二次創作小説(映像)※倉庫ログ
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 【転生】緑雨の空に、花束を【人間未満の聖杯戦争】
- 日時: 2016/11/17 17:25
- 名前: ナル姫 (ID: bkADf4XB)
緑雨
——新緑の季節に降る雨。《季 夏》
引用:デジタル大辞泉
足をお運びいただきありがとうございます。
タイトルを見てお察しいただけましたかと思います通り、当小説は明星陽炎様のFate/stay night二次小説『人間未満の聖杯戦争』の転生物、現代社会人パロディとなります。
ですので、『人間未満の聖杯戦争』主人公である七紙時雨、ディルムッド・オディナが主人公、教会組が主要人物となります。その他、新たにオリキャラとかちょいちょい出てきたりします。
魔術も無ければ魔法もない、そんな普通の世界で恋して喧嘩して泣いて笑って、最後はやっぱり好きだよ——みたいな、
恋 愛 夢 小 説 だ と は 思 わ な い で く だ さ い 。
関係性としては八割九分家族してます。普通の恋愛夢小説を期待していた方々、ごめんなさい。(菩薩顔)
たまーに暴力表現だったりシリアスだったりありますが、だいたい平和してます。
年齢としてはサザエさん方式になっております。深くツッコんではいけない。
※尚、この小説は『人間未満の聖杯戦争』の ネ タ バ レ を含みます。
※ネタバレ箇所になるページには、目次に*マークをつけます。
さてまともな挨拶もままなりませんが、とりあえず最低限のネチケットとルールを守り読んでくだされば嬉しいです。
それでは彼らの日常喜劇、お楽しみくださいませ。
目次は>>2
- Re: 【転生】緑雨の空に、花束を【人間未満の聖杯戦争】 ( No.1 )
- 日時: 2016/12/02 11:30
- 名前: ナル姫 (ID: xJkvVriN)
——地獄のような期間だった。
血反吐を吐くようにして、ようやく辿り着いた終わりであり始まりは、それはそれは輝いていたが、振り返ればやはり、地獄としか言いようがない。
上下格差が厳しい生活というのを、今まであまりしたことがなかったがゆえに最初は当然戸惑ったが、その程度慣れてしまえばどうということもないし、そもそも憧れであった警察官になれたという実感は凄い。
しかも交番勤めの巡査ではない。警察署、生活安全課少年係の刑事だ。やっとだ。ずっと憧れていた刑事になれたんだ——自然と、彼の顔に笑みが溢れてきた。
*
一日の勤務を終え、彼女はキリスト像を前に十字架を切った——もっとも、信仰心は正直なところそんなにない。
この生活にも慣れた。自分は何かと昔から、この修道服で過ごすことも何度かあったため、仕事としてこの服を着るのにもすぐに慣れた。
信者の前で大人しくしていれば一日はすぎる。一日の教会での勤務が終わればあとは自宅、修道服を脱げば気兼ねなく過ごせる。先に上がって良しとの言葉を兄から聞き、彼女は教会と繋がっている家の方へ上がった。
「終わったー」
「おっ、早かったな時雨。風呂湧いてるぜ」
「やった、一番風呂!」
「何ぃ!? 待て時雨! 一番風呂は我のものだ!」
「はぁぁ!? ギル兄昨日も一番風呂だったじゃん!」
洗濯物をしていた青髪の青年の言葉を聞き喜ぶ彼女だったが、突如リビングへ現れた次兄がそうはさせんとばかりに怒鳴る。ぎゃーぎゃーと言い争いをしていると、暫く聞いていなかった声が玄関の方から聞こえてきた。
「全く……順番くらいさっさと決めろ、風呂といい洗面所といい」
「……!!」
全員がハッとしてリビングと玄関をつなぐ廊下へ顔を向ける。呆れながらリビングに現れた青年は、久しぶり、と言うように三人に笑顔で手を振った。
「ディアルお帰りーー!!」
「おおお! 初総終了か! これで晴れて本物の警察であるな!」
「ただいま! あぁ、しかも交番勤務は免れたぞ」
「っはー、お前はやっぱ優秀だなぁ……すげぇぞ、ディアル!」
「騒がしいと思ったら……帰ってきたのか、ディアル。寮ぐらしお疲れだな」
「ただいまです、綺礼さん。晴れて冬木署勤務になりました」
「おめでとう。今日は衛宮切嗣の屋敷に邪魔する必要がありそうだ」
「その通りよな! 今すぐ贋作者に連絡せよ狗ぅ!!」
「狗言うな! わーったよ、文句言われると思うけどな……」
「そこはこう、強く押しで! ディアルが警察になったって言えば多分了承するから!」
「俺をダシに衛宮家に迷惑をかけようとするな!」
言いながら笑う彼らは、この日々を楽しんでいるようだ。
教会に住む騒がしい人々の、日常の物語。
今ここに、始まり始まり——。
- Re: 【転生】緑雨の空に、花束を【人間未満の聖杯戦争】 ( No.2 )
- 日時: 2017/01/14 03:29
- 名前: ナル姫 (ID: WEVaA//0)
もくじ
Story
始まり始まり>>1
幽霊廃病院事件>>4-18
浴衣と花火と仲間たち>>20-26
Character
【言峰時雨】>>3
*【言峰ディアルムド】>>3
【言峰綺礼】>>19
【言峰ギルガメッシュ】>>19
【クー・フーリン】>>19
【衛宮士郎】>>27
【エミヤ】>>27
【寺林晋太郎】>>19
【橋金圭佑】>>19
【蔵元藍那】>>27
【間桐慎二】>>27
- Re: 【転生】緑雨の空に、花束を【人間未満の聖杯戦争】 ( No.3 )
- 日時: 2016/12/02 11:32
- 名前: ナル姫 (ID: xJkvVriN)
「僕の名前は言峰時雨。言峰聖堂教会に暮らすシスターだよ」
「鉄パイプ系のな」
「文句あっか」
言峰時雨 Shigure Kotomine
【概要】十九歳。ケルト民族である際【バーシュタハ】と、聖杯戦争にて【七紙時雨】と名乗っていた少女。『人間未満の聖杯戦争』と同じく五歳の時に言峰聖堂教会に引き取られるが、前世とは違い正式に養子縁組を結んだため、言峰姓を名乗っている。
性格、外見にほぼ変わりはないが、前髪は前世のように片目を隠す形でなく、両側に分けた状態である。服装は兄が清楚なものを選んでくるため、そういった物が多い。
【幼少—高校期】五歳のとき、両親とともに教会に礼拝に来たディアルムドと再会、それからはほぼ兄弟のように仲良く過ごしてきた。
中学の頃は(主にディアルの荒れ様と互いの思春期で)ディアルと喧嘩三昧の日々であり、すれ違いと衝突の多い日々を暮らすが、中三の2学期からはディアルの荒れが収まったため以前と同じように仲良くなり、高校をストーカーを若干纏いつつも平和に暮らす。
文系学生で、中学時代真面目に勉強しなかったディアルに高校入試前にスパルタ教育をしていた。しかし、元来の頭の出来はディアルの方が上なのか、高校に入ると瞬く間に偏差値を抜かれ、それからはディアルに教わる日々を送った。
【現在】高校を卒業してからはシスターとして教会で働き始め、兄の綺礼から個人的に給料をもらっている状態である。シスターではあるが相変わらず鉄パイプを好んでおり、それなりに危険思想の持ち主である。
昔からであるが、教会に来る信者の前や、親しくない人の前ではしずしずとした猫かぶり。親しい人の前だといつもの彼女になる。親しくなく、彼女の本来の性格を知らない人からは割りとモテるのだが、シスターという職業が良くも悪くも働き『遠巻きに見つめるストーカー』が多い。高校を卒業した翌年度の末に、ストーカー排除のためディアルムドと戸籍上籍を入れたが、ストーカーは全滅していない。
【ケルト期、聖杯戦争の記憶】聖杯戦争時とケルト民族だった頃の記憶は持ち合わせておらず、察していることもない。だが、『ディアルムドを守らなければならない』ということは無意識のうちに感じており、危険な目に遭うことも多い。
「俺の名は言峰ディアルムド。同じく言峰聖堂教会に暮らす、生活安全課少年係の警察官だ」
「僕らの中では一番穏やかなのにね」
「おかしいよな」
言峰ディアルムド Diarmuid Kotomine --nee:Ua Duibhne
【概要】十九歳。前世、【ディルムッド・オディナ】と名乗っていた騎士の生まれ変わりである。生まれ変わりと言っても、英霊の座に召された魂の一部が転生した状態であり、完全な生まれ変わりとは言えない。
癖っ毛、垂れ目、瞳の色など各所はディルムッドと同じだが、顔の基本造形と体型は変わっている。しかし、顔面偏差値は平均より上である。性格はノリがよく明るいが、生来真面目な気質であり、また教会に住む人の中では一番温厚。
【幼少—高校期】五歳の頃両親の仕事の関係でアイルランドから日本にやってきたため、日本語は普通に話せる。
父母は日本に来てすぐ離婚しており、だらしのない父に引き取られ、父を反面教師として育ってきた。元々父との性格の相性は悪く、中学時代はかなり荒れた不良になっていたが、中学三年生のときに高校の不良集団に殺されかけたことでようやく生来の真面目さが目を覚まし、前の彼に戻った。
高校からは教会で暮らしており、実質親とは縁を切った状態である。(戸籍上の親子関係は変わっていない)
文理共に得意な理系学生。ただし歴史系だけは大の苦手で、常に赤点ギリギリのところにいた。勉強は基本的にディアルが時雨に教えていた。
【現在】高校を卒業してからは高卒で警察官になり、十ヶ月の初任科と三ヶ月の初総のため警察学校での日々を過ごし、初夏に正式に警察となった。現在は生活安全課の少年系配属である。
旧名は『ディアルムド・ウア・ドゥヴネ』だが、婿養子として時雨を戸籍上娶り、名実ともに言峰家の一員となった。
【ケルト期、聖杯戦争の記憶】物心ついた頃から前世の記憶はあり、フィオナに所属していた頃のことも、ランサーとして参戦した四次、亡霊として時雨とともに参戦した五次のことも覚えているが、記憶の最後は血濡れた時雨の姿であるため、時雨に対して若干過保護。
- Re: 【転生】緑雨の空に、花束を【人間未満の聖杯戦争】 ( No.4 )
- 日時: 2016/12/02 11:33
- 名前: ナル姫 (ID: xJkvVriN)
夜は涼しいのだが、それも昼間に比べての話。8月の上旬、四国地方にあるこの街は、夜だろうと容赦なく暑かった。ネクタイを解きシャツの第一ボタンを開け、スーツのジャケットを脇に抱えている状態である。今日は新月で、星は見えるが月はなかった。
「ただい……、……?」
家に帰ると、家の中の雰囲気がどことなく異様であることを感じ取った。静かだ。静かすぎる。何事だろうかと思いながらリビングのドアを開けると、ギョッとするような光景がそこにあった。
妙に薄明るいと思えば、真っ暗なリビングのテーブルに、たくさんの蝋燭が並べられていた。数えてみると、十列、一列につき十本……百本だ。端っこにある五本くらいは火が消えていた……というより、恐らく消されているのだろう。
何が起こっているのかまるで理解出来ないまま、リビングの隣であるギルガメッシュの部屋のドアを開けてみた。
「うおっ……」
今度は声が出た。真っ暗だが、そこには数人の人がいるのがわかった。彼がドアを開けたのを確認し、全員の視線が彼に向くのが何となくわかる。
「な、な、何して……」
「駄目だ!!」
「!?」
唐突に一人——声からしてギルガメッシュ——が立ち上がり、部屋の明かりを点けた。パッと急な明るさに思わず目を瞑り、少しして目を開けた。そこにいたのは、青い服を着たクーと時雨とギルガメッシュだった。
「あーっ! 何すんのさギル兄!」
「知ったことか! 我がルールだ!! リビングの蝋燭も片すぞ!」
「ギル兄の馬鹿ー! 賛成したじゃんかー!」
「知ったことか!!」
ディアルムドを押しのけリビングへ行き、電気をつけるギルガメッシュと、それを追う時雨。全く状況が理解できずにいると、クーが彼に話しかけてきた。
「あー……悪ぃなディアル、驚いたろ?」
「…………はい。あの……何してたんですか?」
「それがな……」
*
「百物語ぃ?」
呆れながらディアルムドは復唱した。
聞けば、納涼しようと思ったが本日は怖い話がテレビなどでやっていない。そこで、家中の蝋燭を掻き集めて百物語を行おうとしたらしい……が、急だったためそんな多くの怖い話など誰一人持ち合わせておらず、また一番知っていそうな綺礼はワインを買いに出かけてしまい、5つ目を話した時点で詰まり、ディアルムドが帰ってきてしまったこともあり断念したとのことだった。
…………こいつらは馬鹿なのか……とディアルムドの心中がとても切ない。
「あっついんだよーディアルなんか怖い話してよー」
「ひっつくな暑い。怖い話なんぞ待ち合わせておらんぞ俺は」
「何で? 警察なら事件現場に行ってそこで変なもの見たりしないの?」
「俺は刑事課ではなく生活安全課だ! 現場になぞ滅多に行かん!」
「つまんなーい!!」
「知るか!」
「落ち着けよ……悪かったなディアル、飯あるぜ」
「あー……ありがとうございます。いいから風呂に入ってこい時雨は」
「ちぇー、わかったよ」
こういうところは高校の頃と全く変わっていないな、等と思いつつディアルムドは食卓についた。そして、自室に戻ろうとするギルガメッシュに声をかける。
「……で、どういうことか説明しろ、ギルガメッシュ」
「……貴様、狗に言及はせぬつもりか?」
「どうせ巻き込んだんだろう?」
「言っておくが我とて巻き込まれ側だ……!」
ギルガメッシュは小声で訴えながら食卓に近づき、ディアルムドと向かい合う形で座った。クーが、ディアルムドの食事を温めている間、ギルガメッシュは必死な顔で言った。
「我だって止めたほうがいいと言ったわ! だが聞くあいつか!? ギル兄ビビってやんのーと言われて男として兄としてこれ以上屈辱的なことはあるまい! それに百物語は九十九までしか話さない度胸試し的な面があるからと言われてしまえば我としてももう止められんわ……!」
はぁ、と溜め息を吐き出した。まぁ確かに、時雨はそうやって相手を煽るタイプである。だが、記憶を持ち合わせている人間は知っている通り、時雨は悪霊を引き付けてしまう体質だ。百物語やひとりかくれんぼ、肝試しなど、魔術も何もない世界であろうとディアルムドはやらせたくなかった。
妖精や妖かしは人の信仰によりその存在を現す。霊も同じことだ。危険なことをして時雨が変なのに憑かれた場合、ディアルムドには何の対処も出来ない。
「……事情はわかった。だが次から止めろ」
「わかった」
「まぁ、でもよ金ピカ」
ディアルムドの食事を運びながら、クーが口を開く。ディアルムドは立ち上がり、運ぶのを手伝った。
「お前本当は、もっと怖い話知ってたろ?」
「当然であろうが」
「……そういうことか」
話すのを序盤でやめて、諦める気にさせてくれたのかと、ディアルムドは理解した。全くこの義兄は、ちゃんと先のことまで考えている。
「にしても、まぁ暑いよな……そうだディアル、明日は仕事か?」
「明日は休暇です」
「じゃぁ夜は素麺にでもしようや。手伝ってくれるか?」
「出勤命令が無ければ喜んで」
ディアルムドが笑顔で答えると、じゃぁ明日買う食材は、と言いながらクーはメモを取り始めた。
……だがしかし、出勤命令がないという保証はない。生活安全課少年係は、この時期本当に忙しい。己も昔されたが、夏休みは中学生や高校生の補導が劇的に増える。休みだろうが夜に交番で学生が保護されれば遠慮なくお呼びがかかってしまうのだ。
この立場に実際に立つと、春夏秋冬関係なく夜にフラフラ出歩いたことをとても申し訳なくて思った。
夕飯は簡単な炒め物だが美味しかった。これは明日、天ぷらを作るのをがんばらねばならないと思いながら咀嚼した。
- Re: 【転生】緑雨の空に、花束を【人間未満の聖杯戦争】 ( No.5 )
- 日時: 2016/11/20 14:31
- 名前: ナル姫 (ID: a1/fn14p)
「警察官たいっへんだなぁぁぁぁぁ!?」
仕方ないな、という顔をしながら出かける支度をするディアルムドを前に、時雨の大声が響く。
出動要請の来た時刻は日付の変わる一時間前だ。明日が休みでまだ良かったが、今からかと思うと気が重い。十中八九補導だろうが、自ら警察に来たことと、数人の少年少女であったこと、そしてどうも様子がおかしく誰一人何も話さないということで、来れる限りは来てくれとのことだった。
「行ってくる」
「いってらっしゃーい」
ばたん、と閉じた扉。時雨は暫くそこから動いていなかった。後からギルガメッシュが、どうかしたのかと声をかけてきた。
「いや……何か嫌な予感がした」
「嫌な予感?」
「……ま、気のせいでしょ。夜遅い出勤だからかな」
リビングへ戻りながら時雨は言う。そして、2L入りの麦茶のペットボトルとコップを取り出した。
*
学生を保護したという交番では、言われたとおり二人の女子生徒と一人の男子生徒がいた。女子生徒は一人が大人しそうな子で黒い髪を下ろしてあり、もう一人はやや茶髪でポニーテールにしていた。二人の女子生徒は顔が真っ青で震えており、男子生徒は呆然として座っていた。
「刑事さん、ありがとうございます」
「夜遅くお疲れ様だ、巡査。俺の他には?」
「もうすぐ寺林さんが。橋金課長は来れないとのことです」
「わかった」
寺林さんが来るなら大丈夫だ、と思いつつ保護された三人を見る。とりあえず、一番まともに話ができそうな男子生徒の前に立膝になり、男子学生を見上げる形になる。
「遅れて済まない、生活安全課の刑事、言峰だ。君達は友達同士か? ご両親は?」
「けい……じさん……」
ぼそり、と声を出したところで、彼はガタンと椅子から落ちた。流石に驚き、うおっとディアルムドは声を上げる。
「助けて……あいつを助けてください! 宏樹……俺達、宏樹置いてきちゃった!」
「もう助からないわよッ!!」
男子生徒が必死になってディアルムドにしがみつきながら懇願していると、ポニーテールにしている女子生徒が叫んだ。すると、もう一人の女子生徒は大泣きを始める。
「……」
参った、どうもこれは家出ではない。親に内緒で友達四人で家を抜け出し、どこかへ遊びに行くと刃物を持った男にでも出くわし、三人は逃げてきたが、一人は逃げ遅れた……そんなところだろうか。
「……落ち着いて話してくれないか。君達はどこで何をしていたんだ?」
「言ったって信じないでしょ!?」
「いやぁぁぁぁっ! やめて! やめてよぉっ!」
ポニーテールの子が叫ぶと、黒髪の子の泣き声が酷くなる。どうもこの女子生徒達はパニック状態だ。
……信じないでしょ——つまり、信じられないような物を見たということだ。しかし、この世の中、様々な犯罪がある。様々な人間がいる。それは何より警察が知っている。そのくらい高校生でもわかるだろう。それでもなお、信じないと思われる、となると……。
「……」
なるほどな、と合点が言った。さっきの今でこれとは、全く己は運が悪い。
「……肝試しだな?」
「……」
「君達は近くの心霊スポットに行った。そこで幽霊を見て、慌てて逃げ出して友達を置いてきてしまった……そうだな?」
「……っ、ごめんなさい、ごめんなさい……」
肯定の謝罪に溜め息を吐き出した。あとは、彼らの名前と、どこへ言ったのかを聞き出さねばならないな、と思ったとき、交番の前に銀色の車が止まった。寺林さんが来た、という予想通り、車の運転席から寺林が降りてきた。
「おうディアルムド、どうだ補導の方は」
「……それどころじゃないみたいですよ」
ディアルムドは事情を説明した。
「……で、一人取り残されてしまった、ということです」
「……幽霊ねぇ。だがそんなことで調査に向かうわけには行かねぇぞ」
「しかし、こんな時間ですし、深夜徘徊の禁止されている高校生が何処かにいるというのは問題です。他の危険な目に合う可能性も考慮せねばなりませんし、保護に向かうのが正当でしょう」
「……それもそうか。よし、その場所へ向かうぞ。おい坊主、お前らどこの心霊スポットに行ったんだ」
「……冬木の……外れにある、廃病院です……」
*
それからその少年から必要最低限の情報を聞き、巡査には交番に残って貰い、寺林とディアルムドは彼らが行ったという廃病院へ向かった。寺林が3つのヘルメットを車に積み、発進する。
病院は草が荒れ果て、倒壊の危険を考えてかKEEP OUTと書かれたテープが門を塞ぐように貼られていた。しかし、そのテープもよれており、がっしりした体格の寺林や、背の高いディアルムドでさえ少し頭を下げてテープを手で上げれば簡単に入れてしまう。
院の敷地内に足を踏み入れ、改めてその様子を見ながら呟いた。
「こんなところに病院があったんですね……」
「この病院な、十年くらい前までパトカーの見回り経路になってたんだ」
「最近はしてないのですか」
「三十年くらい前か、霊現象でも何でもなかったんだが、鉄材が一つ落ちてきて、肝試しに来てた大学生の頭を直撃したんだよ。勿論その大学生は即死だ。一緒に来てた同級生たちの通報で発覚。そのときは三人グループだったんだが、一人霊感持ちでな。そいつが言うには、霊は関係ない、ただ繋ぎが脆くて鉄材が落ちてきたんだろうと。それで、その即死した大学生の霊を見ようってんで餓鬼共が出入りを始めた。それでパトカーの見回り経路にしたんだが、すっかり噂が廃れちまってな」
「……やめてくださいよ……霊関係なく怖いじゃないですか……」
真顔で何事でもないかのように語る寺林に僅かに顔を顰める。
この病院は満州事変の前後に建てられたが、第二次世界大戦後の経済成長によるこの地方都市の設立の波に乗れず、敢え無く倒産、このまま壊されることはなく、イタズラ好きな子供達の肝試し劇場になったとのことだ。しかし、廃病院とは言え何か問題を起こしたわけでもなく、単に経済的な問題での倒産だ。何かが出る、という話もなく市政も警察も黙認の状態だったらしい。
この掲示板は過去ログ化されています。

