二次創作小説(新・総合)
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- きらびやかな日常
- 日時: 2021/07/03 22:15
- 名前: 桜木 霊歌 (ID: xIyfMsXL)
優衣「タイトルコールです。」
ソニック「作者のネタ切れが原因で打ちきりになった日常が復活したぜ!」
エミー「料理対決や小話とかいろんなお話があるわよ!」
作「未熟者の作者だが宜しく頼む。」
オリキャラ紹介
>>718、>>722、>>747、>>782、>>796
世界観
>>751
優の特務司書生活
優が特務司書になりました 『失くし物探し駅』 著者:桜木霊歌 >>754-759
奇襲作戦!『歯車仕掛けのヴィーゲンリート』ヲ浄化セヨ! >>789-793
在りし日の記憶
Welcome to the Villains' world >>769-781
- Welcome to the Villains' world ( No.775 )
- 日時: 2021/06/09 22:37
- 名前: 桜木霊歌 (ID: sbAJLKKg)
不思議でおぞましい悪夢を見た霊歌の血縁者である少年の『時ノ小路優』は捻れた不思議の国こと『ツイステッドワンダーランド』に迷い込んでしまう。
オンボロの建物ことオンボロ寮でゴースト達と仲良くなった優は学園長に抗議する間もなく『雑用係』に強制任命されてしまう。
元々苦労する性分でメインストリートの掃除をしていると、優とグリムはエースという少年に出会ったが・・・
萩原朔太郎の竹と川端康成の雪国より一部抜粋
優の過去、Welcome to the Villains' worldの後編!
ゴーストたちと仲良くなり、学園長にグリムと共に強制的に雑用係に任命された優は寝室のベッドで眠ろうとしていた。
・・・眠ろうとは努力したのだ。しかし、眠ることができなかった。
この寮にあったマットレスは固くベッドは一部壊れている。
その上買いに行こうとしていた小説の内容が気になって仕方がない(おい)
さらには慣れてしまったとはいえ、いきなりの異世界トリップ。
眠れないのは仕方がないだろう。
オンボロ寮の外に出た優はボロボロのフェンスに腰掛ける体勢になって、暇つぶしの為に鞄の中に入れていた本の一つ・・・菊池寛の『恩讐の彼方に』を取り出して頁をめくった。
具体的な内容を示すと、追い剥ぎや強盗をした男が贖罪として僧になり、とある山越えの難所で人が毎年死ぬことを知る。
懺悔として20年余もの時をかけて洞門を掘り進める。
そこにかつて自身が殺した男の息子が現れるが男の贖罪の様子を見て殺意が薄れ、仇討ちは洞門が掘り終わった後でも問題ないとして洞門を掘り進める作業を手伝う。
そして最後には自身が殺した男の息子に討たれようとした僧だが、彼の贖罪の心に感化された男は仇討ちの心を捨てて抱擁を交わすという物語である。
菊池寛の作家としての立場を確立した作品であり、優が寛の描いた物語の中で最も好きな物語であり、今まで読んだ物語の中では4番目に好きな物語である(ちなみに一位は同率で霊歌の描いた『宝石庭園の魔法使い』と彼岸の描いた『歯車仕掛けのヴィーゲンリート』、龍之介の描いた『蜘蛛の糸』である)
本を読むことに熱中していた為、人が近づいていることに気が付かなかった。
????「おや、こんな所に子供がいるとは・・・」
優「ふぇ?」
思わず話しかけられた人物を見ると、緑のかかった美しい黒髪に黄緑の瞳、頭には一対の黒い角が生えており、身長は角も含めるなら200cmは軽く超えるであろう男性だった。
黒いブレザーに白黒のストライプのネクタイ、黒い手袋に黒いスラックスを着込んでおり、左腕には黄緑と黒の腕章をつけ、黄緑のベストを羽織っている。
夢で石となった者の一人だった。
優「・・・!すみません、ここにいては迷惑でしたか?」
????「いや、そういうわけではない。しかしここは長らく廃墟だったはずだが・・・」
優「実は僕、異世界から此処に迷い込んでしまって学園長からこの場所を宿として充てがわれたんです」
????「・・・なるほど、クロウリーの奴め、人の子はこんな所にいさせるべきではないだろう。」
そう言って溜息を吐いている男性を見て、優は彼の名前を聞いていない事を思い出した。
優「すみません、あなたのお名前は何ですか?」
????「!?この僕を知らないのか・・・!?」
優「先ほど言ったように、僕は異世界から迷い込んだだけの招待客です。ですのであなたがこの世界で有名でも、僕はあなたの事を何一つ知らないんです」
優の言葉を聞いた男性は何やら迷っている様子だった。
まるで、自分の名前を言って自分の素上を知られる事を恐れているかのように。
そして、一言こう言った。
????「・・・お前の世間知らずに免じて、好きな呼び方で呼んでいい」
優「それは嫌です!僕は人の事を渾名で呼ばない主義なんですよ。」
驚いた様子の男はそんな事を言われることを予想していなかったのか、戸惑ってしまっている。
・・・そして長らく時間が経った後、ようやく口を開いた。
????→マレウス「・・・マレウスだ。マレウス・ドラコニア」
優「マレウスさんというんですね。よろしくお願いします!」
優は明るく元気な声でマレウスに向かって軽く会釈する。
マレウス「僕を恐れないのか?」
優「先ほど言いましたよね?僕は異世界から迷い込んだだけの招待客だからあなたの事を何一つ知らないと。少なくとも、僕からの第一印象は強くて優しそうな人ですよ」
マレウス「僕が・・・優しそう・・・?」
マレウスのその困惑したかのような表情はまるで、そのような事を言われたことが無かったかのような反応に見えた。
そしてしばらく固まっていると、マレウスからは自然と笑みが溢れた。
マレウス「僕が優しそうと例えるとは、中々面白い。お前の名前は何だ?」
優「優ですよ、時ノ小路優。僕の故郷じゃ苗字・・・ファミリーネームを先に名乗るので、時ノ小路がファミリーネームで優が名前です」
マレウス「そうか・・・優と言うんだな?中々面白い・・・見どころがありそうだ」
そんなマレウスの言葉に、優はどこか自嘲気味に笑って「そんなことないですよぉ・・・」とマレウスに返す。
彼の血縁者である桜木霊歌。彼の曽祖父である空渡彼岸。
この二人は生前かなり謙虚な作家(彼岸の場合は詩人)として知られ、努力や勉強を惜しまなかったと聞く。
こういった所は着々と子孫にも遺伝していくという事なのかもしれない。
そこでマレウスは優の手にしていた『恩讐の彼方に』に興味を示した。
マレウス「・・・100年近く生きてきたが、お前の持っている本は見たことがないな。」
優「あ、そりゃこの世界で100年近く生きていても見たことないのは当たり前ですよ。だってその本、僕の世界の本ですから。」
マレウス「ほう・・・題名は極東の国の文字か?リリアなら読めるかもしれないな・・・」
優「良ければ後日翻訳して渡しますよ。恩讐の彼方に、僕の大好きな作品の一つなんです!」
マレウス「恩讐の彼方に、か・・・中々良い題名だな。では翻訳して持ってきてくれることを楽しみに待っているぞ。おやすみ、優」
優「マレウスさん、おやすみなさい」
マレウスと別れた優は、オンボロ寮のテーブルと紙に向かい、恩讐の彼方にを開いて翻訳して紙に書き始める。
自分の好きな作品を少しでも知ってほしい。
ちょっとした彼の可愛らしい我儘だった。
感想まだです
- Welcome to the Villains' world ( No.776 )
- 日時: 2021/06/05 20:01
- 名前: 桜木霊歌 (ID: sbAJLKKg)
ここは図書館。
優とグリムは学園長によりメインストリートから図書館にかけての掃除を命じられていたのだ。
現在グリムは諸事情でこの場にはいないが、掃除は優一人でも支障は無い。
元々掃除が好きな性分故に楽しんで掃除していた。
???「おや、お主は入学式の時のじゃな?確か名前は優じゃったか」
優「うわぁ!?な、何なんですか!?驚かせないでください!あと地面に降りて!」
???「ふふふ、ますます面白いのぉ」
優に話しかけてきたのはピンクのメッシュの入った黒髪ショートの少年?だ。
?がついた理由は、話し方や雰囲気といいどこか龍之介のような爺臭さを感じたからである。
・・・かと言って、お爺さんは蝙蝠のようにぶら下がらないはずだ。
いや、志賀直哉は確か晩年の時に蝙蝠の真似をして鴨居にぶら下がったことがある(マジです)。
これに比べると・・・少しはマシなのか・・・?
そんな行き場のないツッコミに困っていると、優は彼の着ているベストの色がマレウスの着ていたベストと同じ色だという事がわかる。
優「すみません、お名前をお聞きしてもよろしいですか?」
???→リリア「構わんぞ、ワシはリリアじゃ。リリア・ヴァンルージュ」
優「昨日マレウスさんが言っていたのはあなたの事だったんですね!改めまして、時ノ小路優と申します。」
リリア「そう言えば昨日マレウスの機嫌が良かったな。お主のおかげか」
優「そんなことはないですよぉ・・・あ、そうだ!リリアさん、これをマレウスさんに渡してくださりますか?」
そう言って優が手渡したのは経った一晩で優がこのツイステッドワンダーランドの公用語である英語に翻訳した『恩讐の彼方に』であった。
自分でもたった一夜でできるとは思えなかったので、少し睡眠時間は削れたが良かっただろうと思っていた。
リリア「これをか?」
優「はい!マレウスさんが僕の読んでいた本に興味を示しまして、ですが僕の故郷の文字は分からないようで、こちらの公用語の英語に一晩で翻訳してきました!多少睡眠時間は削れましたが」
リリア「マレウスに渡しておくからお主は寝ろ。」
「それじゃあ」と言ってリリアと別れると、優は再び掃除を始めた。
優と別れたリリアは紙に目を落とすと、これだけの文字を全てこちらに分かるように翻訳したことの苦労がわかる。
それならその本を自分に渡してくれればいいが、そうは行かないようだった。
リリア(にしてもマレウスがこのように文学に興味を示すとは・・・帰ったらご褒美の料理じゃな!)
別の意味で刻一刻とマレウスに命の危機が迫ってるなど、優は全く想像していなかった。
・食堂
優「で?何がどうしてこうなったの?」
グリム「・・・ごめんなさいなんだゾ・・・」
???「何で俺が・・・」
????「同感だ・・・」
リリアと別れた10分後、されど10分後・・・
新たなトラブルが起きた。
絢爛豪華であろうシャンデリアは無惨に壊れ、ついていたであろう宝石は見る影すらも無い。
辺りにはシャンデリアや宝石の残骸や破片がゴロリゴロリと転がっていた。
そして尚且優は珍しく怒っており、その手には蜘蛛の糸(普段と異なり強度がかなり強い太めの糸)が3本握られており、それぞれ蜘蛛の糸でグリムと二人の生徒が拘束されていた。
一体全体何故こうなったのか?
それは朝にまで遡る・・・
感想まだです
- Welcome to the Villains' world ( No.777 )
- 日時: 2021/06/05 20:06
- 名前: 桜木霊歌 (ID: sbAJLKKg)
・朝 メインストリートにて
グリム「掃除面倒なんだゾ・・・」
優「そうだけど、やるととっても楽しいんだよ!昨日のオンボロ寮の掃除、グリム楽しそうだったよね?」
そう言いながら優はメインストリートを箒ではいて掃除している。
グリムは優が作ったミニサイズの箒で同じようにしていた(たった一晩で作った)
改めて優はメインストリートを見る。
昨日はこういった所を見る余裕なんて無かった故である。
7つの銅像が立っている。
ハートの女王を思わせる女性に左目に傷のあるライオン、アラビアンな貴族のような魔術師に美しい女王、炎のように逆だった髪の男性に昨日優と会ったマレウスのように角を生やした女性の銅像がある。
・・・あれ?何で6つしか紹介してないのかって?
その理由は、優がその銅像から全力で目を逸らしてるからである。
それ故にグリムが今問題を起こしていることなんて知らなかった。
グリム「ふなー!お前ほんとにいい加減にするんだゾ!」
優「へ?何!?」
慌てて後ろを振り向くと、グリムは自分とそう歳も変わらないテコラッタ色の髪の少年に炎を吹き出している。
???「バーカ、こんなもんくらい!」
少年は風を出して炎の向きを変えるが、その炎はまっすぐにハートの女王の石像に向かって飛んで行く・・・!
優「あ・・・!まずい!」
とっさにハートの女王の石像の前に立つと、優は呪文を唱える。
優「『光る地面に竹が生え、
青竹が生え、
地下には竹の根が生え、
根がしだいにほそらみ、
根の先より繊毛が生え、
かすかにけぶる繊毛が生え、
かすかにふるへ。
かたき地面に竹が生え、
地上にするどく竹が生え、
まつしぐらに竹が生え、
凍れる節節りんりんと、
青空のもとに竹が生え、
竹、竹、竹が生え。』!」
その呪文を唱えると、石像の周りにかなり大きくかなり太い竹がたくさん生えてきた。
そして、その竹が炎を防いだ。
優「よかった・・・間に合ったよ・・・」
グリム「すげぇんだゾ優!あの魔法昨日の糸みたいな感じの魔法なのか!?どんな魔法何だゾ?」
優「竹を生やす魔法。以上」
???「・・・それだけ?」
優「うんそれだけ」
しかし、自分があの銅像から目を逸らしている間に何があったのか?
グリムと少年を問い詰めると、どうやらこの石像の人物たちはグレート・セブンというこのツイステッドワンダーランドの偉人であるそうで、魔獣のグリムは人間の歴史を全く知らず、それをエースという少年に馬鹿にされたらしい。
優「なるほどねぇ・・・エース君、だっけ?」
???→エース「そうだけど・・・何だよ?」
優「君は芥川龍之介さんって知ってる?」
エース「はぁ・・・?誰だよそいつ」
その言葉を聞くと、優はあからさまかつ大声で驚いたかのような態度を取った。
優「えぇー!?知らないの!?僕の世界の著名な文豪で彼の名前を冠した『芥川賞』っていうのがあるんだよ!知らないの!!?」
エース「なっ・・・!?」
優「じゃあ桜木霊歌さんは?空渡彼岸さんは?菊池寛さんは?志賀直哉さんは?太宰治さんは?宮沢賢治さんは?中原中也さんは?北原白秋さんは?萩原朔太郎さんは?室生犀星さんは?島崎藤村さんは?武者小路実篤さんは?有島武郎さんは?里見弴さんは?谷崎潤一郎さんは?夏目漱石さんは?森鴎外さんは?織田作之助さんは?檀一雄さんは?坂口安吾さんは?直木三十五さんは?徳田秋声さんは?泉鏡花さんは?江戸川乱歩さんは?川端康成さんは?中島敦さんは?まさか、皆知らないの!?」
エース「知るわけねぇだろ!」
矢継ぎ早に知らない人物の名前を出されてエースは少し・・・否、かなり苛立っている。
そしてそのエースの反応に、優は呆れたと言わんばかりの態度を取る。
優「信じられないよ・・・全員僕の世界のすごい文豪さんばかりなのに・・・そんなの子供だしあり得ないよ・・・」
エース「何だよ馬鹿にしてんのか!」
優「僕は君がグリムにやった事を君にやってるだけだよ。グリムにやるのはいいのに、自分の事は棚に上げるんだ」
苛立ちの籠もった顔で夢で見た宝石のついたペンを構える。
それに対して優はこう返した。
優「イケないんだイケないんだ〜。此処って確か魔法を使った私闘は禁止されてるんじゃなかった?」
まさに一触即発になった所で学園長が来て、(方法はどうあれ)ちゃんと止めた優は兎も角、初日からやらかしたグリムとエースは窓拭き100枚を命じられたのだ。
図書館にいた時グリムといなかったのはこれが理由だったのだ。
そして優は去り際に一言、エースに物申した。
優「エース君、そんな態度を取り続けたら君の周りには誰もいなくなるよ。君のそんな態度は今は無理でもいずれ改めて。じゃないと未来で後悔するのはエース君だから」
エース「!?」
そう軽く言って魔法で生やした竹を刈り取ってオンボロ寮に戻る。
竹は意外と様々なものに使えるのだ。
優「それじゃあ学園長、この竹をオンボロ寮に戻したらすぐに掃除を再開しますね!グリム、窓拭きサボっちゃだめだよ」
グリム「分かってるんだゾ!」
いい子いい子とグリムを褒め、優しく頭をよしよしと撫でると、優はオンボロ寮に戻っていった。
感想まだです
- Welcome to the Villains' world ( No.778 )
- 日時: 2021/06/09 22:41
- 名前: 桜木霊歌 (ID: sbAJLKKg)
そして別れた後の結果がこれである。
優が怒るのも無理はないだろう。
何故こうなったのか?
たまたまこの場に居合わせて、優の蜘蛛の糸に拘束されているデュースという生徒曰く・・・
①エースが掃除をサボって帰ろうとした
②グリムがデュースも巻き込んでのダイナミック鬼ごっこ
③しかしグリムの中にあったサボりたいという感情が溢れてグリムが逃走
④そしてこの食堂のシャンデリアの上にグリムが避難
⑤ここからは届かないし飛行魔法を習ってないからエースを向こうに飛ばそう!(はぁ?)
⑥グリムは捕まえることはできたがシャンデリア大破
⑦シャンデリアの壊れる音を聞きつけた優が3人を蜘蛛の糸で拘束←今ここ
ホントに何がどうしてこうなったである。
いくら届かないからといって、普通人を投げるという方法が頭に浮かぶか?
優「僕と君たちの世界の魔法が違うのは分かるよ?でもさ、普通シャンデリアの上にグリムがいたから捕まえる為に人を投げ飛ばすっていう発想になる?ならないよね?そんなことしたら壊れるのは分かってるよね?」
デュース「ひ、否定できない・・・」
優「そもそもそんなところにグリムがいたんならさ、近くにいる先生なりゴーストたちに頼むなりすればよかったんじゃないの?それすら頭に浮かばないなんて馬鹿なの?」
・・・見事に3人を馬鹿にしているような発言は目立つが、優は一切馬鹿になんてしていない。
なんなら普通の子供に叱りつけるような感じであり、きちんと言い聞かせる様な話し方だ。
まあ、それはそうだろう。
なんたって優の曽祖父である空渡彼岸は北原一門に所属していた詩人だ。
あの傲岸不遜な白秋の弟子の一人だった上に、白秋も彼岸の兄弟子である朔太郎と犀星も、自覚していないもののかなりの毒舌家で、相手を評価する際にはどちらかというと落として上げて褒めるタイプの一門だ。
そんな彼らに彼岸は良くも悪くも染まったのだろう・・・
そして霊歌本人も自覚はないものの極端の毒舌家だ。
彼の毒舌はそんな霊歌と彼岸の血が・・・着々と優に遺伝してきているという証拠なのだろうか・・・
学園長も来ていたのだが、優の剣幕と冷たい瞳、かなり低い声色にビビり散らしている。
この地点で学園長の威厳もクソもない。
学園長「とにかくもう我慢できません!優くん以外全員退学及びクビです!」
デュース「そんな!これは困ります!弁償でもなんでもするので退学だけは・・・!」
優「デュース君に関しては免除してあげてもいいんじゃないですか?彼の場合グリムとエース君に巻き込まれただけですし。そもそも魔法で直せるのでは?」
学園長「そうは行きません。魔法の核となる魔法石が壊れています。それにこのシャンデリアはこの学校創設からずっとある物で、弁償するとなると10億マドルはいります」
エース・デュース「10億マドルぅ!?」
マドルというのはツイステッドワンダーランドの通貨だろうか。
こっちでいう10億円はかかるという事だろう。
そんなの学生の彼らには払えない。
優「なら、どうすれば彼らの退学とグリムのクビを免除してくれるんですか?」
学園長「このシャンデリアの核に使われている魔法石は、今は廃鉱となったドワーフ鉱山にまだあるかもしれません」
デュース「じゃあ「僕が行きます」
優は真面目な表情でそう言った。
デュース「え・・・!?何で・・・!!?」
優「今回は僕がグリムについていたら防げたかもしれない事態だからね。学園長、僕がドワーフ鉱山で魔法石を取ってきます。僕が魔法石を持ってくることができたら、エース君とデュース君の退学及びグリムのクビを免除してください」
学園長「しかし、ドワーフ鉱山は閉鎖されてからかなり時間が経っています。魔法石があるかどうかの保証は・・・」
優「無かったとしても僕は行きます!可能性が0に満たなかったとしても、可能性があるなら僕はかけてみたいんです!それに二人のご家族だってこんな事になるとは思ってないはず・・・たった1日で退学はおろか、その挑戦が不毛に終わったら、二人のご家族に顔向けできないでしょう!?」
両者はそのまま睨み合う。
結核という彼女の育った大正時代では不治の病に侵されながらも物語を鮮明に描き続けた桜木霊歌と、兄弟子の朔太郎と犀星に、自身の詩の師匠であった白秋に、父親同然の存在であった龍之介に、心の拠り所であり世界の全てだった姉の霊歌に、自分を愛してくれた妻に先立たれ、非国民と罵られながらも自分の祈る世界平和の詩を、思い出の込められた詩を描き続けた空渡彼岸。
そんな2人の血縁者だからこそ、優は諦めは悪いし、何なら『この不条理に立ち向かってやろう』という意志の方が強かった。
そしてやがて学園長が折れ、「分かりました」と言う。
学園長「刻限は夜明けまで。それまでに持ってこられなければ彼らは退学及びクビです。」
その言葉に対して優は「十分ですよ」と自信満々の笑顔で返して見せる。
グリム「夜明けまででたった一人なんて無茶なんだゾ!」
優「大丈夫。僕が何とかするからグリムはエース君とデュース君と掃除するなり反省文を書くなりしてね。すぐに戻って皆の退学とクビを止めるから!・・・学園長、言質は取ったので勝手に退学手続きしないでくださいよ?」
グリムに対して激励の言葉を送ると、優はそう言って録音アプリを開いたスマホを学園長に見せていたずらっぽく笑う。
優「ですが、流石にドワーフ鉱山にまでは送ってくれませんか?僕ここの地理とかわからないんですよ。」
学園長「その点についてはご安心を。鏡の間にある闇の鏡の力を借りればよいでしょう。あの鏡に行きたい場所を告げれば、すぐに導いてくれます。」
優「分かりました。ふふっ、何だかメロスになった気分ですね」
エース「メロスって誰だよ」
エースの言葉を聞いた優は軽く説明する。
優「僕の世界の文豪、太宰治さんの代表作の小説、『走れメロス』の主人公の名前だよ。友人を身代わりとしたことを引き換えに三日間の猶予を与えられたメロスが幾多もの障害を乗り越えて友人を助ける為に王の元へ帰るお話。太宰治さんの『誰かを信じて真っ直ぐ走れる人間になりたい』っていう想いを反映した作品で、信頼の物語とも称されてるんだ」
デュース「要は僕達はメロスに身代わりにされた友人の立場・・・?」
的はずれな事を考え始めたデュースに、「それは違うから・・・」とツッコんでから一言言う。
優「今回は夜明けまでってかなり期間は短いけれど、僕が退学とクビっていう処刑から助けてあげるから!」
そう言ってエースとデュースが引き止める声も聞かずに振り返らずにそのまま鏡の間へと向かった。
昨日見たばかりの大きなこの鏡に対し、優はドワーフ鉱山と口にした。
感想まだです
- Welcome to the Villains' world ( No.779 )
- 日時: 2021/06/05 20:16
- 名前: 桜木霊歌 (ID: sbAJLKKg)
『国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。』
川端康成の代表作、雪国の冒頭にある言葉だ。
今は闇の鏡の力でこのドワーフ鉱山に来ている。
状況は違うといえ、優にとってはまさしく雪国を実体験しているようなので感覚だった。
まず優が始めるのは情報収集だ。
何の知識もなしにいきなり入りに行くだなんて、無謀にもほどがある。
だからこそ、まずは手頃な家がないかどうか探すことから始めた。
少し探索していると、家があった。
・・・オンボロ寮に比べると比較的マシだが十分廃墟の部類に入る・・・という頭語がついてしまうが・・・
人がいない事は織り込み済みだが、一応の為にノックをして扉を開ける。
優「失礼します。誰かいらっしゃりますか・・・?」
案の定廃墟になった家の中には誰もいない。
だが、優には目に付くものがいくつかあった。
それは子供用のサイズと解釈できるテーブルと、こちらも子供用のサイズと解釈できる椅子が7脚置かれて、子供用のサイズと解釈できる斧やつるはしが7組ずつ置かれていた。
優「子供サイズのテーブルと椅子と斧とつるはし・・・なるほど、ドワーフ鉱山・・・名前通り、この世界の小人達の家だったんだ」
確かツヴェルク達は子供の姿でありながら、その本職は鉱山労働者。
鉱山の近くにある家であり、斧やつるはしが置かれているということは魔法石に関する情報がある可能性のほうが高い。
案の定、ここには地図があった。
そこには魔法石は奥の方に多くあると書かれていた。
可能性が一歩前進したとして、優はドワーフ鉱山の中へと足を踏み入れた。
優は地図を見ながら奥へと進む。
道中ゴースト達が優に向かってくるが、こちらとて容赦するつもりは無い。
あっさりと次々とゴーストを蹴散らしながら奥の方へと向かって行った。
奥に向かっていると、キラリと虹色の宝石が優の目に止まった。
もしやあの魔法石かと思い、優は学園長から貰った魔法石の写真と宝石を見比べる。
間違った魔法石を持って行かないように、学園長から必要な魔法石の写真は貰っていた。
写真と寸分違わない虹色の宝石だった。
優「やった!あの魔法石を持ち帰れば「さぬ・・・ぅう・・・ぬぅ・・・」・・・へ・・・!?何!!?」
魔法石を持ち帰ろうと進むと、どこからか不気味な声が響く。
すると、巨大な化け物が現れた。
どこか小人を思わせるような赤い服に赤い帽子という装いで、紫色の不気味な炎を放つランプと朽ちたつるはしを持っている。
しかし顔は存在せず、頭部は割れたインク壺でどこかツギハギである。
・・・まるで、夢の中で変貌した彼らの後ろに佇んでいた化身のように・・・
優が魔法石に近づくと同時に手にしているつるはしで優を始末しにかかったが、優は咄嗟に後ろに飛んで攻撃を躱す。
先程まで優が立っていた場所は化け物の攻撃で抉れてしまっていた。
化け物「コノイシハァ・・・オデノモノダアアァアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
優「!?話し合いは・・・難しそうだなぁ・・・というより出来ないよなぁ・・・」
そう言っておきながら、話し合いで解決出来るなんて微塵も思っていなかった優は化け物を誘導するかの様に後退し始めた。
優「ふっふふーん!おっにさーんこーちらー!手ーのなーる方へー!」
優が誘導していく最中、化け物は優を仕留めんばかりの攻撃を仕掛けてくるが、この程度の攻撃は直線的すぎて読みやすい。軽々と躱していく優に化け物は苛立ちを感じていた。
そして魔法石からだいぶ離れたと優が感じたとき、優は呪文を唱える。
優「さぁてと!『竹、竹、竹が生え。』!『蜘蛛の糸』!」
化け物の周りに大きくかなり太い竹が埋め尽くすかのように生え、その隙間をかなり太く強い蜘蛛の糸が補強し、立派なバリケードになっている。
萩原朔太郎の『竹』の詩を元にした魔法は、優は「竹を生やすだけの魔法」だと言っていたが、たかがそれだけだと舐めないほうがいい。
先ほどグリムの炎からハートの女王の石像を守ったように巨大な盾にだってなるし、蜘蛛の糸と合わせれば強固なバリケードにだってできる。
意外と汎用性の高い魔法なのだ。
だが、この化け物の暴れ具合と大きさを考えればそう長くは保たないだろう。
さっさと回収してさっさと学園まで戻らなければ・・・!
虹色の魔法石を手にした後、優はそのまま走る。
化け物が自分の立てたバリケードを壊す前に、ここを離れなければという焦燥感と、自分が魔法石を持ってくることを待っている3人(正しくは2人と1匹)の元に急がなければという使命感がそのまま優を走らせる。
優「よし!出られた!」
後はこの魔法石をそのまま学園長に届けるだけ・・・そのタイミングだった。
バキバキ、ブチブチと竹がおられ、糸が切れる音が聞こえた。
優「まさか、もう壊したの・・・!?」
こんなにも早くバリケードを壊されるなんて想定もしていなかった優は、焦ったが、どこか余裕そうだった。
それもそうだ。彼は私立御伽学園中等部に通う時と友人と遊ぶ時、就寝時以外は『語り部』の想区で暮らしている優はいつも物語の登場人物と暮らしている。
そして、『語り部』の想区で暮らしている快盗のアドバイスが役に立った。
『快盗たるもの、常に最悪のケースを想定せよ』
優は怪盗ではない。だが、そんなルパンの言葉は今回かなり役立った。
そのため優はバリケードが予想よりも早く壊された事に動揺したものの、すぐに冷静になり、立ち向かわなければならない事を察知した。
案の定、化け物は優に追いついて攻撃を仕掛けてきた。
軽く躱して溜息をつくと、一言言った。
優「やれやれ・・・さっさと終わらせて帰らせていただきますよ!」
そう言って優は導きの栞と空白の書を取り出した。
感想まだです
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154 155 156 157 158 159 160 161