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- 俺と携帯獣のシンカ論 【ポケモン対戦小説】
- 日時: 2015/04/29 01:22
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)
『読者の皆様へ』
どうも、初めましてタクとモノクロとOrfevre(オルフェーヴル)です。この小説は以上の3人によって考案・執筆をしております。所謂合作です。ただ、現在はモノクロと高坂桜の2名はリアルでの都合によって直接執筆をすることができません。
よって、タクが1人でしばらくは筆を執ることになると思います。
この小説は、ポケットモンスターXY、ポケットモンスターオメガルビー・アルファサファイアを原作とした小説……というよりは、このゲーム自体を中心に展開する小説となっております。
つまり、現実世界での対戦だとかそんなものを描いた作品になります。
ポケモン廃人の方から(作者も廃人です)殿堂入りしたばかりのネット対戦初心者の方まで気軽に読んでいってください。
それでは、また。
第一章:飛翔の暴龍/咆哮の悪龍
>>01 >>02 >>03 >>07 >>08 >>12 >>13
第二章:携帯獣対戦のすゝめ
>>14 >>15 >>16 >>18 >>19 >>20 >>21
第三章:害悪支配者
>>22
- 第二章:携帯獣対戦のすゝめ ( No.15 )
- 日時: 2015/08/20 21:11
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)
***
その後の対戦でも彼女の奇行は続いた。
ボーマンダの飛行複合を忘れて地面技を撃ったり、バタフリーでメタグロスに突っ張ったり、最後は剣の舞→波動弾の黄金コンボを繰り出す始末。よく殿堂入りが出来たものである。
そのほかにも本来なら抜かせるはずのボーマンダをマフォクシーが抜けなかったりなど育成も滅茶苦茶な点が見られた。
「……」
「す、すいません、あたし対戦とか下手で……」
いや、下手以前の問題である。
パーティは全て殿堂入りに使ったポケモン、努力値・性格は当然滅茶苦茶、技構成も秘伝技ばかり……。
「レーティングバトルとかやっても全然勝てないんです。旅で最後まで連れていったポケモンなのに……」
「ま、確かに旅で連れていったポケモンには愛着があるわな」
ふぅー、と息を吐いた翼は彼女には勝ちたいという強い意志がある、と感じた。
悔しいだろう。翼だってそうだ。
厳選を繰り返しても、勝てないときだってあるのに。
だが、今のままでは夏奈は絶対に勝てない。
対戦という境地に踏み入れた自分達には。
だが、何と言ったものか。翼だって殿堂入りしたパーティでは対戦で勝つことはできないと知ったとき、ショックだった。
「……勝ちたい?」
ふと、夏奈と翼の視線が机に座っていた静谷に向いた。
こくり、と彼女は頷く。
「誰だって……負けたくて対戦やってる人なんか、いるわけないじゃないですかっ」
さっきまで元気だった彼女の顔に雲がかかったようだった。影が差し込むような、そんな顔だ。
とても、悔しそうだった。
「じゃあ教えてやるぜ、俺達が」
しかし、翼が暗雲を切り開くように言う。
「ただし、俺らに付いて来る覚悟があるんならよ」
「い、良いんですか!? そこまでしていただいて!」
「強くなりたい、その意思があるならあたし達は応援する」
「お、静谷。気が合うじゃねえか。それじゃあ、初心者用レッスンパート1だ-----------」
***
「タイプ相性、プレイスキル云々は後回しだ。お前の持っている問題は、それ以前なんだよ」
ごくり、と夏奈は息を呑む。
翼はふぅ、と息をついて言った。
「厳しいことを言う様だが、お前のポケモンははっきり言って------------弱ぇ」
ズガーン、と彼女の頭に落雷が降りかかる。
あははは、まあ薄々気付いてましたよー、と彼女の口から漏れているのが分かった。
全く先の思いやられる後輩である。
「でも、例えばあたしのマフォクシーは1匹で四天王全員のポケモンを倒せるんですよ、弱いわけがないんです!」
はぁー、と翼は溜息をついた。
懐かしいものである。旅の相棒であるゲッコウガでレーティングに挑み、ボッコボコにされた思い出を。
「お前のマフォクシーは確かに1匹で四天王全員を倒せるかもしれない。が、そんな甘い考えは捨てろ」
「え、えええ!?」
「え、じゃねえ。さっきも言ったとおり、公式のフラットルールではレベル50以上のポケモンはレベルが50に統一される。つまりを言えば、レベルによるごり押しが通用しない」
確かに旅では相手が自分よりレベルが低かったりして楽に勝てるときが多い。
しかし、それはあくまでも”旅のポケモン”。
対戦のためだけに選別され、鍛え上げられた”対戦用のポケモン”相手では勝てるわけがないのだ。
「辛いかもしれないけど、旅の仲間じゃ負ける。諦めて」
「ポケモン対戦には3つの重要な隠しステータスがある。俺らはそれらをまとめて”3値”と呼んでいる」
「これを知らないと、相手と同じ土俵には立てない」
ぽかーん、とした様子で突っ立っていた彼女は口を開いた。
「クトゥルフでも始めるんですか?」
「は?」
「いや、だって先輩”SUN値”って」
「……ニャル子さん今関係ねぇ! クトゥルフも関係ねぇ! 3だよ、”3値”の3は数字の3だよ!!」
「ひえええ、SUN値ピーンチ!」
「しつけーんだよ!!」
***
「というわけでだ。第一回、3値を学習しよう、チキチキ補習授業の時間がやってきました、ドンドンパフパフ〜」
「先生、古いネタやらないで下さい」
急に敬語で話しだし、机を綺麗に並べて前に夏奈と静谷を座らせた翼は、伊達眼鏡を掛けて指示棒片手に黒板の前に立っていた。しかも、これを終始仏頂面でやっているのが非常にシュールである。
白いチョークででかでかと3値と書いている。
「というわけで、対戦初心者の東雲さんのために今日は速山先生が時間をとって補習授業をします、よろしくね」
「先生、何であたしまで生徒になってるんですか」
「はいはい、授業は静かに受けましょ----------」
次の瞬間、コンパスが翼の額に刺さった。
表情はいつもの仏頂面だが、静谷の顔から明らかに殺意と憎悪のオーラが滲んでいるのが分かった。
「あ、あー、とりあえず、このキャラ面倒だからもう良いや。いだだだ、つーわけでだ。まずさっき言った3値っつーのは勿論3つある。これがぐだぐだだと、東雲、お前は今後絶対に対戦で勝つことは有り得ない」
「うっ」
「だが、逆に言えばこれさえ覚えればレートに潜ってる廃人共と同じ土俵に立つことができる。もしかしたら初陣で勝つかもしれねえ」
ぱああっ、と夏奈の顔が輝いた。
全く分かりやすい性格の少女である。
さて、と翼は言うとまずは”種族値”と黒板に書いた。
「まずは種族値だ。よーするにポケモンそのものの能力で、例えば------------」
ピカチュウ
HP:35
攻撃:55
防御:40
特攻:50
特防:50
素早さ:90
合計種族値:320
ボーマンダ
HP:95
攻撃:135
防御:80
特攻:110
特防:80
素早さ:100
合計種族値:600
「と、このように、だ。ピカチュウは素早さが伸びやすく、ボーマンダは攻撃力が高いが、ボーマンダの方が圧倒的に種族値は高い。ま、ポケモンに絶対はないからピカチュウがどう足掻いてもボーマンダに勝てないってことはない。ちなみに、ボーマンダの合計種族値は600だが、この600という合計種族値を素の状態で持つポケモンは伝説を除くと7匹しかいない。これを種族値最強クラスのポケモンに送られる名誉の称号、”600族”という」
「じゃあ、ボーマンダはとても強い部類に入るんですね!」
「種族値だけなら、だけど。でも600族はいずれも弱点が共通しやすいから、これだけで組んだらバランスがガタガタになる。ポケモンは種族値だけじゃ決まらない」
静谷の種族値だけなら、という言葉が地味に刺さる翼だった。いや、本当にやめてさしあげろ。
「ちなみにポケモンが進化すると強くなるのは、」
ライチュウ
HP:60
攻撃:90
防御:55
特攻:90
特防:80
素早さ:110
合計種族値:485
「このように、種族値が上がるからだ。これでようやくボーマンダを上回る素早さを手に入れられる」
いったん説明を終えると、ふぅと翼は息をついた。ちなみに、上のピカチュウとボーマンダのデータはこの小説の作者の1人、モノクロの雑談スレ『DM第三相談室』に載っているものから引用している。3値について詳しいことは手っ取り早い話、そこを見ると良いかも知れないが、できればこのままお付き合い願いたい。
さて、翼の疲れた様子を見かねたのか、静谷が今度は説明を始めた。
「次は努力値。これはスパトレとかで確認できる基礎ポイントと意味は同じ。これを溜める、俗に”振る”ことでポケモンのその能力はもっと伸ばせる。努力値は510まで溜められて、そのうち508が適用される。1つの能力値に252まで溜められるから、最初はアタッカーなら攻撃&素早さor特攻or素早さの優れている方に振ると良い」
人間でもポケモンでも努力をしなければ強くはなれない。
努力値は正に、そのポケモンの努力指数なのだ。
そして、夏奈のポケモンをスパトレで見てみたが、やはり滅茶苦茶で中途半端な振り方になっている。
当然だろう。道中でポケモンを倒しても努力値は手に入るが、そのため変なところに努力値が振られてしまいがちなのだ。
「あはは、これじゃダメですね」
「攻撃が高くて特攻が低いポケモンに特攻の努力値を振るより、攻撃に振った方が無難」
「ちなみに、防御型ならHP&防御orHP&特防に限界まで振ると良いぜ。後、素早さの種族値が元々低い奴はアタッカーでも、素早さよりHPに振った方が良いかもな」
「慣れたら、調整っていってもっと複雑な振り方にしても良い……大丈夫?」
静谷が声を掛けるが、見れば彼女は目を回している。
「えーと、努力値が252で……」
「まあ、焦らずじっくり覚えていこうぜ。俺のボーマンダだって、攻撃と素早さに限界まで振ってるだけだしさ。スパトレとかを使うと便利だぞ」
さて、と翼は笑って続けた。
「次は、俺達が厳選を繰り返す理由である、3値の中で一番難儀な数値だ----------」
- 第二章:携帯獣対戦のすゝめ ( No.16 )
- 日時: 2015/01/02 08:43
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)
黒板に”個体値”という言葉が刻まれた。
翼は頭を抑えながら言う。
「個体値って言うのはそのポケモンの生まれもっての才能で、0〜31までそれぞれの能力値に振られるが、これが高ければ高いほどそのステータスは高くなる。ちなみにこれは、努力値と違って変えられず、そしてポケモンの個体差で種族による違いじゃない。これのために俺らはいつも厳選をしているわけだ」
「31の能力を俗にVっていって、Vの数ごとに3V、5Vとか言うわけ」
「へえー、それじゃあ6Vが最高なんですね!」
「6Vはそうそう生まれねーよ」
大抵のポケモンは、攻撃か特攻のどちらかが不要である。そのため、それ以外の能力が全てVの5V個体が対戦ではよく使われる」
「まあ、それでも赤い糸っていう個体値を引き継がせるアイテムを育てやに預けるポケモンに持たせるなりして、更に結構粘らないといけないからな。5Vでも」
「う、うわあ、大変そうですね……」
「まあ、これって結構妥協しても勝てるから。最初のうちは。それに、フレンドサファリで手に入れたポケモンは最低でも2Vだから、此処から始めると楽だぜ」
不安そうな顔をした夏奈を励ますように、翼は言った。
「まあ、後はポケモンのことも纏めてある雑談スレ『DM第三相談室』の対戦初心者用記事で確認すれば良いだろう」
「……ステマ」
「う、うるせえ静谷!」
すると、夏奈は溜息をついた。
「先輩達は、こんな大変なことをしてたんですね」
「ま、慣れたら楽さ」
「……私、ポケモン対戦を舐めていました」
はは、と自虐するように笑う彼女を見て、翼は何となく不安なものを覚えた。
彼女はそんな笑みを浮かべながら、続ける。
「まだ、入り口にも立っていなかった。それで悔しいとか、馬鹿げてたんですよね」
「何言ってるんだ」
諭すように翼は言った。
「俺だって、その”悔しい”って気持ちをバネに此処まで辿り着いたんだ」
「誰だって、最初は初心者だから」
その言葉を聞いた彼女は、吹っ切れたような表情になった。
そして、元の笑顔で言った。
「そうですよね! つまり、もっともっとこれからあたしはポケモンを極めることができるんですよね!」
それは、前向きな向上心が現れていた。
今の手持ちでは勝てない、その程度でめげてしまうようでは、所詮その程度。
だが、彼女は違った。
より、強くなろうと言う強い意志が感じられる。
それを聞いた翼は安心したように言った。
「よし、その意気だ。目標は今の環境でもそこそこの勝率を上げられるパーティを作ることだぜ!」
「はいっ! ---------パーティってどうやって組むんでしょうか?」
「……まあ、そうだよな」
***
「ええーっ、というわけで第二回……もう良いや。とりあえず、誰をエースにするか、だ」
「エース、ですか?」
「攻撃の軸となるアタッカーのこと。あたしだったらサザンドラ」
「俺の場合は、ボーマンダだな」
エースは、当然突破力の高いポケモンが好まれる。
例えば、半減されることが少ないドラゴンタイプや、多くのタイプに弱点を突ける格闘タイプがエースとして採用されることが多い。
さて、良さそうなエース候補は以下の通りだった。
「まずは1匹決めるぞ。後でこのリストにあるポケモンをタイプ被りがないならもう1匹パーティに入れるかもだから、気楽に選べ。今、持っているかどうかは考えるな、使いたいやつを選ぶんだ」
「使いたいやつ、ですか」
ガブリアス:龍・地面という一致技の範囲の広さが優秀
リザードン:XかYか、メガシンカがどちらか読ませない上に対策がバラバラ
カイリュー:マルチスケイルで耐えて竜の舞を積み、一致逆鱗や入手は難しいが神速で場を壊滅させる。
バシャーモ:夢特性・加速が優秀。メガシンカで更に強力に。
ギャラドス:耐性・耐久、共に文句なし。攻撃力も高い。
ルカリオ:メガ特性・適応力で超火力。鬼火が入りやすいので特殊型もお勧め。
「とまあ、まだいっぱいあるぞ------------」
「バシャーモを使いたいです!」
「え」
ずっこけそうになった。ルカリオを使っていたから、てっきりそれになるかと思ったのだが。
「じ、実はあたし、加速アチャモは受け取ったんですけど、フォッコとタイプが被るから旅パには入れてなくって……せっかく旅で使いたかったのに、もったいないなって」
「対戦ではバシャーモはすっげー強いんだ。エースで使ってみる価値は大有りだぜ」
「はいっ!」
というわけで、相性補完とかそういうので、パーティを決めていった。
そして、ようやく6匹が決まったのだった。
「構成は物理アタッカー2体、特殊アタッカー2体、物理受け1体、特殊受け1体が良いわけだから、なかなか良いんじゃないか?」
「えへへ、そうですかね?」
「じゃあ、まずはこれらのポケモンを厳選しないと、だな。まずはバシャーモから----------」
「と、ところで厳選って時間はどれくらいかかります?」
ああ、と翼は軽く声を発すると、言った。
「1匹で4時間くらいはかかるんじゃないの? 下手したら、よゆーで1日溶かすかも」
え、と夏奈の顔から血の気が引く。
「い、1匹だけで、ですか?」
「ああ、最初(0V)っから5V粘ろうとしたら、だな。それじゃあ、楽しい楽しい厳選の始まり始まり」
「あ、あ、あうあう」
「冗談だって! さっき言ったとおり、フレンドサファリで捕まえたポケモンを上手く利用すれば良いし、俺らが親になるポケモン貸してやるから厳選も楽になると思うぜ」
「これも、未来の廃人を育てるため。ちなみに、リオルやルリリみたいな卵未発見グループは野生産でも3V以上確定だから、覚えておくと良い」
この純粋な後輩を、静谷はガチで廃人化させる気満々である。とはいえ、言っていることは的を射ているのだが。
「あ、ありがとうございます!」
そうとは知らず、礼を言う彼女だった。
***
「や、やりました、とうとう全員のレベル上げが終わりましたよ、先輩!」
「一週間まるっと掛かったが、ようやく完成したな、お前だけのパーティが」
「妥協の二文字をプレゼントしたい」
えへへ、と照れ笑いをする夏奈。さて、折角パーティが完成したのだ。とりあえず、誰でも対戦をしたいものである。
さて、彼女はなかなか粘り強い人間だった。厳選も4Vでくらいでよしておけばいいのに、5Vを出す、と言ってなかなか引き下がらなかった。
それだけではない。
これは数日前のことだが、
「やったー! ガブの6V出ましたー!」
「マジで?」
ビギナーズラックというやつだろう。見事にこれを引き当ててしまったのだった。
加速バシャの厳選にやたら時間がかかった反動だろうか。(3時間)
6Vに遭遇することなんて、人生でそう何度もないだろう。
「さて、対戦するのは良いとして、どうするよ」
「……フツーにレートで良いじゃない」
「いや、折角だからこいつにも目の前の人間と戦うスリルを味わってほしいんだよな。だからと言って、俺はともかくお前が戦うのもアレだ。そこで、1人アテがあるんだよなー」
***
「あーん、コラてめぇ、何で俺らの縄張りに入--------げっ確かお前は、ヒィィィ!!」
ヤンキーは翼の姿を見ただけで驚いて逃げてしまった。
此処はヤンキー共の根城である体育館裏の倉庫である。
かなり広いので、彼らが根城にしていた。
が、しかし。さっきの下っ端の逃げていった方を進む翼と未歌。
此処にやってきたのは、ある人物に会いに来たからである。
「キョウさぁぁぁん、こないだのあいつらですよぉー!!」
「……騒がしい奴だ。お前ら今更何の用なんだよ」
番長・御剣。どっかりと椅子に腰掛けており、ビビっている他の不良とは違って馬鹿馬鹿しいと言わんばかりにデカい態度で迎え出た。
しかし、大勢から此処まで怖がられるのはちょっと心外である。
「いや、さ、何でこいつらそんなビビってんの」
「けっ、お前が不良を10人病院送りにしたとか言うからだろうが。……どーせはったりだろ」
「翼、ばっちりバレてるけど」
「ああ、嘘。本当は20人なんだわ」
「はったりも程々にしたらどうだ、テメェ」
「やっぱバレてたか」
「調子乗りすぎ」
もっと伝説を拡大しようとする翼だが、御剣は既にお見通しのようだった。
流石リーダー、そこらのヤンキーとは格が違う。
「はったりだって?」とざわざわ言い出すヤンキー共だが、それでもリーダーがやられたという事実は覆っていない。無闇に翼には手を出せないようだった。
好い加減、このノリも飽きてきたので翼は言った。
「ちげーよ。ちょっとポケモンの対戦を頼みてぇのよ」
「あ?」
がたり、と御剣は立ち上がった。
「何でまたテメェと」
「ちげーよ。俺じゃないんだね、これが」
「じゃあ静谷か?」
「ちげーよ、って3回目だよこれ」
はぁ、と息をつくと翼は言った。
「単刀直入に言うと-------------うちの後輩の初陣の相手、お前に頼みたい」
- Re: 俺と携帯獣のシンカ論 【ポケモン対戦小説】 ( No.17 )
- 日時: 2015/02/18 18:50
- 名前: Orfevre ◆ONTLfA/kg2 (ID: mHEGDCBg)
お知らせです。本作主人公・速山翼の作者イラストを添付しました……が、作者の希望により削除しました。
- 第二章:携帯獣対戦のすゝめ ( No.18 )
- 日時: 2015/02/15 13:49
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)
「いや、ストップ。そんなのおめーらがやれば良い話」
ガタリ、と立ち上がった御剣がドスを利かせた低音ボイスで詰め寄るが、それに臆した様子も見せない翼はサラリ、と
「どーしよっかなー、どーしよっかなー、こないだお前らがやらかそうとしたこと、全部先生にちくっちゃおうかなー」
笑い声混じりに言うのだった。
無論、これは本気ではない。翼とて、大事になるのは避けたいのである。
避けたいのであるが、最凶のカードをチラ付かせておき、事を有利に運ぶ。翼の中の交渉の常套手段の1つである。
「ぐむむむ……」
「いーじゃねぇか、別にこれくらい。それとも後輩相手の対戦ですら怖いのか」
「るっせぇ! んな脅し食らおうが食らわまいが、自分から行ってやる!」
御剣がそう叫んで出て行った後、翼は「ちょろい」と言いかけそうになったのだった。
静谷曰く「翼、こいつ使える」。
翼は「うん、まあこれからも色々協力してもらうか」とゲス顔。
が、間もなく御剣が「どこの教室だ?」と聞きに戻ってきたのでずっこけた。
***
-----------とは言ったものの。
まず、御剣は翼達が仕返しに自分をどこかに連れ込んで----------というのは何となく無い気がした。
翼の先日の言動からそんな卑劣な仕返しをする下郎には見えないので、仕方なく今回の誘いに乗ったのである。
つー訳で、ボロい空き教室に来たわけだが。怪しさ満載である。こんな教室よく見つけたなー、と。
中に入ると、元は普通の文化部部室だったのが、その部が無くなって寂れている、というのが率直な感想である。
鍵は壊れており、入れるようになっていた。教師も生徒も好き好んで旧校舎のこの教室には近寄らないのであるから、バレなかったのだろう。
「おい、夏奈。こいつがお前の対戦相手、御剣だ」
ぱっと見は、素直そうな少女だった。その後輩というのは。ただし、ぱっと見なので、まだ信用ならないが。
と、疑心暗鬼に陥ってみる。仮にもこの後輩を紹介したのは、”敵”の速山 翼だぜ、と。
---------しかし、初心者の後輩の初陣相手に回されるって、完全に俺は舐められているんじゃねえか?
「今日、わざわざ来てくれたんですよね! ありがとうございます!」
「お、おう……こっちこそよろしくな」
---------何だ、普通の女の子じゃないか。
面倒くさいのを押し付けられたかと思ったので、内心ヒヤヒヤしていたのである。
「だが、やるからにゃあ、手は抜かねぇ。勝たせて貰うぜ!!」
「こっちこそ!」
***
<選出画面>
夏奈
バシャーモ
ガブリアス
グレイシア
ゲンガー
ウォッシュロトム
ヌメルゴン
御剣
ハッサム
ガブリアス
ウルガモス
ズルズキン
ニャオニクス
ウォッシュロトム
---------ガッチガチだなぁ、オイッ!! 600属が2体かよ。
はっきり言おう、やはりこのパーティは高速炎アタッカーに対し、弱い。
ウォッシュロトムがいるのは、まだマシなレベルではある。格闘で等倍取られてしまうが。
それだけではなく、嫌な予感しかしない600属が二体。
(選出では夏奈が有利だな。バシャがいるだけで、相手の選出を縛れちまう)
(翼のときもアロー警戒でウォッシュロトム出してた。ぶっ刺さりだから仕方ないんだけど)
(ただし、思ったほど突破は簡単じゃねえぜ。御剣には、バシャ対策がもう1体いる------------!!)
----------しかもバシャまでいる、もう初手降参安定----------なーんて、んな訳ねぇだろうが! 自分の弱点把握してねぇプレイヤーはプレイヤー失格だ、俺様だって自分のパーティに何がガン刺さりか分かってらぁ!!
ニャオニクス、だ。
リフレクターを張ってしまえば、バシャの攻撃など、簡単に遮れるのだ。
夏奈に聞こえないように離れて小声で話している翼と未歌は現在の状況を吟味していた。
(特に欠伸無限ループはうざってぇことこの上ねぇ)
(欠伸の代わりに麻痺撒きで電磁波を搭載してるかも)
(それもやべぇな。夏奈はどうするんだろう?)
(……嫌な予感)
そう。ニャオニクス♂の夢特性は”悪戯心”。先制して、リフレクターや光の壁、電磁波、欠伸などのうざったい補助技を撃つことが出来る。
つまりバシャーモにも強いのだ。
---------壁込みならばH振りでもメガバシャのフレアドライブ確定3発!! 返しのサイコキネシスで確定2発!! しかし、フレドラの反動で1撃で行けるはずだ! 万が一、珠両刀だった場合でも、HD特化だから問題なし、珠物理なら余りにも大きすぎる反動で落とす!!
今回、夏奈のバシャーモにはニャオニクスが鬼門になりそうである。
----------後は、H90D150という、ギルガルドシールドフォルム以上の特殊耐久を持つヌメルゴンがきついな。ならば、こいつとこいつで落とすまで!! グレイシア? 知らん。出てきたらこいつで焼き払うまでだ!
***
---------うわあ、強そうなポケモンばっかりだよ。
ウルガモスはかつては環境トップだったと言うし、(転落の原因は赤い害鳥)ハッサムも同じだ(こちらも赤い害鳥には成す術が無いが)。
それだけではなく、環境でも物理受けとして名を馳せている、あのドラム缶洗濯機はバシャーモの飛び膝蹴りでも一撃で突破するのは不可能。返しのドロポンで沈むのが見えている。
---------”相手のポケモンが強そうに見えるのは良くあることだ、気にするな。それよか、自分のポケモンを信じろ”って、先輩は言ってたけど。いや、大丈夫。とりあえず、相手のパーティにはバシャーモが刺さっているから、絶対確定で選出して----------
夏奈からすれば、初めてではないだろうが、ガチパに乗り換えてからは初の対人戦だ。プレッシャーは半端が無いだろう。
対戦の駆け引きだとか、そういうことだが翼曰く「まずは、お前の思ったとおりにやってみろ」とのことだった。
---------とにかく、ハッサムは流石に出てこないよね? ズルズキンも出せないと思う。バシャーモに強いニャオニクス、ウォッシュロトム、ガブリアスの3体のどれかは出て来そうだけど、それなら特殊2体に強いヌメルゴンで脇を固めれば良いよね! 後は……。
互いに選出が決まる。
そして、この試合の流れを決める”初手”が繰り出されようとしていた---------
- 第二章:携帯獣対戦のすゝめ ( No.19 )
- 日時: 2015/04/30 21:48
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)
***
対戦開始、である。夏奈の初陣の幕開けだ。
「お願い、ロトム!」
「先発はテメェだ、ニャオニクス!」
夏奈が先発で繰り出したのは、前回も登場したウォッシュロトム。耐性、耐久、共に優秀で厳選こそ難しいが初心者でも使いやすい物理受けポケモンだ。
初手でガブリアスが来ると思って出したのだが、一方の御剣の先発はニャオニクス。ロトムは努力値を振っていない方には脆い。打ち合いは不利か。
しかも、ニャオニクスは壁を貼るために生まれてきたようなポケモンだ。御剣のあからさまな起点構築に入っている以上、両壁(リフレクター、光の壁)を持っていないのは、まず無い。
【夏菜ポケモンDETA
ウォッシュロトム:プラズマポケモン
タイプ:電気/水
種族値:H50 A65 B107 C105 D107 S86
持ち物:オボンの実
有力な特性:浮遊(地面技を無効)
通称:ぶっ刺さり洗濯機】
「つーわけで---------!!」
【ニャオニクスの光の壁!】
特性:悪戯心。相手の素早さに関係なく、変化技を出せる強力な特性であり、ニャオニクス♂の隠れ特性でもある。
これをもつポケモンの大半は強力を通り越して、凶悪な性能を持っており、ニャオニクスも例外ではない。
光の壁は相手の特殊技の威力を半減する壁を5ターンの間、貼るというもの。
さらに、御剣はニャオニクスに、これらの壁の持続ターンを8ターンにする光の粘土を持たせているのだ。
【御剣ポケモンDETA
ニャオニクス♂:抑制ポケモン
タイプ:エスパー
種族値:H74 A48 B76 C83 D81 S104
有力な特性:悪戯心(変化技の優先度+1)
業務:壁貼り】
一方の夏菜は----------
「いっけー!」
【ロトムのハイドロポンプ!】
ニャオニクス残りHP:85%
とにかく、攻めようという気持ちが先走ってしまったようだった。
ロトムのハイドロポンプのダメージは雀の涙程度。これが仮にも一致等倍なのかと悲しくなってくるが、元々御剣のニャオニクスはHD特化の特殊受け。それが壁を貼っているのだから、然るべきダメージといえる。
--------ケッ、初心者思考か。鬼火はキツかったが、無振りロトムのドロポン程度は余裕だ。
この場合の夏奈側の正しい手は、スリップダメージ狙いの火傷にさせる、鬼火であった。
「あ、あうう、全然効いてないよぉ」
さて、2ターン目。
流石の夏奈も、鬼火でダメージを狙った方が良いと思い直す。ドロポンのPPは増やしていないので、当然5。連射は余りしたくはない。
「とりあえず、もう1つ貼るか---------!」
特性:悪戯心で再びロトムの上を取り、ニャオニクスの眼が光った。
そして、物理攻撃を遮る障壁を作り出す。
【ニャオニクスのリフレクター!】
これにより、御剣の場は殆ど整ったと言って良いだろう。
それぞれの持続ターンは、光の壁が残り7ターン、リフレクターが、このターンも含め、8ターンだ。
「やっちゃって、ロトム!」
【ロトムの鬼火!】
そこにすかさず、洗濯機は鬼火を打ち込んだ。ボッ、と炎がニャオニクスの身体に燃え移る。
メラメラ、とその毛皮を焦がしていく。
【ニャオニクスは火傷になった!】
これにより、ニャオニクスは毎ターン、最大HPの8分の1のダメージを食らうことになる。
ニャオニクスは回復技を持たない。そのため、時間さえ稼げば倒せるようになった。
2ターン目終了
ロトム残りHP:100%
ニャオニクス残りHP:火傷によって70%
リフレクター:残り7ターン
光の壁:残り6ターン
さて、ここでの選択であるが、夏奈からすれば有効打は無い。そこで、彼女はボルトチェンジで逃げることを選んだ。
【ニャオニクスのサイコキネシス!】
ロトム残りHP:60%
一方の御剣は、ニャオニクスで交代先でボルチェン読みサイコキネシスを打つ。
速さでは、ニャオニクスの方が遥かに上だ。
やはり、かなりのダメージが入った。
しかし、一方のロトムもお返しといわんばかりに電撃を放つ。
【ロトムのボルトチェンジ!】
ニャオニクス残りHP:60%
ボルトチェンジは攻撃しつつ、後続に交代する技。
そして、彼女が繰り出したのは-----------
「行くよ! ヌメルゴン!」
【カナはヌメルゴンを繰り出した!】
---------粘液に包まれた、巨大な龍にして大正義600族の一角、ヌメルゴンだった。
特防は非常に高く、突撃チョッキを持たせれば、化け物と化す。
【夏菜ポケモンDETA
ヌメルゴン:ドラゴンポケモン
タイプ:ドラゴン
種族値:H90 A100 B70 C110 D150 S80
有力な特性:草食(草技を無効し、攻撃を一段階上げる)
称号:ぬめぬめ600族、特防お化け】
「チッ、つまりこちらから有効打は殆ど無いに等しいって事かよ」
だが、それは壁が貼られている以上、ヌメルゴン側からも同じ。
ジリ貧とはこのことである。
3ターン目終了
ヌメルゴン残りHP:100%
ニャオニクス残りHP:火傷によって52%程
リフレクター:残り6ターン
光の壁:残り5ターン
-----------でも、欠伸は打たれていないし、此処は攻撃してもいいよね!
火傷によって、ダメージソースは確保されている。
じりじりと削って行けば、勝機はある、と彼女は確信した。
さらに、仮に相手が殴ってきても、たいしたダメージにはならない。
「行くよヌメルゴン! やっちゃって!」
しかし、御剣からしても、ヌメルゴンに居座られるのは厄介極まり無い。
つまり、ここでの選択はただ1つ。
特性:悪戯心による欠伸ループの開始だった。
「ニャオニクス! 欠伸だ!」
【ニャオニクスの欠伸!】
ふぁあ、と眠気を移す欠伸をニャオニクスが放ち、ヌメルゴンも釣られてうとうと、とまどろみ始めてしまう。
次のターン、交代させなければヌメルゴンは眠ってしまうのだ。
それでも、龍の波動は放たれてニャオニクスを打ち抜いた。
【ヌメルゴンの龍の波動!】
ニャオニクス残りHP:34%
壁込み、HD特化とはいえじりじりと削られたのではたまったものではない。
さらに、火傷のダメージが襲い掛かり、ニャオニクスのHPは削られて行く。 次のターン、ダメージを食らえばアウト。であるが、死に出しを狙う御剣からすれば、むしろ好都合だ。
-----------このまま、エースをニャオニクス死に出しで無償降臨すれば勝ちへの直結ってわけよ! 壁貼り業務ご苦労だったな、てめーはもう用済みだ、ニャオニクス!!
4ターン目
ヌメルゴン残りHP:100%
ニャオニクス残りHP:20%
リフレクター残り:5ターン
光の壁残り:4ターン
この時点で、ニャオニクスのHPは、火傷ダメ2回で死ぬ程に削られていた。
一方の夏奈は、ヌメルゴン、ロトム共にまだ余裕がある。
だが、御剣はまだ、エースを見せていない。
緊張が、その場に走っていた。
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