完結小説図書館

<< 小説一覧に戻る

cynical【完結】
作者: 美奈  (総ページ数: 63ページ)
関連タグ:
 >>「紹介文/目次」の表示ON/OFFはこちらをクリック

10~ 20~ 30~ 40~ 50~ 60~

*20*

4ー4
バイトを休まなくちゃならない。痛いし、第一腕を動かせない。それに、こんな腕で行けば、きっと彼女は心配するだろう。

…心配するだって?

そんな訳ないだろう。昨日、少し喋っただけじゃないか。あの会話がはじめてだったんだから、心配だなんて。

湊は人付き合いが嫌いだ。
一人になる事が怖いから、じゃない。……多分。
知り合えば、自ずと自分の過去も知られてしまうから。ただそれだけが嫌だったから。
知られれば、皆と一緒だった所から疎外されるんだ。だから、孤独を感じる。
なら、最初から知られないようにして、皆と一緒にいる時を短くすれば、無くせば良い。はじめから一人なら、孤独を感じなくて済むから。

だから、他の奴等にも決して心は開かないと決めている。近づくな、という強いオーラを出している。だから、誰も近づかない。バイト先でもそうだった。話しかけてみても、全く口を開かない湊を不審に思って、そうっと離れて行く人ばかりだった。
みんなそうだ。湊は外見が良いから、はじめは色んな子が集まって来る。でも彼は人との付き合いを嫌うから、すぐにみんな湊に近づきにくくなって、結局1人になるのだ。それでも良かった。それでもここまで生きて来た。

長くても三ヶ月間湊と知り合えば、皆彼を遠ざけて行くのだ。しかし、彼女はどうだろう。俺を無視しなかった子。目を見て話してくれた子。
近づいてくれるだろうか。

…そんなの無理だって。
もう一人の自分が囁く。

そう。…もし俺が頑張ったって、絶対遠ざかって行くさ。
でも……それでも。


彼女に、心配されたいと思うのは、何故だろう。

19 < 20 > 21