覚醒者<アウェイカー> ( No.14 )
日時: 2015/11/22 20:40
名前: 凜太郎 (ID: 1Fvr9aUF)

「そんなッ・・・」

 僕は悲しみで声が震えるのを感じた。
 彼らは、僕のことを気遣って僕を騙したのだ。
 気遣ってくれた嬉しさと、隠し事をされていた悲しさと、信用されていなかった虚しさが僕の中を巡る。

「春太・・・」
「なんで、僕をッ・・・」
「それは、春太は友達だから、隠し事とかしたくなくってッ!」
「そんなこと知らないッ!」

 つい声を荒げてしまう。
 分かってる。
 真治たちは悪くないってことも。自分の勝手な思い込みだったってことも。
 でも、でも・・・。

「信じられないよ・・・」
「そうだよな・・・」

 いつしか涙が溢れてくる。
 嗚咽を漏らしそうになって口を押えた。

「なぁ、こんな時に言うのもなんだけどさ・・・———

———結局、春太はどっちの側につくんだ?

 僕は、どちらにつくのか。
 真治か、由梨か・・・。
 僕に、選べと言うのか?
 どちらかを、敵にまわせと?

「私は、もちろん真治君の味方をするつもり。由梨ちゃんには、悪いけど・・・」
「そういう運命だもん。仕方がないよ」
「僕は・・・」
 僕は気付けば、ツリーハウスを飛び出していた。
 どこにでもなく、ただ走った。
 誰かが僕を追って来ていたかもしれない。
 分からない。
 気がつけば河川敷のような場所にいた。
 荒く呼吸をするたびに、夏祭りで買ったネックレスが揺れる。

『これいいよね!僕たちの友情の確認だよ!』
『友情、か・・・』
『うん。いいと思うよ!』

「こんなものッ・・・」

 気付けば僕は、そのネックレスを川に投げていた。
 それは綺麗に弧を描いた。
 数秒して、それはポチョンという音を立てて水面に波紋を作った。

「どうしてッ・・・」

 今思えば、彼らは頭の中で打算を重ね、その中に僕を当てはめていただけだったんだ・・・。
 自分の胸に手を当てた。
 なんで魔人なんてものがいるんだろうか・・・。

「春太ッ!」

 遠くから真治たちの声が聴こえた。
 僕は咄嗟に近くの橋の柱の陰に隠れた。

「このへんにいた気がしたんだけど・・・」
「とにかく、他の場所も探してみよう」

 足音が遠くに行ったのを聴いて僕はその場に座り込んだ。

「いやだよ・・・こんなの・・・」

 壊すのは、一瞬だ。
 何日も育てた花を無駄にするのも一瞬。
 何十年もかけて育った人間が死ぬのも一瞬。
 何年もかけて深めていた人間関係を壊すのも、一瞬。

「なんでッ・・・」

 僕の涙は、静かに地面に染み込んでいった。

Re: 覚醒者<アウェイカー> ( No.15 )
日時: 2015/11/27 14:28
名前: 凜太郎 (ID: 1Fvr9aUF)

「春太君」

 背後から聴こえた声に、僕の体は震えた。
 振り返ると、琴音が悲しそうに微笑んでそこに立っていた。

「琴音・・・」
「春太君。もう一度みんなと一緒に話そうよ。あの二人だって、春太君のことを思って・・・」
「そんなことくらい分かってるんだよッ!」

 僕が急に声をあげるものだから、琴音は驚いた様子で目を見開いた。
 あぁ、ダメだ。ダメだ。
 僕はダメダメだ。
 どうしてこんな風になってしまったんだろう。
 一体いつから歯車は狂ってしまったんだろう。

「ごめん・・・僕・・・・・・」
「しょうがないよ。私だって、最初はかなり取り乱していたから。でも、真治君も由梨ちゃんも悪気はなかったと思う。だから、もう一度・・・」
「無理だよ」

 僕は即答した。
 琴音が弁明しようと何か言おうとしたが、僕はすぐに続けた。

「無理なんだよ。もう僕たちは前みたいに楽しく話せない。あの笑い合っていた日々はもう戻って来ないんだ」
「そんなの分からないよ」
「分かりきっているよ。だって、由梨と真治は敵同士なんだよ?今更仲直りなんて・・・」

 そこで、僕はとある方法を思いつく。
 そうだ、こうすればよかったんだ・・・。

「春太君?」
「分かったよ。どうすればいいのか」

 僕は笑って見せた。
 そして踵を返し、とある場所に走った。
 携帯でとある人物を呼ぶ。
 向かう場所は、町の中の廃ビルだ。


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