【〜秋の夜長に〜SS小説大会にご参加いかがですか?】■結果発表!(2015.12.06 副管理人1更新)>>58 【SS】忘れない愛 ルカさんが31票で1位となりました!ルカさん、おめでとうございます〜!今回は試験的な開催で申し訳ないです。次回までに表示項目などの各種修正改善を進めていきます。今回ご参加くださった皆様、誠にありがとうございます!投票してくださった皆様にも深く御礼申し上げます!次回SS春大会にもふるってご参加ください。****************************【日程に一部変更あり】■【変更前】 第11回(2015年11月1日(日)0:00〜11月30日(月)23:59)■【変更後】 第11回(2015年11月1日(日)0:00〜12月5日(土)23:59)※実際には12月5日24:59ごろまで表示されることがあります※小説カキコ全体としては初回のため仮的な開催です※ルールは随時修正追加予定です※風死様によるスレッド「SS大会」を継続した企画となりますので、回数は第11回からとしましたhttp://www.kakiko.info/bbs_talk/read.cgi?mode=view&no=10058&word=%e9%a2%a8**************************【第11回 SS小説大会 参加ルール】■目的基本的には平日限定の企画です(投稿は休日に行ってもOKです)夏・冬の小説本大会の合間の息抜きイベントとしてご利用ください■投稿場所毎大会ごとに新スレッドを管理者が作成し、ご参加者方皆で共有使用していきます(※未定)新スレッドは管理者がご用意しますので、ご利用者様方で作成する必要はありません■投票方法スレッド内の各レス(子記事)に投票用ボタンがありますのでそちらをクリックして押していただければOKです⇒投票回数に特に制限は設けませんが、明らかに不当な投票行為があった場合にはカウント無効とし除外します■投稿文字数100文字以上〜1万字まで((スペース含む)1記事約4000文字上限×3記事以内)⇒この規定外になりそうな場合はご相談ください(この掲示板内「SS大会専用・連絡相談用スレッド」にて)■投稿ジャンルSS小説、詩、散文、いずれでもOKです。ノンジャンル。お題は当面ありません⇒禁止ジャンルR18系、(一般サイトとして通常許容できないレベルの)具体的な暴力グロ描写、実在人物・法人等を題材にしたもの、二次小説■投稿ニックネーム、作品数1大会中に10を超える、ほぼ差異のない投稿は禁止です。これらは無効投稿とみなし作者様に予告なく管理者削除することがありますニックネームの複数使用は荒らし目的等悪意のない限り自由です■発表等 ※変更あり【変更前】2015年12月1日(火)12:00(予定) ↓【変更後】2015年12月6日(日)12:00(決定)■賞品等当面ありません…申し訳ないです■その他ご不明な点はこの掲示板内「SS大会専用・連絡相談用スレッド」までお問い合わせください**************************★第11回 小説カキコSS大会投稿作品 一覧(敬称略)>>1 【詩】雨、というその日に。 miNoRi>>2 【SS小説】飛べない小鳥 冬野悠乃 ◆P8WiDJ.XsE>>3 【SS小説】お別れ 奏音>>4 【詩】君にまた会える日を、僕はずっと待ち続けよう。 瀬ノ島 凛音>>5 【SS小説】輝夜姫は夜の闇に消える はみう(゜ω゜*)三>>6 【SS小説】『メトロノーム』 全州明 ◆6um78NSKpg>>7 【SS小説】rainy/melody 悠真>>8 【SS小説】その日は来ない、永遠に。 てるてる522 ◆9dE6w2yW3o>>10 【SS小説】君へ。 のれり>>11 【詩】Memorialdays 零>>12 【SS小説】無彩色と白。 とある>>14 【SS小説】螺旋 ろろ>>15-16 【SS小説】鶴は恩を仇で返す 瑚雲 ◆6leuycUnLw>>17 【SS小説】笑顔で言おう。「おめでとう」 クッキーコロッケ>>18 【SS小説】僕とシチューとタコの煮物(仮題) 表裏 ◆w2Agp5Gh4I>>20 【SS小説】大好きな幼馴染 杏莉>>21 【SS小説】宇宙より愛を込めて。 故草@。 ◆vna4a5IClM>>22 【SS小説】囚われた人間。考え。重い思い。 Coronate(コロネ)>>23 【SS小説】主人公『A』のお話 HVC−012>>24 【SS小説】茜色の雫が滲んで、 Garnet>>25 【SS小説】青い部屋に 紺子>>26 【SS小説】ありがとうの言葉。 ルナ>>27 【SS小説】約束 彩>>28 【詩】思いを伝えられたなら モンブラン博士>>29 【SS小説】オレ氏とワイセツ物とヒバリ様。 名無したろう>>30 【詩】存在透明人間 恋恋>>31 【SS小説】君と出逢えて 宗治狼 ◆r2L9GXvgnc>>32 【詩】花言葉に想いをのせて あると ◆9cjbSd9YrQ>>33 【詩】他力本願 さくら餅>>34 【詩】大好きなキミへ、ボクから送る最後の言葉 もな>>35 【詩】大切なきみへ そら>>36 【SS】二人は確かに愛し合った 希都>>37 【詩】幸せを願う証拠 希柳>>38 【散文】満月の上のマンサルド 翌檜 >>39 【SS】君の心は止まったまんま。 ふぁんぷ。>>40 【SS】バカが二人で大馬鹿三昧 (夢大好き丸)※名前部分削除>>41 【SS】秘密のキスはシーツの下で 妖狐>>42 【SS】例のアレ Gilochin>>43 【SS】ちょっと変わった恋 ー始まりー cinnamon>>44 【SS】僕の嫌いな、僕の話し。 蝉時雨>>45 【SS】アストロノーツは地に墜ちる 浅葱 游 ◆jRIrZoOLik>>46 【SS】手をつないで、空を見上げて 雛>>47 【SS】離れていくあなたへ贈るサヨナラ 妖眼美>>48 【SS】私は生きる 〜主治医との約束〜 水紀>>49 【SS】「明日の彼方」 とりけらとぷす>>50 【SS】夢を拾ってみました。 榛都>>52 【SS】空への手紙 シャノン>>53 【SS】ごぼう リアン>>54 【SS】夕暮れに伝えたい ミソノ>>55 【詩】Endless World 夏目 織 ◆wXeoWvpbbM>>56 【SS】歪んだ恋心。 蚯蚓と書いてミミズです(笑)>>57 【SS】あの空をもう一度 彩都>>58 【SS】忘れない愛 ルカ>>59 【SS】二人の隼人〜ひっこし〜 金愚>>60 【SS】わたしの取扱説明書 電卓>>61 【SS】彼氏は幼なじみ☆ 桜ルカ<ここで投稿を締め切ります 2015.12.01>(除外)>>19 【SS小説】マリオ小説 HVC−012 (←申し訳ないです。二次小説は無効です…。)(2015.12.06更新)※管理者が作品一覧を更新しています(1〜2日に1回確認)※第11回大会は終了しました。積極的にご投稿下さりありがとうございます!次回大会をお楽しみに☆
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『秘密のキスはシーツの下で』「好き」って言った彼の口を塞いだ。 言わないで、お願い。 そんな笑顔で、そんな甘い声で、すべてを包み込むような優しい瞳で。 彼の口から零れる音をシャットアウトしたくて私は耳も塞ごうとした。でも、もう既に手で彼の口をふさいでいるからできない。 一瞬うろたえた私の手を彼はそっと掴んだ。触れられた部分が熱を帯びたように熱くなる。「……っ!」 肩をびくつかせる私に彼は困った表情を浮かべた。ゆっくり自分の口から私の手をはがし、両手を包むように握りしめる。「聞きたくなくても言うよ。僕は君が好き。とても好き」「嫌、止めて」 私は眼をギュッと閉じて首を振った。これ以上、聞きたくない。「大好き」「やだっ」「好きなんだ、どうしようもなく」 雨のように降る愛しい言葉が私に降りかかってくる。逃げたくても、私を掴んだ手がそれを許してくれなかった。 心が震えるように切ない想いが湧く。涙が溢れそうだ。『私も好き』と言えることなら今すぐ言いたい。けれどその言葉を口に出すことは、今の私には許されなかった。きっと口にしてしまえば今まで築いてきた関係が壊れてしまう。「もうこれ以上はやめて……!」「ごめん、それはできない。眼をそむけても辛くなるから、僕は逃げないって決めたんだ」 はっきりした声にはっと彼の顔を見た。決心をした顔つきに胸が痛くなる。幼い頃から知っている彼の人懐っこい表情はもう、大人に変わったのだと今更気づいた。 それでも私は言葉から目を背けたかった。先ほどから彼が口にするのは、ずっと欲しかった言葉。けれどその気持ちに答えられない今の私には残酷な言葉だ。「もうこれ以上やめて! だって私たちは……――!」 言葉を紡ぐ前に、今度は彼が私の口を塞いだ。 一気に距離を詰めてきて、額同士がくっつきそうなほど近くなる。はりつめた空気に二人の息遣いだけが響いた。「大丈夫だから。僕たちが例え……でも、僕が必ず守ってみせるよ」 かすれた心地のいい低い声が耳元でささやかれる。なだめるような声に高ぶった気持ちがおさまっていった。「だから教えて、君の本当の気持ちを……」 まるで誘惑するような言葉に私は吸い込まれるよう、ゆっくり口を開いた。頭がぼーっとする。「私もあなたが……」 そのとき小さな音が辺りから聞こえた。瞬間的に二人して体を強張らせる。静まり返った空間の中で耳を澄ませるが、それ以外の音はもう響かなかった。「多分、猫か何かだよ。今日両親は帰ってこないだろ」「でも、やっぱり駄目なんだよ……」 私は苦しい想いに涙が溢れた。ただの物音でびくつかなければならない私たちはきっとこの先、平和な恋は出来ないと悟った。 どうして好きになったのが彼なんだろう。どうして彼は私を好きになったんだろう。 泣き出した私に彼は眼を見張った。「……ごめん、泣かせて」 彼は私の涙をついばむようにそっと頬に唇を当てる。昔からされてきたその行為に熱を感じるようになったのはいつからだろう。「それじゃあ、こうしよう」 彼は突然立ち上がると、押入れにしまってあった大きなシーツを取り出してきた。そのまま空中に広げると、かぶるように頭上へ落とす。シーツに囲まれた辺りは真っ白だ。「この中は僕と君しかいない世界だ。だから外の世界は関係ない」 いたずらっ子のように彼は笑う。その意味を理解して私は彼に近づいた。もし私と彼がこの世界でただの他人になれるのなら、そんな素敵なことはない。 今だけ、この一瞬だけでいいから彼に恋することを許してほしい。 ぎゅっと彼の裾を握ると彼は愛しそうに私の肩を抱き寄せた。「ずっとこの世界にいれたらいいのに」「……うん」 小さくうなづく私の頭を撫でながら緩やかに頬へ手を下した。顎を少し持ち上げて、微笑する。 私たちは毛布の中で秘密のキスを交わした。 たとえそれが『兄弟同士』という許されない行為だとしても。
おおっと!左上から出現したぞ!そのまま右下に急降下!なにぃ!?消えた!消え……いや、右上から出現!左下に急降下していき、反り返るように一回転していく!このまま左下に消えるのか!?おおっと!まさかの一回転!どこまで私たちを楽しませるのかぁ!? 『ぬ』
…あ、今日も朝から笑ってる。海沿いの、とある小さな高校。そんな何の変哲もないここで、私は、『ちょっと変わった恋』をした。 「よし、これで今日の一大イベントは終わりーっ!」「花乃ー次って何だっけー」「先生…これで聞くの何回目ですか?次は数学ですよ…っていうか次、先生の授業ですからね!?」テストが終わって解放感溢れるこのタイミングで、先生のボケ到来。折角の解放感を邪魔されたのは感に触るものの、私は心の何処かでいつも、この瞬間を待っている。何故なら…「あー…次、数学?よし、地獄前の天国だ」「あーあ、天国の前の数学って本当に地獄だよねー(怒)」ある男子との、いつも通りの自然な…っていうのは嘘。本当は話せたことが嬉しくて、口調では拗ねてるけれどやっぱり顔は笑顔になってしまう。心拍数も(次が数学だから)どんどんと下がってきているテンションに比例して小さくなる…小さくなったら身体的にマズイね。…おとなしくなるはずなのに、今は反比例もいいところで、どんどんうるさくなっていっている。…そう。(これだけ反応しているのだから、分かってしまうだろうけど)私が待っているのは、決して先生のボケなどではなく、この会話だ。うん、神に誓ってそれだけはないって言い切れる。ちなみに話しているのは、数学が大嫌いな私の前で、完璧に嫌味にしか聞こえない言葉をサラリと発したある男子。その人は、眼鏡をかけていて体つきはヒョロヒョロで。決して頑丈そうには見えないけれど、人懐っこい笑顔だけは何故か妙にカッコよく見えて。それでも普通の人なら、そんな彼の笑顔も10人中7人の女子は『うーん、別に…』と答えるだろう、そんな人。「あ、そうだ優奈」「ん?どうしたの?」…それでも、私にとっては初恋の相手で、ちょっとカッコ良く見えてしまう。性格は、面白いけどかなりのイジワルで。勉強は、お世辞にも出来るとは言えなくて。運動は、その細身の何処に力があるのか分からないけど、それなりに出来て。普段は、ゲームしてダラけてばかりいて。マンガに出てくるような、とまではいかなくても、普通の女の子が好きになるようなタイプとは、かけ離れた変わり者。そんな変わり者を好きになっちゃうなんて、私の方が変わり者なのかも… でも。それでも。たとえどんなに変だな、と思っても。たとえ想いがなかなか届かなくて、辛すぎても。もう、止まらない。自分でも、この想いを振り切ることは出来なくなった。それほどまでに、想いは暴走しているから……それにね。男子の中で私のことを「優奈」って名前で呼んでくれるのは、貴方だけなんだよ?そんな『貴方だけ』にいちいち嬉しくなっちゃって、舞い上がっちゃう私だけど。いつか、時の流れがタイミングを教えてくれたときに。今でも弾けそう…というよりも振り落とされそうな想いを伝えるから。それまでは、心拍数がすぐにうるさくなっちゃうこんな毎日をずっと、続けていきたいな。今はもう目の前にいない彼の背中に、心でそう語りかけてから、私は数学の分厚い教科書を鞄から引っ張り出した。
僕は、僕がとても嫌いだ。 昔はそこそこ多くの友人を持っていた。しかし、学校でとても嫌なことが起きて僕が不登校気味になるにつれて、次第に友人も減っていき、僕の友人で居てくれる人はいなくなった。 その頃から僕は登校を拒否するようになった。母親から責め立てられ、教師から電話がかかる毎日に僕はうんざりしていた。 季節が巡って春になり、進級してクラスが変わると、支えてくれる、という子が二人現れた。その子たちはいつも僕を支えてくれたが、中学に入ると一人、違う学校に行ってしまった。 中学に入って、知らない人達と顔を合わせることになると、僕はまた塞ぎ込みがちになってしまった。勉強もできない、愛想も良くない。声が小さく、元気もあまりない。それに、”僕”や”俺”なんて言う女子なんて、気持ち悪いんだって、知ってたから。 暫く経って、慣れた頃。僕は次第にこう、思うようになっていた。__皆、僕のこと嫌いなんだな、って。__あぁ、その陰口の標的は僕なのかな、って思ったりして。中には、僕に話しかけてくれる子もいた。……だけど。皆、他の子と居るときの方が、とても楽しそうに笑うから。無理して喋ってくれてるのかな、とか考えては、その子の思い踏み滲っちゃった、って自分を責めて。そんなことを、毎日繰り返して。 それでも僕は、誰にも言えない。__誰も知らないままでいい。内に秘めて、本当の想いを隠す。__傷付くなら、自分だけで。周りに想いを伝えないまま。__嘘の感情を、振り撒いて。僕はまた、隠し事をする。
僕らは今、大きな一歩を踏み出した。 そう表せてしまうほどに、簡単な行動。僕らの目の前には、さっきまで僕らと同様にしていた『何か』が蹲っている。よく分からない、聞き取れない言葉で呻いていた。けれど残念なことに僕らは『何か』と違うから、何を言ってるのか分からないし、そもそも言葉なのかも分からない。 僕らは今日、素晴らしい一歩を踏み出した。■アストロノーツは地に墜ちる 僕以外の仲間が帰ってしまった空間。それは誰もが驚くほど排他的で、閉鎖的な空間だった。僕は『何か』が帰るまで、この空間から出ることが出来ない。それが僕とリーダーとの約束事。僕らが監視し続けている『何か』は、多分数日前までは苦楽を共にした仲間だったんじゃないだろうか。 重たいカバンを背負う『何か』の後姿を見て、僕自身もカバンを背負う。見た目から軽いカバンには、きっと『何か』の三分の一以下の物しか入っていないのだと、目測で感じた。「午後五時三十六分帰宅」 口に出して時刻を確認すると、『何か』は肩をビクつかせ、内に入れながら怯えたように室内から出て行く。それの数メートル後ろを、僕はついて歩いた。とてつもなく面倒くさいけれど、リーダーの意向で寮の部屋も一緒にされたため、四六時中僕は『何か』を監視している。 一歩閉鎖空間を抜ければ、忙しなく動き回る仲間の姿や、通路で話しに花を咲かせる仲間の声が聞こえてきた。全員が僕の役回りを知っているからか、『何か』の後を着いて歩いていると、労いの言葉をかけられることが多い。 一定の距離を保って歩くことに、たった数日しか経ってないが慣れてしまっている自分がいる。猫背で、僕らと同じように二足で歩く『何か』は、確かイトウミホとかいう名前を持っていた。僕らはお互いの名前は知っているけれど、ただ知っているだけ。 そこに意味を見出すことは無いし、見出されることも無い。ただあるだけというところは、酸素とかそういうのと同じだと思う。「五時五十三分、帰着」 寮の部屋に戻った時刻を、口に出す。萎縮しているけれど、僕は別にサトウミホが嫌いというわけではない。寧ろ顔立ちやその平々凡々な風貌は好みで、周りの煩い仲間達よりは断然いい人だ。「あの……」「用件は簡潔に述べてください」 あくまで、マニュアル通りに僕はサトウミホと関わる。部屋割りに疑問しか感じない。サトウミホには一瞥もくれず、僕は荷物を順に片付けていく。僕の背後で感じる視線に気付かないフリをして、机上に置かれたミネラルウォーターをゆっくり嚥下した。 「シュンペイくんは……私がどうなってほしいと思う?」 一度聞いただけでは精確な判断が出来ない問い。僕は変わらずサトウミホを見ないまま、しっかりとその問いへ考察しないまま、いい加減に言い放つ。「僕は君の監視役であって、君個人に何かを思うことは無い。それにこれから君の一日の報告書を書かないといけないのだから、無駄なことに時間を割く暇なんか無いんだ」 椅子に座り、カバンから分厚いファイルを取り出す。今までの報告書と、これからの予定が書かれた報告書。それを開いて、ボールペンを持ち記入していく。それからサトウミホが何をしていたかは、全く記憶に無い。 報告書を書き上げ、ベッドに寝るときにサトウミホの方をみれば、電気を消しカーテンで仕切っていたから、もう寝たのだろう。既に深夜の一時を過ぎていた。電気を消し、僕もベッドへ寝転んだ。明日もまた、変わらずサトウミホの監視役。そろそろ飽きてきつつある役割のことを考えないように、瞼を閉じた。 朝、僕が目覚めると、外は騒がしく、叫び声や廊下を駆け回る音が聞こえた。一体何があるのか分からないまま、普段通り着替えて、部屋を出る。玄関に向かって歩いていくと、リーダーが焦った様子で「シュンペイ!! お前サトウミホが死んだ理由分かるか!? アイツが出て行った時刻は!」 と、言った。よく回らない頭に、リーダーの大声が嫌なほど響く。まてよ、と浮き上がった疑問を、僕は小さく口に出した。「サトウミホが、死んだ……?」「その様子じゃお前も気付かなかったのか、とりあえずお前が一つに集中しすぎることは分かった!! アイツ遺書書いてやがって、今警察が俺らのこと調べてる!」 サトウミホが死んだ? 遺書? 警察? 今現在何が起こっているのか、全く分からない。僕らのあの空間は? 一体どうなっているんだ。目の前が瞬く間に眩んでいく感覚が、体中を走り回る。走り去ったリーダーの背中を追うように、僕の足は動き出した。何処を目指しているかは分からないけれど、ただ、声が聞こえるほうへと急ぐ。 サトウミホが死んだ理由が分からない。どうしてだろう、そもそもサトウミホは『何か』である以上死ぬ死なないなんてあるのだろうか。一周回って落ち着いてきた頭で、そんなことをうすぼんやり考える。「そこの君! その場から動くな!!」 僕らのいつもの空間。排他的で、僕ら以外を寄せ付けない鳥かごが。「どうして」 震える唇、全力疾走後で忙しなく動く心臓。 僕の目の前には、僕らの空間を踏み荒らす、何人もの大人がいた。「君! サトウシュンペイくんだね?」 僕に気がついた強面の男が、苛立ったように声を出す。恐る恐る頷くと、男はこっちに来いと手招きした。今から踏み入る空間が、まるで今新しく出来たかのように、いつもの僕達を歓迎はしてくれない。知らない土地の未開の場所へ、迷い込んでしまったかのようだ。「サトウミホさんの自殺の件で、みんなから話を聞いて回っているんでけど」 男の唇の動きが、スローモーションのようにゆったりとしている。僕のほうは、真空の中にいるみたいで、段々と息が苦しくなる。「皆、オオツキユウタくんがリーダーで、自分達は一緒になってただけ。そう言うんだけど、シュンペイくんは、何か知っていることはあるかな」 張り付いた笑顔が少しずつ迫ってくるたび、空気が僕の周りから逃げていって、息がしにくい。一歩あそこに入れば、僕の呼吸だって正常になって、何でも話すことが出来るはず。「シュンペイくん?」 近づくな。頭の中ではそう言うのに、言葉にならない。得体の知れない恐怖が、足先からぞわぞわと這い上がってくる。指の先が冷たくなって、背筋には冷や汗が出ていた。「君も皆と一緒に、サトウミホさんへのイジメに関与していたのかな?」 瞬間、息が詰まる。呼吸が出来ない、考えることも。あれはイジメなのか? 僕はただ『何か』と認識していなかっただけで、もしサトウミホが人間だったら『何か』なんて思わなかった。それに僕はサトウミホの行動の全てを見て、記していただけだから、僕は『何か』とは無関係で、イジメだなんてことあるはずが無い。 だというのに、声が出ない。反論の一つも、出来やしなかった。「……取り敢えず、皆と一緒に警察署まで来てもらおうかな」 手首を取られ、ゆっくりとその場から連れて行かれる。教室には、誰もいない。皆はもう行ってしまったのかもしれない。 手の平に感じる、皮の厚い男の手。何が起こるか分からない恐怖が、全身を支配する。僕はただ、僕を連れて行く男の人の背中を呆然と見つめるだけだった。ただ呆然と、僕らの世界が壊れていくのを感じることしかできない。特別から、僕らは地に落とされた。
__お嬢さんの“今日”を、僕にくれませんか。差し伸べられた手に、吸い込まれるように。少女は己の手を重ねた。***「人が、いっぱい」少女がぽつりと呟いた。「街中だからね。僕の手を離しちゃだめだよ、はぐれてしまうから」青年は少女の手をひき、いろんなものを見せた。彼女が喜ぶもの、欲しがるもの、全てを見せた。その度に少女は驚き、笑い、楽しそうに街中を眺めていた。少女は、ひとりぼっちだった。目を開けても閉じても、真っ暗で。必死に手を動かしても、それを握ってくれる人は誰もいなくて。そんな時、一人の青年が手を差し伸べた。不思議と、怖くなかった。どこか、懐かしいような、そんな気がして。__ようやく、届いた。青年は、嬉しそうに、しかしどこか寂しそうに笑った。少女の手を取りながら。夜も更けたころ、青年と少女は公園のベンチに並んで座っていた。空には星が無数に瞬いている。それを見上げながら、少女は今日の思い出を楽しそうに語り始めた。「はじめてがたくさんだった。お空があおいこと、はじめて知ったの。おそとに人がいーっぱいいるのもはじめて知った。えほんにでてくるおひめさまも、おうじさまも、みんなみんな、はじめてみたんだ」そんな少女の話を、青年は微笑みながら聞いていた。手は、まだ握ったまま。「それとね」ふいに、少女が青年の顔を見上げた。「だれかの手があったいことも、はじめて知ったの」その言葉に青年は目を見開き固まった。少しして耐えきれなくなったのか、少女の顔から目をそらす。「そう……そっか」「うん。だからね」ありがとう。楽しかった。夢みたいだった。ありがとう。ありがとう。「わたしの“今日”をもらってくれて、ありがとう」__大好きだよ、おにいちゃん。少女はめいっぱいの笑顔を顔に浮かべて、そして闇に溶けるように、消えていった。握っていた手が、離れた。青年は自分の手をみつめた。ぐっと握りしめても、青年の手のひらは空気をつかむだけだった。「……ずっと、隣にいたのに、手も握ってやれなかった。僕が歩けたら、もっと色んなところに連れていけたのに。僕の体が、もっと動いたら……」視線を空にうつし、小さく微笑んだ。__ああ、でも。まだ、伝えてないこともたくさんある。一緒に行きたかったところも、たくさん。__君が今日、幸せだったのなら。「僕も、幸せだ」そう呟いて、青年は涙を流した。その雫が地面に落ちる前に、青年も静かに消えていった。「先生、〇〇号室の患者さんが……!!」とある病室。たくさんの機械に囲まれながら並んだ二つのベッド。そこに静かに横たわる、青年と、目に包帯を巻いた少女。彼らが生きているという証拠を周りに響かせていた音は、徐々に、小さく、弱くなっていく。そしてついに、静かに消えた。どこか楽しそうに微笑みながら、二人は眠っていた。朝日が、昇る。
(さよなら、あなた) 遠ざかるあなたの背中を見ながら、私は心の中でそう呟くことしかできなかった。手を振りたいと思う意志を振り払い、あなたの背から視線を外す。まだ冬の名残が残っている風を受けながら、蕾を震わす木々の合間の道を行く。 幸せそうな恋人たちが手を取り、語り合う道であなたと今日別れた。 前を向かなければ、振り返ってしまえば上手く歩けない。 ホントは声に出して引き止めたかった。――――あなたの夢についていきたいと あなたの真剣な眼差しを見て、言葉を失って、別れた。 迎えに来ると言ったあなたのセリフ。 信じていないわけじゃない。でも、きっと私のことなんて忘れてしまう。 馬鹿だなぁ、私。 あたりまえの温もりを失くして、初めて気づく。あなたへの愛。 寂しさを噛み締めて、道を歩く。 溢れ出す涙があなたとの思い出を遮るようで、あなたのさっきの笑顔を思い出す。 またいつか、夢叶えた日に会おう″ 今日まで何度も傷付け合いながら、その度許し合った。 だからこそ、あなたのその言葉は美しい過去として終わらせたいと思わせた。 いつでも互いに手を取り合った私たち。 またいつかだなんて、別れるための言葉。 どうして言ったの? 我侭だって貶されてもいい。 私はそんな言葉欲しくなかった。 あなたが旅立った今日。 私は願う、あなたの夢が叶うことを。 そして、私が旅立てることを。 あなたが、あなたでいてくれるなら、 もし私が何かに敗れて、諦めてしまったなら、 あなたはそこから叱って欲しい。 あの日々のように。 あなたが指差す未来に希望があって、私はそれを取りに行く。 忘れ物のように落ちているはずだから。 一人で抱え込んで、泣きたくなったときは思い出すから。 二人で歩んだ、あの日の私たちを。 叶わない約束事に、またいつか"の儚さを重ねてしまっても、私は決して忘れない。 ――――私の記憶にあなたがいないページはないのだから 溢れた涙をぬぐうあなたはいない。 もう見えない愛しい人に残す言葉は、 ありがとう さぁ、行こうか。立ち止まるよりもはやく、歩き出さなければ。 私たちの絆は、思い出の中にあるのだから。
私は生きますよ、貴方が死なない限り…。貴方は言った、「俺は心臓が悪くて長く生きられない」その言葉は、私の気持ちを大きく揺らした…。貴方は泣きながら「別れよう」と言った私は「嫌だ」と言いかけた、でもやめたんだ(このまま別れた方が都合が良いから)その日私は大事な話を聞くために、話すために、病院へ行ったその日私はお医者さんに、余命の話≠されお医者さんへ、自分の意思≠示したそしてお医者さんと、ある約束≠したそれから私は貴方から呼び出しをうけた 貴方は嬉しそうに言った「ドナーが見つかったんだ、手術が成功したらまた、付き合ってくれないか?」と…私は泣いて喜び「うん。」と答えた…そして、貴方の手術の日、私は貴方の一部になった…貴方はこの事実に悲しむんだろう、でもね貴方は優しい人だから、私の分も生きてくれるって思ってるよ…いや、この表現は少し間違っているね…だって、 私は貴方の一部になって、これからも生きていくのだから…
「明日の彼方」”僕は今、地平線の上に立っている”何処かの、誰かが言っていた言葉。きっと今の私もそうだ。何の変化もない地平線のような場所に立って、生きている。つまらない。世界はいつも濁って見えて。高校生活を始めて早半年、周りが落ち着いてきたこの頃、私は無償に寂しかった。友達も出来た。両親もいる。家もある。私は他に何を望むことがあるだろう。何もかも持っている。持っているはずなのに。私はいつも、一人ぼっちなんだ。昼休み、私は友達2人とお昼ご飯を食べていた。日向の当たる窓側での昼食は、明るくてとても眩しい。交わす会話はドラマであったり、アイドルであったり、コイバナであったりと、誰もが思い描くようなごく普通の高校生活の1ページ。でもーーー私は、ふと不安になる。私は、ここにいていいですか?もちろん、誰も私を阻害しようなんて考えている子などいない。でも……彼女たちの目に、私は映っていないように思えた。会話を交わす時、友達2人だけで会話しているように見える。もちろん、私も入っているのだけれど、2人の目には、それぞれお互いが映っていた。そう、私は映っていない。気のせい。きっと気のせいだと、自分に言い聞かせた。でも、これは自分のせいなんだ。私は、わかっていた。知らず知らずに硬い壁を作ってしまって、でも、それを開けるための鍵は何処かへ落としてしまっていた。自分ではどうしようも出来ないこと。そう、壊してしまえばいい。壊してしまえばいいのだけれど。私には、それが出来なかった。そんなことを悩みながら歩いていた一人の帰り道。前を通っていった大型トラックの排気ガスが鼻を刺した。排気ガスの匂い。それは、私の気分をより悲しくさせた。元に戻りたい。小さかった頃の私に。そう強く思った時、制服のポケットからブーブーとバイブ音がしているのに気がついた。ケータイを取り出すと、そこには”ホタル”の文字。私は通話ボタンを押し、耳に当てた。『久しぶり!元気だった?』電話の向こうから聞こえる声はとても明るかった。ホタルは、私の幼稚園からの幼なじみだった。懐かしい声。一ヶ月前に文化祭で出会っているのに、とても懐かしく思えた。「うん!元気元気」嘘。元気じゃない。でも、自然とこんな言葉が出てしまっていた。でも、彼女の前では明るくしていたかった。『…大丈夫?』ホタルの返事はこうだった。唾を飲み込む。ああ、そうか。15年も一緒にいたら、バレちゃうか。「大丈夫だよ」『本当に?』「…うん。ありがとう」私の目には、少しだけ涙が浮かんでいた。そっか。そうだった。私の事を、ちゃんと見てくれている人もいるんだった。ホタルとはそれから5分ほど話して私は電話を切った。電話の向こうでは、明るく騒ぐようなホタルの友達の声が度々聞こえた。そう、私も前を向かなきゃいけない。もっと自分から色々な人に話しかけるんだ。自分の壁は、自分で壊す。どこかで落とした心の鍵なんていらない。そんなもので開けなくても、そんなもの、自分で粉々にしてしまえばいい。夕焼けが町を紅に染めていた。夕闇が迫ってくる。私はその闇に呑まれないように、後ろを向いて歩き出した。ーあとがきー最近スランプなのか何なのか全然書けなくて、何も考えずに書いたのがこれです。なので、全然凝っていないし、拙文となってしまいましたが。そんな事はさて置き、皆さん最近悩んでいることなどないですか?少し冷たくなってきたこの頃、気分も沈みがちなものです。悩んでいて、それを解決…とまではいきませんが、少しでも明るい方へ歩いていく人が書きたくて書きました。なんの面白みもない日常。主人公はこの先、自分を変えることが出来たのでしょうか?と、これ以上書いてしまうと長くなりますので、この辺で。お手に取っていただきありがとうございました。
11月12日僕は街灯のない路地を一人あるいてた。暗くて暗くて、細い道を。そしたらどこからか、風船が飛んできて。それは、顔も名前もわからない少年の夢でした。<夢を拾ってみました。>その日も随分と平凡だった。昨日拾った風船は誰かのいたずらかもしれないな。そう思いながら風船につけられていた手紙を読み返した。『はじめまして。僕は中学二年生です。 そして僕はもうすぐ死にます。 知らない人にこんなこと言ってごめんなさい。 でも担当医さんにそういわれました。余命3ヶ月と。 最後に僕の夢を叶えたいと思って、風船を飛ばしました。 僕の夢はたくさん旅をすることです。 これを手にした方。お願いです。 新しい風船とともに、もう一度この手紙を飛ばしてください。 これが僕が旅をできる、唯一の手段です。 人生最後のお願いです。どうか、どうか。』「旅・・・ねぇ・・・。」ぽつりと呟き僕は考えた。信じていいのだろうか。話が出来過ぎていないか。・・・とりあえず保留しておこう。そうして僕は、引出しに手紙をしまった。あれから3日が過ぎた。僕は毎日、あの薄暗い路地を通るたびにあの手紙を思い出していた。家に帰り、液晶画面越しにため息をついた。「はぁ・・・。どうするかな。。。」僕にはほしい物があった。そのお金を貯めるため、一銭も無駄遣いはしたくない。「・・・でも、ゲームしててもらちあかねぇな。」・・・どうするべきか。そう思い、もう一度手紙を読み返した。そうすると、端に小さな文字を見つけた。『2014・11・10』「・・・え。一年も前じゃねぇかよ。」僕は気づいた。この少年はもういないことに。そして、少年の夢をつなげている人がいることに。僕のちっぽけな都合で、少年の夢を切るわけにはいかない。やっとわかった。そして次の日、僕は風船とガスを用意した。風船に手紙を括り付け、近くの山に登った。頂上の景色はいつも見るものより、はるかに美しかった。「ーとべ。」そういって、僕は風船を離した。少年の夢が終わらないように。少年が生き続けられるように。11月20日私が学校から帰っていると、風船が落ちてきた。そこには手紙が着いていて、そこにあったのは顔も名前もわからない少年の夢でした。<夢を拾ってみました。>