複雑・ファジー小説

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青恋物語【キャラ募集一時停止、題名変更】
日時: 2015/12/13 19:26
名前: キコリ (ID: JD5DDSYn)

—目次—

※必ず目を通してください※
【この小説におけるルールと方針>>1
※キャラ応募用のテンプレートも含まれています。


—お知らせ—

キャラの募集を一時的に停止させていただきます。
再開の目処については、現在応募されているヒロインのストーリーが全て完了した折に再開する予定です。

題名を変更しました。(蒼雨→青恋物語)


—キャラ紹介—

※主人公の年齢はストーリーによって変化します。
【立花哲也】(たちばなてつや) 男 基本17歳
今作の主人公。顔だけ良くて、あとは全てが普通な男子高生。喧嘩が空前絶後に強いという噂があるが真偽は不明。
来る者拒まず去る者追わずの一匹狼であり、基本的に暇つぶしの為に毎日を生きている主義。一方で情に厚い一面も。

オリキャラ一覧
>>2 >>4 >>6 >>10 >>14 >>15 >>19


—本編—

【柊静香編〜悠久の悲哀を断って〜】
>>9 >>11 >>13 >>23 >>24 >>25 >>26 >>27 >>28

【撫川哀編〜単純なりの想い〜】
>>29 >>30 >>31 >>32 >>33 >>34 >>35 >>36 >>37

【星波紫乃編〜空想と現実〜】
>>38 >>40 >>42

Re: 青恋物語【キャラ募集一時停止、題名変更】 ( No.29 )
日時: 2015/11/29 19:11
名前: キコリ (ID: JD5DDSYn)

 梅雨も明けて、7月のある日。
 期末テストを目前に控えているためか、学校中が慌しい。準備に追われる教職員に、勉強漬けの生徒達。俺もその、勉強という周囲の波に飲まれた1人になるわけで、周囲の友達と適当に勉強をしている。
 場所は学校の図書館。冷房が効いている上に気軽に集まれるから、という理由でかなり生徒が多い。よって普段より少し喧しいが、どこも勉強の話題に尽きない様子。
 うちの学校はそれなりに頭が良く、名立たる有名な大学に何人もの生徒を輩出している完全な進学校だ。俺も将来は早稲田あたりに進学したいなと思いつつ勉強しているが、しかしどこか面倒臭い感情を残しながら学校生活を送っているため将来は曖昧だ。
 よって、勉強の効果は今ひとつと言えよう。
「あー、ちくしょー分かんねぇ」
 目の前で頭を抱える、不良気取りの幸薄少年——七川稔もその一人。
 3年生である彼は俺よりも上級生だ。なのにどうしてここにいるかと言えば、2年で習うはずの基礎が分からない所為で3年の勉強についていけないのだという。
「不良なんか気取ってるからっすよ」
「うるせぇ、お前に何が分かる」
「余計なこと言ってないで勉強しましょう」
 隣から追い討ちをかけるのは、クラスメイトの撫川哀。
 たまたま稲荷九太郎という知り合いを介して意気投合した結果、共にこうして勉強する中になった人だ。
 見た目から地味な印象しかないし感情の起伏に乏しいが、話してみると案外普通の子だったりするのが彼女である。
「くそっ、何だって俺こんなこと勉強しなくちゃならねぇんだよ」
「大学へ行くため——ひっくるめて、将来社会に出たときに必要になる知識ですよ、七川先輩」
「これが? この回転体の面積求める方法が? この0と1しか並んでない数字が?」
「理数は最早、現代において必要不可欠です。将来小説家になるとしても、覚えておくに越したことはありません」
 高校生で色々悟りすぎだろ——と突っ込みそうになったところを押さえ込む。
「あー! もう知らねぇ」
 七川先輩は奇声と共にシャーペンを放り投げ、同時に勉強をも放棄した様子。
 そんな彼を見て俺らは顔を見合わせ、素早く片付けて図書室を後にするのだった。

Re: 青恋物語【キャラ募集一時停止、題名変更】 ( No.30 )
日時: 2015/12/05 11:18
名前: キコリ (ID: JD5DDSYn)

 テストが終わると、周囲は一気に開放的な雰囲気となった。何処で遊ぶだの泊まるだのと、各々グループを築きながらワイワイとはしゃいでいる中。やはり俺は1人、静かに帰宅の準備を進めているのだ。
 しかし以前——1学期中間考査のときのそれとは違う点があり、俺と同じように周囲の空気から浮いている奴が複数目に付くようになった。その中には、いつか一緒に勉強をした撫川哀もいる。
 初めて面と向かって会話してから数日も経たない所為か、まだ積極的に言葉を交わすようにはなっていない。
 だからといって何が如何というわけでもなく、特に撫川が気になる女子の対象というわけでもないが、折角知り合ったのなら仲良くしたいところだと思う。よって、声を掛けようと思ったのだが。
『……声掛けて、どうすんだ?』
 問題はそこである。
 声を掛けるのは良いが、良い話のネタが見つからない。一緒に帰ろうにも、俺と撫川との帰路は180度真逆の方向であり、猶のこと距離も相当離れている。電車を使わないと会えないような距離だ。
「どうしました?」
「ふぁい!?」
 俺の視線を感じたのか、ボーッとしてたらいつの間にか撫川が目の前にいた。
 しかも近い。普段は意識しないと分からないような顔立ちのよさも、今は何も考えずとも分かる。
 ほんと撫川、ちゃんと見ると綺麗なんだよな——って、一体俺は何を考えている。
「何ですか? そんなに驚いて」
「いや驚くっつーの! 足音も気配も全く無かったぞ——お前アサシンか何かか?」
「呆けていた貴方も貴方ですよ。目の前から近付いたのに、私に気付かないなんて」
「いや、その……」
 お前の影が薄いんだよ——なんてこと、口が裂けても言えない。
「あれだ。声掛けようとしたんだけど、何話そうか迷ってたんだよ」
「——そうですか。では少し付き合っていただけますか?」
「いいけど、どこに?」
「私のお気に入りの場所です。親睦を深めるには、そこがいいかと」
「……」
 ちょっとからかってみる。
「親睦を深めたいのか?」
「……」
 すると撫川は少し赤くなって俯き、しかし相変わらず無表情なまま俺の手をとって早足に歩き始めた。
「ちょ、ととっ、わっ!?」
 しかも歩調が速い。それは校門を出てからも続き、俺は何回か足を突っかけて転びかけるのだった。

Re: 青恋物語【キャラ募集一時停止、題名変更】 ( No.31 )
日時: 2015/12/05 11:47
名前: キコリ (ID: JD5DDSYn)

 そうしてやってきたのは、町外れにある高台の上。この辺りでは一番見晴らしの良い場所で、最寄の駅または学校からも数分で着く、人工芝生があって空気も清浄など様々な好条件が揃っている正に理想的な場所だ。
 しかしここを訪ねる人は中々いない。警察の目が中々届かない場所ということもあり、犯罪にはもってこいだからである。俺も以前此処へ来たときには、事件一歩手前の現場を見つけてしまい大慌てだった。
「——仲良くなりたいのは事実です」
「ん?」
 藪から棒に何かと思ったら、どうやらさっきの続きのようだ。
 撫川は俺の手を離し、こちらに向き直る。この時俺は、前髪の長い猫背ほど目を合わせづらいものは無いと思った。
「私に声をかけてくれる人なんて、そうはいません。知り合いは沢山いますが、彼らも進んで私に声を掛けようとしないのです。そんな中、貴方は私に進んで声を掛けようとしてくれた。その気持ちが嬉しいのです」
「——ふうん?」
 典型的な、孤独な少女と言ったところか。
 だが撫川が独りぼっちというイメージは想像がつかない。
 俺の視点から見ても本人の言ったとおり、知り合いはそこそこいるほうと見てとれるからだ。
 ただ、普段彼女は寡黙で堅い表情しかしないために、少し話しかけ難いというイメージはあるのだろうが。
「言いたかったのはそれだけ——別に他意はありませんから」
「そ、そうかい」

 それから暫くは、静かな時間が続いた。
 人工芝生に並んで寝転がり、風の音に耳を傾け、流れていく雲を眺める。ただそれだけの、夏の昼下がりだ。
 やがて空が夕焼け色に染まった頃——ようやく俺の考えが纏まった。
 穏やかな時間の中でずっと考えていた、撫川の暗いイメージを消し去る方法——転じて今の撫川を変えてやる方法が。

「——なぁ」
「はい?」
 打てば響くように返事が返ってくる。
 俺は暫く撫川の顔を眺め、改めて"素材"の良さを確認した。
「なんですか? そんなに見つめられても困るんですが……」
「あぁ、わりぃ」
 困らせてしまったようだが、確認は出来た。
 あとは本人の合意の上で、計画を実行に移すのみ。
「ところで撫川、お前ファッションとかお洒落に興味あるか?」
「……? えぇっと、別に無いわけでは。でも私が綺麗になれるわけも無いですし、諦めています」
「いや、なれると思うぞ」
「え?」
「俺の知り合いに、その手の話に詳しい奴がいる。お前折角可愛い顔してんだからさ、ちょっと触りでもやってみないか?」
「……いいのですか?」
「あぁ」
「——で、では……」
「うし、行くぜ! しっかりついてこいよー」

Re: 青恋物語【キャラ募集一時停止、題名変更】 ( No.32 )
日時: 2015/12/06 18:29
名前: キコリ (ID: JD5DDSYn)

 俺が声を掛けようとした——その意思が伝わっただけで喜ぶ女子など、それこそ殆どいないものだ。
 すると知り合いこそ多けれど、親密な間柄にある人とは撫川にはあまりいないのかもしれない。
 だったら俺がその切欠を作ってやろうと、こうして撫川改造作戦に出たのである。
 高台から歩いて、これまた数分。やってきたのは古臭いアパートの一室で、ここには俺の知り合いが住んでいる。
 ファッションデザイナーとして一流と言ってもよい若手の男性、尚且つ俺の兄貴分みたいな人だ。
 早速俺は201号室の前に立ち、少しばかり戸惑っているらしい撫川を背後に控え、壊れかけの呼鈴を鳴らす。
「兄貴ー」
「どうしたー?」
 眠気を誘う間延びした返事が、若干のノイズを伴って返ってくる。
「ファッションデザイナーとして、ちょっとお願いしたいことがあるんだけど、いいか?」
「あぁ、大歓迎だ。誰をキメてやればいい?」
「本人を連れてきた。玄関まで出てくれないか?」
「わかった」
 プツリと音がして会話が途絶える。
 間もなく出てきたのは、とてもファッションデザイナーらしい恰好とは言えないダサい部屋着の青年。
 寝癖頭をポリポリ掻いて欠伸をするこの人こそ、俺の兄貴分こと"堂島純太"だ。
 今年で確か23歳になる。どうでもいいことだが。
「……おぉ」
「んだ?」
「君が女の子を連れまわしてるなんて、どういう風の吹き回しだ?」
「うるへぇ。いいから、お願いしたいのはこの子だ。撫川っていう」
「ふうん?」
 すると堂島は、俺の後ろに居る撫川の全身を舐めるように見回し始める。
 しばらく眺めた後——丁度撫川が首を傾げた頃、彼は目を離して大きく2度ほど頷いた。
「よし、任せて。1時間もあれば十分だ」
「は?」
「え?」
 1時間で何とかなるのか。激しい疑問が俺の胸を、きっと撫川も同じように渦巻く。
「撫川ちゃんだっけ? 君はとても綺麗な顔立ちしてるし、体型もバランスがとれている。ちょっと彼方此方歩き回ることになるけど、取らせる時間は1時間だ。それでいいかい?」
「は、はい」
 今更ながら何だか流されるがままといった感じだが、当の本人は満更でもないらしい。
 相変わらず無表情な仮面の奥から、そんなオーラが漂っている気がする。
「よし、じゃあ行こう。勿論立花も来るよな?」
「当たり前だ」
「よしよし、それでこそ彼氏ってものだ!」
「だから付き合ってないっつーの」

 ——そうして町中を歩き回ること、宣言どおりピッタリ一時間後。
 美容院、ブティック、アクセサリー店などの、俺にはあまり縁の無い店を巡り巡った暁。

 ——撫川哀は、文字通り化けていた。

Re: 青恋物語【キャラ募集一時停止、題名変更】 ( No.33 )
日時: 2015/12/06 19:20
名前: キコリ (ID: JD5DDSYn)
参照: 一文一文、ゆっくり読((ry

「!?」
 素直に驚いた。
 目は以前と変わらず茶色のカラコンをつけているが、それ以外が何というか、化けている。
 靴にヒール、服はシンプルなワンピース、前髪を少し短くして三つ編みにした髪。最後に伊達眼鏡。
 アレンジしたのはたったのそれだけだ。だが元々可愛らしいからか、それだけの変化でも印象は大分違う。
 相変わらず固い表情ではあるものの、漂う暗い雰囲気も大分薄れている。
「すげぇ……って、猫背も直したのか?」
「猫背矯正パッドってあるだろ? あれをつけてやったんだ。あとはこの子がカラコンを外してくれればよかったんだけど、頑なに断るものだからこれくらいしか出来なくて残念さ」
「いや——でも上等だと思うぞ」
 本人は少し俯きつつ、珍しく困ったように眉をハの字にさせている。
「ははっ、恥ずかしいのか?」
「べ、別に。それよりもありがとうございました」
「いやいや、いいよ。これが僕の生き甲斐みたいなものだからね」
「生き甲斐……」
「——?」
 生き甲斐という言葉を聞いたとき、撫川は少し遠くを見た——ような気がした。


    ◇  ◇  ◇


 夕日はすっかり沈んだが、俺らは再び件の高台までやってきた。
 撫川はスクールバッグの他に、自分の制服が入った紙袋を持っている。買った服を直ぐに着替えたためだ。
「……どうだ?」
「?」
 夜空を見上げる撫川に、何気なく会話を持ちかける。
「可愛くなれたと思ってるか?」
「——えぇ。少しは」
「そうか」
 ならばよかった。
「——貴方のお陰です」
「は? 俺?」
「実際に私を変えてくれたのは堂島さんですが、切欠は貴方でしたから」
「そ、そりゃどうも」
 何気なく近寄ってきた撫川からは、先程買ったらしい香水の香りが漂ってくる。
 きつくないがしっかり香る、優しいバラの匂いだ。
「明日のみんなの反応、どうなるだろうな」
「ふふっ、どうでしょうか。案外冷たいかもしれませんよ?」
「……」
 撫川が笑ったところ、初めて見たような気がした。
「——それだよ」
「?」
「そうやって笑ってればいいのにさ、何でいつも固いんだ?」
「……簡単には笑えませんから」
「?」
 すると撫川は俺に向き直り、自分の目を指差して見せた。
「私がどうしてカラコンをしているのか、分かりますか?」
「……えっと」
 何故かと聞かれても、理由に見当がつかない。
「どうしてなんだ?」
「所詮簡単なこと。この目が嫌いだからです」
「……ん? ん?」
 確かに簡単なのだろうが、理由の理由が謎である。
「親と同じ目だから、ですよ」
「嫌なのか?」
「えぇ。無駄に私に期待だけして、結局は勘違いしただけの馬鹿な親と同じ目ですから」
「——」
 察するに撫川、もとい哀の両親は親バカで、それが今や期待はずれな子供に成り下がったと思い込んだ。
 この様子では会話もあまり無いのだろう。何となく、家族らしい家族を何処かしら見失った様子が想像できる。
 で、結果的にさっきまでの暗く地味な哀を形作ってしまい、哀本人も両親を嫌悪することとなってしまった、と。
「哀の両親は何を期待した?」
「私にも分かりません。所詮は何かしら、この子は出来る子! みたいなくだらない幻想を思い描いていたのでしょう」
「親バカに適当に期待されて、でもって応えられなかった結果がこれと」
「えぇ」
「——その幻想、どこかの主人公に打ち殺してやりたいものだな」
「全くですよ。でも実際、壊れたのに変わりはないのでしょうけど」
「まあ、な」
 ——こういうとき、俺はどうすればいい。
 自然な形で打ち明けられた、哀とその両親との関係。
 果たして彼女は吹っ切れたいのか、或いは——
「でも、皮肉ですよね」
「?」
「これだけ親を嫌っても、非日常をいつかって夢見てる自分もいるんです。これ、親に似たことですよね」
 ——あぁ、やっぱりそんなことだろうとは思った。
「そうだろうな」
 何故って、今こうして以前より綺麗になった撫川といえば、どこか楽しそうな表情をしているのだから。
 表面上では無表情。でも内からは、そんな感情を滲ませているように思えるのだ。
「あの」
「?」
「明日、私は皆の反応を窺います。そして気分次第では、また明日貴方には私とここまで来てもらいますから」
「上等」
「ありがとうございます。それではまた明日」
「あぁ、おやすみ」

 ——少なからず吹っ切れたくとも、既に非日常を垣間見ているような。
 俺が見送った背中は、そんな複雑でも真っ直ぐな撫川哀だった。


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