複雑・ファジー小説

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青恋物語【キャラ募集一時停止、題名変更】
日時: 2015/12/13 19:26
名前: キコリ (ID: JD5DDSYn)

—目次—

※必ず目を通してください※
【この小説におけるルールと方針>>1
※キャラ応募用のテンプレートも含まれています。


—お知らせ—

キャラの募集を一時的に停止させていただきます。
再開の目処については、現在応募されているヒロインのストーリーが全て完了した折に再開する予定です。

題名を変更しました。(蒼雨→青恋物語)


—キャラ紹介—

※主人公の年齢はストーリーによって変化します。
【立花哲也】(たちばなてつや) 男 基本17歳
今作の主人公。顔だけ良くて、あとは全てが普通な男子高生。喧嘩が空前絶後に強いという噂があるが真偽は不明。
来る者拒まず去る者追わずの一匹狼であり、基本的に暇つぶしの為に毎日を生きている主義。一方で情に厚い一面も。

オリキャラ一覧
>>2 >>4 >>6 >>10 >>14 >>15 >>19


—本編—

【柊静香編〜悠久の悲哀を断って〜】
>>9 >>11 >>13 >>23 >>24 >>25 >>26 >>27 >>28

【撫川哀編〜単純なりの想い〜】
>>29 >>30 >>31 >>32 >>33 >>34 >>35 >>36 >>37

【星波紫乃編〜空想と現実〜】
>>38 >>40 >>42

Re: 青恋物語【キャラ募集一時停止、題名変更】 ( No.34 )
日時: 2015/12/06 19:43
名前: キコリ (ID: JD5DDSYn)
参照: まだ完結ではありません(あと数話ほど続きます。更新は来週から)

 転校生が来た——翌日はそんな噂で学校が持ちきりだ。
 だが、そう呼ばれている本人は撫川哀に他ならない。即ち転校生ではない。
 しかしその変わり様といえば、かなりの評判を呼んだらしく。
「……」
 放課後。俺は撫川に高台まで連れて来られた。
「私、分かったんです」
「?」
「こういう小さな非日常でも、経験できたことに対して喜んでいる自分がいるみたいで」
「——吹っ切れたか?」
「えぇ。どれだけ嫌っても、やはり血は争えません。私と親は似たもの同士です」
 どこか清々しい表情の撫川。放課後からカラコンを外しており、今は透明感溢れる翡翠色の瞳が覗いている。
 見ていると思わず引き込まれそうな、そんな美しさを含んで。そしてその目で、彼女は俺を見てはこう言うのだ。
「——おかしいです」
 すっかり緩くなった表情がこちらに向けられる。
「何がだ?」
「人の気持ちって、たったの数日でも変わるんですね」
「?」
「気持ちというより、感情でしょうか。抱いたことの無い、新しい感情……」
「?」
 すると撫川は、いきなり俺の手を握ってきた。
「ど、どうした?」
 明らかに様子がおかしい。
 頬が完全に真っ赤だ。握られた手も熱い。風邪でも引いたか。
「おかしいです。おかしいですよ、絶対に。些細な切欠を貰っただけなのに。ただ優しくされただけなのに。何て事の無い行動なのに。私が単純だからでしょうか?」
 風邪——というわけではないようだ。
 ならば何か。しかし一体全体、何を言いたいのかがサッパリ分からない。
「あの、驚かないで聞いてください」
「——」
 とりあえず沈黙を以って、言葉の続きを促す——と。
「私、貴方のこと好きになってしまったようです」
「へ?」
 唐突にとんでもない言葉が飛んできた。
「もっと私に刺激を下さい。毎日退屈しないような、こんな私を根本から変えられるような。そんな刺激がほしいです」
「——俺でいいのか?」
「貴方以外に、私を満たしてくれる人なんていないです……」
 そのうち見つかるかもしれないのにか——と聞きそうになったが、そこからは野暮だと思ってやめた。
 仕方ないので俺は撫川——哀の手を握り返す。
「あ……」
「別に、俺でよかったらいくらでも。吹っ切れても尚何かを求めるなら、好きなだけ与えてやるからさ」
「……」

 人間、ほんのちょっとしたことでこんなにも変わるんだな。
 案外こいつの言うとおり、単純なのかもしれない。哀がではなく、人間がという意味で。

Re: 青恋物語【キャラ募集一時停止、題名変更】 ( No.35 )
日時: 2015/12/13 10:29
名前: キコリ (ID: JD5DDSYn)

 さて、あれから数日後。俺は哀と共に撫川家の前までやってきた。
 目的は単純かつ明快にして一つ。哀本人が両親と話をするためだ。
 片やついてきた俺は、哀の恋人として彼女の両親にご挨拶——などという平和的な理由でついてきたわけではない。
 色々な意味で底なしの謎をもつ彼女の両親だから、俺はサポート役のような形でここにいるわけだ。
「あれから単純な私が、どれだけ言ってやれるようになったでしょうか」
「心配すんな。俺も一緒に居るから」
「えぇ……心強いです。でも未だに分かりません。親に何と言えば良いのか」
 何をこう緊迫しているかというと、哀の容姿が変化してからのことである。
 曰く、雰囲気が変わった彼女に両親は大きく驚いたそうだ。
 そこで再び要らぬ何らかの期待が込められてしまったとのことで、今度こそ面と向かって「期待には応えられない」と言ってやるつもりでいるという。
 具体的に如何言ってやるのか、何故俺が出しゃばらなければならないのかは、本人も分かっていないようだが。
「そもそも何の期待をされてるかが謎なんだよな。一口に期待って言っても色々あるぞ」
「両親も私と同じで単純なのですよ。誰かの手を借りようが借りるまいが、何かを成し遂げると同じことを思うに決まっています。この子はやれば必ず出来る子、とか」
「ふうん?」
 ——即ち、哀の親が言う"期待"とは曖昧なものかもしれない。
 これが出来たのだから、きっと他にも何かが出来る。そんな、まさしく単純な理由を基にして考えるとするならば——
 何処の子供にもよくありそうな、一種の完成に親が褒め称えるのは分かる。例えば自転車に乗れるようになるとか。
 ただ、そんな当たり前が出来た程度で才能があると看破するのは大きな間違いだ。
 それは所謂、親バカというやつかもしれない。今回の場合、このパターンに当てはまるのではないだろうか。
「——理由はさておき、具体的に何を期待されてた? うろ覚えでも良い」
「考えたこともありませんが、強いて心当たりがあるとすれば幼稚園の頃です。当時から友達と呼べる知り合いがいなかった私は、一人で絵本を読んだりしていました。そのお陰で周囲の子供達より語彙が多かったので、恐らくそれに対してではないかと」
「やっぱりか」
 幼稚園児の語彙力だ。誰であれ1年もしないうちに、当時よりは立派に成長する。
 ましてや、遊び相手が居なかったから自然と身に付いたものに過ぎないのに、それを才能と見たのだろう。
「偶然にも他より少し優れていた語彙力からってことか」
「憶測の域を出ませんが、恐らくは」
「だったら言ってやることは簡単だ」
「え?」
「当たり前が出来て何が才能だ——そう言ってやればいい」
 そう、所詮は当然のこと。
 哀も女の子に変わりはない。哀に限らず例えどれだけ地味でも、切欠一つさえあれば可愛らしくなれるものだ。
 ——すると。
「分かりました。では哲也、ここで待っててください」
「ん? 大丈夫なのか?」
「えぇ」
 微笑んだかと思えば、哀は突然に家へと入っていった。
「お、おい」
 止める間もなくズカズカと、足音さえ響かせて。
 あの様子なら言い損ねもないだろうが、つい最近までロクなコミュ力も持たなかった哀なので少し心配だ。
 俺は玄関先で出迎えを待つ客を装い、隣接するリビングの窓から会話を盗み聞きするのだった。

Re: 青恋物語【キャラ募集一時停止、題名変更】 ( No.36 )
日時: 2015/12/13 12:19
名前: キコリ (ID: JD5DDSYn)
参照: やーばい。ごちゃごちゃ感がパネェw

 周囲は休日の住宅街だ。それも田舎の部類に入るため、物音など殆ど立ちやしない。
 よって、リビングからの会話はそこそこ鮮明に聞こえてくる——はずであり、そんなことはなかった。
 何故なら、開け放たれた窓から見るに、リビングには誰もいないからである。
「うーん、もどかしい」
 仕方ないので、大人しく哀が出てくるのを待つことに。
 携帯を弄りつつゲームでも遊び、某SNSサイトで友達と馬鹿話をしながら待つこと数分。
 両親を背後に控えた哀が、どこかしら一皮向けたような目で現れた——と思えば、開口一番に「この人」と言いつつ、哀はいきなり俺の腕を取って自分のそれを絡めてきた。
「立花哲也——貴方ね?」
「は、はい? なんでございましょう?」
 すると母親らしき人物が一歩前に出た。
 父親のほうと言えば、我関せずといった様子で無言を貫いている。
「——出会って数日で付き合っていると聞いているけれど」
「何か問題でも?」
「うちの娘は単純だから良いわ。でも貴方の方はどうなの?」
「?」
「私達は曲がりなりにもこの子の親よ。簡単に差し出すわけにはいかない。そこで、貴方に付き合う覚悟が出来ているかどうかを聞きたいのよ。どうせ答えられないでしょうけど」
「あぁ、何かと言えばそんな事——愚問ですね」
「はぁ?」
 確かに、何となく流れで付き合った感覚は拭いきれない。マトモに話し合うようになって数日——俺から見ても誰から見ても、恋人の関係に発展するにはあまりにも短いに違いないから。
 だが数日といえど、その短期間のうちに何があったか——そこに視点を置けばいいだけの話だ。
 あまり人間と深く関わってこなかった哀とは、悪い言い方をすれば単純な人であり、良い言い方をすれば純粋な人だと思う。まだ何にも染まっていないから、いずれにせよ彼女を言い表すならば"純"という言葉がつくわけだ。
 俺的にそれは、親に懐く子供のようだと思う。だから傍にいてあげたい——きっとそれが俺にとっての、哀の母親が言う覚悟とかいうやつに当てはまるだろう。
 所詮は俺の考えなので、否定されたら身も蓋もない。しかしそれ以前に、哀にとって俺が無くてはならない存在となったなら、それに答えてやるのが筋というもの。持ち込むべき恋愛感情は後回しでも良い。こうしている以上、いずれは知り得ることだから。
 つまり、事は順番に解決するべきなのだ。でもって今大事なのは、目の前で手を伸ばす存在に自分の手を差し出すこと。
「……」
 先程の哀と両親との間でどのような会話が交わされたか、俺は知る由も無い。
 そんな中でも伝えたいことは伝えた。あとは、先方が如何受け取るか次第——さて、どうなる。
「——お人好し極まれり、ね。自分の都合より相手のほうを考える人なんて初めて見たわ」
「?」
「認めましょう、貴方達の関係」

Re: 青恋物語【キャラ募集一時停止、題名変更】 ( No.37 )
日時: 2015/12/13 17:02
名前: キコリ (ID: JD5DDSYn)

 ——その後。やってきた例の高台には、やはり人っ子一人いない。
 逆に静寂は俺達を歓迎してか、ただ静かに夏の夜風が木の葉を揺らすのである。
「好きになれてよかったです」
「ん?」
「なんだか、目の前にある道が一気に明るくなったように思えます。あんな小さな切欠が1つだけ。なのにこんなにも事が進展してしまうなんて、普通はありえないはず。それを貴方は実現してしまったのですから」
「……」
 人間という生き物が何かを分かっていないお前だからこそ——と言いかけたところを必死で押さえ込む。
 世の中単純な奴なんてそういない。不良にも好みがあるように、人間関係については皆何らかの意思を交えている。
 そんな中で哀というやつは、少し世間離れした育ち方をした所為か、こんな結果を招くことになったのである。
 決して不幸な結果でもないのだろうが。少なくとも、目の前ではにかむ哀にとっては。
「ま、あれだ。経緯は如何あれ、今の気持ちに偽りが無いなら、それでいいんじゃないか?」
「——えぇ」


    ◇  ◇  ◇


 ここに一つ、新たな絆が生まれた。

 あまりに短い時期を経て、寛大な者と身勝手な者。

 邂逅した二つの命は、互いに離れぬ関係となった。

 しかし、仲が良い——これ以上の関係を知る者はおらず。

 また、彼らの行方を知る者もいない。


    ◇  ◇  ◇


「畜生分かんねぇ……はぁ、こんなときに立花たちがいたらなぁ」
「仕方ないよ。消息不明なんだから」
 七川稔は放課後、学校の図書館で教科書とノートを広げながらにペン回しで遊んでいた。
 気だるそうにしている彼の傍らには、稲荷九太郎の姿。こちらは静かに問題集の内容を解いている。
 一応、七川の言葉には耳を傾けているようだ。
「——っつーかお前、その髪型どうにかならんのか?」
 七川が指をさす先には、凡そ男子には似つかわしくない髪形をした稲荷の頭。
 長い髪を2つに丸くまとめたそれは、俗に言うお団子ヘアである。
 七川にしてみれば、チャイナドレスを着てシュウマイを売る中国人に見えるのだという。
「どうにかって?」
 七川の問いに答えても尚、依然として問題集からは目を放さない稲荷である。
「お前、男なんだろ? なんでそんな女みてぇな髪型してんだよ。いっそスポーツ刈りにしろっての」
「ダメだよ。これは僕の、一種のキャラみたいなものだからね」
「変なキャラ……」
 独りごちに呟いた七川は、溜息をついてから窓の外を眺める。
 すると夕暮れの日差しが眩しかったので、彼は目を細めて右手をひさし代わりに影を作るのである。
「しっかしホント、あいつら何処に行ったんだろうな」
「退学届けを出して、それっきり……僕らの関与するところじゃないとは思うけど、どうしたんだろうね」
「警察も捜索には手を焼いてるみたいだぜ。そのうち打ち切られるんじゃねぇの?」
「ありえるね。昨今の国家権力と言えば、そんなことに時間を割く余裕なんて無いだろうし」
「——それはそれで、胸糞悪い話だな。もしかしたら事件に巻き込まれてるかもしれねぇってのに」
「それはないんじゃない?」
「は? 何でだよ」
 稲荷はペンを動かす手を止めると、七川と同じように窓の外を見た。
 やはり夕暮れの日差しが眩しいのか、彼も自分の手をひさし代わりにして影を作るのだ。
「彼らが退学届けを出しに来た折、僕すこし様子を窺ったんです」
「——そしたら?」
「幸せそうだったよ。もう、不幸なんて言葉を知らないくらいに」
「ふうん……幸せそうだった、か……」

 それから暫く、両者の間に会話は無かった。

『尤も、警察なんて動いてないんだけどね』
『あいつら……何を求めてるんだろうな』

 それぞれ、心の中では言葉を残しつつも。

「——帰るか」
「うん」

 そのやりとりを最後に、立花と撫川の噂をした者はいなかった。



 Fin.



 〜あとがき〜

 かなりいい加減なストーリーになってしまったことに、まずはお詫びを申し上げます(ォィ

 これにて撫川哀編が完結いたしました。
 キャラを提供してくださった深海サボテン様に、心より深くお礼を申し上げます。
 最後に残した謎については、本文中にヒントが隠されています。各々方各自で考察されては如何でしょうか。
 答えは後日譚にて。では次いってみよー。

Re: 青恋物語【キャラ募集一時停止、題名変更】 ( No.38 )
日時: 2015/12/13 18:01
名前: キコリ (ID: JD5DDSYn)

 ——面倒臭い。何故か。調べ学習の宿題が出されたからだ。
 発端は今日の5限目終了間際のこと。古典の先生が俺達にプリントを渡し、書かれている単語の意味を調べて来いと言ったのである。
 全く、面倒くさいことこの上ない。携帯で調べるにしても、生憎俺のスマホは修理中だ。通信手段として携帯会社から貸与されているガラケーではインターネットが使えないため、調べようにも調べられない。
 よって辞書を使うしかなく、俺は渋々図書館までやってきたのだ。まったく、ホントに面倒臭いったらありゃしない。
「——ん?」
 古典の辞書を探していると、一人の少女が何やら危なっかしい行動を取っているのが見えた。
 高いところにある本を取ろうとしているのか、踏み台に乗って背伸びをして一生懸命にプルプル震えながら手を上に伸ばしているのである。
 俺はそんな少女に見覚えがあった。
 今までも何度かやってきたこの図書館だが、来る度に俺はあの子の姿を目撃している。
 確か"図書館ぼっち"とかいう妙なあだ名の——星波紫乃だ。
 ランドセルを背負わせた途端、紛うことなき小学生に変貌するであろう彼女はかなり身長が低い。
 あれなら俺が取ってやったほうが良いだろう。
「取ってやるよ。どれだ?」
「ふぇ? わぁ!」
「うわっ!」
 すると話しかけた途端、星波はバランスを崩して俺のほうへと倒れこんできた。
 咄嗟に身構えて抱きかかえた俺だったが——衝撃は殆ど無かった。というのも、コイツが軽すぎるのである。
 ちゃんと飯食ってるのだろうか——思わず心配になってしまうくらいに。
「大丈夫か?」
 身体を離し、そのまま立たせる。
「あ、ありがとうございます……」
 星波は何故か少し顔を赤くして、小さくお礼を言ってきた。
「——で、取りたい本どれだ?」
「あ、えっと……あの、色の不思議っていうタイトルの……」
「あれか」
 少し手を伸ばせば届く距離なので、俺は踏み台も使わずそれを取り出して星波に手渡す。
「ほれ」
「ありがとう、ございます……で、では!」
 すると今度は疾風の如く去っていった。
「な、なんだったんだ?」
 ああいうのを、台風一過と言うのかも知れない。
 その後俺は古典の辞書を探し出し、調べ学習に没頭するのだった。


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