二次創作小説(映像)※倉庫ログ

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【完結】スマイルプリキュア〜この足で、未来まで〜
日時: 2016/12/31 23:26
名前: ひのり (ID: uLF5snsy)

さぁさぁ懲りないひのりんは今日もプリキュアのスレ建てちゃったよ!
はじめましてか何度目まして!
ホントに……何度目だ?w
プリキュアの二次創作上げるの何度目だよw
今回はスマイルプリキュアですね。フレッシュも完結してないのにね!
まぁ完結せずに放置した作品は数多くありますけどwww
これはそうならないと良いなぁ……(遠い目)
まぁ、楽しんで読んでもらえるように頑張ります。
それではよろしくお願いします。

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Re: スマイルプリキュア〜この足で、未来まで〜 ( No.14 )
日時: 2016/12/23 22:41
名前: ひのり (ID: uLF5snsy)

<なお視点>

 翌日、あたしは学校が終わると同時に荷物を手早くまとめ、すぐに教室を飛び出した。

「あっ、なおちゃ〜ん。一緒に帰ろ〜」

 その時、ちょうど廊下にいたみゆきちゃんに、そう言われた。
 いつも当たり前のように一緒に帰っていたが、今は、それよりも大事な用がある。

「ごめん!今日用事あるから、先に帰るね!」
「え〜。部活もう引退したんじゃないのぉ〜?はっぷっぷ〜」
「あははっ。また今度ね!」

 頬を膨らませるみゆきちゃんにそう断りつつ、あたしは玄関まで一気に走って、靴を急いで履き替える。
 それにしても、この肩に掛けるピンク色の学生鞄は、走るには少し邪魔だ。
 少し考えた後で、あたしはそれをリュックのように背負い、ゆっくりと深呼吸をする。
 そして、玄関前で立ち止まると、目を瞑り、ゆっくりとイメージをする。

 ここは、サッカーグラウンド……。
 試合前。心地よい緊張感が腹の底から溢れ、体の筋肉を適度に強張らせる。
 その時、ホイッスルが鳴り響き、隣の女生徒からボールがパスされる。足元に転がったボールを見つめ、一気にあたしは、駆けだした!

「うお!?なお急に走り出してどうしたんや!?」

 驚いた声を上げるあかねを無視して、あたしは校門を飛び出した。
 こちらを見て、驚く男子生徒。顔を赤らめ、黄色の悲鳴をあげる女生徒。
 あたしはそれらを全て無視して、一気に道路を駆け抜ける。
 もちろん、交差点は一度しっかりと立ち止まる。車が来ていない時を見計らって、さらに強く駆けだす。
 ディフェンスをかわし、仲間にパスしながら、あたしは一気にゴールまで向かう。
 やがて辿り着くのは……病院。

「ふぅ……引退したから、少し体力落ちたかな?」

 病院の前でそう呟きながら、あたしは、この間あかねに案内された裏口に向かった。
 その時、そこに見覚えのある女性がいるのを見つけた。

「修斗の……お母さん?」
「あら?貴方は……」

 振り返ったのは、小学生以来久しぶりに会う、修斗の母だった。
 大人であれば、数年経っても見た目に違いはあまり出ないもの。すぐに分かった。

「あたし、緑川なおです。小学生の時、修斗とは、よく、仲良くしていて……」

 あたしが言うと、しばらくじーっとあたしを見ていた後で、「なおちゃん!」と声を発した。

「お久しぶりぃ〜!大きくなったわねぇ!修斗と同い年だから、もう中学三年生よね?」
「はい……あの、小学生の時は、あたしのせいで、修斗は……」

 あたしの言葉に、修斗の母である、一之瀬明美さんは、「なおちゃんのせいじゃないわ」と言った。

「これは、修斗が自分で選んだ道だもの。それに……実はね、修斗の足が、治るかもしれないの」

 その言葉に、あたしはリュックのように背負ったままの学生鞄を下ろすことも忘れて、固まった。

「えっ……?」
「元々ね、彼は、外国にある病院に行けば、治せるって言われていたの。でも、そんな金無かったから、今まで黙っていて……。でも、少しずつ貯金していって、最近、外国でその手術を受けられるくらいの資金が溜まったのよ。今日は、それを伝えに来て……」

 その言葉に、あたしは嬉しくなった。
 また、修斗とサッカーができる!
 最初に思ったのは、残念ながらそんな単純な答えだったけれど。
 でも良い。あたしは、とにかく修斗とサッカーがしたいし、彼と走りたいし、彼と……一緒にいたい。
 そうだ。折角だから、今日好きだって告白してみようかな。どうせ無理でも、当たって砕けろ。直球勝負だ!
 そう思って、明美さんと一緒に病室がある階層まで上がったのに……———

 ———病院では、修斗が行方不明になったと、騒いでいた。

Re: スマイルプリキュア〜この足で、未来まで〜 ( No.15 )
日時: 2016/12/24 22:48
名前: ひのり (ID: uLF5snsy)

 修斗がいない……。

 それを聞いた瞬間、あたしの見ている世界から色が消え、時間が止まったような錯覚までした。
 やっと肩に掛けていた学生鞄は床に落下し、鈍い音を立てた。

 それから、医者の人から聞いた話では、昨日、あたしが帰った少し後くらいに、ほんの一瞬で車椅子から姿を消してしまったという。
 音もなく、気付けば彼だけが、病院という世界から切り取られたようにいなくなったので、どこにいったのか全く分からないし、そもそも車椅子無しでは移動すらできないはずなのだ。

 それを聞いた瞬間、あたしは、床に落ちた鞄を拾うのも忘れ、すぐに病院を飛び出した。
 病院の中で見つかっていないのに、病院にそこまで詳しくないあたしが探しても見つかるわけない。
 いるとすれば、外。そう思ったから、外に出た。
 でもどこにいるのか確信があるわけでもないし、そもそも、広い町の中で見つけられるわけがないのだ。

 そう思っていても、あたしの足は止まらない。
 しばらく走り続け、気付いたら、修斗との思い出の河川敷に来ていた。

「ハァ……ハァ……ここは……」

 あたしは、息を切らしながら膝に手を置き、深く息を吐く。
 その時、河川敷のサッカーコートに、見覚えのある影を見つけた。
 彼の姿を見た瞬間、あたしの目は見開かれた。


「……ジョーカー……ッ!

「おやおや、これはキュアマーチさん……いや、緑川なおさんではありませんか」

 相変わらず、ヘラヘラした表情を顔に付けて、人を馬鹿にするようなことを言う。
 その言葉に、あたしは歯を噛みしめた。

「……ッ!なんでアンタが!アンタは、ピエーロに取り込まれて、そのまま一緒に浄化されたハズでしょう!」
「えぇ……確かに、私は、あの時ピエーロ様に取り込まれした。でも……」

 そこまで言うと、彼の体はトランプのようになって、その場に崩れていく。
 少しして、トランプも黒い絵の具のようなものになって溶けていった。
 直後、後ろから頬に誰かが触れる感触があった。

「……あれが、あなた達を油断させるための偽物、だとしたら?」
「……ッ!」

 驚きとか、困惑とか、色々な感情が胸の中でグチャグチャになって、あたしは言葉を詰まらせた。
 その様子を見て彼が笑ったのが分かった。
 あたしは、咄嗟に彼の腕を振りほどいて距離を取り、制服のポケットからスマイルパクトを取り出した。
 普段は学生鞄に提げてるけど、今日はたまたまポケットの中に入れていて良かった!
 身構えるあたしを見て、ジョーカーは肩を竦めつつも、笑みは崩さずに、男にしてはやけに高い声で続けた。

「修斗君に会いたいですかぁ?」

 その言葉に、あたしは動きを止めた。
 彼は続ける。

「アカンベーを作り出すための道具、バッドペイントを使い、一時私がピエーロ様に取り込まれたように錯覚させ、あなた方を油断させた私は、あの後バッドエンド王国に一度帰還し、あなた方が、これ以上戦いが起きないと油断する時期を待ちました。その方が、後で会った時に、絶望に染まった顔が見れますからねぇ」
「……」
「それから、ピエーロ様を復活させるために、バッドエナジーを溜めようと、貴方の知り合いの……修斗さん?がいる病院をバッドエンド空間にしました。しかし……彼は、絶望に染まらずに、果敢に私に立ち向かってきました」

 ……修斗何やってんの……。

「彼からはバッドエナジーもしっかり出ているし、普通に考えて、バッドエンド空間で動けることはおかしい。普通、人間はバッドエナジーを発している間は、心の奥深くまで絶望に染まり、動くことすら億劫になる。そこで私は考えた。彼は普段から、バッドエナジーを発するくらいの絶望の中にいるのではないか、とね……」

 彼は、そこまで言うと黒い玉を取り出し、空中に向けた。
 すると、そこから黒い玉を中心に巨大な穴が出来て、それは先が見えなかった。

「修斗さんに会いたいのであれば、私に付いてきてください」

 そう言って、彼は穴の中に入っていく。
 怪しさ満点だが、今は藁にも縋る思いだ。
 あたしは決意し、一歩、穴に踏み込んだ。

Re: スマイルプリキュア〜この足で、未来まで〜 ( No.16 )
日時: 2016/12/25 20:36
名前: ひのり (ID: uLF5snsy)

 暗いトンネルを抜けると、岩場のような場所に出た。
 地面が岩で、よく見ると、辺りを囲うように岩壁が並んでいる。
 そして、あたしの真ん前に当たる壁際に、岩に座っている修斗の姿があった。
 目を瞑っているようで、微かに呼吸をしているのか、定期的に体が揺れる。

「修斗……ッ!」

 あたしは、すぐに彼に向かって駆けた。
 岩の地面は固くて、所々ボコボコしていて、正直言うと少し走りにくかった。
 しかし、そんなことは関係ない。とにかく、彼を助けないと!
 そこまで考えていた時、突如、体が、まるで何かに弾かれるような衝撃を受けて、後ろに飛ばされた。
 できるだけ遠くに行かないようにと足を踏ん張ろうとしたが、結局、その場に尻から着地をした。

「いっ……たぁ……今、何が……」

 そう呟きながら顔を上げ、私は目を見開いた。
 なぜなら……修斗が、地面に立っていたから。

「なんで……」

 あたしの呟きに、目を瞑ったままの彼は反応しない。
 よく見ると、彼の服装は、前に見た病院服じゃない。
 全身を、真っ黒なスーツで覆い、髪型も、微かに逆立っているような感じがある。

「ククッ……紹介します。バッドエンド王国、新幹部。……一之瀬修斗さんです!」

 ジョーカーの言葉に、彼はゆっくり目を開き、あたしの顔を見る。
 その目は暗く淀み、何も見ていないようにも思える。

「……修斗」
「俺は……プリキュアを……倒す……」

 眠たげな、重たい声で、彼は言う。
 その様子に、あたしの背筋に寒気が走った。
 すぐに、上空に浮かんで笑っているジョーカーに視線を向け、あたしは叫んだ。

「修斗に何をしたの!?」
「別に何も?ただ……彼に一度、夢を見させただけです」
「……夢……?」

 あたしの、呟くような声量の疑問に、彼は「えぇ」と答える。

「彼は、足が悪くて、ずっと歩けないようでした。ですから、一度、彼を怠け玉に入れ、その中で彼のしたいことをさせてみました。すると、案の定、彼は元気に走り回っていました」

 ……彼が走れなかったのは、あたしを庇ったからだ。
 あたしのせいで……彼は今、こうして敵対しているというのか……?

「そして、しばらく自由に走らせた後で、彼から足の自由を奪ってみました。すると、ただ、怠け玉に入れられる前の状況にしただけなのに、走りたい、と懇願しました。その後で、軽く彼の記憶から、貴方の存在だけを消し、プリキュアを倒せば足を治すと言ったら、即答で頷きましたよ。それからは、まぁ、多少貴方を倒しやすくするよう、彼の自我には消えてもらいましたが」

 ジョーカーの言葉に、あたしは修斗の顔を真っ直ぐ見る。
 彼は、光の無い、虚ろな目でどこかを眺めている。

「修斗!目を覚まして!アンタは、あんな男に負けるような人間じゃないでしょう!?」
「あっははは!無駄ですねぇ。彼には、私の命令の言葉しか、通じませんから」

 ジョーカーは、そう甲高い声で言うと、修斗に目を向け、「修斗さん」と声を掛ける。
 すると、ずっとあたしの方に目を向けていた修斗は、ピクッと体を震わせた。

「目の前にいる少女が、見えますか?」
「……はい、見えます」

 修斗の、ジョーカーへの応答を聞きながら、あたしはスマイルパクトを取り出す。

「彼女を倒してください」
「……はい」
「プリキュア!スマイルチャージ!」

 あたしは声を張り上げ、変身した。

Re: スマイルプリキュア〜この足で、未来まで〜 ( No.17 )
日時: 2016/12/26 18:24
名前: ひのり (ID: uLF5snsy)

「はぁぁああああッ!」

 サッカー対決をした時のような、本気の掛け声をあげながら、彼はあたしに拳を振るう。
 あたしは、咄嗟にそれを腕で受け止め、はじき返す。
 そのまま後ろに飛んで距離を取り、スマイルパクトに力を込める。

「プリキュア!マーチシュート!」

 叫びながら、あたしはマーチシュートの風の球をヘディングして、旋風を巻き起こす。
 修斗はそれに足を止め、目を瞑って多少身構える。
 しかし、あたしの風の方が力は上だったようで、彼の体を吹き飛ばし、背後にあった岩の壁に当てる。
 すぐにマーチシュートインパクトを放つべきかもしれない。しかし、あたしの体は強張って動かない。

「……ッ!うおおおッ!」

 すぐに彼は壁を離れ、こちらに向かって走って来る。
 だから、咄嗟にあたしは残りカス程度に残った小さなマーチシュートの残骸を手で掴み、地面に押し当てた。
 そこから竜巻が起こり、地面を削りながら、あたしを中心に広がる。
 これで目くらまし程度にはなるだろう。
 そう思っていた時、その竜巻が彼の力でかき消された。

「くッ……」
「……貴方は、彼に勝つ気があるんですかぁ?」

 悔しがるあたしに、上空に浮いて終始見学していたジョーカーは、呆れた様子で言った。
 それに、あたしは睨み返す。

「あたしのやり方に文句でもあるの!?」
「いいえ?ただ、守ってばかりでは勝てないと思って……」
「べっ!別にあたしの勝手でしょう!?」

 あたしは叫びながら、修斗が振るった拳をかわす。
 しかし、彼を攻撃することなんてできないし……だからって、彼の攻撃をかわすだけじゃ、勝てるわけないし……。
 ジョーカーを倒す?5人揃っても、結局勝てなかったジョーカーに、あたし一人で?
 無茶だ。馬鹿なあたしでも、分かる。勝てるわけない。
 そんな風に、無い脳味噌で考えている間も、彼の攻撃は猛威を振るう。だから、それをかわす。

「全く……これじゃあ埒が明かないですねぇ……修斗さん」

 ジョーカーに名前を呼ばれた瞬間、一瞬、修斗の体がピクッと動いた。
 不思議に思った瞬間、彼は頭を押さえ、その場に崩れ落ちる。

「うぅぅッ……ぁッ……」
「修斗ッ!」

 あたしは、咄嗟にジョーカーを見上げた。
 彼は、あくまで口が裂けたように笑いながら、こちらを見下ろすだけ。
 とにかく、先に修斗を助けないと。そう思って、彼に駆け寄った。

 その時、強い力で、手首を掴まれた。

「……えっ」

 思考が止まる。何が起こったのか、一瞬、理解が出来なかった。
 直後、俯く彼の顔が、冷たく笑うのが見えた。……まさか、演技?
 そう思った瞬間、体が浮いた。
 背負い投げのようなものだろう、と、高速で流れていく暗い空を見ながら、そう考えた。
 そして、気付けば背中を打ち付け、その場に倒れていた。

「……カハッ!」

 息が口から洩れると同時に、さらに、首が締め付けられる感覚があった。
 目を開くと、そこには、修斗の顔があった。
 修斗が……あたしの首を絞めてる……!?

「しゅぅ……と……ッ!」
「手加減はダメですよ〜?念入りに、呼吸が止まるまでやりましょう」

 気付けば近くまで降りてきていたジョーカーは、そう言って修斗の肩に手を置く。
 それに、虚ろな目をした修斗は小さく頷き、さらに強くあたしの首を絞めている。

 修斗……さっきの方法は、直球勝負じゃないよね?
 あんなの、全然直球じゃないよ……筋が、通ってないよ……。
 昔から、修斗が言ってたことじゃないの?真っ直ぐ、自分の筋を通していく。
 あたしはその姿に、憧れて、好きになったんだよ……?
 それなのに……こんなことをさせるなんて……ッ!
 ジョーカー……アンタだけは許さないッ!

「ハッピー……シャワーッ!」

 その時、どこからかそんな声が聴こえ、薄いピンク色の光が修斗の体を襲った。

Re: スマイルプリキュア〜この足で、未来まで〜 ( No.18 )
日時: 2016/12/26 23:15
名前: ひのり (ID: uLF5snsy)

「ハッピー……シャワーッ!」

 そんな声とともに、薄いピンク色の光が修斗を襲う。
 しかし、修斗は咄嗟にあたしの首を放し、黒いバリアを出して自分を庇った。

「ファイア!」
「ブリザード!」

 さらに、聞き覚えのある声が聴こえ、炎と吹雪が襲い掛かる。
 しかし、修斗の目前でそれは唐突にぶつかり合い、蒸発して湯気を起こす。

「……ッ!」
「クッ!なぜ、怠け玉に!」

 そんなジョーカーの言葉が聴こえた時、どこからかバチッと音がして、気付けば、すぐ近くにキュアピースがいた。

「ピース!」
「マーチ!捕まっていて!」

 そう言ってあたしの腕を掴むと、ピースはピースサンダーの雷の速さを利用した光速で、一瞬で他の3人の元に辿り着く。

「なんで……皆……」
「説明は後だよ!キャンディ!」

 ハッピーの言葉に、気付いたら人間の姿をしていたキャンディは「分かったクル!」と言って、光を放つ。
 その時、あたしは、咄嗟に振り返り、修斗の方に振り返る。
 彼は、あたしを見て、憎そうに顔をしかめていた。
 ……あんな険しい顔、見た事ない。だって……彼が本気で怒るの、初めて見たから。
 そんなことを考えていた時、視界を光が包み込み、気付けば、先ほどの河川敷に出ていた。
 無意識に変身を解き、あたしはその場にへたり込んだ。

「なおちゃん、大丈夫?怪我とか……」

 そこに、みゆきちゃんが駆け寄ってくる。
 あたしはそれに、「大丈夫だよ」と断りつつ、フラフラと立ち上がり、河川敷をゆっくりと見渡した。

「ねぇ、あれって……ジョーカー、だよね?」

 その時、背後から、やよいちゃんの声がした。
 あたしは、それに少しだけ頷いた。

「ピエーロに取り込まれて見えたのは、演技だったみたい。全てが終わって安心させてから、絶望させるためのね」
「チッ!相変わらず性格の悪い奴等やな!」

 あたしの言葉に、あかねが悔しそうに言った。
 しかし、それに反応する余裕はなかった。

「ていうか……よく、分かったね。怠け玉の中にいることが」
「ん?あぁ、キャンディの力だよ。メルヘン王国の王女としての能力、みたいな。怠け玉に入れたのも、そのおかげ」
「……そっか」

 あたしは、ゆっくりと河川敷のサッカーコートに歩み寄り、落ちていたサッカーボールを拾った。

「……なおちゃん。ジョーカーと一緒にいたのって、確か……」
「……あたしのせいだ……」

 そう呟きながら、あたしは、サッカーボールを持つ手を強くした。
 あたしは続ける。

「あたしがあの時、飛び出さなければ……こんなことにはならなかったのに……ッ!」
「なお……」

 気付けば、横にはれいかがいて、そっとあたしの肩を抱く。
 その優しさに、さらに涙腺が刺激されて、ボロボロと大粒の涙が溢れだす。

「やだよぉ……修斗と、戦いたくない……戦いたくないよぉ……ッ!」

 ボールを地面に放って、あたしはれいかに縋りついて、泣きじゃくった。
 しかし、泣いても何も変わらない。修斗と戦わなければいけないことに、変わりはない。

「……なおちゃん。そんなに嫌だったら、なおちゃんの代わりに、私たちが戦おうか?」

 その時、恐る恐ると言った様子で、みゆきちゃんが言ってくる。
 それを聞いて、あたしは顔を上げ、真っ直ぐ彼女の目を見た。

「私たちは、ピエーロだって倒したんだよ!?あの二人くらい、4人でも倒せる、だから……ッ!」

 続く言葉が、分かった。
 だから……なおちゃんは、何もしなくていいよ、と。言われているような気がした。
 もしくは、なおちゃんは見ていて、とか。なおちゃんは待っていて。とか。
 どれだとしても……あたしを、戦力としない言い方。
 確かに、今のあたしは、かなり情けないかもしれない。
 ……でも……。

「ありがとう、みゆきちゃん。……でも、修斗のことは、あたしに任せてほしい」

 あたしはれいかからゆっくりと離れ、涙を拭い、自分の胸に手を当てた。

「あたしは、自分の筋を通す!修斗を元に戻して、ちゃんと気持ちを伝えるんだ!」

 覚悟はできた。
 あたしは、修斗みたいに、自分の筋を通して、直球勝負をする!
 そして、彼とまた一緒に、自分の足で……この足で、未来まで進むんだ!


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