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＊紹介文／目次＊

1

雨が、降っていた。
土砂降りの雨だった。
細い一筋の流れが、坂を下って行く。
その流れは、少しずつ、本当に少しずつ、太くなっていって。

騒めきが、聞こえる。

「あれ…なん…だ？」

雨音で声が消されてしまう。

ーあの流れは何か、だって？

知る訳、無いじゃないか。領らないよ。

そう、知らないんだ…。

・・・・・・・・・・・・・・・

雨の中、座ったままで。
口を、動かした。
けど、声など出なくて。出せなくて。
…でも。
その声は、
届かなくて良い。
自分への、戒めだから。

10～ 20～ 30～ 40～ 50～ 60～

＊60＊

11ー3
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「…そのままだ」

舞は一人で笑った。異母兄妹という境遇。

ー結局俺は、カストルだったんだな

先に儚くなったカストル。ー湊。彼との離別を哀しみ拒んだポルックス。ー私。
彼は、未来を予見していたのだろうか。双子座の星の名は、二人にとって本当にぴったりな名だった。

舞はふと空を見上げた。雪が降りそうな寒さ。あと二週間もすれば年の瀬。湊がこの世を去った年が終わり、湊のいない新しい年が始まる。時は止まる事なく動いていく。
今日はふたご座流星群の日。先程から、既に数十個の星が流れて行った。舞は今、いつの日か湊が連れてきてくれた高台にいる。明るさの度合いは違えども、ポルックスとカストルはきらきらと輝いていた。

よく、先に死ぬ方が残される方より可哀想だといわれる。それは、人間が忘れる生き物だからだ。良いことも、悪いことも。都合よく忘れてしまう。先に死んだら、いつの日か、残された方の心から自分が消えてしまうかもしれない。…人は、不安を抱えながら生きて、憂いを抱えながら死んで行く。
でも舞は誓う。一生、忘れないと。これが私、ポルックスの決断だ。