複雑・ファジー小説
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- 覚醒者<アウェイカー>
- 日時: 2015/11/18 10:05
- 名前: 凜太郎 (ID: 1Fvr9aUF)
人には魔人の力が宿っているということが発覚し、それは世界に流れを作った。
魔人の力は、全ての人に宿っているが、ほとんどの人間は覚醒せぬままその生涯を終える。
稀に現れる覚醒者を、人は口を揃えてこう呼ぶのだ。
アウェイカー
≪覚醒者≫、と。
−−−
初めましてか何度目まして、凜太郎といいます。
本日から書いていくのは、寝る前の妄想が地味に面白かったので試しに小説化してみようという謎の試みから始まったものです。
廚2病っぽい内容です。
それでは、よろしくお願いします。
- Re: 覚醒者<アウェイカー> ( No.1 )
- 日時: 2015/11/22 10:28
- 名前: 凜太郎 (ID: 1Fvr9aUF)
<言語説明>
≪魔人≫アウェイト
人に宿る魔人。能力などは人それぞれで、生まれた瞬間にランダムで決まる。
≪覚醒者≫アウェイカー
魔人を覚醒させた者達を総じて呼ぶ。
基本的に訓練すれば誰でも覚醒できると言われているが、稀に何かの衝撃や本人の気合などで覚醒する場合もある。
≪反乱鬼≫アンチアウェイ
覚醒者で構成された軍隊。
覚醒者の世界を作ろうとしている
≪救世旗≫フラグアウェイ
同じく覚醒者で構成された軍隊。
覚醒者と人間の共存を望む。
- Re: 覚醒者<アウェイカー> ( No.2 )
- 日時: 2015/11/18 11:38
- 名前: 凜太郎 (ID: 1Fvr9aUF)
『見て下さい!鉄板を拳でへこませてしまいました!さすが《覚醒者》ですね!』
テレビの中で美人のアナウンサーがそう言った。
夏休み。宿題なんてものはやる気も起きず、アイスを貪りながらテレビを見るくらいしかすることがない。
そういえば、今日は何かすることがあったような・・・?
「はぁ〜るぅ〜たぁ〜」
どこからか聴こえた声に僕の体は震え上がった。
首を動かしてそこに視線を向けると、幼馴染の米川 由梨が笑顔で立っていた。
オーマイガー。
「君は何をしているのかな〜?」
「社会勉強」
「ふざけんな!」
避ける間もなく少女の拳は僕の顔面を打ち抜いた。
「北山 春太さん。今日はみんなで秘密基地を作る約束でしたよね?言い出したのはあなたでしたよね?」
「急な敬語やめて!あと何その目怖い!」
鬼の形相で僕を睨む幼馴染の顔はそれはそれは恐ろしいものだった。
折角可愛い顔してるのに・・・勿体ない。
由梨に連れられて行った先では、すでに木材や工具などが散らばっており、簡単なベンチに座ったリア充がキスをしていた。
「そこのリア充〜。いちゃいちゃすんな〜」
「なッ!春太に由梨!いつのまに!?」
顔を真っ赤にして立ち上がったのは七森 真治。
そしてベンチに座ったまま同じように顔を赤くしているのは礪波 琴音だ。
「遅れて来た僕が言うのもなんだけど、作業進めろよな」
「あんたが言うな」
後頭部にバシッと痛みを感じた。
見ると、由梨が呆れ顔だ。
「遅れて来た罰で、この木材を木の上に上げなさい」
「いやそこまでの腕力には僕にはn・・・」
「やれ」
「うぃっす」
由梨魔王様(笑)がそうおっしゃられたので、僕は近くにあった板を一枚担ぎ、木のボコボコした部分に足をかける。
次の瞬間、僕は空を仰いでいた。
「あっれ〜?」
「あっれ〜じゃない。何登る前に転んでんのよ。ドジ」
「うるせー!これバランスとるのむずいんだよ!」
僕がドジなのは今に始まったことじゃないのに・・・。
改めて登ろうとした時、空に何か光るものが見えて一瞬体が止まる。
・・・・・・あれは?
「ねぇ。今何か空に・・・」
「はあ?何言ってんだよ」
真治が同じように空を見上げた瞬間、その光っていたものはこちらに向かってくる。
「なッ・・・」
「真治ッ!危ない!」
僕は木材を投げ捨て真治を抱き込み横跳び。
数秒後、轟音が響く。
「二人とも!大丈夫!?」
「あぁ・・・軽く怪我しただけだよ。それより・・・」
視線を向けると、一人の男が立っていた。
「うっひゃぁ〜。子供しかいねーじゃん。強い気配感じたのに、大したことなさそうだな〜」
そう言って、彼は陰鬱に笑った。
- Re: 覚醒者<アウェイカー> ( No.3 )
- 日時: 2015/11/18 13:38
- 名前: 凜太郎 (ID: 1Fvr9aUF)
平和な裏山にて、謎の男に襲われそうな僕たち。
おかしいだろこの状況。
「君達の誰か、《覚醒者》?」
僕たちの中に《覚醒者》はいない・・・ハズだ。
なのに、なんで?
「まぁ、いっか。《覚醒者》以外は皆殺しって言われてるし?」
そう言って僕たちがツリーハウスを作ろうとしていた木を握る。
数瞬後、バキバキと音をたてて幹が粉々になった。
「俺達の・・・秘密基地が・・・」
真治がそう言って顔を歪めた。
そうだ、夏休みに入る前に、僕たちは週末はよく秘密基地にちょうどいい木を探しに来たんだ。
暑い中、自転車を走らせて、ようやく探し出したのに・・・。
「お前・・・に・・・」
沸々と血が湧き上がる。
怒りが、闘争心が、沸騰する。
「お前なんかに・・・」
目の前が、真っ赤になる。
「お前なんかに、分かってたまるかよッ!」
轟ッと視界が広くなった。
え、なにこれ・・・。
もしかして、これが覚醒とやら、なのか?
「春太君・・・?」
琴音が小さく呟いたのが聴こえた。
普段なら聴こえないような声量なのに、なぜか普通に聴き取ることができた。
「やめなよ。殺されちゃうよ!」
由梨。何もしなくても、僕たちは殺されるんだよ。
だったら、何かしたいじゃん?
「お前が《覚醒者》だったのか。ハハッ・・・わざわざ来たかいがあったあったぜ」
「お前・・・なんかに・・・殺されてたまるかッ・・・僕たちの邪魔を・・・されてたまるかッ・・・」
力が、湧き上がってくる。
僕は男に強く踏み込んだ。
一瞬で距離が0になる。
これが覚醒。これが魔人の力、か。
「うおらぁッ!」
ガゴンッと首元を蹴り、顔面にも一発パンチを入れる。
ぐらりと首が後ろに倒れたのを見て、僕は足払いをかけた。
「みんな!ガムテとって!」
「へ?お、おう・・・」
ガムテープで簀巻きにする。
「あぁ〜。疲れた〜」
その場でへたり込む僕に、みんなは何も言わない。
「・・・どうかした?」
「お前・・・」
次の瞬間、真治は僕の頬を叩いた。
「なんで!?」
「いや、信じられなくてさ」
「はぁ!?」
「春太君すごかったよ!」
琴音はそう言ってニッコリと微笑んだ。
由梨は安心した顔で僕の肩を叩く。
「でも、ツリーハウス作れなくなるよね・・・」
僕は木を見ながら呟く。
「しょうがないよ」
琴音が他の木を見ながら言った。
「また別の木を探そう」
「そうだな」
しかし、この時の僕はまだ気づかなかった。
これから起こる、戦いの日々に。
- Re: 覚醒者<アウェイカー> ( No.4 )
- 日時: 2015/11/18 19:34
- 名前: 凜太郎 (ID: 1Fvr9aUF)
結論だけ述べれば、木はすぐに見つかった。
というか、破壊された木のすぐ真横にあった木を見て「あ、これでよくね」という流れになったので確定。
というわけで今は作業に入るべきなのだが・・・。
「あの二人どこに行ったんだ???」
真治と琴音がトイレに行ったっきり帰ってこないのだ。
仕方がないので、僕もトイレにいくついでに探しに行く事にした。
「あ、真治〜。ことn・・・」
草むらの奥に真治と琴音を見つけたのだが、うん・・・。
顔が近かったからキスなのかな〜と思ってからかおうと思ったんだけどね?
これ言葉にしたらダメなやつだよ?
そんな深くてディープな感じのやつをやってるなんて予想外じゃん?
「見なかったことにしよう・・・」
トイレから戻ると、由梨はベンチに座ってペットボトルを手に持ち、どこかボーッとしていた。
「やっほー」
「ん?あぁ、春太・・・。真治と琴音は?」
「サボりじゃねーの?二人で愛の逃避行したりして」
「馬鹿なこと言わないの」
「ほーい」
なんとなく隣に腰かけた。
ちなみにこのベンチは裏山に元からあったものだ。
「ねぇ・・・」
「ん?」
「なんで、この世界変わっちゃったんだろう・・・」
「急にどうした?」
「だってさ、昔は魔人の力がどうとかなかったし、今では、よく分からないよ」
「相変わらず言語能力低いな」
「うっさい」
相変わらず・・・。そう、相変わらずだ。
僕は相変わらず、この距離を詰めることはできないまま。
真治と琴音が付き合うってなった時、自分にもそういうことができるんじゃないかと思ったが、結局は何もできないままだ。
あと数センチなのに・・・。
「あ、琴音。真治」
由梨の声に、僕は顔を上げた。
2人は何事もなかったかのようにこちらに歩いてきていた。
一瞬あの時の情景が頭をよぎる。
さすがにね、これはね、言わない方がね、いいよね、うん。
「遅いじゃん!ずっと待ってたんだよ〜」
「ごめんって、トイレに行く道が分からなくてさ」
「僕が行った時に出会わなかったけど?どこかで二人でいちゃいちゃしてたんじゃねーの?」
「んなわけないだろばーか」
いつも通りの会話。
たしかに世界は変わった。僕たちも変わった。
でも、この距離だけは、空気だけは。
変わらない、変えたくない。
そう、心の底から思った。
- Re: 覚醒者<アウェイカー> ( No.5 )
- 日時: 2015/11/19 08:32
- 名前: 凜太郎 (ID: 1Fvr9aUF)
作業は順調に進み、床とはしごができた。
日が暮れはじめたので、今日はもう帰ることになった。
「しっかし、春太が覚醒するなんてな」
「へっへーん。リア充には一生無理だろうな〜」
「はぁ!?」
「怒らないの」
僕に殴りかかろうとした真治を琴音が宥める。
「リア充じゃない私も覚醒してないことはお忘れですか〜?」
由梨がジト目でそう言った。
大丈夫だよ、君は僕が守るから。
そう言いたかったのに、その言葉は喉に詰まった。
「由梨ちゃんは春太君に守ってもらえばいいじゃない」
「春太に〜?無理無理!」
「ひどくね!?」
やっぱりこんなことは無理なんだよな。
僕は苦笑いしながら空を見上げる。
「ヒーック・・・」
その時、ちょうど僕たちの進行方向に酔っ払いのおじさんが道に座っていた。
「おじさん。こんなところで寝ていたら風邪ひきますよ」
琴音がそう言って肩を触った。
相変わらずお人好しな奴だ。
「ヒック・・・おぉ、べっぴんさんじゃのぉ・・・」
「はぁ・・・」
「ちょっとそこのホテルまで運んでくれんかのぉ・・・?」
「ホテル・・・?」
ちょ、これってヤバくね?
同じことを思ったのか、真治が琴音とおじさんの間に入る。
「俺が運びましょうか?」
「あぁ?アンタは誰だい?」
「この子の彼氏です」
「彼氏ぃ?」
直後、真治は数メートルほど飛ばされた。
え?
目をおじさんに向けると、ちょうど拳を突き出していた。
まさか・・・《覚醒者》?
「あぁ〜・・・子供は相変わらず弱いなぁ・・・ほぅら、行こうか」
そう言って琴音の肩に手を乗せる。
琴音の体がビクンと震える。
「やめろッ!」
僕は咄嗟におじさんの腕を掴む。
「またガキか・・・」
バキッと顔面を殴られる。
鈍い痛みが走る。
「やめて下さいッ!」
琴音が涙で濡らした目でおじさんを睨む。
「あ?調子に乗ってんのかこのアマが」
ついには琴音まで殴る始末。
やめろッ!
「みんなやめてよッ・・・逃げようよッ・・・」
「まだいたのか・・・へぇ、中々いいじゃねえか。もうお前でいいよ」
そう言って由梨の肩を・・・・・・。
「いい加減にやめろよッ!」
血が沸騰する。
視界が広くなる。
力が湧き上がる。
「やめろって・・・お前なんかに何ができると・・・」
「あああッ!」
殴る。
馬乗りになり何度も殴る。
血が拳に付着する。
「春太ッ・・・」
「由梨に・・・琴音に・・・真治に・・・僕の幼馴染に・・・手を出すなよッ!」
どれくらい殴っただろうか。
痛みでとっくに彼の意識は飛んでおり、多分鼻はどんなに整形をしても治らないだろう。
「ハァ・・・ハァ・・・」
「春太・・・」
由梨が怯えた顔で僕を見る。
僕は笑って見せた。
「無事でよかった・・・」
「無事に決まってるじゃない・・・だって、春太が守ってくれたんだもん・・・」
そう言って笑う。
そうか、僕は由梨を、大切な人を守れたんだ。
「いてて・・・」
「真治君ッ!」
琴音が心配そうな顔をして真治の顔を撫でる。
「琴音・・・大丈夫だよ・・・」
「真治君ッ・・・」
二人は抱きしめ合った。
「リア充〜ここは公の場所だぞ〜」
「え?あ・・・」
「何やってんのよ」
笑い合う。
その笑い声は、夕焼けの空に吸い込まれていった。