二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- とても素敵な六月でした・メリュー[ボカロ曲解釈]
- 日時: 2017/11/23 11:41
- 名前: あめ (ID: aiwVW5fp)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel1a/index.cgi?mode=view&no=11014
◯『メリュー』曲解釈。
○このスレッドは、eight様の『とても素敵な六月でした』『フラッシュバックアンビリエンス』を自分なりの解釈で、小説化しようと思い作ったものです。曲に対する解釈は人それぞれだと思うので、ここはこう思う! だったり、感想をいただけたら幸いです。一文だけでもすごく嬉しいです。
曲、すごく素敵なので、ぜひ聴いてみてください。
〇〇〇雨宮 おと という名前で、コメディライト作品でも作品をはじめました!覗いていただけたら嬉しいです! 上記URLから飛べます。
コメント、リクエストのボカロ曲待ってます^^
それでは。あめでした!
注意 少し過激な内容を含みます…!ニガテな方はブラウザバックお願いします!
- Re: メリュー[ボカロ曲解釈] ( No.30 )
- 日時: 2017/11/23 12:03
- 名前: あめ (ID: aiwVW5fp)
- 参照: http://つづき
「夕やけって、すごく綺麗」
僕と、君との世界は、思い返せばそこから始まった。
夏の暑い日、僕は君に出会った。
「君…」
「なに?」
「僕に付きまとわないでくれないかな」
やだ、君は口を尖らせる。
「付きまとってるんじゃなくて、私の行きたい方に、あなたがいるの!」
そんな風に返されるだろうとは分かっていたけど。
屋上で過ごす一人の時間は、ちゃんと確保したかったのに。
「君さ、」
「ほら、ちゃんと見てないと、夕陽しずんじゃう!」
そう言われ、僕は海に隠れてみえなくなりそうな夕陽に目を移す。
「なんか、太陽が飲み込まれてるって感じがするの」
ふいに、君が呟いた。
「自分じゃ、どうしようもならない深くて、暗いところに」
君の身体がとても、小さく見えて。
弱く、みえて。
「え…?」
「なーんて!こういうの、言ってみたかったの!」
そう、と僕は言った。
面倒事には、関わりたくない。
そう思っていた。
_____そんな放課後が、何日も続いた。
彼女について、分かったことがある。
彼女は、僕の一個下の後輩であること。
クラスのみんなに慕われる、明るい子であること。
そんな子が、どうして僕なんかと話したがるのか、分からなかった。
とても不思議だった。
知りたいと思った。
同時に、知らないままでもいいとも思った。
「じゃあ、帰ろっか」
夕陽が沈むのをみて、少しだけ話して、彼女と一緒に帰る。
「先輩、彼女とかいないんですかー?」
「いないけど」
「えーかわいそう」
君は僕をたまに皮肉る。
「悪いか」
「いーえ、それが先輩ですもんね!」
なんて、君はほんとうにひどい。
「じゃあ、私今日バイト、こっちです」
「おう、じゃあ」
そんなやり取りは、君以外としたことはなかった。
すごく楽しかった。
それが、当たり前になっていて、すごく心地よかったから、知らなくても、いまのままでよかった。
だけど。
- Re: とても素敵な六月でした・メリュー[ボカロ曲解釈] ( No.31 )
- 日時: 2017/11/24 19:42
- 名前: あめ (ID: aiwVW5fp)
___君はその日、ひどく辛そうだった。
熱をだして、それでも学校に来たらしい。放課後、僕のところに来た。
「おいお前…」
「せん、ぱいっ…」
不意に倒れそうになった君を、僕は抱きとめる。
はっと我にかえって、ごめんなさい、と呟くものの、君は僕の腕から抜け出す程の体力はなかったらしい。
そのまま、眠ってしまった。
仕方なく、屋上のコンクリートの床に座って、君を膝枕した。
こうしてみると、かわいい顔をしている少女だ。
長く伏せている睫毛。形の良い唇。熱のせいか、ほんのり赤い頬。
____気づけば、キスをしていた。
本当に、自分でも気づかないくらい自然に。
してしまってから、恥ずかしくなって。
「せん、ぱい」
起きた。こいつ、起きやがった。
「私、おきて、たよ」
こいつ、起きてやがった。
「移るよ、風邪の、ちゅーは。それでも、いいなら…」
君は、僕の頬に手を当てて、甘い声で言った。
「して、ください」
僕は、華奢な君の腕を掴んだ。
そして、強引にキスを落とす。
今気づいた。僕は、君が好きなのかもしれない。
「手、つないで、おねがい」
頷き、僕は手を交わらせる。
____ふと、君の腕をみて、僕は呟いた。
「この、痣」
「…あはは、転んじゃった、みたい」
ぱっと手を引き、君は僕に背を向けた。
君の腕には、青紫の痕がいくつもあった。
普段は制服のワイシャツに隠れていたのが、袖の隙間から見え隠れしている。
転んだだけなわけ、ない。
「気にしないで、おねがい」
僕はその言葉に彼女が懇願しているように思えた。
だから、何も、言わなかった。
- Re: とても素敵な六月でした・メリュー[ボカロ曲解釈] ( No.32 )
- 日時: 2017/11/27 18:37
- 名前: あめ (ID: aiwVW5fp)
夏の終わりかけの、放課後。
僕は、屋上へ向かう途中の廊下で、君の姿をみつけた。
一人で、元気がなさそうな彼女。
僕は君のとなりに行こうとして、君の友達に気づいて、足を止めた。
君はその2、3人に囲まれて、なぜか怯えた目をしていた。
そのまま固まって、放課後の誰もない教室に入っていった。
僕は、なんとなく、勘づいていた。
自然と、足はその教室へと向かっていた。
「ねえお金」
君を囲んで、グループのリーダーらしい子が催促した。
「ど、どうぞ」
その君は、僕といるときとはまるで別人のようで、明るさのかけらもなかった。
「は?足りないんですけど」
でも、精一杯で___という君の言葉を遮って、他の子が彼女の足を蹴った。
う、と小さく呻いて、君は蹲る。
「ねえ」
ぐい、と君の襟元を掴んで引き寄せて、リーダーの子は笑っていった。
「援交でもなんでもしてきなよ」
ぱっと、手を押すように離して、君の身体が崩れる。
僕が見たことない、必死に涙をこらえる顔だった。
「はい、次、ぬいで?」
ううん、と首を横に振る。
「ほら、動画とるからさぁ。そしたら援交、募集しやすくなんじゃない?」
携帯を彼女にかざして、にっと笑うその子。
他の子たちが彼女の腕をきつく掴む。
「____おい、ふざけんな」
自然に声が出ていた。
空気が乾く。
動きを止めて、こちらをみやる君を苛めていた子は、しばらくしてから、少しだけ恐怖の色を顔に浮かべた。
「もういいよクソが」
吐き捨てて、出ていく。
他の子もそれに続いた。
君の瞳から、涙が溢れた。
抑えていたものが、抑えきれなくなって溢れる。
小さな君をみて、視界がくらむほどの、守ってあげたい、という衝動に駆られた。
僕は君を抱きしめようとして、手を伸ばし_____
僕の横を抜けた、身体を抱えて走り去る君に、呆然と、立ち尽くした。
× × ×
君は、来なくなった。
放課後は、また一人になった。
君は僕をみると、逃げるようにしていなくなる。
君がいないなんて、こんな世界。
葉が色づき始め、秋に近づくにつれて、夕焼けは皮肉にも綺麗になっていく。
空は、とても綺麗だった。
僕は、君に伝えたい。
好きだ、って。君のすべてが好きだって。
明日、伝えよう。
何としても。
君に嫌われたっていい。
ただ、君のぜんぶが好きだって。
君が、分かっててくれればいい。
× × ×
- Re: とても素敵な六月でした・メリュー[ボカロ曲解釈] ( No.33 )
- 日時: 2017/12/22 12:34
- 名前: あめ (ID: aQG7fWp7)
×
屋上。先輩も帰って、真っ暗な辺り。
ぜんぶ、みられた。
私の汚れたところ、ぜんぶ見られちゃったなぁ。
ため息をついて。
先輩は、優しすぎる。
優しすぎるから、それが、私を深い、深いところへ落とすことを知らない。
___________私はフェンスを乗り越えた。
秋の夜風が、頬を冷たく撫でる。
星が綺麗だ。
真っ黒な、海と空が混ざって、そこに星がちりばめられている。
夕日が飲み込まれた後には、こんな景色が広がっていたんだ。
「綺麗…」
小さく呟いた。
夕日に負けないくらい、綺麗だ。
黒に奪われるように、
私は飲み込まれるように、私を、
先輩への思いも、
ぜんぶ。
ぜんぶ、
___________投げた。
× × ×
- Re: とても素敵な六月でした・メリュー[ボカロ曲解釈] ( No.34 )
- 日時: 2017/12/24 20:04
- 名前: あめ (ID: aiwVW5fp)
____母は、父を失ってから、壊れてしまった。
制服でうまく隠れる部分を、母は何度も何度も棒で殴った。
痛みなんて、もうそんなに感じなかった。
慣れっこだった。
死にたいって、本気で何度思ったことか。
それでも、私は勇気がでなかった。
だから、生きるしかなくて。
生きるにはお金がいるから、体を売ることしか思いつかなくて。
初めて体を売った日、先輩に出会った。人ひとりいないバス停で、私は痛みに耐えていた。
バスはまだ、こない。
……雨。
私を嘲笑うみたいに、雨がふった。
止まない雨。
ただ、立ち尽くして泣いた。
涙が雨とともに流れた。
ぽん、と誰かのぬくもりが、頭の上に乗っかった。
暖かい、おちつく、大きな手だ。
「風邪、ひくよ」
もう片方の手で、かさをこちらへ傾けている。
それが、先輩だった。
泣いた。大きな声で泣いた。
貴方は、静かに、私が泣き止むのを待っていた。
…手は、そのままにして。
しばらくたってから、雨が止んだ。
先輩はもう一度私の頭を撫でて、バスに乗った。
私は、隣に座った。
先輩が、好きになっていた。
もっとも、愛、という感情がよく分からなかった私には、ただ、一緒にいて幸せ、ということしか理解できていなかったけど。
それから、母が私を学校に通わせるようにした。
周囲からの目が厳しかったのだろう。
それからも私に対する暴力は続いたものの、私は先輩に会うことができた。
そのおかげで、頑張って生きようと、負けないで生きようと思えた。
それでも。
それでも教室に、私の居場所はなかった。
辛い日々に、先輩だけが、私を救ってくれた。
たくさん、嘘をついた。
今日はクラスの子とご飯。困っている子を助けてあげた。お母さんと出かけた。誕生日を祝ってもらえた。私は明るい子。みんなに慕われる子。
どれも、私の理想で、叶わない願いだった。
先輩の中には、理想の私がいる。
それを壊してしまったのなら、私は先輩には会えない。
先輩の中の私は、あの日ですべて終わった。
汚い私は、先輩に全部見られてしまった。
もう隠すことは叶わない。
いっそ、キスの後、先輩が私の腕を見た時に、私に問い詰めて欲しかった。
汚い私は嫌いだと、いって欲しかった。
でも、先輩は言わない。
絶対に、言わない。
優しいから。
でも、それが痛い。私には痛みでしかなかった。
先輩が魅せられていたのは、私の偽りの自分。
私は偽りでしか、先輩に接することができない。
先輩にキスしてもらえたのは、すごく嬉しかった。
でも、同時に、悲しかった。
先輩は、私にキスしたんじゃない。
嘘の私に、キスしたんだ。
涙が溢れて止まらなかった。
先輩、ちゃんと先輩に向き合わなくて、ごめんなさい。
弱い私を、許してください。
もう、声なんて出ないんです。
先輩が、好きです。
最後まで、私は嘘つきでいたいの。
× × ×
「君のぜんぶが、好き」
その言葉があったら、君は、生きてくれているのだろうか。
辛い、本当に、辛い。
君がいない世界は、こんなにも辛い。
苦しい、悲しい、なんて、思ってはいけないような気がした。
君自身が、死んで幸せだったなら、僕の苦しい、悲しいというのは君の足枷だ。
君がいないから、苦しい、悲しい。
それは僕の我儘で。傲慢だ。
だから、辛い。
ただ、僕が辛いだけ。
でも、その言葉があったら、なんて、もしもを考えて、君の幻聴を聞いてしまう僕は、きっと、辛いだけなんて本心では思っていないんだろう。
君が死んだ日からしばらく経って、僕は夜の屋上から、君と同じ景色を眺めた。
真っ黒に、星だけが光っている。
その輝きは、僕にとっては、汚い、埃をかぶったような、輝きだった。
足を少し、踏み出した。
いっそ、死んでしまえたら。
その時に、死んでしまえたら。
今、こんなに辛いだけの日々を過ごさなかった。
きっと、死んだほうがよかった。
死んだような、日々。
死んでいるような、何もない日々だ。
変えたいのに、変えられない。
どうもできない。
僕は、君に囚われたままだ。
それでも、囚われたままが心地いい。
やっぱり、きっと、こうでよかったのだ。
僕の中の矛盾は、僕を苦しめている。
君に傘を傾けたあの日は、灰色になっていく。
あれは、君だった。
バス停で、君は、僕を救った。
僕の自己満足でしかない、君への優しさを受け入れてくれた。
あの日を、夕焼けをみて、一緒に笑った日々をおいて、
そして、僕は生きる。
君がいないまま、生きる。
「__________せんぱい」
君が、微笑んだような君がした。
僕は、唇をぎゅっと結び、それに応えるように、微笑んでみせた。
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