― Key ― 宝への道標 作者/梟 ◆y/0mih5ccU

第2章【4】



ちょうどその時、友里は空地のすぐそばをへとへとになって歩いていた。意外に学校から遠いな、と思った。
 確か、藤谷さんの家はこの辺ではなく、今学校から向かった方向とまったく逆の方向にあったはずだ。友里はちょっと違和感を感じ、場所がまちがっているかもしれないと思ったが、ここは自分の直感を信じることにしておいた。
 友里がやっとのことで、空地のまえにたどり着き、空地をみた。空地の向かい側には、「小椋公園」と書かれた看板のある広場。藤谷さんの話どおりだ、友里はちょっと嬉しくなって、空地のなかを歩いた。


 ここの空地は、空地というよりもはや、小さな公園だった。となりの広場から運ばれたであろう小さなシーソーと、何度も掘られ、子供の遊ぶ砂場化した、元駐輪所。自然の風などによって運ばれた種が、たくさんのタンポポなどになり、一部花畑みたいにも見える。
 あたりは静まり返り、風が木の枝や葉っぱをかする何とも言えない音と、カラスやハト、ヒヨドリたちのさえずりが聞こえた。
 ここに亜矢の姿は見えなかったが、友里の心はすっかり落ち着いていた。友里は軽い深呼吸をしながら、空地の奥まで歩いた。


 次の瞬間、息ができなくなった。
 やっとのことで、空気を肺に送り込んだとき、友里のまえには、亜矢の言っていた「金印のようなもの」と、三滴の血痕があった。

「なにこれ……血、なの?」
 友里はだんだん頭がくらくらしてきた。藤谷さんは、証拠を皆にみせる為にこの空地に来ていた。
 そして、私がここに来ると、藤谷さんの姿はなくて、そこに、血。これじゃ、まるで――。

 友里は頭を振った。そんなのはありえない。きっと、授業をサボる事に罪悪感をかんじた藤谷さんは、学校に引きかえして今頃、難しい問題のこたえを堂々と先生に発言しているに違いない。そう言い聞かせた。が、次にあの金属に目がはいった。

 藤谷さんの言ってたとおりだ、友里は思った。そして、その金属を抜いてみることにした。
 抜けない。
 もう一度引っ張った。
 やはり抜けない。
 突然、金属の判子の部分に、文字が光っているのに気付いた。例の英語だった。

 藤谷さんは本当の事を言っていたのだ。それなのに、証拠がないというだけで皆は信じなかった。なんとなく文字を撫でていたら、被っていた土などが落ちた。文字がより鮮明になる。

 とりあえず、これを抜いて海斗と麻衣子に見せよう。そう心に決めた。