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＊紹介文／目次＊

1

雨が、降っていた。
土砂降りの雨だった。
細い一筋の流れが、坂を下って行く。
その流れは、少しずつ、本当に少しずつ、太くなっていって。

騒めきが、聞こえる。

「あれ…なん…だ？」

雨音で声が消されてしまう。

ーあの流れは何か、だって？

知る訳、無いじゃないか。領らないよ。

そう、知らないんだ…。

・・・・・・・・・・・・・・・

雨の中、座ったままで。
口を、動かした。
けど、声など出なくて。出せなくて。
…でも。
その声は、
届かなくて良い。
自分への、戒めだから。

10～ 20～ 30～ 40～ 50～ 60～

＊42＊

9ー4
その後、母は本当に湊を起訴した。
起訴され、刑務所に送られた湊との面会が許されたので、傷が癒えて既に退院した舞は湊の元へ、一人で向かった。

・・・・・・・・・・・・・・・

刑務官が、彼の元を訪ねた。

「来訪者だ。面会室に来なさい」

「誰、ですか…？」

刑務官も、本人も驚いていた。
声が、うまく出ない。この三日間殆ど何も食べず、氷のように冷たい手をただ見つめて、震えていた。
もっと大きな声を出したいのに、掠れたようなこの声で精一杯だった。
刑務官は一瞬驚いたものの、すぐに湊の様子を把握したようだった。

「とりあえず、ついて来い」

「…分かりました」

刑務官は未だ震える湊を面会室へと連れて行った。

舞は、たった一人で刑務所まで来た。
まだ意外に痛くて、歩くのが辛かった。でも。
逢いたい。
その気持ちだけが、ここまで彼女を連れて来た。