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＊紹介文／目次＊

1

雨が、降っていた。
土砂降りの雨だった。
細い一筋の流れが、坂を下って行く。
その流れは、少しずつ、本当に少しずつ、太くなっていって。

騒めきが、聞こえる。

「あれ…なん…だ？」

雨音で声が消されてしまう。

ーあの流れは何か、だって？

知る訳、無いじゃないか。領らないよ。

そう、知らないんだ…。

・・・・・・・・・・・・・・・

雨の中、座ったままで。
口を、動かした。
けど、声など出なくて。出せなくて。
…でも。
その声は、
届かなくて良い。
自分への、戒めだから。

10～ 20～ 30～ 40～ 50～ 60～

＊40＊

9ー2
目が覚めた。刑務所にいる事は変わりないけれど、なんか違う感覚。
何が起きたのだろう。なんでこんなに、小刻みに震えているんだろう。何故傍らに、舞がいないのだろう。
…その瞬間、思い出した。

降りしきる雨。
一筋の紅い川。

掌を、見つめた。すべてが穢れている気がした。
やってしまった事は、消せない。
もう二度と、逢えないかもしれない。
そうだ、さっき、伯父に怒られたのだ。それを聞いて、どうしようもないくらい後悔して…そこから先は覚えていないけど。

ー離れるって事ほど、恐いものはないと思うよ

離れる事がこんなに辛くて、今まさに震えている自分。
己のたなごごろを見つめる。あの紅い色が、まだ付いている気がしてしまう。あの紅い色に、囚われ続けている。

罪の重さ。失った彼女の重さ。
それらを、彼は一人で悟ったのだった。