ひぐらしのなく頃に 作者/志乃 ◆PhgS5i6Xbk

― 第3話 ― 『遊戯』  前編



種を始めてまいたとき
       何が咲くのかワクワクした

      芽がなりはじめたとき
       何の花なのかワクワクした

      でも、そのあとに誰かが気づく
       その種は本当に、花が咲くものなの?

                          Frederica Bernkastel

* * *

「―――……さァて、今日の部活はどうするかねぇ?」

 不適な笑みを浮かべながら、机に右手、
 腰に左手を添えて魅音は言い放つ。
 ……その瞳にはすごい色が宿っている。

 私たちは、授業が終わった学校で、机を囲み、
『部活』というものをしている。
『部活』といっても、ただゲームをして楽しむ、
 という部活だ。
 これは魅音が部長で、部員は私、刹那、レナ、
 沙都子、梨花、そして圭一の計7人だ。
 これが結構楽しいのだ。

 ……罰ゲームは凄いけれど。

「やっぱり、最近はややこしいゲームが多かったからねぇ……。
 今日はシンプルに、なぞなぞとでもいきますか!」
「なぞなぞ?」
「あの、『パンはパンでも食べられない
 パンはなーんだ?』っていうやつ?」
「そ。それ。んで、今日の罰ゲームは……。
 いつもと違うほうがいいよね……」

 罰ゲームというのは、敗者が勝者のいうことをきく、
 というものだったり、
 敗者1人をみんなで罰ゲームする、というものもある。
 罰ゲームの形は色々ある。たとえば、
 コスプレだったり、顔に落書きされたり、
 あるいは、生死に関わるものだったりと色々だ。

 最近の罰ゲームの常連は圭一。……と、刹那。
 確か1週間前からずっと罰ゲームにおちいっている。
 罰ゲーム初日は、『知恵先生の前でカレーの悪口を言う』。
 ……これで刹那は知恵先生が苦手になった。
 そのあとはずっとコスプレ。エンジェルモートの
 制服だったり、セーラー服だったり。
 ……うん。あれは、酷かった。ホントに。
 哀れに思えてきた。なんで女の服ばっかりだったんだろ……。

「最近は刹ちゃんと圭ちゃんが罰ゲームの常連だからねぇ?」

 くつくつとかみ殺すかのように笑う魅音の隣に、
 やんわりと笑ったレナが言った。

「今日は大丈夫だよ。きっと。……で、魅ぃちゃん、
 今日はどうするの?」

 罰ゲームの話となると、レナの目はいろんな意味で怖くなる。
 それは梨花も沙都子も同じだ。
 なんだっけ、「勝つためには手段を選ばない」、
 だっけ? 物凄い怖い目をする。
 ……違う意味で、光り輝いている。

「そうだねぇ、……じゃぁ、罰ゲームは1位になれなかった人全員!
 1位になった人に1日下僕となる!」
「げ、下僕?」
「しいて言えば、メイドさんってやつかな? かな?」

 ……え? メイドさんって、……え?
 なんか、凄いことになっちゃった気がする……。
 いつも以上にシンプルなゲームなのに、
 なんで罰ゲームがこんなにも重いんだろう……。

「ルールは簡単。なぞなぞを1人1回ずつ出していく。
 解答権は、この扉を開いた人」

 そういって、魅音は部活の道具などが入っている
 ロッカーの扉を叩く。
 ……つまり、扉をあけた人が答えられるってことね。

「みんなは椅子に座って、ロッカーを背中にまわすようにする。
 不正行為はしないようにね?」
「正々堂々とする俺らにいうセリフじゃねーよなぁ?」
「そっか」

 魅音は軽く笑い、自らも席につく。
 ……あぁ、これからサバイバルが始まる。


「第1問、」

 魅音の言葉に沈黙が落ちる。みんな集中している合図だ。

「―――……一番先に席を立ったのは誰でしょう!?」
「「はぁ!?」」

 圭一と刹那のマヌケな奇声(?)のあと、魅音の手が扉に触れた。

「……正解は私」

「んなっ、魅音! そんなのありかよ! ってか、なぞなぞじゃねーじゃん!」
「圭ちゃん、忘れたの? 『勝つためには手段を選ばない』、だよ」

 恐ろしい笑顔でそうあっけらかんと言い放つのは、
 やっぱり魅音だからだろう。
 だから、憎めない。

「えーっと、魅音、1回目、っと」

 黒板の表に書き込んでいく。
 ……ヤバイかも。このままじゃ。
 そう思った予感は的中し、その次の梨花の
 なぞなぞにも魅音、沙都子のなぞなぞにも魅音、
 という風になった。
 ……ヤだ。絶対にやだ。魅音にご奉仕するのは嫌だ。
 けど、その次は『口先の魔術師』である圭一の
 なぞなぞで、それには圭一がポイントを稼ぎ、
 次の私のなぞなぞにも圭一、刹那のなぞなぞにも圭一、
 と、魅音と圭一が同点になったのだ。
 ……あぁ、望みは絶たれた。
 この時点で、私、刹那、梨花、沙都子、レナは、
 この2人のどちらかの「下僕」になることが決定したのだ。

 そして、また恐怖が続く。