二次創作小説(映像)※倉庫ログ

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吹雪兄弟の事件簿    完結
日時: 2012/08/07 15:38
名前: しろお (ID: 76WtbC5A)

 じっちゃんの名にかけて…

 今回、短編集ってことで、白恋小学校の七不思議をやろうかと。なんて言っちゃってますが、ただ敦也が生きていたころの話をやりたいだけです。
 主にホラーです! 白恋小学校の七不思議を解決していきます。
 後付け設定ですが、吹雪の祖父吹雪元徳は探偵業を営んでいた…ということにしておいてください。








吹雪兄弟の事件簿(短編集?)            







  ファイル1    理科室の事件



      
 1



 秋だが、紅葉なんてものはない。なぜならここは北海道だからだ。
 白恋小学校にて。
 小学生グループの男女二人が、昼休みに一つの机の回りに集まって何か話している。
「七不思議?」
 髪の赤い、首にマフラーを巻いている少年がぶっきらぼうに言った。
「この学校に、七不思議なんてあるの?」
 白髪の少年は、背の高い女の子に訊く。少年の右胸に名札がついており、吹雪士郎と書いてある。背の高い金髪の女の子の名札には真都路珠香(まとろじゅか、と漢字の隣にひらがなで書いてある)、背の小さい茶髪でおかっぱの女の子の名札には荒谷紺子。吹雪士郎によく似ている首にマフラーを巻いている少年だけ、名札をつけていない。
「なーな不思議! なーな不思議! なんなんだ? なんなんだ? なんなんなんなんだ? なんなんだ? びりーぶぅー、俺お前、びりーぶぅー!」
 髪の赤い少年が話をごまかそうとへんてこな歌を歌い出す。
 珠香がむっとした顔で答える。
「だから! それを確かめに行こうって言ってるの!」
「季節外れ! 北海道で夏って呼べるほど暑い時なんて、八月のはじめくらいのもんだぜ。なあ、兄ちゃん」
「でも楽しそうだなぁ」
 士郎はにこにことしている。「少年探偵団みたいだね」
 北海道ではそれなりに名の通った名探偵、吹雪元徳の孫である彼は、妙に乗り気だった。
「もしかして敦也くん、七不思議とか怖いの?」
「ばっ、紺子てめっ! んな訳ねっ、ねえだろうが! ばーか!」
「敦也はね、怖いテレビがすっごくにが……もごもご」
 敦也は士郎の口を塞いでいる。2人は兄弟だが、怖いものが苦手な敦也に対し士郎は大好きだ。
「わかったわかった! 七不思議を調べればいいんだろ? そんなの簡単じゃん! よゆーよゆー。で、何から行く?」
「うーんとね、じゃ、まずは理科室の噂から確かめにいこっか!」
 真都路がそう言うと、紺子が嬉しそうにぴょんぴょん跳ねた。「おもしろそうだね、それ」と士郎は笑顔を保っている。敦也は一人机に突っ伏して頭を抱えた。
(り、りかしつ……七不思議なんてガキの噂だからたいしたことねえだろって思ってたらわりと本格的なところ出してきやがったちきしょー真都路くそおんな……! あわあわあわ……)
「敦也くん、大丈夫?」
 紺子が敦也の肩のうえにぽんと手を置く。
「え? 大丈夫ってなにが? 俺にいってんの? おまっ、やーめーろーよー。理科室なんてよゆーに決まってンだろ。俺に任しとけ!」
「わぁ、敦也くん心強いなぁ!」
 紺子が笑いながら手をぱちぱちと叩くと、敦也は頬を赤らめて「任しとけ!」ともう一度言った。
 どうやらこの敦也少年、紺子にいいところを見せたいらしい。
「よっしゃあ! そうと決まればいくぞお前ら!」
 敦也が腕をかかげて先陣を切る。
 士郎は列の後ろで、顎に手を当て七不思議に心を巡らせていた。
(七不思議……絶対に解いてみせる。じっちゃんの名にかけて)
 

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Re: 吹雪兄弟の事件簿  (短編集?) ( No.1 )
日時: 2012/01/26 23:27
名前: しろお (ID: I/bOiKKq)








 理科室の前へ来た。
「これ、鍵とかかかってるんじゃないの?」
 士郎が理科室のドアに手をかけ横に引っ張るが、やはり鍵がかかっているようで開かない。
「だいじょうぶ! わたし持ってるよ!」
 真都路が鍵穴に鍵を差して、ドアを開けた。
 部屋の奧で黒カーテンが全て閉められているため、ひどく暗い。紺子が懐中電灯のスイッチを入れて、部屋の中を照らそうと理科室に向けて、最初に光に当たったのが人体模型の顔だったため、一同はひゃあと間抜けな声を出して驚いた。
「びっくりした……! あれ、敦也?」
「…………へっ? なに!?」
 敦也は立ったまま、半分意識が飛んでしまったようで、吹雪に声をかけられるまで口をぽかんと開けたまま硬直していた。
「こ、こわいよお……」
 紺子が小柄な体を士郎に寄せる。士郎は手を紺子の背中に回し、
「大丈夫、僕が守るから」
 と笑って言った。
「お、おい紺子。俺が守ってやってもいいんだぞ」
「えー。敦也くん、びびってんじゃん」
 びびってんじゃん、びびってんじゃん、という言葉がぐるぐると敦也の頭の中で宙を舞い、またもや敦也は固まる。
「あっ、スイッチあった!」
 真都路が部屋の電気をつける。部屋が明るくなれば、そこはただの理科室で、椅子が整理されていて人体模型もあり、床と黒板が綺麗な、ごく普通の風景だった。
 敦也はそれで怖くなくなったのか、調子に乗って人体模型の前まで歩み寄っていった。
「ほら、ただの人体模型じゃんかよ! べつに普通だよ! ほら、こんなことしても平気だぜ!」
 敦也が人体模型の腹をこつんこつんと軽く殴る。すると、バランスが取れているはずの人体模型が敦也に向かって倒れてきた。
「うおおお!!!!」
 敦也は持ち前の反射神経をいかんなく発揮し、横にとびのいて避けた。その代わり、人体模型は床に激突し、がっと鈍い音がした。
 一同は、まさか人体模型が腹を殴られたから倒れてきたんじゃないか、と期待しつつも驚いていた。
 その中でとびきり驚いたのは殴った本人の敦也で、しばらく目を丸くして、人体模型の後頭部を何もしゃべれずに見つめていた。
「あ、敦也。戻すの、手伝うよ」
 士郎がてくてくと理科室の中を進むと、敦也が急に「くそっ!」と叫び、人体模型の顔を思い切り蹴飛ばした。人体模型の頭は不遇にも窓ガラスを割り、外へ出て行ってしまった。
 その後四人は職員室へガラスを割ったことと鍵を勝手に職員室から取ったことを謝りに行き、外に出てしまった人体模型の頭を探しに出たが、なぜか見つからなかった。
 職員も四人と一緒に探したが無かったので、結局学校の経費で頭だけ買おうということになり、新しい頭が来るまでの間、理科室の人体模型は首から上が無いまま、理科を学びに来た生徒達を震え上がらせる役目を果たすこととなった。
  
 

Re: 吹雪兄弟の事件簿  (短編集?) ( No.2 )
日時: 2012/01/26 23:27
名前: しろお (ID: I/bOiKKq)

 3



 白恋小学校の人体模型は古い形のものだったため、発注しても製造がしばらく遅れるらしかった。
 そんな時、白恋小学校で、怪奇事件が起きた。
 六年生の教室で、女子生徒の遺体が首から上が無い状態で発見されたという。北海道のこの平和な町で、こんな不気味な事件が起きるのはとても珍しいことだったためこの事件は北海道どころか全国にまで広がった。
 警察はこれを殺人事件と見て、事件をかぎつけたテレビ局や記者達が白恋に押し寄せ、授業どころではないという北海道の方針で白恋小学校は一週間の間学校閉鎖となった。
 士郎と敦也が家で学校閉鎖による休日を楽しんでいたある日のこと。
 普段の休日は、二人はいつも公園でサッカーをやるか、スキーやスケートなどの遊びに没頭しているが今日は雨のためプレステ2でサッカーゲームの「ウイニングイレブン」の対戦をしていた。
「あっ、兄ちゃん今のフェイント何!? ずるい、どうやってやってんの!?」
「教えないよーだ。教えたら、負けちゃうもん」
「ああ! ちょっ、メッシ強すぎ……あああ!! くそー。これで1−5かよー! バルセロナずるいよ! 次俺がバルサ使うからな!」
「敦也が使ってるマンチェスターユナイテッドだって、強いチームなんだけどなあ……あっ、電話だ」
 ゲームコントローラーを置いて、士郎は受話器を取る。
「もしもし、吹雪です」
「あっ、吹雪くん?」
「えっとーその声は珠香ちゃんかな? どうしたの?」
「うん。例の、事件のことなんだけどさ……」
「ああ、首の事件のことだね」
「そうそう、それ。紺子ちゃんとも話したんだけど、この事件の犯人ってさ……」
 実はこの事件の犯人は、まだ逮捕されていない。
「あの人体模型なんじゃないかな?」
「はあ? あっ、ごめん。思わず口が」
「人体模型、敦也くんに頭蹴られて、代わりの頭を探してるんじゃないかって、紺子ちゃんが」
「や、やめてよそんな話。あっ、そんなことよりさ、明日敦也と僕でスキー行くんだけど、紺子ちゃんと珠香ちゃんも行こうよ!」
「スキー? いいね、じゃあ紺子ちゃん誘っておくね!」
 平和な町なため、殺人事件が起きても自分にその鎌が降りかかる心配はせずに、平気で遊ぶ。
 この数日後、恐ろしいことに、また首無し事件が起こる。場所は五年生の生徒の家。兄妹揃って首が無くなっていたという。
 この時点でまだ彼らはこのことを知らない訳だが、奇妙な点はここからである。

Re: 吹雪兄弟の事件簿  (短編集?) ( No.3 )
日時: 2012/01/26 23:28
名前: しろお (ID: I/bOiKKq)




 二度目の首無し事件が発覚し、いよいよ警察の捜査網は厳しくなってきていた。四人はスキーに行った後スケートにも行く約束をしていたが、子供の外出禁止令が市役所から出されたため、かなわぬことになってしまった。
「ねえ、兄ちゃん。俺のベッドに、血みたいのがついてんだけど……」
 ある日敦也が、読書にふける士郎に話しかけた。
「なんで?」
「いや、俺にもわからないっていうか」
 士郎が敦也のシーツを見るとたしかに血が一滴染みついた後がある。ちなみに、士郎と敦也は一つの部屋を共有していて、二段ベッドで生活している。上は士郎、下は敦也のスペースだ。
「……二度目の事件のとき、被害者は自宅で殺されている。だとすると、犯人は家に侵入したことになるね。そして敦也のベッドシーツに染みた血痕……。解けた」
「兄ちゃん、小説の読み過ぎ」
 士郎の右手には、コナン・ドイル著の「緋色の研究」がある。シャーロック・ホームズシリーズの、第一編だ。
「犯人は、被害者の家に行ったあと、この家にも来ている……?」
「やっ、やめろよ! 冗談でもやめろよそんなの! ありえないって! 鍵は閉まってたんだしさあ!」
「なにはともあれ、あの日スキー行ってよかったね。行ってなかったら、本当にやられてたかも」
「もうしらね! 俺、外でサッカーしてくる」
「だめだよ。今、外にでちゃあぶないよ」
「でも暇だしさあ、一日一回はボール蹴らないと落ち着かないよ」
「敦也、士郎。おやつできたよー」
 母の声を聞いて、敦也は士郎から視線を外して部屋から出て階段を降りていった。士郎も後を追う。
「クッキーよ」
「臨時ニュースです! 最近北海道を恐怖に陥れている『首無し事件』、三度目の惨劇が起きました!」
 つけてあったテレビのアナウンサーが、声を大にしてニュースのあらましを説明している。
「被害者はまたもや白恋小学校の生徒です。外出禁止令が出ていたにもかかわらず、遺体は公園で発見されました。北海道は白恋中学校も学校閉鎖にする方針を示しており……」
 その時に電話がかかってきたので、士郎と敦也はびくっと体を震わし、クッキーのかすが落ちてしまった。
 士郎の母親が電話に出る。「珠香ちゃん」と士郎に受話器を手渡した。
「もしもし……」
「ニュース、見た?」
「……見た」
「やっぱりおかしいよ。だって、時期がおんなじだもん。あの人体模型の頭が無くなったのと、事件が起きるのが」
 電話の真都路の声は、ひどく疲れているようだ。
「関係無いかもしれないけど、敦也のベッドシーツに血痕がついてたんだ」
 母親に聞こえないように、士郎は声を縮めていう。
「けっこん? ってなに? あのけっこんのこと?」
「血のこと。どうも、スキーに行った日についたものみたいで、敦也も誰もその血に覚えがないんだ」
「もしかして……人体模型、敦也くんのところまで辿り着いたのかな?」
「え?」
「だから! ホラー映画とかでありそうじゃない!? 自分の頭の代わりを、他の誰かので補おうとするっていうさ。自分の頭を無くした人を探して、その人の頭でさ……」
 小学生の妄想は留まることを知らない。
「それが、敦也?」
 自分の名前が出て、士郎の隣の敦也はクッキーを食べる手をとめる。
 

Re: 吹雪兄弟の事件簿  (短編集?) ( No.4 )
日時: 2012/01/26 23:29
名前: しろお (ID: I/bOiKKq)

 5


 


 士郎が担任の先生に連絡を取る。
「あの、先生。お願いがあるんですけど」
 吹雪の頼みとは、理科室に人体模型があるかどうか確認してほしいということだった。
「ないぞ? たぶん、撤去されたんじゃないかな。新しいのを買うんだろ。それがどうかしたのか」
 人体模型は無くなっているとのことだった。
 吹雪の背筋に冷たいものが走った。受話器を置き、暗い面持ちで部屋に戻っていった。
 敦也はサッカーの教養本を読んでいる。
「敦也、頭、探しに行こう」
 いきなりそう言われたが、敦也は覚悟を決めていたようで本を投げて上着を羽織った。
「俺と兄ちゃんだけで行くんだろ?」
「あたりまえだよ」
 深夜。両親が寝静まったのを見計らって、敦也と士郎は家を出た。
 二人とも無言のまま、裏口の校門から入る。「Keep Out」と書かれたテープが至る所を塞いでいた。
 それをかいくぐり、校舎の裏まで来た。ちょうど、見上げれば三階に理科室がある。
 頭を探し始めたが、やはり見つからない。
「なんで無いんだよ……くそっ! 兄ちゃん、見つかっ……あれ、兄ちゃん、どこだよ」
 いつのまにか、士郎の姿が無くなっている。敦也は不安がって懐中電灯をいたるところに照らしてみるが、士郎はいない。
「兄ちゃん!? どこいったんだよ!」
 まさか人体模型にやられたんじゃないか、と思って敦也の不安は一層増してくる。目が血走り、息は荒くなって、泣き出す寸前といった感じで懐中電灯を振り回す敦也。
 とんとん、と肩を叩かれた。士郎だと思って、泣き出しそうになりながら、安堵の笑みで敦也は後ろを振り向く。
 敦也が蹴っ飛ばした人体模型の顔と、目が合った。
「うわああああぁぁぁぁぁー!!!!」
 恐怖の叫びをあげて、へなへなと地面にしりもちをつく敦也。
「ごめん敦也、僕だよ!」
 ひょいっと人体模型の顔が士郎の顔に変わった。のではなく、士郎が人体模型の顔を使って敦也を驚かせたのだ。
「兄ちゃん、ひどいよ!」
「ごめんごめん。でも敦也、反省しなくちゃ。物を蹴っ飛ばしたりしたら、いけないよ? いまからこれ元の場所に戻しに行くけど、ちゃんと謝るんだよ?」
「わかった、わかったよ……」
「うん、反省してるなら人体模型さんも許してくれるよ、きっと」
 この後二人は理科室へ行き、頭を元の場所に戻した。その次の日から、ぴたっと、首無し事件は起きなくなった。
 後日談だが、この話の終わりの方には、二つの不審な点が見られる。
 まず、なぜ理科室の鍵が開いていたのか。そして二つ目に、担任の先生は理科室にはもう人体模型が無いと言っていたのに、なぜ士郎と敦也は頭を戻せたのか。
 白恋小学校の理科室には、今も黒いカーテンがかかっている。
    



                 ?   ?    ?



 
 びくびくしながら書きました。え、怖くないですか。僕はとても怖かったんですけどね。これを読んで怖くないということは、作者の描写不足、もしくは相当に肝が据わっている方です。
 でもホラーものって、なんだかアイディアが出やすくていいですね。
 えっと、短編集……なんですよね、これ。


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