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＊紹介文／目次＊

1

雨が、降っていた。
土砂降りの雨だった。
細い一筋の流れが、坂を下って行く。
その流れは、少しずつ、本当に少しずつ、太くなっていって。

騒めきが、聞こえる。

「あれ…なん…だ？」

雨音で声が消されてしまう。

ーあの流れは何か、だって？

知る訳、無いじゃないか。領らないよ。

そう、知らないんだ…。

・・・・・・・・・・・・・・・

雨の中、座ったままで。
口を、動かした。
けど、声など出なくて。出せなくて。
…でも。
その声は、
届かなくて良い。
自分への、戒めだから。

10～ 20～ 30～ 40～ 50～ 60～

＊29＊

7
7ー1
湊が舞に想いを伝えたあの日から、1週間が経った。
同じ時間にシフトが終わった湊と舞は、一緒に公園の中を歩いていた。ジャングルジムの所に二人で寄りかかる。

「あの…この前、一人ぼっちって…なんで、ですか？」

「敬語じゃなくていいよ。それと、俺のことは湊、でいいから」

少し躊躇ったが、迷う事なく言う。

「…なんでこの前、一人ぼっちだなんて言ったの？」

湊は一度深呼吸をして、話し始めた。

「俺は、4年間親に騙されて裏切られた。それで、約17年間、たくさんの人から疎外されて、唯一縋れた人も殺された。だから、一人ぼっち、って感じてた」

舞は目を見開いた。

「どういう、事…？」

湊は、父親の事、母が自殺した事、全てを語った。

「でも、私は、近づいていた…？」

「離れて欲しくなかった。ここで離れちゃったら、もう生きて行けそうになかったんだ。それに、舞と母親の面差しがすごく似ていて…ごめん、何か自分勝手だな。舞を振り回してる」

「そんな事ないよ。湊、の言ってる事…すごく、判るんだ」

湊は少し驚いた。判ってくれる人なんていないと、思っていた。思い込みだったのかもしれない。