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cynical【完結】
作者： 美奈　　（総ページ数： 63ページ）
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10～ 20～ 30～ 40～ 50～ 60～

＊41＊


9ー3
・・・・・・・・・・・・・・・

瞼の裏で、薄い光が見えた。少しずつ明るくなってきて、のろのろと目を開けてみる。
完全に目を開くと、傍らに湊……ではない、母親が座っていた。

「良かった…！すっごく、心配したのよ」

「え…私、何がどうなってるのか…」

「あ…そうよね。…あなた、男の子に刺されたでしょう」

土砂降りの雨の中の、情景が蘇った。
憶えている。

私は彼の、敵だった。本当は近づいちゃいけない存在だった。なのに。
天の采配は、むごかった。
私は傷ついていない。もし私だって湊の立場になれば、湊が私にした事よりもっともっと、ひどい事をしていたと思う。
私なら…

絶対、確実に殺していた。でも湊は、そこまではしなかった。
人を刺しても尚、垣間見えた優しさ。絶対討とうとしていた敵を、わざと中途半端に刺した曖昧さ。

私はまだ、信じている。ー彼を。

「湊は…今、どこに…？」

「警察よ。あっさり捕まった。その後は、私があの子を起訴したの」

「…逢いに、行く」

母親は、顔面蒼白になった。

「は⁈あなた、今自分で何言ったかわかってる⁈あなたを殺そうとした殺人…」

「殺そうとなんてしてない」

「…何、言ってるの…？」

「私には、あの人の気持ちが解るの。すっごい辛かったかもしれない、て…」

刺された場所が鈍く痛んだが、顔には出さなかった。湊が本気なら、私を殺す事なんて簡単だったはずだから。
頑固な娘を見かねた母親は、つっけんどんに言った。

「…勝手にしなさい。でも私は、娘を傷つけられた以上、裁判で訴えるから」

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