ひぐらしのなく頃に 作者/志乃 ◆PhgS5i6Xbk

― 第2話 ― 『難題』



言の葉が飛び交う。
       そのまま空に飛んでいく。

      言の葉が飛び交う。
       風に乗せられ飛んでいく。

      言の葉が飛び交う。
       突き刺さるのは貴方の心。

                      Frederica Bernkastel

* * *

 大急ぎで水車から走ってきた私たちは、
 言うまでもなく、凄い状態だった。
 競争といっても過言ではない走り方をした私たち5人は、
 教室になだれ込むなり自分の机に突っ伏した。
 それほど疲れたんだよ。……1回走ってみれば分かるさ。

「魅音さんたち、遅いですわ。一体何をしてらしたんですの?」

 生きた屍(というのは、酷い表現かな)
 となった私たちの机の前にきたのは、
 私たちよりも年下の北条 沙都子。
 沙都子は今、梨花と一緒に住んでいる。
 いわば、二人暮しだ。
 お嬢様口調って言うか、へんな敬語っていうのかな。
 そんなので喋る沙都子。
 それも幼さゆえか、とても可愛らしく思えてくる。
 いじっぱりだけど、とても優しい。

 ……圭一には、ちょっと違うような気もするけれど。

「みぃ、レナ達が珍しくお寝坊さんなのです。にぱー☆」

 可愛らしい言葉遣いをするのは、沙都子と二人暮しを
 している古手 梨花。
 古手神社の巫女さんで、次期当主。
 ちなみに古手家は御三家の中に入っている。
 御三家の中では一番低い位だけど、それでも権力はある。
 可愛らしい喋り方をして、不思議な言葉遣いをする、
 ちょっと不思議な女の子。

「ちょっと、俺たち寝坊しちゃってさ。そのせいで」
「そうそう。……眠」
「まったくもう……。紗那さんたら、仕方ありませんわね」
「紗那はお寝坊さんなのです。可愛いのですvv」
「はぅ、かぁいいよぉ……」
「レナ、お持ち帰りはしちゃいけねぇぞ」

 椅子から立ち上がり、少し目がキラキラしている
 レナに圭一が釘をさす。
 ……危なかったかも。

「いや、刹那が悪いんじゃないの。私が変な夢みて寝坊しちゃって……」
「変な夢?」

 ……あ。ヤバイ。自分で墓穴掘っちゃった。

「いや、別にいいの」
「どこがだよ。なんかお前朝から変だったじゃねーか」
「あ、いや、あれは……。ほら、私は朝弱いじゃない」
「それとは全然ちげーだろ」
「だ、だから……」

 言い出したら聞かない刹那の口調に
 どうするものかと頭を悩ませる。
 刹那の場合、自分がこれだと思ったものは
 絶対につきとおす。すんげぇ頑固なのだ。

「まぁまぁ。刹っちゃんも紗那も。そこまでにしておきなって」
「本当にその通りですね」

「「……え?」」

 突然、違う声が降ってきた。
 その声が降りかかってきたところをいっせいに見る。

「ち、知恵先生!」
「はい、そうです。もう授業始まってますよ?」
「す、すみません……」

 刹那は知恵先生だけに弱い。
 ……え? 何故かって?

 カレーについて文句いっていたらシゴかれたんだって。

 ……ま、自業自得っていうやつなんだけど。


「では、授業始めます。前原君、お願いね」
「あ、はい」

 知恵先生は小さい子達に教えに行く。
 教員が知恵先生1人しかいないのだ。
 だから、私たち10歳以上は、都会からきた
 優等生・前原 圭一に教えてもらっているのだ。

「圭ちゃん、ここ教えて」
「……またかよ……」

 魅音のお決まりのセリフに、圭一はいつものように
 頭を抱えるのだった。